万城目学 「鴨川ホルモー」
- 万城目 学
- 鴨川ホルモー
このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。
葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。
このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。
祇園祭の宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。戦いのときは訪れて、大路小路にときの声。恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、魑魅魍魎は跋扈する。京都の街に巻き起こる、疾風怒涛の狂乱絵巻。都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。「鴨川ホルモー」ここにあり!!
第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。
◆ ◆ ◆
せっかく京都へ行くので何か京都関連の本を読んでみようかな、と思い立ち、図書館で予約してきたのがこの本。森見さんの「夜は短し歩けよ乙女」も良さそうだな、と思っていたのですが、予約数があまりにも多すぎたので結局こちらに。
・・・・・・ですが、結局借りられたのは京都から帰ってきた後。
まあ、それでもいいか、と読んでみたのですが・・・・・・・・・。
予想以上に面白かったです。
タイトルからして変なのですが、中身はもっと変な小説。といっても、話自体は意外にストレートで、一般受けしそうですが。
「ホルモー」というのが何なのか、というのは、本書を読めばわかることですが・・・・・・。
一言で言えば、対戦競技。
これがまたおかしな競技で笑えるのですが、実際にはその競技自体がメイン、というわけでもなく。
それに関わる人々の青春小説、というのが一番近いでしょうか。
とにかく、変わってますよ。
語り口調が「涼宮ハルヒシリーズ」のキョンっぽかったり、それでも京都の雰囲気が所々に漂っていたり・・・・・・。
新感覚とまでは行かないまでも、不思議な小説だったなあ、と。
軽く読めて、後味も良し。
気分転換にも最適な一冊です。8点。
電車トラブル
思い切り巻き込まれてしまいました。
やってられないですよ・・・・・・。
4年間、毎日毎日JRを利用していたら、それは電車トラブルなんていくらでも経験済みですが。
今日は酷かった・・・・・・。
ああ、ここまで来るとどうしようもないんだなー、と。
仕方が無いので、電車の中でひたすら本を読んで過ごしました。
それも2時間程度で読み終わってしまったので、新たに読む本を探そうと改札の外へ。
・・・・・・この「外に出る」ということすら、相当に辛かったのですが、とりあえず無理やり外へ。
何とか本を買ってきて、また電車の中で読んでいました。
結局、電車が動いたのはストップしてから3時間後。
・・・・・・本当、JRも京浜急行を見習って欲しいものです。
電車の遅れがいろいろなところに響いてきて、朝から晩まで大変な一日でした。
泡坂妻夫 「魔術館の一夜」
泡坂 妻夫 - 魔術館の一夜
奇術の種あかしと読みものを両立させることは不可能に近い。著者はこの放れ業をやりとげた。
本書は奇術書の革命であり、奇蹟である。
◆ ◆ ◆
ミステリ作家であり、またマジシャンでもある泡坂さんが、小説の形を借りて発表したマジックのレクチャーノート(解説書)です。
勿論、収録されているマジックは全て泡坂さんのオリジナル。
現在は絶版になっているのですが、図書館の書庫においてあったので、取り寄せて読むことができました。
一応小説の形式をとってはいますが、小説というよりは完全にレクチャーノートです。とはいえ、一般向けに発表されたものではあるので、特殊なテクニックを使ったりするような作品はありません。勿論、専門用語などもほとんど使用されていない(あったとしても解説付き)ので、前知識が全くなくても普通に読めると思います。
レクチャーノート、という観点から言えば、正直言って実用性はそれほど高くありません。
特殊な用具を使ったりするものが多く、なかなか演じづらいものがあります。
