最近読んだ本がとても面白かった。
2013年に行われた「第2回将棋電王戦」のこと。
プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトの五対五の勝負。
結果は、1勝3負1引き分けでプロ棋士が負け。
将棋界でもコンピュータが人間を超えたと話題となった。
この本では、実際に対戦したプロ棋士、コンピュータ将棋ソフトの開発者、当日中継会場で解説をしてたプロ棋士など様々な人へのインタビューで構成されている。
人間とコンピュータの勝負なので、どうしても僕らは「どちらが強いのか?」というところに注目する。
でも、コンピュータは年々ハードもソフトも進歩していて、ものすごいスピードで強くなっている。
遠くない未来、人間は将棋でコンピュータに勝てなくなるらしい。
そうなった時に、プロの将棋の世界は廃れていくか。
インタビューの中でそうじゃないんだと主張する人がいて、
「たとえば、人間はどうやっても自動車の速さには敵わないのは明らかだから
人間と自動車が勝負しようという話にもならないし
人間だけの100m走がつまらなくなったなんてこともない」
ということを言っていたのがとても分かりやすかった。
自動車と勝負するのではなく、自動車を利用することで人間の生活は大きく変化した。
将棋の世界でもコンピュータと戦うだけでなく、人間がより将棋が強くなるための研究にコンピュータが利用されてきている。
将棋は勝負の世界。
見ている僕らはつい『勝ち負け』や『強さ』に目がいきがちになる。
「ドキュメント電王戦」を読んで、コンピュータの強さを知っただけでなく、それぞれのプロ棋士の人間らしさに触れることができた。
どんなことを考え、何を背負って戦ったのか。
そんな人間臭さに心を動かされる。
ただそれはプロ棋士に対してだけではない。
将棋ソフトの開発者も実に人間臭い。
どうやって強い将棋ソフトを作るか。
システムに何を足して何を削るか。
そこに開発者の美学・哲学がある。
ある開発者はプロ棋士と対戦するにあたり、コンピュータが一瞬で次の手を導き出すことができるのに、わざと少し時間をかけて結果を出すように変更した。
ただ勝つためでなく、相手のプロ棋士のリズムを崩さないように対局の場を大事にしていたかがよく分かる。
そんな人間臭さが僕は好きだ。
電王戦は形を変え毎年開催されているのだけど
今年行われている第2期電王戦でプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが単純に優劣を競う戦いは最後と主催のドワンゴが発表した。
最後の対戦は5月20日(土)姫路城。