勇嶺薫 「赤い夢の迷宮」
- 勇嶺 薫
- 赤い夢の迷宮
小学生だったあの頃、仲良し7人組のぼくらは「世の中には、やっていいことと、やっておもしろいことがある」と語る不思議な男・OGに心惹かれていた。だが「お化け屋敷」と呼ばれる彼の館で起きたある事件をきっかけに彼とは疎遠に。
それから25年、大人になったぼくらは突如OGに招かれ、再びあの館へ。しかし、そこで待ち受けていたのは悪夢のような殺人事件だった。
◆ ◆ ◆
児童向け推理小説作家のはやみねかおるさんが、大人向けの作品ということで勇嶺薫の名前で書いた作品。
勇嶺薫名義の作品は、短編でいくつか読んだことがあったのですが・・・・・・。
それらの作品群とは違い、本書は「児童向け」と呼べるようなミステリではありません。
文体などから、作者名が伏せられていても読めばはやみねさんの作品だとわかると思いますが、読み終える頃には「勇嶺薫」名義で発表した意味がわかるでしょう。
おそらく、はやみね作品に熱中していた小学生の頃に本書を読んでいたら、何らかのショックを受けたに違いありません。
「はやみね作品」とは異なり、人がバタバタと死にます。
これまでの作品でもほんの少しだけ見られた(それでも限りなく薄かった)悪意を、この一冊に凝縮したような・・・・・・。
何より、「子供が大人になる」現実を書いているところが、嫌すぎます。
さすがに現実でもここまで酷くはないだろう、とは思うのですが。
あえて誇張したような書き方をしているのでしょうか。これを子供が読んだら、夢を壊された、と本気で感じるかも。
ミステリとしてのトリックは、非常にはやみね作品らしいものです。
そのため、過去の作品を知っている人なら、序盤でほぼ確実に想像がついてしまいます。そうでなくても、読めやすい真相であることには変わりないでしょう。
ただ、本書の重点はそういったミステリ要素ではなく、この全体に漂うダークさなのではないか、と・・・・・・。
オチも含めて、この作品におけるミステリ的な部分は、”赤い夢”を描くためのあくまで一要素に過ぎなかったのではないか、と思いました。
いつもの「はやみね作品」を期待していると、予想以上の黒さに衝撃を受けることは確実ですが、「はやみね作品」の読者には是非お薦めしたい一作です。
ミステリーランドではありませんが、はやみね作品に馴染んでいる子供の頃に読めばトラウマになりうるミステリかも。
「大人向け」ではありますが、意外と子供のほうが、本書を読む価値はあるように思いました。
やはり自分は「はやみね作品」のほうが好みだ、と思いつつも、このようなはやみねかおるのダーク部分が読めたことには満足です。7点。
それにしても、勇嶺薫名義の作品がまた出ることはあるのでしょうか・・・・・・。
あと一作くらいは読んでみたい気もします。
渡辺浩弐 「デジタルな神様」
- 渡辺 浩弐
- デジタルな神様
| ガンの再発で死んだはずの僕の祖父が、じつは生きていた。…『ハウ・トゥ・不老不死』日常の完璧なサポート・ツール"アドバイザー"を奪われたとき、僕は…『デジタルな神様』わずか数年後の未来="1999年"の日常をシミュレートする仮想科学小説集。『1999年のゲーム・キッズ』完結巻。 |
◆ ◆ ◆
「1999年のゲーム・キッズ 」と同じテイストのショートショート集。
近未来を舞台にしているのですが、面白いのは、「現実が小説の世界に追いついてしまっている」ものがいくつかある点。
この本が発表された当時は「近未来SF」だったのが、今では現実のものとなってしまっている、あるいは現実になりつつあるという事実・・・・・・。
これは、リアルな恐怖です。
基本的には「1999」の延長上にある作品なので、まとめて読めば同じような感想になるのでしょうが・・・・・・。
少し時間を空けて読むと、違った読み方もできますね。
以前からこの作者の書くショートショートはどこか小林泰三らしいところがあるように感じていたのですが、本書では一層その感が強かったです。
特に、どれとは書きませんが、ある一編が・・・・・・。
テーマも書き方も非常に良く似ているように感じました。
「1999年」という特殊な時代を書いたこの小説、今読んでも――あるいは今読むからこそ、別の意味での面白さを発見できるような気がします。
皮肉ながらも、未来をかなり的確に予見していますね。
これをあと十年後くらいに読み返したら、そのときはどのような感想を抱くのでしょうか・・・・・・?
