梅が咲く頃になったが、京都の寺社は、

すっかり雪に覆われている。

 

「源氏物語」は謎が多い。なかでも主

人公の光源氏が誰だろう。

「源氏物語」の紫式部は、虚と実を入

り混じり、宮廷の男と女の物語を書く。

 

夕日に輝く光源氏の舞姿

源氏物語。ときは桐壺帝の朱雀院行幸

の日。源氏と頭中将は青舞波を舞う。

光り輝くばかりの源氏の舞に、人々は

感嘆し、天もこれに感応し、時雨が降

り、下人らも涙を落とすのだった。

 

 

 

冠に菊を挿す光源氏、紅葉を挿す頭中将

 

大融寺と源融

大融寺は大阪駅の東側にあり、山門

には、源融公之𦾔蹟の碑が建つ。

高野山真言宗の準別格本山の寺院で、

山号は佳木山。本尊は千手観音で新

西国三十三箇所2番札所である。

 

 

源融の𦾔蹟碑がある太融寺(大阪府大阪市北区大融寺町3-7)

 

嵯峨天皇と源融

源融(みなもとのさとる)は嵯峨源氏

の祖である嵯峨天皇第十二皇子で、大

融寺は嵯峨天皇(786-842)23)の

勅願所であり、「源氏物語」(光源氏)

とゆかりの寺。

嵯峨天皇の父は桓武天皇(50代)で、

兄・平城天皇(51代)に次いで52代

天皇(在位809-823)になる。

漢詩・書をよくし、空海・橘逸勢とと

もに三筆の一人で、華道嵯峨流の開祖

である。

嵯峨天皇には子女多数おり、その子で

源姓を賜ったものとその子孫を嵯峨源

氏といい、源氏物語の光源氏で知られ

る源融は嵯峨天皇の皇子。

 

 

太融寺境内の碑(嵯峨帝勅願所。準別格本山、弘法大師開基)

 

大融寺と河原左大臣源融

大融寺の伝承によると、弘仁12(82

1)空海が地蔵菩薩と毘沙門天を作製

し、それを祀る草庵が、始まりとされ

、翌年千手観音を本尊としたという。

承和10(843)年、河原左大臣源融

は八町四面の大融寺七堂伽藍を建立し、

その際、山号を佳木山とし、源融の諱

から寺名を大融寺と改めた。

 

 

太融寺境内の本堂太融寺(大阪府大阪市北区大融寺町3-7)

 

宇多法皇と怨霊

宇多法皇(867-931)は醍醐天皇の

父で、藤原基経を関白にあたらせ、基

経の嫡子・時平を参議にする一方菅原

道真など藤原北家嫡流から離れた人物

を登用。醍醐天皇が延長8(930)崩

御し、摂政・藤原忠平の要請を受け、

新帝朱雀天皇の後見となる。

宇多法皇は道真の怨霊の被害に遭わな

かった。が、別の被害に遭遇する(『

今昔物語集』)

 

宇多法皇と河原左大臣源融(怨霊)

法皇が京極御息所と六条河原の別邸を

訪れたときだった。

ふたりで情をかわしていると、妖しい

影が近づいて来る。「何者か?」とい

うと「源融」と応える。

おかしい。源融は、宇多が譲位する前、

寛平7(895)年に没している。つま

り源融の怨霊であった。「御息所をく

ださい」と云ふが、法皇は断った。す

ると怨霊はやおら法皇の腰に抱きつい

た。御息所、これを見て気を失う。

この別邸はもともと源融の邸宅で、邸

の地名をとってその頃河原左大臣と呼

ばれていた。

怨霊の源融は、自邸でふたりが愉しん

でいるのが気にいらなかったのか、法

皇に叱られて消え、気絶した御息所も

加持祈祷でよみがえった。

 

晩秋の嵯峨野。

源氏物語。ところは晩秋の嵯峨野。

源氏は野宮の御息所を訪ねる。

生霊事件以来、対面の絶えていた二人。

自分の気持ちはこの葉の色のように変

わらない、と榊(さかき)を差し入れ

る。これをきっかけに歌を交わすうち

に、ふたりの心は千々乱れる。

はるけき野辺を 分け入りたまふより

いとものあはれなり

 

 

源氏物語図(第十帖「賢木(さかき)」光源氏と御息所)

 

大融寺と鎮守社

河原左大臣源融は、大融寺建立の際、

あわせて神野太神宮(現綱敷天神社)

を創建する。

 

 

源融創建の神野太神宮(現綱敷天神社。大阪市北区茶屋町12-5)

 

 

 

太融寺(大阪府大阪市北区大融寺町3-7)

 

 

 

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