杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」 -20ページ目

手書きの文字というのは不思議だ。

 

みんな学校で、

同じ見本を見ながら、

同じ文字を修得したはずなのに、

みんな違う文字を書く。

 

いま、ある仕事で、

ものすごくたくさんの人の

手書きの文字を眺めている。

 

それがいちいち、それぞれ、違うのだ。

 

にもかかわらず、

その文字が読めてしまうのは、

考えてみれば不思議なことだ。

 

……いや、

たまに読めない文字もあるけれど(笑)。

 

「文字」という言葉は

「知性」の衣をまとっているけれど、

手書きの文字は明らかに

「身体性」が生み出している。

 

「お母さん」という文字の連なりは、

誰が書いたとしても「お母さん」を意味するように、

記号としての文字は普遍性を持っている。

 

でも手書きの文字としての「お母さん」は、

その書き手に固有の文字である。

 

「筆跡鑑定」によって

ほぼほぼ個人が特定されるという事実は、

そのことを端的に表している。

 

この「普遍性と固有性の併存」ということが、

「人間」と「社会」の関係を考える上で、

本当はとても大切なことなのだと思う。

パソコンで「お願いします」という文字を

打とうとしてタイプミスをした時、

高確率で登場する「尾根ギア」。

 

見覚えのある人も多いのではないだろうか。

 

ふと「尾根ギアって何?」という素朴な疑問が湧いてきて、

さっそく検索してみると、まあ出るわ出るわ。

 

「尾根ギアとは何か」の答えではなく、

「タイプミスした時に出てくる〝尾根ギア〟って何?」

という、同じ疑問を持った人たちの投稿の数々(笑)。

 

これらを眺めているうちに、なんとなく、

「世の中には知らない方がいいこともあるんじゃないか」

という気がしてきて、結局調べるのをやめてしまった。

 

というわけで、「尾根ギア」の正体は分からないまま。

 

でも、きっと、それでいいのだ。

 

……でも、ちょっと、やっぱり気になる。

 

……人の名前?

 

尾根さん?

ハーフ?

キラキラネーム?

 

「はじめまして。尾根ギアです」

 

めっちゃカッコイイやん。

 

俺が「尾根」だったら、

子どもの名前は絶対に「ギア」だ。

 

全国の尾根さんは

この優位性を無駄にするべきではない。

 

そう思う。

僕の知り合いの映画監督が、新作映画の撮影をスタートさせることになり、現在エキストラを募集しているとの連絡をいただきました。

 

ロケ地は千葉なので、都内の方は少し遠いかもしれませんが、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。僕もハリウッド俳優への足がかりに参加を目論んでいます。

 

気になる映画のタイトルは……『鈴木さん』!!

 

しかもSF映画です。ヤバイ空気をビンビン感じますよね(笑)。

 

監督の佐々木想さんは、短編映画『隕石とインポテンツ』で、カンヌ映画祭・短編コンペティション部門に選出されている実力派。最近では「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」などを手がけているそうです。

 

募集の詳細は下記よりご確認くださいませ。

 

>>■東京エキストラ

ある晴天の日に公園で弁当を食っていると、いつのまにか小さな黒猫が、僕の座るベンチの脇にたたずんでいる。

向かいのベンチに座るご年配の男女が、それを見て微笑んでいるので、

「いやあ、狙われてますね」

と挨拶がわりに声をかけ、一緒に笑った。

黒猫は特に何かを主張するわけでもなく、自分の足もとや、周りの景色を眺めながら座っている。弁当を分けてあげたいのは山々だが、一応、動物にエサはやらないことにしている。

小一時間経つと、その黒猫はゆっくりとその場を離れた。僕が背中を眺めていると黒猫は振り向いて、目が合った一瞬、その瞳を輝かせた気がしたが、結局そのまま行ってしまった。

そのうち女子高生らしい二人組が近くのベンチにやって来て、「あー、猫がいるー!」と言って、その猫と遊び始めた。猫はエサを求めるといったふうではなく、本当に「待ってました!」とばかりに、その女子高生らと手を合わせて遊んでいるのだ。