軽く読める、とはいえ、ただそれだけでは終わらない。優れたショートショート集だと思います。7点。
「1999年のゲーム・キッズ」とあわせて読むのがお薦め。
いつもながら
テスト終了。
・・・・・・いや、もう。これはどうしようもないなあ。
忘れようとしても、数日後には強制的に思い出させられるのですが。
そろそろ本気でやらないと・・・・・・。
といいつつも、結局今日はサークルだったり本屋めぐりだったりで、色々遊んで帰ってきました。
一応明日は休みなので、久々に図書館にでも行ってきます。
久住四季 「トリックスターズC PART1&2」
(PART!)
城翠大学学園祭の最終日、城翠祭実行委員会本部に 「魔術師からの挑戦状」 が届けられた。
「我は、学園祭開催場所である、城翠大宮古キャンパスから “学園祭の成功に不可欠なあるもの” を奪う」。
はたして犯人の目的と、その正体は……!?
4月の事件からのすべての決着をつけるべく、魔術師たちの “最後” の物語が始まった!
(PART2)
ついに現れる “魔術師の大敵” 第三室長フィラメル・スピノーヴァ。
彼もまた、クロウリーの影を追い事件へと介入していく。
スピノーヴァに底知れぬ脅威を感じた周は、事件を自分が望む形へ解決しようと動く。
かくして、いかに相手より早く真相に到達するか、二人の緊迫の攻防が始まった……。
捜査側を嘲笑うかのように、次々と置かれていく犯行声明。
迷宮化していく犯人像、その動機。 犯人は本当にクロウリーなのか……!?
その真相に到達したとき、魔術師の “最後” の物語は始まる。
トリックスターズシリーズ、ついに完結!
◆ ◆ ◆
学園祭最終日、トリックスターズシリーズの完結編です。
最後にふさわしく、PART1と2に分かれ、シリーズ中最長、また登場人物も一番多い作品です。
PART1を読んだ時点では、これまでのシリーズのような、何かが”仕掛けられている”雰囲気がそれほどなく、一体どういう完結を迎えるのだろう・・・・・? と楽しみでありつつも若干不安も残っていたのですが。
最後は綺麗にまとめてくれました。
大抵の人なら勘で犯人はわかると思うのですが、論理的にそこまでたどり着くのは難しいでしょう。
特に大きなトリックが仕掛けてあるといったことは無いのですが、その分細部に多くの伏線が張ってあります。
また、解決に至るまでにいくつものどんでん返しが仕掛けてあって、飽きることはありません。
・・・・・・とはいえ、ミステリ部分以上に力が入っているのは勿論”完結編”としてのストーリーのほう。
これまでは特に意識することはなかったのですが、本作では恋愛要素が前面に押し出されていますね。
加えて”学園祭”が舞台と言うこともあってか、青春小説的な感じもします。
そして・・・・・・ラスト。
ある意味では予定調和ともいえるような終わり方でしたが・・・・・・。
良いシリーズだったなあ、と改めて思い起こさせてくれました。
余韻が残る良いラストでした。
寂しさも感じますが、どうやらまだ周たちの話は続く(?)ようなので、次のシリーズを楽しみに待っています。
しかも、あとがきのクロスワードを解くと、気になる単語が・・・・・・?
時間もの好きとしては、これは絶対に見逃せないですね。
また、表紙で予想がついた方もいると思いますが・・・・・・。
”あの人”のイラストがついに、というシリーズ読者として嬉しいことも。
今までシリーズを読んできた人なら絶対に読むべき作品。8点。
12RIVEN再開!
学園祭の反動で押し寄せてきた大量の宿題&テスト勉強に押し流されそうになっている日々。
おかげで当分、PCもそれほど使っていなかったのですが。
・・・・・・気がついたら。
12RIVENの公式ホームページ がリニューアルされてる!
・・・・・・まさかこのまま消えてしまうのか? と一時期心配になった作品ですが・・・・・・。
ようやく再び動き出してくれて、本当に嬉しい限りです。
正直言えば、中澤さんが関わっていなかったり、監督が変更になっていたりと、いくつか心配な部分もあるのですが、
打越さんならきっと傑作を創ってくれるはず。
いくら期待しても期待しすぎることはない、と信じています。
折角なので、過去に書いた12RIVEN関連の記事(といっても二つだけ)を。
新しく加わった情報は余り無いですが、<インテグラル>というシステムは興味深いですね。
素数シリーズのネタバレなので伏字にしますが、何より気になるのは、
E17、R11でほぼ完璧ともいえるような、「プレイヤー」とゲーム世界の結びつきを達成しているにも関わらず、
それを超えるようなアイデアは果たして存在するのか?
