
根拠発掘屋
「帰ってきました。」
-wind外伝-
※この話は、昔「自分の頭の中にいる妖精」として作ったwindを、現在の私がwind視点で書いた外伝です。
俺の名前は、
wind。
英語で書くと、
ちょっとカッコいい。
意味は、
屁。
……
余計な説明をするな。
⸻
俺は、
二十年以上前から作者の頭の中に住んでいる。
妖精だ。
……
屁の妖精だ。
自分で言わせるな。
⸻
当時の職場は、
「魔法のiらんど。」
作者はそこで、
昔の出来事を文章にしていた。
一人称は、
「おいら」。
昔のセクキャバの話。
面白かったこと。
武勇伝。
仕事の愚痴。
そんなものを、
日記に書いていた。
⸻
武勇伝を書く時なんて、
たしか、
「おいらのパンチが炸裂した。」
そんな調子だった。
……
だいぶ、
気持ちよくなっている。
初めてセクキャバで働いた頃のことは、
「就職先はセクキャバ、◎◎ボイーン。」
みたいに書いていた。
「◎」は、
乳首らしい。
……
二十年以上前から、
くだらない。
⸻
しかも作者は、
ただ出来事を書くわけじゃない。
少し面白くする。
話を大きくする。
オチをつける。
そして、
カッコつける。
……
いや。
結構、
カッコつける。
だから、
俺が必要だった。
ちょっといいことを言う。
自分に酔う。
話を大きくする。
そんな時、
本人が気持ちよくなっているところへ横から入って、
台無しにする。
それが、
俺の仕事だった。
⸻
ところが、
ある頃から作者が、
魔法のiらんどへ来なくなった。
俺の出番もなくなった。
……
忘れやがった。
自分の頭の中に住ませておいて、
普通に忘れやがった。
⸻
それから、
長い時間がたった。
その間に、
職場だった魔法のiらんどもなくなった。
サービス終了。
……
家はある。
作者の頭の中だからな。
ただ、
仕事がない。
しかも作者は、
俺の存在まで忘れている。
……
二十年以上、
ほぼ自宅待機だ。
屁とはいえ、
扱いが雑すぎる。
⸻
久しぶりに見た作者は、
ずいぶん歳を取っていた。
昔は、
結構イキっていた。
武勇伝を書いて、
「おいらのパンチが炸裂した。」
なんて言っていた。
今は、
ただのじじいだ。
……
まあ、
本人はまだ何かやる気らしい。
最近は、
昔の自分を掘っている。
Facebook。
写真。
昔の投稿。
失敗。
武勇伝。
黒歴史。
そして、
昔の自分がカッコつけている文章を見つけては、
現在の自分で突っ込んでいる。
……
待て。
それ、
俺の仕事だ。
⸻
さらに最近、
こう名乗っている。
「根拠発掘屋。」
……
また、
ちょっとカッコいい名前をつけたな。
昔は「おいら」が、
過去の出来事を面白く書いていた。
今は「私」が、
出来事だけじゃなく、
当時どう書いていたのかまで掘っているらしい。
「おいらのパンチが炸裂した。」
そんな文章まで、
二十年以上たって発掘している。
……
そこまで掘るのか。
⸻
どうやら作者も、
ようやく俺を思い出したらしい。
昔、
自分がカッコつけるたびに、
横から突っ込ませていた妖精。
wind。
屁の意。
……
二十年以上も頭の中に住ませておいて、
今さら発掘したらしい。
住民管理、
どうなってんだ。
⸻
一つだけ、
言っておく。
俺は、
教訓を言うために生まれたんじゃない。
人生を語るためでもない。
いい話にまとめるためでもない。
作者が妙にカッコつけた時。
自分に酔った時。
話を大きくした時。
そこへ出ていって、
台無しにする。
それが、
俺の仕事だ。
⸻
新しい職場は、
「根拠発掘屋。」
……
やっぱり、
ちょっとカッコいい。
まあいい。
wind。
屁の意。
二十年以上の自宅待機を終えて、
本日、
職場復帰します。
……
今度は、
忘れるなよ。
続く。
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