ゴルフ直線打法 -43ページ目

リリースとは?

ゴルフの書物を読むと、インパクトに向けての動きとして、リリース(release;解放)という言葉が目に入ります。

前回の「「核心打法」の核心」(07-07-31)では、
尻の動きでグリップの引き下ろし、足の踏ん張りで腕を伸ばしてヒット
と書いてあります。

この動きの表現に従えば、グリップを引き下ろすダウンの動きで、インパクトでクラブを振る体の動きのエネルギーを蓄え、これを解放してインパクトの動きを作るのがリリース、と受け取るとこができます。尻の動きで実行するグリップの引き下ろしが、インパクトの腕の振りのエネルギーを蓄え、足(実は脚)の踏ん張りでリリースに入ることになります。

こうなると、ダウンの急激なグリップの引き下ろしは、腕の振り始めの動きではなく、腰と肩の間の捻れを増加させ、インパクトの動きのエネルギーを蓄える動作であることが分かります。ということは、これは腰に対して肩が遅れる動き、すなわち「上体を右に回す」動きになります。これが「上体を右に回す」動きの実態だったのです。

この動きの実現には、足首と膝の角度の保持が決定的に重要です。あらためて「膝が伸びると「螺旋」が消える」(07-07-23))を見直す必要があります。

「核心打法」の核心

肩と腕の「魔法の動き」が生み出す「核心打法」の要点を纏めてみます。

一貫した肩と腕の「魔法の動き」の完全実行が基本条件。これを以下の要領で実行する。
1) 肩と腕の「魔法の動き」でバックスイングを実行。
2) 尻の動きでグリップの引き下ろし。
3) 足の踏ん張りで腕を伸ばしてヒット。

右腕を内側に回し、左腕を外側に回す、肩と腕の「魔法の動き」については、これまで「初心忘るべからず」の見出しで繰り返し議論してあります。(例えば「初心忘るべからず:両肩の「魔法の動き」」(07-04-29))

肩と腕の「魔法の動き」の要点は、腕の動きを体に繋ぐ「右肩甲骨上部を背骨に向けて引き、左肩甲骨下側を前に引き出す」形の肩の動きです。漠然と上体を右に回すイメージで深いトップへの動きを実行すると、逆に右肩甲骨の下側を後ろ、左肩甲骨の上側を前に引く「反魔法の動き」が現れ、肩が右に回るだけで腰と腕の間の繋がりは緩みます。

この動きを確認しながら、動きの各段階で「魔法の動き」の上腕と前腕の動きを確認して下さい。


ダフリ対策:下降打で打つ

地面の上にあるボールをすっきり打つには、ヘッドが下向きに動いている中にボールを打たなくてはなりません。いわゆる下降打(ディセンディング・ブロー;descending blow)で打つわけです。

この動きを確認するには、これまでに書いてきたダウンスイングの動きをゆっくり作ってみます。肩と腕の「魔法の動き」が適切にできれば、クラブと腕との繋がりの関係から、ヘッドの左への直線的な動きの中で最低点が現れます。この点がボールの先に来るように、体の構えと動きを固めるのです。

ボールの手前で最低点が現れると、そこでヘッドが地面を打ちます。これがダフリの原因です。インパクト圏のヘッドの動きをゆっくり確認して、体と動きの作り方を固める必要があります。

強く打つ右腕の動き

右利きの場合、クラブを振ってボールを強く打つには、利き腕の右腕を使うのは当然のことです。ところが、腕を振ろうとしても、脚腰背骨の踏ん張りがなくては重いクラブは振れません。インパクトの動きは瞬間的なものですから、この場合体の安定を保つ背骨の働きが必要なことは明らかです。

背骨の動きが体の姿勢を保つ反射的な働きをすることは、体を大きく動かす動作をすればすぐ分かります。この動きを上手く利用しなくては、瞬間的なインパクトの腕の振りを強力に実現することは不可能です。ここで重要なことは、足が地球を掴んでいなくてはならないということで、これを足の「螺旋」が実現します。

体の安定を保つ反射的な動きは、体の重心の移動を押さえるように働く筈です。そうでなければ体がよろけるからです。このことから、しっかりしたスイングでは、インパクトで体の体勢が固定されることが理解できます。(体が動きっぱなしになると、振り出される腕とクラブの動きに逆らって体が後ろに戻る、いわゆる明治の大砲型の動きが出ます)

したがって、右腕を強く振るには、インパクトの瞬間に右腕が強く使えるように背骨を固める必要があります。これを確認するために右腕でクラブを持って強く引き下ろす動作を実行してみると、「上体を右に回す」形に脚腰背骨が踏ん張り、右腕の動きは腕が内側に回る「魔法型」になります。ボールを追いかける形の上体の動きにはなりません。