という点。
・・・・・・以前は毎日のように、E17、R11を超える「仕掛け」の可能性を検討していましたが・・・・・・。
結局一つも思いつきませんでした。
それ故、今回の12RIVENには非常に期待しています。「そういった類の仕掛け」が存在することが、今回の情報で明かされたわけですし。
公式HPは毎週月曜日更新。
まだまだ情報は少ないので、これからの発表を楽しみにしています。
今年中に発売されるといいなあ。
終わったのに
学園祭が終わりました。
片付けも、打ち上げも終わりました。
そして、いつもどおりの日常。
・・・・・・なのですが、やはりどうしても後を引いてしまうというか。
完全に抜け出せていないなあ。
もうすぐ中間テストだというのに、困ったものです。
ちなみに打ち上げでは・・・・・・。
徹夜でジョジョ四部を読みきりました。
非常に面白かったです。
今は五部にとりかかったところ。
久々ですが、これは・・・・・・ハマるなあ。
学園祭大成功!
去年の学園祭が終わってから、この日にいたるまで一年間。
・・・・・・長い間準備してきた、学園祭が終わりました。
この二 日間、ひたすらマジック。
・・・・・・誰もが常に全力で。
どうしようもないくらいに、全員が頑張って。
物凄い大盛況でした。
・・・・・・いや、これは、本当に。
ただただ嬉しいです。
おそらく、今が最高潮。
この一瞬は、きっといつまでも忘れないだろうな、という確信もあって。
たまには、これくらい「いかにも」な青春もいいじゃないか、と。
今はただ、感謝の気持ちで一杯です。
三津田信三 「首無の如き祟るもの」
- 三津田 信三
- 首無の如き祟るもの
奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。
二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。
その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。
犯人は現場から消えた長寿郎なのか?
しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。
一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、いずれも首無し死体で見つかる。
古く伝わる淡首様の祟りなのか、それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか──。
◆ ◆ ◆
傑作。
なにやら凄そうだ、ということで、久々に新刊でハードカバーを買ったのですが、その価値は十分にありました。
「厭魅の如き憑くもの 」、「凶鳥の如き忌むもの 」に続く刀城言耶シリーズ三作目。
ミステリとホラーの融合を果たしているこのシリーズですが、本書はホラー要素は薄めで、その分本格ミステリとして飛びぬけて優れています。
タイトルからもわかるように、本書で扱われるのは首無し殺人。
首無し殺人といえば、いくつか思い浮かべるパターン――死体のすり替えなど――がありますが、本書の場合、それらを念頭において読んだとしても、そう簡単には真相は見抜けないでしょう。
終盤において「首の無い死体の分類」が行われますが、それを一つ一つ検証していったとしても、「ある事実」に気づかない限りは解けません。この首切りの動機は盲点でした。
しかも「分類」が行われること自体にも意味があったり・・・・・・・。驚かずにはいられません。
また、この「たった一つのある事実」ですが、それ自体は非常にシンプルであるにも関わらず、それが明かされた瞬間、あらゆる謎が次々と解明されていきます。
確かに、単純なトリックなのですが。
・・・・・・・一見複雑に絡み合ってみえる、各容疑者のアリバイや完璧な密室、首切りの理由などといった「謎」が。
全て、この「ある事実」から、連鎖的に解けるのです。
・・・・・・この趣向には舌を巻きました。巧すぎます。
勿論、「ある事実」を含め、これらの謎を解く情報は、全部読者の前に提示されており、きわめてフェアです。
これだけでも素晴らしいのですが、密室トリック等、事件の真相がほとんど解決した時点で、この作品に張り巡らされた「更なる仕掛け」が姿をあらわします。
本書がメタ的な構成になっており、また、どことなく某有名作を思わせるような記述があることから、何となく予想はついていた・・・・・・・と、思っていたのですが。
「思った通り」と思った次の瞬間に食らわされる大どんでん返し。
3割くらいは予想できても、正直これは・・・・・・・。予想外。
そして・・・・・・・最後の最後に待ち構えた、ミステリとホラーの融合を達成する衝撃的などんでん返し。
ここに来て、最早「やられた!」と言うことしか出来ませんでした。
それまでなら、まだ少しだけでも(本当にほんの少しですが)、「予想できた可能性」ではあったのですが。
まさか、ここまでひっくり返してくるとは。
完敗です。
大きな衝撃を受けると共に、思わずぞっとしてしまいました。
完璧に、この作品の構成を生かしきっています。
さらに本書は、これまでの二作と比べて、読みやすさが大幅にアップしています。
それだけではなく、建物の見取り図が頭の中で容易に想像できる!
