妊婦さんが新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすい可能性はパンデミックが始まってすぐに話題になりましたが、4月22日のJAMA Pediatricsで、新型コロナ感染と妊娠合併症および未熟児などの関連性が明らかになりました。

 

18カ国の2130人の妊婦さんを調べた結果、去年2020年3月から10月の間にコロナ感染した人が706人、感染しなかった人が1424人でした。

 

18カ国の内訳は、アルゼンチン、ブラジル、エジプト、フランス、ガーナ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、ナイジェリア、北マケドニア、パキスタン、ロシア、スペイン、スイス、イギリス、アメリカです。COVID-19に関しては、このように様々な国と民族を含む大規模な調査が行われてことは初めてです。

 

感染した妊婦はしていない人と比べて妊娠時高血圧にかかる率が76%高く、別の感染症を発症しやすく、集中治療室(ICU)に送られる率が5倍高いことがわかりました。死者数は、感染した妊婦では11人、していない人は1人でした。

 

感染によって、未熟児の比率は、60%から97%に上昇しました。症状のあった妊婦から生まれた赤ちゃんが、肺・脳・眼機能に支障が出る確率は5倍に上がりました。

 

感染した妊婦から生まれた赤ちゃんの13%が感染していて、その確率は帝王切開の方がより高かったそうです。

 

これらのことから妊婦さんは優先的にワクチン接種が必要と考えるようになっています。

 

とは言っても、ワクチンの胎児への影響は心配ですよね。ワクチン接種が始まったばかりなので大規模な調査結果はまだないのですが、アメリカでの調査では感染の危険回避のためにと接種を推奨という結果が出ています。

 

2020年12月4日から2021年2月28日までにファイザーまたはモデルナ社ワクチン(mRNAワクチン*)を受け、CDCの追跡調査に登録した827人の妊婦さんのうち、712人が出産し、その中で未熟児が9.4%でした。妊娠合併症や新生児への影響などをパンデミック前とほぼ同率、つまりワクチンによる悪影響はありませんでした。

 

一言付け加えると、ほとんどの妊婦さんはワクチンを妊娠後期に受けています。というのは、妊娠後期だと胎児の重要な機能形成が終わっているため、より安心して接種したのでしょう。おそらく数ヶ月以内に妊娠前期の接種の影響がわかると思います。

 

高齢者以外の接種が始まっていない日本では、なんとももどかしい話だとは思いますが、ワクチンで赤ちゃんが発達障害になるとは考えられません。逆に、感染してしまうと胎児の脳機能、身体機能に悪い影響が出る可能性が高くなります。

 

ですから、妊娠していらっしゃる方、妊娠するかもしれない方、今は感染対策を万全にしてご自分とお腹の赤ちゃんをお守りください。

 

*ファイザーやモデルナのワクチンは、感染に重要な役割のある部分を作るメッセンジャーRNA(mRNA)を複製して脂質の袋に詰めたものであるのに対し、アストロゼネカ、ジョンソン&ジョンソンのワクチンはウイルスのDNAを複製して別のベクター(空っぽのアデノウイルス)に入れたものです。どちらもウイルスのほんの一部の情報だけなので、ウイルスのような作用はしません。