人間、何が怖いかといって、想像の斜め上、というのがイチバン怖い。
殊に隣近所において、住宅街において、日常において。
ゾワゾワが続いて、どんどん不安になっていく。
その渦にハマったら、引きずり込まれてもう、抜け出せない。
引っ越した先の隣人が、どこか妙だ。というストーリー。
当家のような転勤族には他人事ではない。
不安や不穏が渦巻いて、スゥーっと取り込まれる。
実は、こういう人間は案外あちこちにいて、誰もが犠牲者になり得る。
ぃや、映画の表層には描かれなかった事も含めて、実に深い。
西島秀俊が猛烈にカッコよい!この人の醸し出す弱さは天下一品。
香川照之がキテレツでワクワクが止まらない。もう、そういう人にしか見えない。
御本人のウキウキがダダ漏れしている怪演。それが役に投影され、効果抜群。
竹内結子は元気ハツラツを封印して、竹内結子史上、最も美しい。
東出昌大が小顔&長身で、縮尺が狂う問題。
川口春奈の不安定さがいい。
『ソロモンの偽証』に引き続き、藤野涼子が素晴らしい!第2の黒木華を襲名決定。
黒沢清監督は、傑作『CURE』の雰囲気を踏襲したような作り。
しっかり犯罪エンターテイメントである点も特筆。
観客の真理を揺すぶるような演出や小物使い。色調。やはり好きすぎる。
実際にあった事件を幾つかパッチワークしたようなストーリーだ。
実話の事件が、アレコレと頭に浮かぶ方も多いかと思う。
あ、この流れ、本当にあったのだよなと思うと更に怖い。
恐縮ながら当方(筋金入りの阿呆)、核心に気づけなかった。
友人にヒントを貰って真理に気がついた。
そうして恐怖の断片に気づけば気づくほど、背筋の寒さが増すタイプ。素敵。
この方法ならば、誰もが簡単に犯罪に取り込まれてしまうということ。これは怖い。
どんなに個々の意志が強かろうとも、だ。
犯罪手法の単純さが、また不安にさせる。
犯罪者は、雑だ。
それがよく分かる。
観客の想像力も試される。
リアルさに震える、怪作である。
※下記で今作の元ネタに触れています。知りたくない!という方はここでページを閉じて下さいませ。
↓少しネタバレかもしれません。
↓元になった事件について紹介しています。
今作のベースの一つ、北九州一家監禁殺人事件は日本犯罪史においても特異なサイコパス事件だ。凶悪過ぎてあまり報道されなかったほど。下記のルポは力作です。犯罪に免疫とご興味のある方は、よかったら―
消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)
594円
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スクリーン
2016年・日本
監督・脚本: 黒沢清
原作: 前川裕
出演: 西島秀俊、竹内結子、川口春奈、藤野涼子、笹野高史、東出昌大、香川照之
[関連作品]
黒沢清監督⇒ニンゲン合格/リアル~完全なる首長竜の日~/CURE/ドッペルゲンガー/回路
西島秀俊⇒ニンゲン合格/風立ちぬ
香川照之⇒ゆれる/ゴールデンスランバー/任侠ヘルパー/カイジ 人生奪回ゲーム/カイジ 人生逆転ゲーム/あしたのジョー
竹内結子⇒残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-/インサイド・ヘッド/ふしぎな岬の物語/ゴールデンスランバー
※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。