Marc のぷーたろー日記 -82ページ目

「3つの鍵」('21)

 

ローマの高級住宅街の同じアパートに暮らす3つの家族が織り成す多彩な人間模様を描いた群像ドラマです。出演はマルゲリータ・ブイ、リッカルド・スカマルチョ、アルバ・ロルヴァケル、ナンニ・モレッティ、エレナ・リエッティ、アレッサンドロ・スペルドゥーティ他。

 

群像劇ではありますが、単に3つの物語を並行して描いているだけなので、群像劇の「醍醐味」だと思っている「一見無関係に見える物語が最終的に集約していく心地よさ」が全くないのは残念。

 

かと言って、3つの短編のオムニバス形式にするほどには、それぞれの話が独立した1本の物語として面白いわけではないし。

 

とにかく、中途半端。

 

観終わった後の満足感がないのは致命的。

 

そして何より、3つの物語それぞれの主人公に魅力がないのがダウン

 

もちろん理解はできるし、そういう人は確かに存在するので、あり得ないとは全く思わないですし、同情できる部分はあるのですが、好ましく思えるほどのものがないので物語に入り込めなかったんですよね…。

 

比較的好みの題材だったので期待値が高すぎたのかもしれません。

「ストーリー・オブ・マイ・ワイフ」('21)

 

ハンガリーの作家ミラン・フストの1942年の小説を原作とし、夫を翻弄する謎めいた妻を夫の視点からサスペンスフルに描いた恋愛映画です。主演はレア・セドゥ、ハイス・ナバー、共演はルイ・ガレル、セルジオ・ルビーニ、ロマーヌ・ボーランジェ他。

 

21世紀の今の時代の感覚からするとストーリー自体はありきたり。

 

ラブコメ風のかなりおかしな経緯で結ばれた2人の結婚生活を描き、結末も予想通りで意外性は全くありません。

 

それでもこの映画が成立しているのは、美しい映像と、何と言っても主演2人のハマりぶり。

 

レア・セドゥの秘密を抱えた謎めいた雰囲気と溢れ出る色気。

 

ハイス・ナバーの大柄で無骨な容姿に加えて穏やかで落ち着いた大人の雰囲気でありながら、少年のように澄んだ瞳が表わす脆さ。

 

主人公2人には理解し難いところが多く、共感もしづらいのですが、主演2人の魅力だけで3時間近い長尺を飽きることなく観ることができました。

「プアン/友だちと呼ばせて」('21)

 

余命宣告を受けた青年と、彼の頼みで彼の元恋人たちを訪ねる旅の運転手を務めることになった親友の友情を描いた青春映画です。主演はトー・タナポップ、アイス・ナッタラット、共演はプローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオーレット・ウォーティア他。

 

Wikipedia「プアン/友だちと呼ばせて」

 

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」('17) で一躍注目を集めたバズ・プーンピリヤ監督が、香港の名匠ウォン・カーウァイの共同製作総指揮で撮った作品。

 

過去の恋愛を感傷的に、そして親友との友情を美しく描いた青春映画かと思いきや、確かにその要素はありつつも、若さ故の過ちを美化することなく、ビターというよりもかなり辛辣に描いた物語でした。

 

若くして死を迎えることになった主人公は確かに気の毒なのだけれど、徐々に彼の過去のクズっぷりが明らかになることで物語の意図するところが別にあることがわかってくる展開はグッド!

 

結局のところ、過去の恋愛に対する感傷など所詮は男の自己満足でしかないし、死を前にしてようやく贖罪の行動を取ろうとした主人公に対しては「今さら何て身勝手な!!」としか思えず。

 

そのため、救いを持たせたエンディングに対しては、「物語」としてはこういう終わらせ方をするしかなかったんだろうなと理解はできるものの、自分の好みとしては「それは安易じゃないかなぁ」と思えてなりませんでした。

 

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「LAMB/ラム」('21)

 

アイスランドの人里離れた山間の高原を舞台に、羊が出産した不思議な生き物をわが子として育てるようになった羊飼いの夫婦を描いたサスペンス映画です。主演はノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グドゥナソン、共演はビョルン・フリーヌル・ハラルドソン、イングヴァール・E・シーグルソン他。