その時、僕はその黒猫に対して、ものすごく失礼な思い込みをしていたことに気づいた。

僕は最初から「こいつはエサが欲しくて近づいてきたんだな」と思い込んでいた。それにしてはちょっと様子が違うな、とは思っていたのだが、「悪いけど、エサはあげないよ」というふうに対応してしまった。しかしどうやら黒猫は「一緒に遊びたかっただけ」のようなのだ。

自分の思い込みで、その黒猫を下品な存在として見てしまっていた気がして、そんな自分を恥じた。猫に対してそうした偏見を持つということは、きっと人間に対しても、そういう偏見を持って接しているに違いないのだ。

小さな黒猫に、大きな反省を促された、昼下がりのひとときであった。

ベローチェやドトールのレジで
食べ物などを注文すると、

「右にズレてお待ちください」

と言われることがある。

僕は最初これの意味がわからなくて、

「なぜそんなことをしなければならないのか……」

と思いながら首を右にズラしたのだが、
すぐに「そういうことか!」と気づいて、
右に移動した。

「右にズレてお待ちください」というのは、
「自分の身体を右にズラす」のではなく、
「右側に移動してください」という意味なのだ。

多分この勘違いは僕だけではないハズだ。

カフェのレジ前でなんとなく首や上半身を
右にズラしている人がいても、
どうか温かい目で見守ってあげてほしい。

いわゆる大人の恋愛物語だが、

この中で語られる「時間論」も興味深かった。

 

結婚式のスピーチなどでよく語られる、こんな話がある。

 

人生には3つの坂がある。

ひとつは「上りざか」。

ふたつめは「下りざか」。

そしてみっつめが、「まさか」である。

 

半分冗談のようだが、

人生には確かに、その「まさか」がある。

 

しかも往々にして、

その「まさか」が、その人の人生を決定づける。

それは人生を長く生きてきた人ほど、

おそらくはよく知っているはずの経験則である。

 

そんなバカな、と思うような「偶然の不幸」。

 

それがバカバカしければバカバカしいほど、

他人には語り得ない、深い傷を残すのかもしれない。

それはときに、

一人で抱え続けるにはあまりに重すぎるほどに。

それでも人は、生きてゆかなければならない。

 

この小説には、

「未来は、過去をも変える」

という思想が通奏低音のように流れている。

主人公のギタリスト、蒔野はこう語る。

 

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。

 だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。

 変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。

 過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」

 

この物語の大きなターニングポイントとなる「事件」は、

まるでトレンディドラマのハプニングのように

「ありえない!」と思わせる展開を見せる。

 

読者は半ばあきれながらも、

まるで泥沼に足をとられて沈み込んでいくように、

その展開を見届けることになる。

 

人生に深い影を落とす記憶。

だが、深い影は必ず強い光によって作られなければならない。

同じように、強い光は深い影を生み出す。

この不完全で、美しい世界。

 

これほど深い余韻を残す小説に出会ったのは

初めてかもしれない。

 

人によっては大きく心を揺さぶられる物語なので、

ぜひ心が健やかな時に読むことをオススメしたい。

 

 

平野啓一郎『マチネの終わりに』毎日新聞出版、2016年。

僕の知人が関わるイベントのお知らせです。

 

「農のもつ社会性や、

 福祉が農を介して社会につながることの可能性を、

 埼玉福興の取り組みや、その周辺の方々から学ぶ会」

 

とのこと。

 

下記はFacebookベージでの案内です。

 

僕は参加できないのですが、

関心のある方はぜひ足をお運びくださいませ!

 

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■農と福祉からオーガニックな社会へ
 山崎農業研究所 現地研究会


山崎農業研究所所報「耕」144号では、

「農福連携」をテーマに特集を組みました。
今回の原地研究会では、

執筆者のお一人である新井利昌氏の運営する埼玉福興(株)を訪問し、

現地を拝見しお話を伺うとともに、参加者の意見交換を行ないます。

農のもつ社会性や、

福祉が農を介して社会につながることの可能性を、

埼玉福興の取り組みや、

その周辺の方々から学ぶ会です。

添付のPDFは「耕」の記事です。
多数の方の参加をお待ちしております。
参加希望の方は、下記、

事務局宛にご連絡いただけるとありがたいです。

主催:山崎農業研究所 http://yamazaki-i.org/
開催日:2018年10月27日(土曜日)13:00~16:00
場所:埼玉福興(株)代表 新井利昌氏 埼玉県熊谷市弥藤吾2397-8
テーマ:農と福祉からオーガニックな社会へ
タイムスケジュール
①JR熊谷駅 11:20集合
②熊谷駅  11:35→妻沼行政センター11:55(バス430円)
 ※旭自動車・熊谷駅−妻沼(バイパス経由)・妻沼行
 ※一緒に昼食を取られない方は