この右腕の動きに対応する左腕の動きは、腕が外側に回る「魔法型」の動きしかあり得ません。ろころが、この動きは右腕の強力な動きには及びません。そこで、左腕の動きを崩さないように注意しながら、脚腰背骨の踏ん張りで右腕を振れば、腕を振る方向と反対向きに「上体を右に回す」動きが現れ、力強いインパクトが実現することになります。

念のため、左手でクラブを握り、ヘッドをボールに向けて強く振ると、左腕が内側に回る動きが現れ、上体が左に回ります。これが「反魔法型」のスイングの動きです。

強力な腕の振りは、腰の辺りと上腕の上端前面を結ぶ広背筋の働きで実現します。背中の筋群には、体のバランスを捉えるセンサー(固有感覚受容器)の働きがあることが知られています。自分では自覚しなくても、腕を強く大きく振る動きが、このセンサーの働きに密接に関係するであろうことは想像できます。どちらの腕を振るかで背中の意識が変わる筈です。

バランスを意識して「魔法型」の動きのトレーニング(07-07-26)を実行し、この辺りを検討してみると面白いかもしれません。

インサイド・アウトの動きの仕組み

「反魔法型」の動きで、グリップの動きがアウトサイド・インになる仕組みについては既に見てあります(「反魔法型」の特徴的な動き(07-07-25))。腕の動きの構造から「魔法型」では逆にインサイド・アウトになることが予想されます。

インサイド・アウトというのは、ボールを通る目標線の内側から外側に向けてヘッドが近づくイメージを表現するもので、ホーガンの「モダン・ゴルフ」では、ダウンスイング面の前縁が目標の右を指すということで、このイメージを暗示しています。実際に、内側から外に向けて打つ動き(hit from inside out)を取り上げ、その重要性を具体的に強調しています(原著87頁)。

しかし、この表現に不安を感じる人もいます。本当にインサイドから外向きにクラブを振ると、目標方向には打てないのではないか、と感じるわけです。こうなると、イン・ツー・イン(内側から行き、内側に戻る)などという説明が欲しくなるわけです。

実際は、インサイド・アウトの動きが「正しく」実行されると、目標線上を直線的にヘッドが引かれる動きが現れるのです。その仕組みは、インパクトに入る直前に現れる、右腕を内側、左腕を外側に回す肩と腕の「魔法の動き」が実現するのです。

この動きは、ダウンの終期に実行する、クラブ・ヘッドのソールを地面に向けて押す右腕の動きで生まれます。これを確認するには、両手をグリップの形に握り合わせて、「魔法型」の動きのトレーニング(07-07-26)の要領で、右足の「螺旋」に続く左足の「螺旋」の動きで、右腕を引き伸ばしてみればよいのです。

この動きをゆっくり実行しながらフリップの動きを眺めると、右グリップが内側に回りながら右腕が伸び、その終期に、左グリップが外側に回りながらグリップ全体が左へ直線的に引かれる動きが現れるのが観察できます。この左前腕の動きが、ホーガンの重視した左前腕回外の動きで、この動きがなくてはインパクト圏の直線的なヘッドの引きの動きは得られないのです。

しかし今回の実験で明瞭になったことは、左脚の踏ん張りで実現する、地面を突くような右グリップの動きがなくては、この強力な直線的動きが得られないということです。ホーガンは元来左利きであったということですから、左腕の動きに意識が集中し、右腕の直線的な突きの動きは詳しく説明しなかったのかも知れません。

右腕使いの名手戸田藤一郎プロのパンチショットの話(「魔法型」の左サイドの動きを確認(07-07-19))と併せて見れば、今回の右グリップの動きの重要性が分かります。

「魔法型」の動きのトレーニング

「魔法型」の特徴的な動きは、インパクトの力を発生させる時の体全体の動きです。この動きの確認は簡単で、これまでに繰り返し登場して来た、机の脚などの抵抗を利用してヘッドを直線的に左に引く力強い動きを作るトレーニングを実行すればよいのです。

まずクラブを左手で握り、ボールの位置に机の脚を置き、ソールを床に着けてヘッドを左に引きます。この動きを実行しながら次第に力を加えると、両足の「螺旋」の動きが強まって行きます。右脚の踏ん張りが大切で、右脚が脱力すると動きが壊れてしまいます。

この場合、力が入ると右踵が僅かに浮き上がるようにして右の「螺旋」が頑張ります。もちろん左脚の踏ん張りも大切ですが、左脚が浮き上がっても右脚が上手く踏ん張ればヘッドは引けます。とにかく、右脚全体の緊張が消えると、左腕を左へ引く体の動きは消えてしまいます。