 

Wikipedia「LAMB/ラム」

 

静謐だが緊張感の張り詰めた空気感で、ホラー映画っぽく描かれたダークファンタジー。

 

同じストーリーでも見せ方をちょっと変えるだけでグリム童話のようなダークな童話になりそう。

 

どういう結末になるのかとワクワクしながら観ていたら「そう来たか…」という感じ。それまでの世界観とは違う展開なので確かに意外ではありましたが、正直なことを言えば好みじゃない。張られていた伏線はちゃんと回収しているし、辻褄は合っているけれど、むしろ安易に見えちゃったんですよね…。

 

出来が悪いとは思いませんし、むしろ高評価なのも大いに納得できるのですが、期待値が高かった分、自分の期待していた方向性とは違うオチにちょっとガッカリしたというだけです。

「クリフ・サバイバー」('22)

 

セラピーとリトリートのための登山に臨んだ、心が傷付いた女性たちとドクターが見舞われる怪現象を描いたサスペンスホラーです。主演はハンナ・エミリー・アンダーソン、共演はマディソン・ウォルシュ、ロザンヌ・スーパーノールト、キーラ・ハーパー他。

 

アイデアは興味深い。

 

ありがちなホラーの登場人物をトラウマを抱えた女性たちに設定し、主人公のサバイバルに「トラウマの克服」を重ねるアイデアは確かに悪くない。

 

が、結果的にはそのアイデアは充分に活かせておらず、ホラーとしても人間ドラマとしても中途半端な出来に。

 

そもそも無理があったのかもしれません。

「ミラクル・ニール!」('15)

 

ひょんなことから宇宙人に地球の命運を託され、何でも願いがかなう全知全能の力を与えられてしまった平凡な中年男性が巻き起こす様々なトラブルを描いたブラックなSFコメディです。主演はサイモン・ペグ、共演はケイト・ベッキンセイル、サンジーヴ・バスカー、ロブ・リグル、エディー・イザード他。主人公の愛犬の声をロビン・ウィリアムズが担当しています。

 

Wikipedia「ミラクル・ニール!」

 

批評家の評価があまりに低いので、全く期待しないで観たのですが、確かに「何じゃこりゃ?!」としか言いようが映画 (^^;;;

 

キャストは充実しているし、オチは嫌いじゃないですけど、そこに至るまでは視聴自体が本当に苦痛でした。

 

とにかくどこを取っても「イギリスらしい悪趣味なコメディ」という感じ。

 

この悪趣味さはイギリス人なら楽しめる人は(多くはないにしても)それなりにいそうな気はしますけどね…。

「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」('22)

 

大物映画製作者ハーヴェイ・ワインスタインが何度も繰り返した性暴力を記事で告発した、ニューヨークタイムズ紙の女性記者コンビの奮闘を描いた実録社会派映画です。主演はキャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、共演はパトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートン他。

 

Wikipedia「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」

 

派手な演出は一切なく、昔ながらのドキュメンタリー映画のようなタッチで冷静に描かれていて、それが逆に問題の深刻さと恐ろしさを強く感じさせて最後まで目が離せませんでした。

 

本来ならばドキュメンタリー映画として撮るべきなのかもしれませんが、問題の性質上、当事者本人を(たとえ映像や音声を加工して匿名化したとしても)登場させるのは難しく、それが故にプロの役者を使った一種の再現映像のような形にしているのは大いに納得。

 

事件関係者があまりに多いので、あらかじめ彼らの名前や位置付けを把握しておかないと内容についていくのがちょっとしんどいですし、あまりに淡々と描かれているので、わかりやすい「映画的面白さ」は皆無ですが、それでも老若男女問わず、少なくとも成人なら1度は観るべき映画でしょう。

「MEMORIES」('95)

 

大友克洋さんが製作総指揮と総監督を務めた、3本の短編からなるオムニバスアニメーション映画です。声の出演は磯部勉さん、堀秀行さん、林勇さん他。

 

Wikipedia「MEMORIES (映画)」

 

