『やくみつるのベイスターズ心中』1998年に38年振りにセ・リーグ優勝~日本一に輝いた横浜ベイスターズを、前身のホエールズ時代を含めて語り尽くす一冊です。

「やくみつる」が初めて書き下ろした横浜ベイスターズ本となっていますが、「はた山ハッチ」名義で書いていたような気もしますね(笑い)。


相変わらずのマニアックさにまずびっくりします。

マニアとはこの人のためにある言葉といってもいいぐらいです。

また、ファンとはこの人のためにある言葉といってもいいです。

ホエールズの頃を知っている人はもっと楽しめそうですが、何分ネタが古いので分からないことも多々・・・。


一応、“マンガと辛口の切り口がおもしろい”との寸評の通りでしたが、巷で有名な通り、相変わらずの変節漢っぷりを発揮しているので本当に心中するのかは微妙です。

優勝する時期って“にわかファン”が突然に増えますので、まだマシといえばマシなのかもしれませが・・・。


・読んだ日:'01/03/03~03/04。


『やくみつるのベイスターズ心中』 『やくみつるのベイスターズ心中』 - やく みつる
出版社 : 泉書房
出版日 : 1998/10/05
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『中国畸人伝』三国時代~唐代までの畸人(奇人)と呼ばれた8人の伝記 (画像は文庫です)。

“畸人”と表すのがいかにも陳さんらしいし、この人の選び方も陳さんらしいですね。人間的個性がある人物たち、もっと光を当てて欲しい人物たち、といった具合に感じました。


一つのことに没頭してそれを成し遂げた人、古代中央政界にあってケチを演じ続けた人、政争を嫌い続けた人、終生女を求め続けた人、などなど、どれもそれぞれにおかしく楽しく人間的にとても興味を持てる人たちばかりです。

歴史上で有名な人もいれば、まったくの無名な人もいて、それがとても個性豊かな顔ぶれになっています。


どの人たちにも言えることではないかと思うのですが、みな往々にして厭世的です。ペシミストです。でもそういった人たちでも結局は世間、つまり世の中と向き合っています。


「竹林の七賢」と言われた阮藉(げんせき)は竹林で仲間たちと楽器を奏で、酒を酌み交わしながら清談を行います。

王戎(おうじゅう)、自らをおとしめるためにわざと頭がおかしくなった振りをして、政争から身を守ります。

神仙術の大家、葛洪(かつこう)は山にこもり仙人になったと言われています。

酒宴・博打・女性に溺れた者もいます。山にこもり大学者になった者もいました。

こんな人たちでも世の中と向き合い、生きています。いくら世の中を嫌っていても結局は見つめ合って生きていかなければならないのです。


ここにいる畸人たちは、ただ単に畸人・変人であったのではありません。

心の中にしっかりとして芯があります。太い幹があります。信念があり、道があります。

こういうものを守り通すことが時として人から「畸」と見えてしまうのかもしれませんね。

しかし、かたくなに守り続けることは決して「畸」ではないと思います。「畸」に見えてしまっていても違うと思います。そう見ている世の中こそ「畸」なのだ、とこの小説は教えてくれているのではないでしょうか。


・読んだ日:'01/03/27~03/30。


『中国畸人伝』 『中国畸人伝』 - 陳 舜臣
出版社 : 新潮社
出版日 : 1988/11/25
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『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』5組のある夫婦の“不倫”を中心とした話です。

乾いた登場人物たち。熱くならずに冷めた関係。熱さとは無縁の毎日。繰り返すだけの日々・・・。


透明感・浮遊感・存在の軽さ。こういった軽さを細やかで丁寧な描写でくっきりと浮かび上がらせています。

今回の主人公は特に決まっていません。多分、一番登場が多い陶子夫婦だとは思いますが、どの登場人物たちも乾いた内容・展開なので誰が主人公でも同じですね。


主人公は各夫婦9人。

それぞれに、それぞれの物語があります。1つ1つの風景を切り取ってまとめたような物語です。

登場人物がとても多く、戸惑うかもしれませんが、それぞれが凄く魅力あるキャラクター揃いで、どんどん物語に引き込まれていきます。登場人物が多くても描き分けられる筆力は見事です!


江國さんは“家族”を描かせると本当に上手です。

既刊『流しの下の骨』とはまた違ったアプローチで“家族”、特に“夫婦”を捉えていっています。

確かに一体夫婦ってなんなのでしょうか?

夫婦って単なる制度なんでしょうか?
こんな疑問をいろんな夫婦の目線から捉える・・・とても面白い一冊です。

女性と男性ではまた感想が違うでしょうね~。


・読んだ日:'01/04/01~04/06。


『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』 『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』 - 江國 香織

出版社 : 集英社
出版日 : 2000/04/30
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おすすめ平均 ☆

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『貧困なる精神 第20集』サブタイトルは「悪口雑言罵詈雑言讒謗集-白神山地のブナ林分断事件」。


サブタイトルからもわかるように今回は山林特集のような内容です。

現在は世界遺産に認定された白神山地や、登山の許制の導入の提言など自然保護をうたっています。

こういった内容も単なるエコロジーではありません。綿密な取材と研究などに裏打ちされているためとても心に響いていきます。


ただ、これほど語られていても自分のような一般人で、山に対する思い入れを持っている人はどれだけいるのでしょうか?