次ぎに右手でクラブを握り、同じようにヘッドを左に引く動きを作ってみます。これは左脚の踏ん張りで引きます。この場合、ヘッドを直接左に引こうとすると、左足の「螺旋」の動きが消えて足先の外側に力がかかる「回転」の動きが現れ、前腕が外側に回ってヘッドが外を向きます。これを避けるにはヘッドのソールを床に押しつけるように力を加えればよいことが分かります。

結局インパクトでは、左腕は左へ、右腕は下へと力が入るように左右の脚が踏ん張るわけです。どちらか一方の足の「螺旋」が壊れるとこの動きは実現しません。

まず右脚の踏ん張りでダウンに入り、左脚の踏ん張りでインパクトに入るのが実際のダウンスイングの動きで、机の脚での実験でもこれでしっかりヘッドが左に引けることが分かります。これに対して始めに左足の踏ん張りに入ると、「反魔法型」の動きが現れます。(バックスイングでは順序が逆転し、左足、右足の順に「螺旋」が踏ん張って上体の動きに逆らいます)

インパクトでヘッドを左に引く動きを、肩の「魔法の動き」が現れるように意識して作ってみると、「上体が右に回る」感覚の動きが確認できます。これがインパクトの直線的なヘッドの引きを、上下の動きも含めて安定な形で実現するわけです。以上の「魔法型」の動きの特徴を意識してヘッドを引っ張るトレーニングを実行すれば、体中の筋群の訓練にもなるわけです。

「反魔法型」の特徴的な動き

古人曰く、「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」と。そこで、あらためて「反魔法型」のスイングの特徴を眺めてみることにします。「反魔法型」の特徴は、右側から左後ろに向けて振り込む、いわゆるアウトサイド・イン型の動きです。

この動きは、「左は上下、右は左右」という「反魔法型」の基本的な腕の使い方が生み出すものです。右の遠くから左へ振り出される右腕は、腕の長さの制約から、体の左で後ろ向きに引き込まれます。これは実際に右腕を一杯に右に振り、そこから両腕を引き戻して左へ振り切ってみれば簡単に確認できます。

この右腕の動きに左手をグリップの形で繋ぐと、右への動きで左肩が前に引き出され、左への動きで一旦左脇下に左手が引き込まれてから左外側に引かれます。これらの左右の腕の動きの特徴は、インパクト時点で肘の内側の窪みが前を向くように、左肩が後ろ、右肩が前に引かれ、両腕が体に引きつけられることです。この形は実際のインパクト後の体勢にも明瞭に現れます。

グリップを固めてこのインパクトの振り抜きの動きを作ってみると、インパクト時点で右前腕回外(外側回り)、左前腕回内(内側回り)の動きが現れます。これは、ベン・ホーガンが「モダン・ゴルフ」で、いろいろ悪いことを引き起こすと指摘している動きです(原著101頁)。快い感覚(sweet feeling)を得るチャンスがなくなるというのです。

何故この形の動きに入ってしまうのか。これは前回に指摘したように、腰を回して腕を引っ張る動きが納得しやすいからです。ここから、この動きをよい動きと考える先入観念が発生します。これに対し、左肩も含めて「上体を右に回す」意識で腕を振り切ってみると、全く違う動きが現れることが理解できる筈です。

肩と腰の位置関係

「反魔法型」は腰の動きで腕を引き、「魔法型」は背骨の踏ん張りで腕を伸ばして振ります。これは腕を振る主な筋である、広背筋の使い方の違いによるものです。

腰の先行する動きで腕を引くというのは、分かり易い動きです。腕をぶら下げて置いて、腰の動きで振り回してみればすぐ納得できます。これに対して、背骨の踏ん張りで腕を伸ばして振るという動きは直感的には納得し難い動きです。これを実行するには、腰と肩の間の距離を引き伸ばす必要があります。

これがこれまで繰り返し登場してきた、「上体を右に回す」動きです。この動きの内容は、ダウンで左に回したくなる肩の動きを、逆に引き止める動きということになります。腰の動きで腕を振ることになれると、これは馴染みにくい動きになるわけです。

こんな面倒な動きはご免だと思われるかもしれませんが、両足の「螺旋」の動きで踏ん張れば、ごく自然にこの動きが現れます。これに対して、体重が足の外側に掛かると、「螺旋」の変わりに足の「回転」の動きが現れて、肩と腕が「反魔法型」の動きに入ります。

肩と腰の位置関係が腕の振り方を決めることを理解しない限り、スイングの構造は見えてこないわけです。簡単なことですから、確認してみる価値があります。

膝が伸びると「螺旋」が消える

足の「螺旋」の動きは、踵を軸に足先を内側に回す動きです。この動きが、バックやダウンの要所要所で現れることは既に繰り返し見てきました。

ここで注意深い人は疑問を感じるかも知れません。真っ直ぐ立ってみると、脚(下腿)が回る動きの中心は、踵より足の中央部に近い所にあるように見えるのです。足の中央部で体重を受けると考えると、確かに脚の回転の中心は踵より前になりそうなります。

