「エスター ファースト・キル」('22)
9歳の「少女」を幼女として引き取った家族が見舞われる恐怖を描いた「エスター」('09) の前日譚で、前作に引き続き、主人公である「少女」をイザベル・ファーマンが演じています。共演はジュリア・スタイルズ、ロッシフ・サザーランド、マシュー・アーロン・フィンラン、ヒロ・カナガワ他。
前作は確かに面白かったのですが、だからと言って、エスターの正体がわかってしまっている以上、前日譚が面白くなるとは到底思えず、全く期待せずに観たのですが、これが予想以上に面白かった (^^)v
前作で紹介されていたように、エスターの家族が全員火事で亡くなって孤児となった経緯を描いているのですが、そんな単純な話ではないのが![]()
確かに、行方不明だった娘を名乗る少女を無条件に娘として受け入れてしまう時点で妙だなぁとは思いましたけどね (^^)v
そして、前作で大人びた「少女」を子役として演じていたイザベル・ファーマンが再び同じ役を演じる驚き!!
後ろ姿やロングショットは明らかに代役だとわかってしまうし、かなり無理はありましたが、元々子役時代から大人びた顔立ちだったおかげで、実際に大人になった今も雰囲気は大きく変わらず、エスターの正体を知った上で観ると、むしろ今の方が役には合っているように思えてしまうのです。
とにかく、前作を楽しめた人なら、この前日譚も充分に楽しめるのではないかと思います。
ところで、あれだけの大金持ちの一家の唯一の生き残りということになっているはずなのに、遺産はどうなったんでしょう? (^^;;;
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「ボーダータウン 報道されない殺人者」('07)
メキシコで12年間も続いた大量女性殺人事件から着想を得た作品で、米国の女性記者による命懸けの調査を描いた社会派のサスペンス映画です。主演はジェニファー・ロペス、共演はアントニオ・バンデラス、マヤ・サパタ、マーティン・シーン、ソニア・ブラガ、フアネス他。
実際にメキシコで起きた大量女性殺人事件を娯楽映画の題材として単に「消費」するのではなく、グローバル化に伴う格差の拡大という社会問題と結びつけることで、メッセージを世の中に広く訴えようという作り手の意図はわかります。その意気込みは強く感じました。
が、問題をあまりに簡略化し過ぎたために、結果的に大量女性殺人事件と社会問題の結びつけ方が雑で![]()
こんな雑な内容では、カルトに洗脳された頭のおかしい活動家やテロリストと同じです。意気込みだけでは本当に伝えたいことも伝わらないという当たり前のことを一から学び直した方が良いと思います。
「あのこと」('21)
フランスの作家アニー・エルノーの自伝的小説「事件」を原作とし、当時はまだ中絶が違法だった1960年代のフランスを舞台に、予期せぬ妊娠をした女子大生が、孤立無援の中でも自身で事態を解決しようと苦闘する姿を描いたドラマ映画です。主演はアナマリア・ヴァルトロメイ、共演はサンドリーヌ・ボネール、アナ・ムグラリス、ケイシー・モッテ・クライン、ルアナ・バイラミ、ピオ・マルマイ他。
ほぼ一貫してカメラが主人公を撮し続けることで、主人公に寄り添って彼女と同じ体験を共有する、一種の「バーチャルリアリティ」のようなイメージ。
聡明で相手の男性にもはっきりと自分の意思を伝えられる主人公が何故避妊をしなかったのか、また妊娠の可能性をどうして全く考えていなかったのかという疑問はありつつも、それでもこのような事態に陥った場合に女性側が一方的に苦しむことになる不公平さ、そして家族を含めて周囲に表立って助けを求められない孤独感は強く胸に迫りました。また、何とか対応してくれる「闇医者」を見つけたとしても、その手術環境はあまりに貧弱で不衛生。当時は中絶を試みて亡くなる女性が珍しくなかったのも当然でしょう。
歴史的事実として、こうやって映像として記録に残しておくことの重要性を感じる映画でした。
「ニューオーダー」('20)
いつ起きても不思議ではない社会崩壊の危機を描いた、ミシェル・フランコ監督によるサスペンス映画です。主演はナイアン・ゴンサレス・ノルビンド、共演はディエゴ・ボネータ、モニカ・デル・カルメン、フェルナンド・クアウトレ、エリヒオ・メレンデス他。
リアリティという点では極端すぎるところや気になるところはありますが、救いの全くない結末まで、すっかり見入ってしまいました。
ディストピアを舞台にしたフィクションは古今東西、世の中にいくらでもありますが、それらはディストピアになってからある程度の月日が経った後が舞台になっていることが多いのに対し、現代社会がディストピア社会になるまでを描いた作品はちょっと珍しいと思います。
また、いわゆる軍事クーデターそのものではなく、格差社会に対する不満を募らせた市民の抗議運動が暴動となってしまったことがすべての始まりであり、その暴動を鎮圧する目的で軍が力を持って支配する、しかも、暴動につながった裏に軍が関与していることが仄めかされるあたりも妙な現実味があってホラー映画のような怖さを感じます。
描かれる出来事は残酷でかなり劇的なのですが、それを一貫して淡々と描くことで一段と恐ろしく感じさせますし、確かにこういったことはいつどこで起きてもおかしくないと思わせる説得力はありました。
