見えない壁を越えて: 重度視覚障害者の情報アクセスと事前準備
こんにちは。肢体不自由と盲目の1級障害を持つ!ハンディキャップ・エッセイスト 河和 旦(かわ ただし)です。始めてこのブログをご覧になった方は、プロフィールもご覧ください。本日は、【重度視覚障害者にとっての事前準備の必要性】についてお話します。墨字(すみじ)資料の問題点重度視覚障害者の人が、健常者と同じように情報を得るためには、特別な準備が必要になります。これは、健常者の人が主に視覚を使って情報を得るのに対し、重度視覚障害者の人は点字や音声など、他の感覚を使って情報を得る必要があるからです。墨字資料の変換方法と課題会社や学校で使われる資料の多くは、健常者向けに作られた「墨字」と呼ばれる普通の文字で書かれています。重度視覚障害者の人は、そのままではこれらの資料を読むことができません。そこで、以下の方法で資料を別の形式に変換する必要がありますが、それぞれに課題があります。テキストデータ化WordやPDFファイルなど、健常者向けに配布する元データがある場合、そのデータをテキスト化することが可能です。しかし、図表や数式の情報が失われたり、正しく変換されなかったりすることがあります。そのため、視覚障害者向けに、図表の代わりの説明文を入力するなど、アクセシブルにするための追加処理が必要です。点訳テキストデータを点訳ソフトと点字プリンターで点字に変換し、点字で読めるようにします。しかし、日本の点字には漢字がなく、すべてカナ表記で書き表します。そのため、自動点訳ソフトでテキストデータを点字データに変換した後、点字編集ソフトを用いて、地名などの固有名詞の読みを正確な読みに修正するなど、校正をした後に点字プリンタで印刷する必要があります。音声化テキストデータを音声読み上げソフトで読み上げ、耳で聞けるようにします。しかし、読み上げソフトは、文脈を理解して適切なイントネーションで読み上げることが苦手です。特に日本語の場合、漢字の読み間違いが多く、点訳と同様に地名などの固有名詞を正確に発音できないことがあります。また、図表や数式などの情報は読み上げることができません。事前準備の重要性これらの変換作業には、一定の時間と労力が必要です。そのため、重度視覚障害者の人は、会議や授業に参加する前に、資料を事前に準備しておく必要があります。準備ができていないと、情報を得ることができず、会議や授業の内容を理解することが難しくなります。私は中学、高校、大学は一般の学校で学んでいました。そのため、上に挙げた方法で事前に資料を読めるように準備を行って、授業に臨んでいました。そのために、「元のプリントや教材を事前に提供していただけませんか?」と先生にお願いして、テキストデータや点字資料を作成する時間を確保するという工夫もしていました。先ほども述べたように、点字にする課程で図表など健常者向けの情報が欠落したり、正しく変換できなかったりするケースがあるので、そういった情報を周囲の健常者に尋ねて、情報を補うこともしていました。また、地図やグラフなど図そのものが意味を持つような場合は、文字情報の説明よりも触図(しょくず)により、図を触って理解できるようにすることが有効です。こうした作業は触図製作が得意な点訳ボランティアに依頼して作ってもらっていました。そして、今でも健常者が大多数のセミナーや研修会に参加するときには、このような工夫をし続け、「当日に私だけ情報が得られなくて困った!とならないようにしています。健常者への理解のお願い視覚障害者の方が情報を得るためには、健常者の方の理解と協力が必要です。資料を事前に共有したり、テキストデータを提供したりすることで、視覚障害者の方がスムーズに情報を得られるようにサポートすることができます。小さな配慮が、視覚障害者の方の社会参加を大きく支えます。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。