そんなの当たり前では、と言われそうですが、この点は非常に重要です。今までの二作で、一番大きなマイナス点が「重要な舞台の情景描写が極端に分かりにくいこと」でした。それが改善されたこの作品は、完璧といっても良いのではないでしょうか。
意外な犯人、トリック、首切りの動機。繰り返されるどんでん返し。
これはもう、あちらこちらで囁かれているように、今年のベストで間違いないでしょう。
ホラー要素が薄くなったのは若干不満ですが、ラストのトリックは十分素晴らしかったですし・・・・・・・。
より完璧にミステリとホラーの融合を達成した「厭魅」も捨てがたいのですが、ミステリ的には文句無しに本書がシリーズ最高傑作だと思います。
ここ一年くらいに読んだミステリの中でもトップクラス。
高めの9点。
一応、シリーズとはいえ独立しているのでこれだけ読んでも問題はないのですが、前二作のどちらかを読んでおいたほうが、より楽しめるでしょう。
このシリーズは、続編が出たら買い決定です。
今から次作が楽しみで仕方がありません。
追記;
上記感想でさらっと書いてしまいましたが、一日経って改めて思い返すと、凄いなーと思わせられるところが一点あったので、追加で感想を。微妙にネタバレなので、その部分は伏字に。
後半の犯人当てに関して、幕間(四)におけるダミーの真相も、さらっと数ページで流しているわりには、かなり面白い趣向だと思います。
普通、これを本気で行ったら、アンフェアといわれそうなものですが。
この、「でも、これは小説じゃありませんか」という破壊力のある一言には唸らせられました。これでは多くの人が納得しないかもしれませんが、個人的にはありだなあ、と。
無理があるのは確かですが、これはこれで、強烈な真相でしょう。上の台詞は、忘れられそうにありません。
さらに、このダミーの真相を含め、解決編までもが伏線となってくる・・・・・・・という所まで来ると、この作者は只者ではないな、と思わせられますね。
・・・・・・・・いや、本当。凄い人が出てきたなあ。
城平京・木村有里 「ヴァンパイア十字界 9巻」(漫画)
- 城平 京, 木村 有里
- ヴァンパイア十字界 9 (9)
8巻以前の感想はこちら。
個人的に一押しのミステリ漫画、「ヴァンパイア十字界」の最終巻です。
8巻までは繰り返されるどんでん返しと伏線回収が醍醐味でしたが、さすがにこの巻では、これ以上ひっくり返すこともなく。
おそらくは、最初から用意されていたラストに向かって話が進んでいきます。
全ての真実が明らかにされた今、ヴァンパイア王と黒鳥の戦いは、どのような決着を迎えるのか。
・・・・・・ほぼ予想通りの結末でした。
一つだけ予想外のことがありましたが、中盤のネタバレになるので・・・・・・・「弱すぎ!」とだけ言っておきます。
「途中の展開は全く読めないが、ラストだけは1巻で予想できる」と友人が言っていましたが・・・・・・。そのとおりかも。
予定調和に収まったなー、と。
正直、普通すぎて物足りないところはあるのですが、綺麗な終わり方です。最後の最後までロマンチック。
どうにかこうにか、宇宙規模まで広がっていた話をしっかり収束させてはいたので、その点では安心しました。
ちなみに、書き下ろしのおまけでタイトルの意味が語られていますが、これはいくらなんでも後付けでは・・・・・・。
完結した後で全体を振り返ってみると、
やたらと(それほど必要性の無い)キャラクターが多かったり、展開も滅茶苦茶で、作品としてのバランスは微妙ですが、
それでも、読んでいて面白い作品、という事には変わりないでしょう。
1、2巻で「ありきたりなファンタジー」と思わせておいて3巻でどんでん返し、4巻で絶対予測不可能な展開に持っていき、7、8巻で一気に伏線回収&どんでん返しの連続。
繰り返し書いていますが、本当に先が読めない漫画です。
最初からリアルタイムで追いたかった、と思わせられるくらい。
ミステリ好きなら読んで損は無いです。多少粗くてもお薦めしたくなるような、そんな魅力をもった作品。
・・・・・・ただ、これも繰り返し書いていますが、最初のほうははっきり言って面白くないので、これから読む方は最低3巻まではまとめて読んでください。
序盤はあくまで、伏線を張っている段階に過ぎません。
完結してもそれほど話題にならなかった本作ですが、隠れた傑作です。
未読の方は、騙されたと思って読んでみてください。
ミステリ漫画の中でも、特にお薦めです。

