両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

私は東京都中央区銀座にある両角レディースクリニックの院長です。


産婦人科専門医であり、また生殖医療専門医でもあります。


専門は不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術です。


毎日、不妊治療、体外受精、顕微授精に携わっております。


専門医の立場から生殖医療に関する正確な情報をお伝えして、出来るだけ多くの方に早く妊娠して頂けたらと思いブログを始めました。
ブログには生殖医療に関係する最近の話題を、わかりやすく書きたいと思っております。可能な限り書籍、文献に基づき記載していく予定です。


また国内外の学会や論文で発表された最新の治療等についても書いていきたいと思います。


できるだけわかりやすく説明したいと思いますが、もし難しい内容があれば気軽にコメントを頂けたらと思います。


2012年7月~中央区銀座で生殖医療専門のクリニックを開業しました。


詳細はクリニックのホームページ
を見て下さい。


個人のホームページ
も良ければ見て下さい。


ハワイダイヤモンド・ヘッドに数年間留学していたので、息抜きにハワイハワイ諸島の事も書きたいと思いますハイビスカスプルメリア


どうぞよろしくお願いいたしますニコニコ


以下はこれまで掲載した記事の主なテーマになります。


不妊ドックのすすめ
不妊のスクリーニング検査について

不妊の治療について


胚盤胞(グレード、妊娠率)

精子関連の話題

顕微授精のまとめ

体外受精のリスクについて

卵管造影検査について

凍結胚移植について

人工授精について

卵巣予備能低下症例の取り扱い

胚培養について(工夫、疑問)

子宮筋腫と不妊症

子宮内膜症について

腹腔鏡手術について

不妊治療とストレスについて

マイハワイベスト

ハワイ出産

アメンバー限定記事について


免責事項

出産年齢の高齢化、晩婚化、少子化に伴い、今伝えなければいけない大切な事として、学校での生殖に対する教育を変えて行かなければいけないと思います。

産婦人科医の私が言うと問題があるかもしれませんが、現在のところ恐らく学校教育では「避妊する事の大切さ」を教育するだけだと思います。

妊娠は良くないことであり、避妊が大切と教えているのだと思います。

これは性行為感染症や人工妊娠中絶という一面ではもちろん正しい事ですが、その反面、高齢での妊娠がいかに難しい事か、早く妊娠しないと卵子の老化がある事、年齢と卵巣年齢は一致しない事、体外受精をすれば必ず妊娠するわけではない事、男性不妊が増えている事等も同時に教えて行く事が必要であると強く思います。


もしかしたらこの様な教育が少しずつ始められているかもしれませんが、本当に正しい教育がされているか正直不安なところです。
教職をとられているかたに、正しい生殖の教育を切にお願いしたいところです。

 


またこれと同時に、男性にも、卵子の老化、AMH検査、不妊治療の大変さ、難しさを知ってもらう事が必要だと思います。

男性が知る事で、社会全体の不妊治療に対する見方、考え方が大きく変わると思います。そして不妊治療中の方が気兼ねなく時短勤務や有休が取れる社会につながるのだと思います。


その結果、会社の金銭面でのサポートや、不妊治療のために休暇をとりやすい社会につながるのだと思います。

 

これはやはり国が主として取り組むべきであり、早急に行わなければいけない社会全体の課題であると思います。



研究の背景

肥満は生殖医療において長年重要な課題とされてきました。これまで多くの研究では、1回の胚移植あたりの妊娠率や出生率が検討されてきましたが、「最終的に出産に至るまでに、どれだけの卵子・胚・移植回数を要するのか」という視点は十分に検討されていませんでした。本研究はこの点に着目し、肥満女性の生殖医療の全過程を「reproductive journey」として捉え直した点が特徴です。

研究デザイン

スペインのIVIRMAグループ15施設で、2017年から2023年に行われた31,829人の女性、48,595回の採卵周期、35,430回の胚移植を解析しています。BMIにより、低体重、標準体重、過体重、肥満の4群に分け、最初の出生に至るまで、あるいは治療中断に至るまでの全経過を追跡しています