ところがここでアドレスの構えのように、膝に角度を持たせて下腿を前傾させてみると、下腿を真っ直ぐ伸ばした所に踵が来ます。こうなると、足を回転させる下腿の動きは踵を中心にする形になります。これは大まかな見方ですが、実際に横から眺めてみると、確かにこのようになるのが確認できます。

そこで体の動きの書物を開いてみると、足の内側三本の指を踵の骨に繋ぐ距骨(きょこつ)という骨が目に入ります。この距骨と下腿の骨で足関節を形成しているわけですが、書物の説明に従うと、足に対して脛が前傾した体勢では関節が引き締まり、逆になると緩むということが分かります。

実際に試してみると、アドレスの構えで確かに「螺旋」の働きが確認できますが、膝が伸びると「螺旋」が消え、足の前後の軸回りに右に回る「回転」の動き(「「深いトップ」の重要性再論」(07-06-09))が現れます。これは外側二本の指を踵に結ぶ骨に荷重が移動すると考えれば納得できます。

ここで重要な事実は、「螺旋」が消える瞬間に、グリップに「反魔法の動き」が現れると言うことです。一旦「回転」の動きに入ると、「深いトップ」に入れる動きやインパクトの動きが不安定になり、インパクトではグリップが右に回る動きが現れます。これで、ダフリもトップも「自由に」現れるようになります。

「螺旋」は体の動きを地球に繋ぐ要(かなめ)です。これが腕の「魔法の動き」に繋がります。この繋がりを確保する背骨の動きは「阿吽(あうん)」の呼吸が固めます(「あうん」の呼吸)(07-07-16))。これで「核心打法」が実現するわけです。膝が伸びて「螺旋」が壊れれば、「核心打法」のスイングは崩壊します。

バックの最後で右脚が伸び、インパクトで左脚が伸びる人をしばしば見掛けます。安定したショットを目指すなら、バックからインパクトの振り抜き(引き抜き)まで、一貫して膝の角度を保つことが不可欠です。

ホーガンのスイング面

ホーガンはインパクト圏での左前腕の回外(supination:外側回し)の動きの重要性を強調しています。この動きは「魔法の動き」の特徴的なものです。このことから、ホーガンが「モダン・ゴルフ」で展開しているのは、本質的には「魔法型」のスイングであることが分かります。

ところが、インターネット上で見られるホーガンのダウンスイングの動きの説明では、ダウンでフェースが開く「反魔法の動き」(左前腕回内、右前腕回外)に入る様子を繰り返し示します。ホーガンの資料を詳しく検討したレッドベターの解説でも、この動きが写真入りで説明されています(David Leadbetter THE FUNDAMENTALS OF HOGAN Doubleday 2000 p.92)。

この動きの説明の写真では、ダウンで右踵が上がっています。ところが、同じ書物の別の頁では、ホーガンは右脚をできる限り長く地面に着けていたと、図入りで書かれているのです(p.105)。これは腰の回転を止める「魔法型」の動きです。図で見る限りこの場合はアイアンを振っているように見えます。前の場合は明らかにドライバーです。

更にインターネット上の動画を検討すると、格子縞の背景の前でドライバーを振る姿が見つかりました。これを見るとバックで頭が大きく右脚方向に移動し、ダウンの初期に引き戻されています。これはスイングを改造する前の画像らしく、ドライバーを振る若い頃の別の写真でも、同様にダウンのの頭の左移動が見られます。

これでホーガンのドライバーを振る時の癖が明瞭になりました。腰を左に引く動きでダウンをスタ-トしていたのです。これは「モダン・ゴルフ」のダウンの説明とも一致します。斜めに傾くダウンスイング面の仕組みは、この腰の平行移動が生んでいたのです。

それでは、「魔法型」の純粋な実現である「核心打法」よりも、「魔法型」に腰の横移動を加える打法の方が良いのでしょうか。否(いな:ノー)です。脚腰の生み出すエネルギーが体の平行移動に費やされてしまい、上下の動きによる強力なダウンが実現しなくなるからです。同時に発生する腰の回転が方向性の確保も難しくします。

実際にホーガンがフックに悩まされた話は、レッドベターの解説にも書かれています。一方タイガー・ウッヅの動画では、頭の上下の動きに比べ、左右の動きは極めて小さくなっています。これも「魔法型」の優位性を示すものと思われます。それにしても、提唱者ホーガンも構造を明確に把握できなかったスイング面とは何でしょう。分かり難い曖昧なイメージのように思われます。