ただ、アイデアを楽しむという意味では、大変価値のある一冊でしょう。特に、現在では数多く存在する「紙に空けた穴が動く」という現象の元祖ともいえる「穴が動く」や、カードマジックをやっている人なら知っておいて損は無い小品「天使の左の手」などは、まさに泡坂さんならではの作品。
また、この二つは、実用性という面でも優れています。
「ジャンボ ペネトレーション」なども、シンプルながら面白いアイデアです。
しかし本書、マジックをやっている人間なら楽しめるのは確実ですが、そうでない人はどう感じるのか気になるところです。
もしかしたら、パズル本的な感じかもしれません。数理トリックやパズル的なトリックも多く収録されていますし。
基本的には、マジックに興味がある人向け。
興味深いトリックがいくつも収録されています。8点。
ちなみに、泡坂さんのマジックに興味がある方は、以下の本もお薦め。こちらのほうが、よりマニア向けで濃い内容です。レベルも高めですが、その分他では見られない使える技法が収録されています。
- 泡坂 妻夫
- 泡坂妻夫 マジックの世界
小川勝己 「眩暈を愛して夢を見よ」
- 小川 勝己
- 眩暈を愛して夢を見よ
- 失踪した元AV女優にして、高校時代の憧れの先輩・柏木美南を追いかけていた須山は、調査を進めるうちに彼女の悲愴な過去を知る。
- 一方、美南をなぶり、卑劣な虐めを繰り返していた関係者たちが、謎の言葉と共に次々と殺されていった。やがて事件は一応の解決を見るが、そこからが本当のミステリの幕開けだった―。
◆ ◆ ◆
文字通り、眩暈が味わえます。
これほどまでの酩酊感はなかなか味わえません。倉阪鬼一郎「十三の黒い椅子」あたりを読んだときに感じたものと似ているかも。
ネタバレなしで語れるような物語ではないことは確かです。いやそもそも、どこまでがネタバレなのかわからないのですが・・・・・・。
前半は普通の小説なのですが、問題は中盤以降。
単なるミステリから、急に変な方向へと話が転がっていきます。
少しずつ歪んで、崩れていく物語。
とはいえ、第二部まではまだある程度理解が及ぶ範疇。
確かに変な話ではあるものの、前例もある趣向だし、最後にはどうにか真っ当なオチがつくのだろうな、と思っていました。
それが、第三部は・・・・・・。
ただでさえ歪な物語がさらにひっくり返されて、ついていくだけで精一杯でした。しかも結局、ついていけなかったり。
衝撃的なトリックがいくつも明かされたりするのですが、驚くというよりむしろ、困乱するばかり。
くらくらします。
・・・・・・もう、ここまで来ると狂気。
ミステリとしてどうか、といったレベルではなく。この、何か一線を越えてしまったような感じがすばらしいです。
何が真相かなんて、全くわからないのですが。・・・・・・というよりも、何を信じればよいのかすらわからないので、果たして真相が導き出せるのかどうか、それもわからないのですが。
とりあえずラスト2ページを信頼するとすれば、この物語は一体なんだったんだ? ということになってしまいますが、それで良いのでしょうね。最終的にその極点に落ち着くのも、この眩暈そのもののような物語にはふさわしいように思えます。
読んでいて何箇所か不快に感じた部分もあるのですが、それも確信犯でしょうし。
おかげで、作品全体からにじみ出ている悪意や、混沌とした気持ち悪さは十分に感じることができました。また、そのような部分があるからこそ、ラストの崩壊がある意味美しくもあるわけで。
個人的に、ストーリーそのものが全く好みではなかったのが残念ですが、この眩暈が味わえただけで十分です。
「撓田村事件」のような真っ当な本格ミステリを読んだ後だけに、このような形式には驚かされましたが・・・・・・。
インパクト、という意味で言えば、本書のほうが圧倒的に上です。好き嫌いが真っ二つに分かれるのは確実ですが、苦手そうでなければ読んで損はしません。
少なくとも、記憶には残るでしょう。良い意味でも悪い意味でも。
この感覚は、体験しておく価値があります。8点。
ゆうきとも 「人はなぜ簡単に騙されるのか」
ゆうき とも
振り込め詐欺から超能力といったオカルトまで、身の周りにはびこるトリックの数々。客観的に眺めると、どれも騙されるなんておかしいのではと思えるような単純な手法ばかりだが、人は条件さえ整えば、案外簡単に騙されてしまうもの。
騙すという意味では同じ立場のプロマジシャンが、心理を操るメカニズムを明快に解き明かしてみせます―。
