根拠発掘屋
「あの子だった。」
昨年、
鉢盛山登山マラソンに、
初めて参加しました。
大会当日の朝、
地元で蕎麦屋を営む友人に、
メッセージを送りました。
すると、
レース中に、
返信が届いていました。
「実はうちの長男も、
走ってるんです!」
私は、
まだ見ていませんでした。
⸻
レース中。
一人の若いランナーと、
すれ違いました。
がっしりした、
高校生くらいの男の子でした。
大きな声で、
礼儀正しく、
挨拶をしていきました。
「感じのいい子だな。」
そう思いました。
⸻
この大会は、
鉢盛山の山頂で、
折り返します。
山頂から戻ってきた彼と、
もう一度、
すれ違いました。
その時も、
大きな声で、
きちんと挨拶をしていきました。
「やっぱり、
感じのいい子だな。」
でも、
誰なのかは、
分かっていませんでした。
⸻
ゴール後。
友人から届いていた、
メッセージを見ました。
「実はうちの長男も、
走ってるんです!」
そうなんだ。
何キロだろう。
リザルトを、
調べました。
⸻
最初に探したのは、
短い距離でした。
友人の長男には、
小さい頃に、
何度か会っています。
最後に会ったのは、
12年ほど前。
写真も残っています。
当時、
4歳くらい。
友人が、
長男を肩車して、
私は、
一つ下の長女を、
肩車しています。
奥さんも一緒に、
5人で撮った写真です。
私の中では、
長男はまだ、
お父さんの肩の上にいる、
小さな男の子でした。
⸻
短い距離には、
名前がありません。
「あれ?」
38kmの、
スカイコースを見る。
名字がありました。
そして、
気づきました。
⸻
レース中に、
二度すれ違った、
あの高校生。
あの子が、
友人の長男でした。
⸻
12年前には、
お父さんの肩の上。
今は、
がっしりした高校生になって、
大きな声で挨拶をしながら、
自分の足で、
鉢盛山を走っていました。
しかも、
私と同じ38km。
……
そりゃ、
分からない(笑)。
⸻
大会のあと、
友人の蕎麦屋へ行きました。
長男は、
いませんでした。
店では、
5人きょうだいの、
一番下の子が、
手伝っていました。
まだ、
小さな子です。
お父さんが、
優しく、
挨拶を促します。
すると、
少し恥ずかしそうに、
挨拶をしてくれました。
「ああ。」
なんとなく、
分かった気がしました。
⸻
根拠発掘。
友人は、
昔から、
きちんと挨拶をする人です。
人との縁も、
大事にします。
でも、
山で長男とすれ違った時、
私は、
友人の息子だとは、
知りませんでした。
先に、
「感じのいい子だな。」
と思った。
そのあとで、
「あの子だった。」
と分かりました。
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そして、
大会のあと。
父親が、
小さな末っ子に、
優しく挨拶を促す姿を、
目の前で見ました。
長男が、
あんなふうに挨拶をするようになった理由までは、
分かりません。
親の教育だけで、
説明することもできません。
ただ、
父親が、
挨拶を大事にしていることは、
見ました。
「蛙の子は蛙だな。」
そう思ったことにも、
私なりの、
根拠はありました。
⸻
そして今年。
また、
鉢盛山に参加しました。
今度こそ、
話してみたい。
そう思っていました。
とはいえ、
最近の私は、
ランニングから、
少し離れ気味。
長男が、
今年も出るのか。
友人に確認することも、
していませんでした。
⸻
前日になって、
ラン友さんから、
「今年は出ないみたい。」
と聞きました。
友人の蕎麦屋へ行って、
本人から聞いたそうです。
残念。
今年も、
話せませんでした。
⸻
12年前。
お父さんの肩の上にいた、
小さな男の子。
昨年。
鉢盛山ですれ違った、
感じのいい高校生。
リザルトを見て、
ようやく、
二人がつながりました。
「あの子だった。」
また、
どこかで会えたら、
今度こそ、
話してみたいと思います。
……
そんなに話したいなら、
先に友人に聞けよ、
という話ですが(笑)。
続く。
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