20年以上前に観ているはずなのですが、2本目の「最臭兵器」以外をほとんど全く覚えていないので久しぶりに観てみました。

 

3本がとても同じ作家の作品とは思えないくらい、題材も絵のタッチも全てが異なっていて、改めて大友さんの才能の豊かさに驚かされました。

 

そして今回は、1本目の「彼女の想いで」がとても自分好みの作品であることに気付かされるとともに、以前観た時に何故この作品が記憶に残らなかったのか自分でも不思議でなりませんでした。

 

3本目の「大砲の街」は退屈だった記憶しかなかったのですが、今回は独特の絵のタッチやワンカットの演出など、実験的とも言える、その技巧的な部分に目を奪われ、すっかり魅了されてしまいました。

 

昔観た作品、それもあまり印象に残らなかった作品をこうやって長い年月を経て改めて観直すと、その受け止め方や感じ方は違うものなんだなぁという、当たり前と言えば当たり前のことに気付かされた映画でした。

「ノースマン 導かれし復讐者」('21)

 

北欧神話やバイキング伝説をもとに、父王を殺された王子の復讐劇を描いたアクション映画です。主演はアレキサンダー・スカルスガルド、共演はニコール・キッドマン、クレス・バング、アニャ・テイラー=ジョイ、イーサン・ホーク、ビョーク、ウィレム・デフォー他。

 

Wikipedia「ノースマン 導かれし復讐者」

 

シェイクスピアの「ハムレット」のモデルとなったアムレートの伝説をもとにしていますが、その基本的な設定を使っているだけでストーリー自体は完全な別物。

 

アムレートによる復讐劇を、一段とリアルで醜く残酷に描きつつも、救いのあるエンディングにするなど、主演とともに企画・製作を務めたアレキサンダー・スカルスガルドの「こだわり」を強く感じる出来ではあります。

 

ただ、リアルとファンタジーの混ぜ合わせ方や深みがあるようでない物語など、どこか中途半端な印象で、娯楽映画としても物足りなく、かと言って文芸作品とはほど遠く、観終わった後にはもやもやした気分に。

 

このあたりは好みの問題でしょうし、決して出来が悪いとは思いませんが、とにかく自分にはしっくり来ませんでした。

「ONODA 一万夜を越えて」('21)

 

太平洋戦争の終結から約30年もの長い歳月を経てフィリピンから日本に生還し、大きな話題を呼んだ実在の陸軍兵士・小野田寛郎さんの数奇な運命を日本を含めた5カ国の合作で描いた伝記映画です。主演は遠藤雄弥さん、津田寛治さん、共演は仲野太賀さん、松浦祐也さん、千葉哲也さん、イッセー尾形さん、嶋田久作さん他。

 

Wikipedia「ONODA 一万夜を越えて」

 

出演者は当然ながら日本の俳優ですが、スタッフはほぼ全てフランス人を中心とした外国人という異色作。日本を含めた複数の国の合作ですが、実質的にはフランス映画。フランスの映画人たちが小野田少尉をどう解釈し、どう描くのかという興味で観てみました。

 

まず中年以降の小野田少尉役に津田寛治さんをキャスティングしたのが見事。小野田少尉本人に容姿が似ているというよりも、小野田少尉が本来持っているシャープさが見事に再現されています。

 

また、小野田少尉を探し出した冒険家の青年である鈴木紀夫さんを演じた仲野太賀さんも、容姿というよりは素朴で親しみやすい雰囲気がピッタリ。

 

まずこの2人のキャスティングに感心しました。

 

そして何より印象的だったのは、小野田少尉を美化もしなければ、「軍国主義の被害者」のように描くのでもなく、一貫して淡々と冷静に描いている点。それによって、異常な状況を小野田少尉と共に経験しているような気分にさせられます。

 

とにかく、全編を通して「外国人が描いた日本」といった違和感は全くなく、何も知らずに本編だけを観た日本人でも純粋な日本映画だと思うはず。

 

ただ、小野田少尉について既に充分に知っている日本人が敢えて観るべき内容かと言われると、そこは判断が難しく、海外の方を含め、小野田少尉についてあまりよく知らない人向けの映画のように感じました。