そして最後に仕掛けられた究極のマジック、必ずやあなたも騙されるはず。
◆ ◆ ◆
クロースアップ・マジックをやっている人なら知らない人はいない、というほど有名なマジシャン、ゆうきとも氏が書かれた本
。この人の創るマジックは、技法的にはそれほど難しくないながらも、賢い方法で最大限の効果を引き出しているものが多く、自分もよく演じさせていただいています。
そんなマジシャンが書いた本書、やはりマジックの話が多い・・・・・・というよりも、ほとんどマジックの話です。振り込め詐欺などの「騙し」も取り上げられてはいますが、基本はマジック。
なので、マジックに興味がある人ならば、興味深く読むことができるでしょう。
逆を言えば、マジックに全く興味が無い人には、あまりお薦めできないのですが。
基本的に、マジックの主に心理的な要素に重点をおいた本で、マジックの経験がある人もない人も、それなりに楽しめると思います。
ある程度マジックをやっていると、大抵この手の本を読んでも、そんなことはわかりきっている、といった内容ばかりなのですが、本書にはいくつも学ぶことがありました。さすがに、丁寧な人なだけあって、一般向けの本でも手を抜いていません。マジックの世界を少しのぞいてみたい、という人も、これなら十分満足できるでしょう。下手なタネあかし本より、よほど良い内容。マジックというものの「本質」に触れられています。
このような質の高い本は、もっと大勢の人に読んで貰いたいなー、と思ったりしました。
「騙し」やマジックに興味がある人は勿論、ミステリ好きな人も楽しめるでしょう。騙し、という意味では、ミステリもマジックも共通していますから。文中でも、泡坂さんや京極さんの文章が引用されています。
個人的に、得るものが多かった本。
演じる側としても、見る側としても、あたりまえのようなことに、改めて気づかされました。
やっぱりマジックって面白いですね。
7点。
ポール・アルテ 「赤い霧」
- ポール アルテ, Paul Halter, 平岡 敦
- 赤い霧
1887年英国。ブラックフィールド村に、『デイリー・テレグラフ』の記者と名乗る男が十年振りに帰郷する。昔、この村で起こった密室殺人事件を、正体を隠して調べ直そうというのだ。
十年前、娘の誕生日に手品を披露する予定だった父親が、カーテンで仕切られた密室状態の部屋で、何故か背中を刺されて死んでいた。当時の関係者の協力を得て事件を再調査するうちに新たな殺人事件が起こり…。
奇怪極まる密室殺人と犯罪史上最も悪名高い連続殺人を融合させ、“フランスのディクスン・カー”と評される著者が偏愛して止まない冒険小説大賞受賞作。
◆ ◆ ◆
ただの不可能犯罪者だと思っていたらやられます。
「一筋縄ではいかない」というのが、本書を形容するのに最も適した表現かもしれません。
冒頭から出てくるにもかかわらず、解決編まで隠された語り手の正体。
非常に特殊な二段構成。
真相が読めた、と思った瞬間には、すでに作者の罠にはまっていました。
見事に「意外な犯人」です。
これは読めませんでした・・・・・・。
読者が、ある程度先を読むことを見越して仕掛けられたミスリード。これには舌を巻くほかありません。
しかも二段階。
読了後、この特殊な構成にはこんな意味があったのか、と驚くこと間違いなしです。
その分、不可能犯罪部分のトリックは、メインのネタに比べるとやや地味で、あまり印象には残らないかも。
第一の密室殺人のトリックは、ある程度予想できましたし・・・・・・。
ただ、「不可能状況をミスリードに使う」という手法は、すばらしいです。ミステリ好きな人ほど引っかかりやすそう。
「第四の扉」ほどの過剰さは感じられませんでしたが、これはこれで、特殊な形式のミステリとして楽しめました。
第二部の意外性に関しては、あらすじその他で読めてしまう部分もありますが・・・・・・。それでも、”あの探偵”や”あの犯人”が登場するのは、なんとなくお得感があります。
ある程度ミステリを読みなれた人にオススメの一冊。
7点。
予想通り
・・・・・・見事にダウンしました。
一日じっとしているつもりでしたが、都合で仕方なく外出。
悪化しなかった分、助かりましたが・・・・・・。
もう外へ出る気力は残っていません。
まあ・・・・・・これで本を読む余裕が出来た、と楽観的に捉えれば良いかな。
