「クリフ・サバイバー」('22)
セラピーとリトリートのための登山に臨んだ、心が傷付いた女性たちとドクターが見舞われる怪現象を描いたサスペンスホラーです。主演はハンナ・エミリー・アンダーソン、共演はマディソン・ウォルシュ、ロザンヌ・スーパーノールト、キーラ・ハーパー他。
アイデアは興味深い。
ありがちなホラーの登場人物をトラウマを抱えた女性たちに設定し、主人公のサバイバルに「トラウマの克服」を重ねるアイデアは確かに悪くない。
が、結果的にはそのアイデアは充分に活かせておらず、ホラーとしても人間ドラマとしても中途半端な出来に。
そもそも無理があったのかもしれません。
「ミラクル・ニール!」('15)
ひょんなことから宇宙人に地球の命運を託され、何でも願いがかなう全知全能の力を与えられてしまった平凡な中年男性が巻き起こす様々なトラブルを描いたブラックなSFコメディです。主演はサイモン・ペグ、共演はケイト・ベッキンセイル、サンジーヴ・バスカー、ロブ・リグル、エディー・イザード他。主人公の愛犬の声をロビン・ウィリアムズが担当しています。
批評家の評価があまりに低いので、全く期待しないで観たのですが、確かに「何じゃこりゃ?!」としか言いようが映画 (^^;;;
キャストは充実しているし、オチは嫌いじゃないですけど、そこに至るまでは視聴自体が本当に苦痛でした。
とにかくどこを取っても「イギリスらしい悪趣味なコメディ」という感じ。
この悪趣味さはイギリス人なら楽しめる人は(多くはないにしても)それなりにいそうな気はしますけどね…。
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」('22)
大物映画製作者ハーヴェイ・ワインスタインが何度も繰り返した性暴力を記事で告発した、ニューヨークタイムズ紙の女性記者コンビの奮闘を描いた実録社会派映画です。主演はキャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、共演はパトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートン他。
→ Wikipedia「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」
派手な演出は一切なく、昔ながらのドキュメンタリー映画のようなタッチで冷静に描かれていて、それが逆に問題の深刻さと恐ろしさを強く感じさせて最後まで目が離せませんでした。
本来ならばドキュメンタリー映画として撮るべきなのかもしれませんが、問題の性質上、当事者本人を(たとえ映像や音声を加工して匿名化したとしても)登場させるのは難しく、それが故にプロの役者を使った一種の再現映像のような形にしているのは大いに納得。
事件関係者があまりに多いので、あらかじめ彼らの名前や位置付けを把握しておかないと内容についていくのがちょっとしんどいですし、あまりに淡々と描かれているので、わかりやすい「映画的面白さ」は皆無ですが、それでも老若男女問わず、少なくとも成人なら1度は観るべき映画でしょう。
「MEMORIES」('95)
大友克洋さんが製作総指揮と総監督を務めた、3本の短編からなるオムニバスアニメーション映画です。声の出演は磯部勉さん、堀秀行さん、林勇さん他。
20年以上前に観ているはずなのですが、2本目の「最臭兵器」以外をほとんど全く覚えていないので久しぶりに観てみました。
3本がとても同じ作家の作品とは思えないくらい、題材も絵のタッチも全てが異なっていて、改めて大友さんの才能の豊かさに驚かされました。
そして今回は、1本目の「彼女の想いで」がとても自分好みの作品であることに気付かされるとともに、以前観た時に何故この作品が記憶に残らなかったのか自分でも不思議でなりませんでした。
3本目の「大砲の街」は退屈だった記憶しかなかったのですが、今回は独特の絵のタッチやワンカットの演出など、実験的とも言える、その技巧的な部分に目を奪われ、すっかり魅了されてしまいました。
昔観た作品、それもあまり印象に残らなかった作品をこうやって長い年月を経て改めて観直すと、その受け止め方や感じ方は違うものなんだなぁという、当たり前と言えば当たり前のことに気付かされた映画でした。