主な結果

Table 1では、年齢やAMHはBMI群間で大きな差がない一方、肥満群では排卵障害が多いことが示されています。


Table 2およびTable 3からは、BMIが高いほど、より多くのゴナドトロピン量を必要とし、精子運動率は低下するものの、受精率や胚盤胞到達率そのものは大きく変わらないことが分かります。


本研究の核心はFigure 1です。
Figure 1Aは「出生に至るまでに必要な卵子数」、Figure 1Bは「必要な胚数」、Figure 1Cは「必要な胚移植回数」を示しています。いずれもBMIが上がるほど曲線が右にシフトし、肥満女性では同じ出生率を得るために、より多くの卵子、より多くの胚、より多くの移植回数が必要であることが明確に示されています。

具体的には、標準体重群と比べて、肥満群では出生に至るまでの卵子数、胚数、移植回数すべてが有意に増加していました。これは「1回あたりの成績が悪い」というより、「治療全体が長期化し、消耗が大きい」ことを意味します。

臨床的な意味

本研究で重要なのは、肥満女性では胚の見た目や胚盤胞到達率だけでは説明できない要因が、流産率上昇や出生率低下に関与している点です。実際、euploid胚を移植しても流産率が高いことが示されており、子宮内環境や代謝状態の影響が強く示唆されています。

また、Figure 1で示されるように、治療回数が増えるほど中断率も高まることが問題です。多くの失敗を経験する中で、精神的・経済的負担が蓄積し、最終的に治療を断念するケースが増えることが、肥満女性のART成績をさらに悪化させていると考えられます。

結論

本研究は、肥満女性におけるARTの問題点を「1回の妊娠率」ではなく、「出生に至るまでの全行程」という視点で明確に示しました。BMIが高いほど、より多くの卵子、胚、移植回数を必要とし、治療の道のりは長くなります。
そのため、ART開始前の体重管理や、治療戦略の個別化、無理のない治療計画を立てることの重要性が、改めて強調される結果となっています。


José Bellver, Antonio Pellicer, Nicolás Garrido.
The reproductive journey of women with obesity undergoing assisted reproductive technology: an analysis of 48,595 in vitro fertilization cycles in 31,829 women.
Fertility and Sterility, 2025; 124(6): 1191–1200.

 

この論文は、体外受精を受ける肥満の女性では、出産に至るまでにより多くの卵子、胚、移植回数が必要になることを、大規模データで示しています。1回ごとの妊娠率だけを見ると差が分かりにくくても、治療全体を通してみると、体重が高いほど治療が長期化し、流産や治療中断のリスクも高くなります。患者さんにとって大切なのは、自分を責めることではなく、治療前から体重や生活習慣を少しずつ整え、無理のない治療計画を立てることです。体重管理は妊娠率だけでなく、妊娠後や子供の健康にも関わる重要な準備の一つとなります。
 

今月採卵をしたいと考えています。あまり時間が無いのですが、二人で何かできることはあるでしょうか?サプリメント飲むなどできることは何でもしたいと思います。

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

このサプリメントを飲めば質の良い精子や卵子ができるというものはありません。

もしその様なものがあれば必ず最初から処方しています。

やはり日頃の生活習慣を出来るだけ健康的にすることこそが最も大切であると思います。

 

具体的には以下の点となります。

 

①睡眠をしっかりととる。

②食生活を健康的に気を付ける。

③運動を適度に行う。

④禁酒、禁煙。

⑤カフェインを控える。

⑥ストレスを軽減する。

 

その他にも多くのことがありますが、

詳細は過去の記事のライフスタイルというテーマを参考にしてください。

男性の方はこちらのテーマも参考にしてください。

 

この様な事で良い卵子や良い精子ができるのか?