私たちは自然の一部で自然に生かされてもらっています。それなのに自然とのふれあいや関わり合いは皆無といっていいほどないような気がします。“山は遠くになりにけり”と感じました。


今回はベトナム戦争に関しても論じられています。

「ベトナム戦争こそ世界最悪の戦争。投入された武器の技術は第二次世界大戦なんかとは比べものにならない」との発言は慧眼です。物事を常に客観的に見ようとする視点や、大衆に流されることのないしっかりとして取材姿勢などは本当に素晴らしいと感じました。

こういった発言ができない日本に生きていると思うと、情けなくなりますね・・・。


・読んだ日:'99/06/21~06/28。


『貧困なる精神 第20集』 『貧困なる精神 第20集』 - 本多 勝一

出版社 :すずさわ書店
出版日 : 1988/01/15
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『貧困なる精神 A集』サブタイトルは「悪口雑言罵詈雑言讒謗集-愛国者と売国奴」。

目次を簡単に抜粋すると・・・


・評論文・批判文・論争文等の読みかた
・知識と事実と論理
・文句が多すぎる南米の旅
・アオニケンク海峡とヤマナ海峡
・セルクナム島の現在
・原発を誘致したい地元の人々へ・再説
・ますます悪くなり「非国際化」してゆく日本
・大江健三郎氏式の生き方について教えを乞う
・デバガメ写真誌に復讐するために
・南京大虐殺否定派の歴史的完全敗北


とにかく反大国主義・反政府主義・反欧米主義の嵐の一冊です。「日本社会=メダカ社会」と切り裂くその強烈な風刺・批判は気持ちのいい限りです。


もちろんこの内容のすべてがすべて正しいとは思いませんし、思い込みや偏重的な内容もあるかもしれません。

しかし、彼の考えや思想は一貫しています。貫かれています。ここまで貫かれると素晴らしいです。

権力に対して常に批判的ですが、単なる弱者強者の論理ではなく、真実と事実を追い求めるが故だと感じます。もしかしてそれは植民地支配や大国支配という今なお続く世界の常識への批判と怒りなのかもしれません。


こんな常識によって様々な歴史が闇に葬り去られてしまいました。彼はそれを探しています。

それはマスコミの一員としてですが、マスコミがいかに鋭利な凶器と化して暴力になりえるかを知るか故なのかもしれません。

そして今日もマスコミは・・・。


・読んだ日:'99/01/26~01/30。


『貧困なる精神 A集』 『貧困なる精神 A集』 - 本多 勝一

出版社 :朝日新聞社
出版日 : 1988/12/30
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『俺はその夜多くのことを学んだ』人気脚本家三谷 幸喜さんの短編小説。

三谷ワールド炸裂の密室劇・独り相撲劇です。


内容は「彼女とのデートの後に電話をする」。これだけ。

それをここまでの物語に展開させる能力は圧巻の一言に尽きます。それかバカ(笑い)。


したくなったら止まらない主人公がものすごくおかしく、面白いです。

主人公の悲哀、苦悩、単なる独り相撲は滑稽ですが、それが見事に物語になっています。誰もがこんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。

しかし、一本の電話でこれだけ話が引っ張れるんだなぁと感心していまいました。


文章としては「恋愛に関して、新たに悟ったことは、既にもう、前に一度悟っている」が秀逸。

三谷 幸喜さんの物語は、人間のある状況を切り取って上手にふくらましてくれるのがたまりません。


・読んだ日:'01/02/28。


『俺はその夜多くのことを学んだ』 『俺はその夜多くのことを学んだ』 - 三谷 幸喜

出版社 : 幻冬舎
出版日 : 1998/09/10
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『アキオが走る』月刊カドカワに連載されていたウッチャン(内村 光良)の処女小説です。

舞台や人物像は全くの私小説風な内容になっています。


まずはなんといってもこの世界観!学園生活特有の青春の甘酸っぱさを随所に感じることが出来ます。

舞台が70年代の地方高校なので、登場人物や展開や内容などは確かに目新しいものはありません。どれもありがちで、ありふれたストーリーかもしれません。だからこそ、親近感をとても感じることができるのはないかと思います。


冒頭の主人公アキオが映画『ロッキー』に影響を受けるシーンから話にどんどんと引き込まれていきます。

途中に登場する人物たちのみずみずしい表情や立ち振る舞いも楽しいし、体育祭・文化祭・部活という“高校生活3種の神器”の使い方もうまい。

親友と恋人との展開も楽しいし、なんといっても友達をだんだんと女の子として意識していく過程がいい!