「ノースマン 導かれし復讐者」('21)
北欧神話やバイキング伝説をもとに、父王を殺された王子の復讐劇を描いたアクション映画です。主演はアレキサンダー・スカルスガルド、共演はニコール・キッドマン、クレス・バング、アニャ・テイラー=ジョイ、イーサン・ホーク、ビョーク、ウィレム・デフォー他。
シェイクスピアの「ハムレット」のモデルとなったアムレートの伝説をもとにしていますが、その基本的な設定を使っているだけでストーリー自体は完全な別物。
アムレートによる復讐劇を、一段とリアルで醜く残酷に描きつつも、救いのあるエンディングにするなど、主演とともに企画・製作を務めたアレキサンダー・スカルスガルドの「こだわり」を強く感じる出来ではあります。
ただ、リアルとファンタジーの混ぜ合わせ方や深みがあるようでない物語など、どこか中途半端な印象で、娯楽映画としても物足りなく、かと言って文芸作品とはほど遠く、観終わった後にはもやもやした気分に。
このあたりは好みの問題でしょうし、決して出来が悪いとは思いませんが、とにかく自分にはしっくり来ませんでした。
「ONODA 一万夜を越えて」('21)
太平洋戦争の終結から約30年もの長い歳月を経てフィリピンから日本に生還し、大きな話題を呼んだ実在の陸軍兵士・小野田寛郎さんの数奇な運命を日本を含めた5カ国の合作で描いた伝記映画です。主演は遠藤雄弥さん、津田寛治さん、共演は仲野太賀さん、松浦祐也さん、千葉哲也さん、イッセー尾形さん、嶋田久作さん他。
出演者は当然ながら日本の俳優ですが、スタッフはほぼ全てフランス人を中心とした外国人という異色作。日本を含めた複数の国の合作ですが、実質的にはフランス映画。フランスの映画人たちが小野田少尉をどう解釈し、どう描くのかという興味で観てみました。
まず中年以降の小野田少尉役に津田寛治さんをキャスティングしたのが見事。小野田少尉本人に容姿が似ているというよりも、小野田少尉が本来持っているシャープさが見事に再現されています。
また、小野田少尉を探し出した冒険家の青年である鈴木紀夫さんを演じた仲野太賀さんも、容姿というよりは素朴で親しみやすい雰囲気がピッタリ。
まずこの2人のキャスティングに感心しました。
そして何より印象的だったのは、小野田少尉を美化もしなければ、「軍国主義の被害者」のように描くのでもなく、一貫して淡々と冷静に描いている点。それによって、異常な状況を小野田少尉と共に経験しているような気分にさせられます。
とにかく、全編を通して「外国人が描いた日本」といった違和感は全くなく、何も知らずに本編だけを観た日本人でも純粋な日本映画だと思うはず。
ただ、小野田少尉について既に充分に知っている日本人が敢えて観るべき内容かと言われると、そこは判断が難しく、海外の方を含め、小野田少尉についてあまりよく知らない人向けの映画のように感じました。
「スペースアドベンチャーコブラ」('82)
寺沢武一さんのSF漫画「コブラ」の初の映像化作品となるアニメーション映画です。声の出演は松崎しげるさん、中村晃子さん、風吹ジュンさん、藤田淑子さん、睦五郎さん、田島令子さん、榊原良子さん他。
「コブラ」のアニメ化作品というとテレビシリーズが有名なので、主人公コブラの吹き替えとしては野沢那智さんがよく知られていると思いますし、確かに野沢那智さんの声はピッタリ。
が、そのテレビシリーズの前に「コブラ」の初アニメ化作品として公開された本作もそんなに悪くない。作画は美麗だし、演出もダイナミックで、むしろかなり好き。
映画公開当時は松崎しげるさんをはじめとする声優のプロではない方の吹き替えに対して批判的な声が多かったですし、確かにお世辞にも上手くはありません。
それでも、松崎しげるさんの声自体は合っているし、中村晃子さんのジェーン、風吹ジュンさんのドミニク、睦五郎さんのクリスタル・ボーイもそれぞれ雰囲気があって悪くないし、実は結構気に入っていたりします。
そして何と言っても、松崎しげるさんが歌う主題歌「デイドリーム・ロマンス」が本当に素晴らしく、本編ではオープニングとクライマックスシーンの2回使われているのですが、実に印象的で作品の世界観にもピッタリ。この主題歌だけでも充分に観る価値のある映画と言えるほど。