  12:15→12:35のバスで現地に直接来てください。

  バス停から徒歩10分程度です。
③現地で昼食 12:10~12:50 
④研究会 13:00~16:00
・圃場見学
・講演(話題提供):新井利昌さん「オーガニックな社会をめざして」(仮題)ほか
・意見交換
※帰りのバス時間
 妻沼行政センター → 熊谷駅 16:09、16:44、17:23があります。

事務局連絡先
・益永八尋 E-mail yahiro_mas@docomonet.jp(自宅)
      携帯 080-2061-4227

地域づくり情報誌『かがり火』の連載に登場していただいた、

駄菓子屋店主・デザイナーの中村晋也さん。

 

自らも関わる西武柳沢のローカルイベント

「やぎさわマーケット」について、

「ひばりタイムス」で記事を書かれています。

 

「やぎさわマーケット」については

このブログでも何度か紹介していますが、

この記事を読めばその裏側も見えてきます。

 

実行委員長の板橋さんの言葉が沁みます!


「失敗するのは良いと思ってんだ。

 なにかをすれば必ず失敗するんだ、

 そこを責めたって仕方ない。

 失敗をなくす一番簡単なことは、

 なにもしないことだ。

 でもそれじゃあ、つまんないだろ」

 

ローカルイベントを盛り上げる参考にもなりそう。

 

ぜひご一読くださいませ。

 

■「なんでもあり」「まずはやってみよう」 やぎさわマーケット賑わいのヒミツ

高等遊民(≒ニート)が集い、

無為な時間を過ごす。

 

世界で最も非生産的な会議、

「高等遊民会議」。

 

今月は「クルミドコーヒー」に男子3人が集合し、

それぞれの子供時代の話、好きな漫画、小説の話など、

どうでもいい話題に花を咲かせた。

 

 

 

とても楽しいけど、

普段はなかなか持つことのできない、

実に贅沢な時間。

 

早く集まった2人は18時くらいに到着し、

結局23時近くまでいたので、

なんと5時間も話していたことになる(笑)。

 

ヤギサワバルの珈琲イベントでお会いした

店長さんにお会いできるかなーと思い、

店員さんに聞いてみたら、

「今日ちょうどお休みなんです〜」とのこと。

 

そりゃ残念、と店を出ようとすると、

店の外に店長さんの奥さんが。

 

たまたま用事で店に来たそうで、

ご夫婦とお話することができた。

 

本当に会うだけで

まったりする空気感を放つお二人。

ぜひクルミドコーヒーに

会いに行ってみていただきたい。

 

クルミドコーヒーは

つい先日10周年を迎えたところ。

独特の静かな時間の蓄積を感じられる喫茶店。

 

次回は国分寺にある2号店、

胡桃堂喫茶店に行くのもいいかなー。

友人は言った。

 

「僕は便秘より下痢の方が好きですね」

 

「ああ、わかる。

 なんか下痢はデトックス感あるしな。

 ただ、電車に乗ってたりして

 トイレに行かれへん状況やったら、

 めっちゃつらくない?」

 

「ああ、それはつらいっす。

 だから、

〝いつでもトイレに行ける状況での下痢〟

 が最高ですね。

 その状況だったら、

 むしろギリギリまで

 ガマンするのが楽しいですね」

 

「それまさに『安全基地』の話やん。

 特に子どもとかは、自分の家族とか、

 安心できる場所がしっかりある子の方が、

 より積極的に冒険することができるっていう。

 トイレという『安全基地』によって、

『下痢をギリギリまでガマンする』

 という冒険ができるわけや」

 

「そういうことですね」

 

僕は納得した。