映画に登場するレコードプレーヤー ~ ① 『ジョン・ウィック: パラベラム』
レコードのリバイバルは銀幕でも感じられる。 シチュエーションを演出する便利なアイテムとして、再び定番になりつつあるようだ。シーンに合った音楽を流したいとき、ただBGMとして重ねるより、登場人物がその手でレコードに針を落とす方が、はるかに視覚に訴える。 最近の映画で感じるのは、レコードプレーヤーを趣味の良いもの、生活や心にゆとりがある人物の部屋にあるべきものと扱っている点だ。これはレコードが生活雑貨だった70年代や80年代と大きく違う。今やレコードを聴くことは、それ自体が生活水準の高さを暗示する。部屋にレコードが飾ってある、レコードプレーヤーがあるのは「映え」るのだ。 人気シリーズの第3作、『ジョン・ウィック: パラベラム』が典型的な例だ。2019年に公開された、レコード復権後の映画らしく、レコードプレーヤーが贅沢の象徴として登場する。 以下、ネタバレを含むため、未見の方は注意! そのシーンとは、終盤にNYCのコンチネンタル・ホテルが首席連合の暗殺部隊に襲撃されるところだ。 彼らの目的は、そこにいるジョン・ウィックと支配人ウィンストンを殺害すること。この恐るべき精鋭部隊を、大量の銃器を手にしたジョンとコンシェルジュのシャロンが迎え撃つなか、ウィンストンは銀行の金庫室のような分厚い扉で守られたラウンジで1人状況を静観する。ブランデーを片手に、悠々とレコードをかけるのだ。 さあ、お高そうなプレーヤーが出てきたぞ。 ちなみに、このシーンのトーンアームの動きはちょっと不思議だ。ヘッドシェルを盤上に移動して指を離すと、そのままゆっくりアームが降りていく。レバーを下げる動作が省かれてるのだ。演出効果を優先したのだろうが、アナログ馬鹿の目はごまかせない。 この時点ではメーカー、モデルを断定できるほど全体が見えてないが、そのチャンスはまもなく訪れる。えっ、もう分かった? 弾を撃ち尽くしていったん退却したジョンとシャロンを、ウィンストンがこんな具合に迎えるシーンだ。 引きの映像なので、わかりにくい。ちょっと拡大してみよう。 間違えようがない。これはMcIntosh。プリとパワーアンプもある。完璧なチョイスだ。さすがはニューヨークの5つ星ホテル。 アナログプレーヤー McIntosh MT10 (2,475,000円(税込) ) プリアンプ McIntosh C49 (913,000円(税込) ) パワーアンプ McIntosh MC152 (924,000円(税込) ) 総額4,312,000円。ドヒー!! ウィンストンが選んだ曲は、ヴィヴァルディの「四季」から「冬」。状況の厳しさを感じて、これを選んだ、と。 まさか、この部屋でも銃撃や乱闘が…とひやひやするが、ご安心を。こんな高価なハイエンドオーディオをブチ壊すような映画ではない。と言いたいが、前作で貴重なフォード・マスタングのファストバックを1台スクラップにしてたな…。 レコードプレーヤーが壊れるとか、犬が死ぬとか、映画で絶対見たくないねえ。ウンウン