もしまだ観たことのない方がいらっしゃるのであれば、是非ともお勧めしたい作品の1つです。
「ドント・ウォーリー・ダーリン」('22)
理想の楽園のような町で幸福な日々を送っていた人妻に忍び寄る恐怖を描いたスリラー映画です。主演はフローレンス・ピュー、共演はハリー・スタイルズ、クリス・パイン、オリヴィア・ワイルド、ジェンマ・チャン、キキ・レイン他。
出演もしている女優オリヴィア・ワイルドの長編映画監督2作目となる本作。前作の「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」('19) とは全く違う系統の作品で、その振り幅にビックリ (@o@)
しかし、前作以上に女性映画監督としてのメッセージ性を強く感じました。
正直なことを言えば、世界観の構築が甘く、物語としてのまとまりがちょっと悪い気がするのですが、それでもメッセージは強く迫ってきましたし、共感も理解もできました。
女性だけでなく、むしろ男性こそ観るべき映画でしょう。
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「ラーゲリより愛を込めて」('22)
辺見じゅんさんのノンフィクション小説「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を原作とし、第2次世界大戦後に夫がシベリアのラーゲリ(強制収容所)に不当に抑留されながらも、再会を願い続けた夫婦の11年に及ぶ愛を描いたドラマ映画です。主演は二宮和也さん、共演は北川景子さん、松坂桃李さん、中島健人さん、寺尾聰さん、桐谷健太さん、安田顕さん他。
主人公のモデルとなった山本幡男さんの実話はよく知られていますし、同じ原作は既に1993年にテレビドラマ化もされています。
そんなこともあって、内容そのものよりも、この話を21世紀の今の時代に、このキャストで映画化した意味を考えながら観ていました。
はっきり言ってしまうと、収容所のシーンが小綺麗で明るく、また映画全体を通して照明が明るすぎて現実味がなく、シベリア抑留の悲惨さの描き方としては充分とは思えませんでした。ただ、これは今の時代に映画館の大画面だけでなく、テレビやスマホなどでも観られることを想定してのことなのかなと。
また、登場人物の感情表現がわかりやすく大仰なのですが、少なくとも当時の日本人はこのようなストレートな感情表現はしないので、かなり違和感がありました。ただ、この映画に限らず、最近の日本映画は全体として昔の日本映画と比べて感情表現をわかりやすく描くようになっているので、仕方ないのかなとは思っています。
とにかく、若い世代に人気も知名度もある有名俳優を多く起用していることからも明らかなように、シベリア抑留を知らない世代に、過去の事実を知ってもらいたいという作り手の意図はよくわかりましたし、その目的は充分に達していると思います。
「レベッカ・マーティンソン〜型破りな捜査〜」('17)
変わり者でやり手な弁護士の女性がかつて捨てた故郷へと戻り、次々と起きる事件の渦中に巻き込まれていくさまを描いたミステリドラマシリーズ全8話です。主演はイーダ・エングヴォル、共演はエヴァ・メランデル、トーマス・オーレドソン、ヤーコプ・エールマン、ラース・リンド他。
全8話ですが、基本的に2話ずつで完結するので、日本で言うところの2時間ドラマ4本分という感じ。
北欧のサスペンスらしく、寒々しく、残酷な内容ですが、ミステリとしてはさほど意外性はなく、そのため逆に気楽な気持ちで観られる、まさに「時間潰しにはちょうど良い」ドラマ。期待値を高くしなければ充分に楽しめます。
ただ、主人公の生い立ちを意味深に見せていながら、それが物語の本筋にほとんど関わって来ず、そのため企業弁護士として充分に成功している主人公が何故そこまで殺人事件にこだわるのか、臨時の検事の仕事に没頭するのか、そのあたりの理由づけがわかるようでわからない、曖昧な描写なのは気になりましたけどね。
シーズン2も既に本国では放映済みらしく、機会があれば観たいとは思うのですが、主演だけが別の女優に変わっていて、しかもタイプがちょっと違うので「う〜む」という気持ちにはなっています…。