「ヒューマン・ボイス」('20)
20世紀を代表する芸術家ジャン・コクトーが、恋人から別れを告げられた女性の心情を電話口での独白を通じて描いた、1930年初演の戯曲「人間の声」を、ペドロ・アルモドバル監督が独自に翻案して映像化した短編映画です。出演はティルダ・スウィントン。
「ティルダ・スウィントンの一人芝居」を堪能するという意味では![]()
でも、この役に彼女が合っているかと言われると微妙。
彼女が個性的な優れた女優であることは確かですが、少なくとも自分が演出家の立場だったらこの役に彼女を起用することはないでしょうね。
「パラレル・マザーズ」('21)
同じ日に母親となった2人の女性がたどる数奇な運命を描いたドラマ映画です。主演はペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、共演はイスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ他。
主人公を含めた3人の母親、そして主人公の既に亡くなっている母と祖母といった母親たちの生き方とともに、スペイン内戦で処刑されて埋められた村人たちの遺骨発掘という2つの物語を一緒に描く意図は何となくわかります。
が、その2つの物語の絡め方があまりにぎこちなくて、観ていてすっきりと腑に落ちないのです。
好みで言えば、この映画よりも遺骨発掘の物語だけに絞った映画の方がはるかに観たいです。
「ブラックアダム」('22)
5000年の眠りから現代に蘇った破壊神ブラックアダムを描いたアクション映画です。主演はドウェイン・ジョンソン、共演はピアース・ブロスナン、オルディス・ホッジ、クインテッサ・スウィンデル、ノア・センティネオ、サラ・シャヒ他。
どんな人種にも見える独特の容姿をしているドウェイン・ジョンソンの個性は活かされているし、映画館の大画面で観るには充分な娯楽映画。
でも、中身は本当にすっかすかだなぁ (^^;;;
そんなことは百も承知の上で作られているんでしょうし、それを言うのは野暮なんでしょうけどね。
ただ、「破壊神」ならば「悪」として描かれるシーンがもっとあっても良かったと思うんですが、あっさり「正義の味方」になっちゃったのはかなり肩透かし。
「Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バック」('18)
地方で暮らす、貧しいが天真爛漫な2人の少女が、次々と不運に見舞われながらも乗り越えていく青春コメディ映画です。主演はマイア・ミッチェル、カミラ・モローネ、共演はカイル・ムーニー、ジョエル・アレン他。
観る前からある程度は予想していましたが、それを遥かに上回るレベルで自分とは1mmも合わなかった、というよりも、それ以前に生理的にムリ。
主人公を含めた若者たちが、キャラクター造形にしろ、見た目にしろ、画面から匂ってきそうなほど不潔感で溢れ、見ているだけで吐きそうになるほど気持ち悪い。
この映画自体が「田舎者の貧乏人はこんなにアホで下品で不潔なんだぜ」とバカにして笑うために作られたようにしか見えないのも![]()
この若者たちはこれからもロクな人生を歩まないだろうし、数年のうちに犯罪絡みで殺されちゃうだろうなとしか思えませんでした。
「彼女のいない部屋」('21)
ある朝突然、夫と幼い子どもたちを残して家を出て行った女性の心情を描いた実験的ドラマ映画です。主演はヴィッキー・クリープス、共演はアリエ・ワルトアルテ、アンヌ=ソフィ・ボーエン=シャテ、サシャ・アルディリ、ジュリエット・バンヴニスト他。
胸の痛む話でした…。
初めは主人公の情緒不安定な部分が強調されていて「うわぁ…」という嫌悪感しか抱けなかったのですが、すぐに真相が明らかになると、その後はただただ切なく悲しい物語に。
夢や妄想、現実がシームレスに繋がっている上に時系列をシャッフルしているので、とにかくわかりづらいのですが、そのわかりづらさが主人公の現実を受け止めきれない心の混乱をそのまま表していて、その表現の仕方には「なるほど」という気持ちに。
基本的に辛い話で「面白い」映画ではありませんが、こういう表現の仕方は新鮮で、これぞまさに「実験映画」でした。
それにしても、夫役のアリエ・ワルトアルテは、この映画では「ワイルド化したブラッドリー・クーパー」に見えて仕方ありませんでした (^^;;;
他の作品では全く似てないんですけどね (^^)
「エンド・オブ・ハルマゲドン」('22)
堕天使の悪魔ルシファーをDNA操作で復活させようとするカルト集団の陰謀を食い止めようとする大天使ミカエルらの活躍を描いたチェコのホラーファンタジーです。主演はアリス・オア=ユーイング、共演はジョー・ドイル、イヴリン・ホール、ピーター・メンサー、ジョー・アンダーソン他。
地獄のシーンの画面が暗すぎて何が何だか全くわからなかったのは残念だけれど、映像は綺麗。作り手のこだわりもそこにあるんでしょうけど、本当にそれだけ。
ストーリーは雑で意味不明だし、娯楽映画なのに、観客が娯楽映画に期待するものを全くわかっていないテキトーな内容で観終わった後には不満しか残りませんでした。