・・・・・・というわけで、久々に一気読み状態です。
昨日、家に帰ってきてから一冊、これからもう一冊。
徹夜で読書は、むしろ逆効果というか、どう考えても不健康な気がしますが、気にしてはいけません。
しかし・・・・・・眠い。
京都へ
16日から今日までの四日間、友人たちと8人で京都へ旅行に行ってきました。
それはもう、大変に良い旅行だったので すが。
・・・・・・さすがに毎日歩きとおし喋り通し、夜中の2時3時まで(控えめに)騒いで早朝起床、なんて生活が三日も続いたので、疲れも眠気も酷すぎで。
眠ったら起き上がれそうにないような、そんな感じです。
しかも明日は終業式。
少しスケジュールがハードすぎるような気もするのですが。
そしてそのスケジュールを立てたのは自分たちなのですが。
計画性なさすぎ、といわれるのも頷けます。
とはいえ、過ぎたことはどうしようもないので。
・・・・・・もう寝ます。
恒川光太郎 「雷の季節の終わりに」
- 恒川 光太郎
- 雷の季節の終わりに
現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。
彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。
賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?
透明感あふれる筆致と、読者の魂をつかむ圧倒的な描写力。『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎、待望の受賞第一作。
◆ ◆ ◆
前作「夜市」が気に入ったので、発売直後に図書館に予約を入れたのですが・・・・・・。
かなりの待ち人数で、今になってようやく読めました。
やはり、前作が良かっただけに人気があるようです。
・・・・・・ただ、本書が前作ほど良いか、といわれると微妙なところ。
前半は物凄く良かったですし、雰囲気も好きだったのですが、後半の展開がなんとも・・・・・・。
茜の視点が入ってきてから話は一転、予想外の方向に転がっていきます。
微妙にリアルなところがまざってきたり、若干終わり方が唐突だったりと、色々な部分で勿体無く感じました。
話としてはきっちりオチもつけてある上、伏線もしっかり張ってあったりと、よく出来ているのですが。その方向性が、望んでいたものと少しずれていました。
このあたりは、好き嫌いが分かれるところだと思いますが。
個人的に、この人の作品の一番のよさは雰囲気だと思っているので、やはりそれは最後まで貫いてほしかったです。
無理にオチを作ろうとしなくても、この文章力と世界観があれば、自然に物語もついてくると思うのですが・・・・・・。
一応、前作が好きだった人は、本書もそれなりに楽しめると思います。
あとは後半部が好みに合うか合わないか。
全体的に非常に読みやすく、読後感も決して悪くないので、読んで損はないでしょう。
7点。
次作がどういったタイプの物語になるのかはわかりませんが、これから一体どういう方向に行くのか、楽しみだったり不安だったり。
長編なら、「風の小道」のような話の、ロングバージョンが読んでみたいです。
テストが終わったので
たまっていた本など、この二日間で色々読みました。
某作品(ミステリではありません)を読んで、
やっぱり叙述トリックはただ使えば良いというものではないな、と再確認。その本について、特に感想を書くつもりはありませんが。
最近、本当に叙述トリックが乱用されている気がします・・・・・・。
個人的に叙述トリックはとても大好きなので、なんだかなーと感じていたり。何か、新しい可能性を秘めた叙述トリック、というのはもう出てこないのでしょうか。
・・・・・・と、こんなことを考えているのも、また図書委員会の会誌に、いくつか寄稿させて頂くことになったからで。
「ショートショートでもエッセイでも書評でも何でもいい」とのことだったので、一度自分の中でまとめてみたかった、叙述トリック関係のことについて書こうかな、と。
・・・・・・正直、まだそんなことを語れるほど、ミステリに詳しくもないのですが。
初めて、お金を取って学校外の人に販売するような会誌(それも、それなりの部数)に原稿を載せていただくので、少し気合を入れて書いてみます。空回 りしないといいなあ・・・・・・。