その様に思われる方もいるかと思いますが、過去の多くの論文で様々な効果が証明されており、一つ一つ真摯に取り組むことが最善の結果に繋がります。

 

NHKスペシャル「精子クライシス」でもまさにこの辺りのこと(酸化ストレス)を論点にしていたと思います。

NHKスペシャルで岡田先生は以下の点を指摘していました。

①こたつで座椅子などに座り続けている生活は精巣温度の上昇を招き、血流も悪くなる。椅子と机に変え家の中でも動くように気をつける。

②食生活が茶色一色だと(コンビニ生活)動物性の飽和脂肪酸が多く良くない。魚や野菜を取り入れるべき。

③睡眠不足はテストステロンが低下し精子を作る力が低下する。睡眠の質を上げるため遮光カーテンを提案していました。

④寝る直前のスマホは避けるべき。

 

精子は数か月前から作られてくるため長く続けることが大切ですが、今日からでも遅くなく、ぜひ実践してほしいと思います。

 

 

 

 





体外受精において、胚をいつ移植するかは長年議論されてきました。現在は胚盤胞移植が主流になりつつありますが、分割期胚移植が完全に過去の方法になったわけではありません。本論文は、分割期胚移植と胚盤胞移植をめぐる最新の知見を、賛否両論の立場から整理した討論形式の総説です。

論文冒頭(p.1180)では、胚盤胞培養が胚の選別機能を持ち、1回あたりの着床率を高めてきた一方で、累積出生率は分割期胚移植と大きく変わらないという、これまでのランダム化比較試験やメタ解析の結果が提示されています。この点が、現在も議論が続く最大の理由です。

胚盤胞移植の利点

胚盤胞移植を支持する立場では、子宮内膜との同期性が最大の利点として挙げられています。論文中盤(p.1181)では、排卵誘発周期におけるプロゲステロン上昇が分割期胚移植の妊娠率を低下させる一方、胚盤胞移植ではその影響が軽減されることが、複数の研究結果とともに示されています。

また、胚盤胞まで培養することで、発育停止する胚が自然に除外され、着床能力の高い胚を選択できる点も強調されています。PGT-Aを行う場合には、胚盤胞までの培養が必須であることも、実臨床上の重要な理由です。

分割期胚移植を支持する理由

一方、分割期胚移植を支持する立場では、累積出生率という視点が重視されています。論文後半(p.1182–1184)では、フランスの全国レジストリ研究やコクランレビューが引用され、分割期胚移植と胚盤胞移植で、1治療周期あたりの累積出生率に明確な優劣はないことが示されています。

特に重要なのは、胚盤胞培養では一定割合で「移植できる胚が1個も残らない」リスクがある点です。SARTの最新データとして、35歳未満で約8%、40歳前後では20%以上が胚盤胞に到達しない可能性があることが、論文冒頭で示されています。この点は、患者にとって心理的負担が非常に大きい要素です。

また、分割期胚移植では培養期間が短く、体外環境による影響を最小限にできる可能性も指摘されています。特に高年齢や採卵数が少ない症例では、胚盤胞まで待つこと自体がリスクになる場合があります。

周産期予後と安全性

論文中(p.1184)では、安全性についても議論されています。胚盤胞移植は一卵性双胎の増加、早産、胎盤異常、大型児のリスク増加と関連するという報告が複数示されています。一方で、近年の大規模データでは先天異常リスクは大きく増加しないことも示されており、安全性評価は一様ではありません。

引用されているメタ解析の結果では、胚盤胞移植は1回あたりの妊娠率は高いものの、累積出生率や周産期アウトカムを含めた総合評価では、単純に優れているとは言えないことが分かります。

結論

本論文の結論部(p.1185)では、分割期胚移植と胚盤胞移植は「どちらか一方が常に正しい」のではなく、患者背景に応じて使い分けるべきであるとまとめられています。

胚盤胞移植は、胚数が十分にあり、PGT-Aを行う症例や、単一胚移植を徹底したい場合に有用です。一方、採卵数が少ない症例、高年齢症例、過去に胚盤胞到達率が低かった症例では、分割期胚移植が合理的な選択となり得ます。

2025年においても、分割期胚移植は決して時代遅れではなく、個別化医療の一環として重要な選択肢であり続けている、というのが本論文の最も重要なメッセージです。

David K. Gardner, Patricia Fauque, Catherine Racowsky, Nikolaos P. Polyzos, Pichetra Ou, Laura Rienzi, Dominique de Ziegler.
Fertile Battle: is it still reasonable to transfer cleavage-stage embryos in 2025?
Fertility and Sterility, 2025; 124(6): 1180–1186.

