抗セントロメア抗体陽性難治症例に対して | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

20代や30代前半の若い方の場合大体は1回か2回の移植で卒業します。

採卵してみると胚盤胞が5個とかできることは本当によくあります。

どの様な誘発でも個数が変わりますがほとんど妊娠に至る胚が出来てきます。

 

その様な中、若くてもグレードが低く、胚盤胞にすらならないという症例があります。

多くの施設で日頃から対応に苦慮していると思われます。

この様な方の採血をしてみると抗核抗体ANA陽性、抗セントロメア抗体(ACA)陽性というのが挙げられます。

ANAが160倍とか320倍とかで、抗セントロメア抗体が高くなります。

受精も5PNや7PNなどの多前核になることが多く、3日目のグレードも4とか5とかで、年齢を踏まえるとどう考えても説明がつかなくなります。

 

患者さんはどうして自分だけこうなるのか?

よくわからない抗体がどうして高いの?

どうすれば良いの?この様に思われます。

 

論文を検索するといくつか散見されるもののこれをすれば妊娠するというエビデンスは出ていません。

当院でも今までこの様な方が数十名いますが健康なお子さんを産んでいる方も多数います。

 

念の為膠原病アレルギー科に紹介して基礎疾患が無いかを確認します。

 

当院ではステロイドを内服させながら誘発を行います。

刺激方法は高刺激でPPOSやショートやアンタゴニスト法で卵子ができるだけ取れる様にします。

また成熟させるべくトリガーの種類やトリガーから採卵までの時間を工夫します。(共通して言えることは未熟の傾向が高くなるためです)

カルシウムイオノフォアを用いて活性化処理をする事も有効です。

ポロスコープを用いて紡錘体をみつつ卵子の成熟も見ながら行います。

 

全ての卵子が影響を受けている事はなく取れる数が多いとこれらの抗体に影響を受けていない卵子があり、その数少ない卵子から正常な胚盤胞を作り産ませています。

これは本当に根気のいることであり患者さんにはこの点を伝えて頑張ってもらう様にしています。

自分を信じて諦めないで前向きに頑張ることが大切です。

そして難治症例であるほど医師とラボの実力の見せ所と言えます。