 

 

今回の論文がFertile Battleという討論企画に掲載されたことは、非常に意味があると感じています。Fertile Battleは、新しいデータを提示する場ではなく、すでに標準治療として定着した考え方に対し、「本当にそれで良いのか」を専門家同士が再検討するための場です。

そこでDay3胚移植と胚盤胞移植が再び正面から議論されたという事実は、胚盤胞培養一択という流れが学会的にも揺らぎ始めていることを意味します。

私は第47回治療説明会で、胚数が少ない方や高年齢の方では初期胚移植が妊娠機会を守る合理的な戦略であるとお話ししましたが、今回の論文は、その考え方が国際的にも正当であることを裏づけています。一律に胚盤胞まで培養するのではなく、患者さん一人ひとりの状況に応じて移植時期を選ぶ重要性が求められます。

 

 

今日は朝から鶴岡八幡宮にお参りに行ってきました。



快晴で暖かくて、しかも空いていたので実に快適でした。


お昼に頂いたつるやのうなぎも柔らかく美味でした爆笑



一人目で通院している方も、二人目で通院している方も様々なストレスを抱えて通院しています。

 

一人目の方に対してクリニックとして最大限配慮をすることは当たり前のことであると思います。

 

ただそれと同時に二人目の方に対してもクリニックとして最大限の配慮をしなければいけないと思います。

子供を連れていけないため治療を断念する、この様な事があってはならないと思います。

 

ファミリールームを開始して数年たちますが、とても多くの方が利用しており昨年からは枠を増やし時間帯も長くしました。また説明会の際にもファミリールームを利用できるようにしています。

 

二人目不妊のポイントをまとめていますのでご覧ください。

 

 

エンブリオスコープで受精の瞬間を見ていると色々な発見、感動があります。

精子が卵子に入り、精子の頭部が前核になります。
精子はそもそも頭部の大部分が核で占められています。
そして卵子の中央に行きます。

卵子の核は2nであるためこのままでは一つ多くなるため、精子が入ると第2極体としてひとつnを放出します。この瞬間もエンブリオスコープで良く見えます。精子n + 卵子2n - 第2極体n=2nとなります。

ここから先が正に神業だと思いますが、雌性前核を形成し中央にいる雄性前核に向けて歩み寄ります。
そして卵子の中央で相手を見つけ、まるでお見合いをするようにお互いしばらくの間そこにとどまります。
そして二つの核は一気に融合します。
ここが新しい命の始まりです。
そしてその後すぐに最初の細胞分裂が始まります。
その細胞の核には二人の遺伝子が半分づつ入っています。

患者さんにこれらの映像を見せるとあまりの凄さに驚きます。涙を流す方もいます。
私も毎日多数の映像を見ていますが、胚それぞれが美しくその度に改めて生命の凄さに感動します。

 

こちらの分割の動画があります。

 

本日はオンラインセミナーを開催しました。

ご参加頂き誠に有難うございました。

時間内にお答え出来なかったご質問はブログにて返答致します。


次回は、1/17(土)16時半開催いたします。
テーマは『メンタルをいかに保つか』です。
詳細が決まり次第ご連絡いたします。
参加希望の方はこちらから登録をお願いします。
↓↓
オンライン説明会登録フォーム


これまでのセミナー動画は全てYouTubeで公開しております。

第7回:男性不妊
第12回:胚培養
第16回:高齢、低AMHで結果を出す治療戦略:成功例をもとに
第50回:2人目不妊

その他のリンクもお送りさせていただきます。

本日16時30分からオンラインでセミナーを開催します。

「未来の妊娠を守るために今できること」

以下の内容を説明します。

①妊娠に対する誤解
②プレコンセプションチェック
③プレコンセプションケア:生活習慣
④AMH
⑤卵子凍結
⑥卵巣ケアサポート(ピル)
 

お申込はこちらから 参加無料です