主軸はアキオとその彼女里美との恋愛なのですが、あっという間に高校時代にタイムスリップしてしまったような錯覚を覚えると思います。

また、平易な内容で分かりやすく、親しみやすいので簡単に読める一冊です。


ベタベタな展開、ベタベタな物語、ベタベタな登場人物、ベタベタな青春。

でも。

ベタってやっぱり最高です。

そう思える小説でした。


・読んだ日:'01/02/28。


『アキオが走る』 『アキオが走る』 - 内村 光良

出版社 : 角川書店
出版日 : '96/08/29
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『リングロード9』

ノンフィクション作家山際 淳司さんの小説。

“AB”~“Z”までのリングロード9(環状9号線)にまつわる人々の短編のチェーンストーリー(話がつながるという形式の小説)。

こういった都会のほんの片隅の短編を書かせるとうまい。ノンフィクションで培った観察力や構成力、描写力がさらっとしたふわっとした都会の雰囲気にぴったりはまります。

小説もそつなくこなすのが「さすがだ」とまず感じました。


短編なので、それぞれのアルファベットの頭文字が主人公になっているストーリーがあったり、“J”の物語がそのアルファベットのこと自体を表すストーリーだったり、と演出が心憎い。楽しんで読める内容でもあります。


登場する人々たちは、極めて無機質。そんな彼らが都会にふわりふわりと漂っています。

山際さんの小説の登場人物たちはいつも存在が軽いのですが、今回もそれは然りで、何にも執着せずに、生きることを与えられた存在のような感じがします。

もちろんそんな中にも、“I”や“J”のようなアルファベットに執着しているような人も登場し、飽きさせません。


登場するリングロードは「リングになりきれないリングロード」、そして「大地に浮いている道路」として表現されています。

もしかしたらそこに住まう人々も浮いているのではないか、そう感じました。


最後の“Z”の話が特に面白いです。「これで小説も終わりかな」と思わせておいて、「リングロード9には終点はあるのか」という話で終わらせます。

確かに環状線には終わりはありません。

それは環状線という道路や線路ではなく、日常を表しています。

無機質で漂うだけの毎日も、忙しくて慌しい毎日も、どんな日々も続く続く。


・読んだ日:'01/02/25~02/28。


『リングロード9』 『リングロード9』 - 山際 淳司

出版社 : 筑摩書房
出版日 : '87/05/25
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sorry,no imageう~ん、テーマは面白いのに・・・。

話がそれすぎですよ~。


(自称)アメリカ合衆国皇帝・メキシコ護国卿(在位1859-1880)の、ノートン1世(1819-1880)こと本名ジョシュア=エイブラハム=ノートンのお話。


当時のアメリカの雰囲気や気質、その空気を伝えたい、伝えたいという気持ちは痛いほど分かります。それがなんとなく空回りしてしまっているような・・・。

ノンフィクションとフィクションの間を行ったり来たりしていて、とっちらかった印象を受けました。


テーマを絞って、例えば皇帝としての日常や生活、貢献、その功績などとするなど、もっと様々な分野へと展開できただけに、非常に“惜しい”感じがします。

ページが増されているだけでしっかりとした取捨、推敲が欲しかったです。

この半分のページの量でも完成している本ではないでしょうか。

また、どの歴史小説にも「地図」や「見取り図」などが付いているはずなのですが、それがありません。

こういった不親切な部分もなんとなく漫然な印象を受けてしまう理由かもしれません。


ノートン1世を知りたい方や、ノートン1世についての入門書としては最適だとは思いますが、より詳しい内容を知りたい方には不向きな本のような気がしました。


・読んだ日:'01/02/23~02/25。


sorry,no image 『アメリカ皇帝になった男の話』 - 佐山 和夫

出版社 : 潮出版社
出版日 : '87/09/25
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『野生の風』村山由佳さんの長編小説。

主人公の二人はそれぞれに独立し、社会的にも認められているそれなりのキャリアがある人たちです。

そんな二人が出会い、まるで学生のように恋に落ち、悩む・・・。というお話なのですが、なんとなく。

なんとなくですが、浅さとかっこつけた感じが見られて、この二人の恋愛がどうしても伝わってこない感じがしました・・・。


お互いに写真と染色というもすごく懐の深い、真理を知ることが永遠に出来ないような仕事をなりわいとしています。

それが単なる小道具になってしまい、この二人の恋愛のすみっこに追いやられてしまっている雰囲気になっているのがすごく残念でなりません。


そしてラスト。う~ん、なんかこのラストは嫌です。

恋愛をメインにしていたのに、急に「守る」とか「支える」とかそんな話がでてきて、「え?」「急にどうした?」と思ってしまいました。


舞台はアフリカ。こんな広大な土地にいれば「人間は所詮ちっぽけだ」と思うはずです。

人として生き物として生まれた以上誰にも侵されることのない「生きる」権利を誰でも持っています。

そしてどんな生き物も一人で生きて一人で死にます。

それを「守る」とか「支える」なんて結局「人間のエゴ」じゃん、「単なる自己満足」じゃんなどと思ってしまいました。すごく憤りを感じました。


自分の仕事すら生きることすら忘れてしまうような恋。それのラストがこういった形なのはやっぱりなんか・・・。

・読んだ日:'99/06/20~06/21。


『野生の風』 『野生の風』 - 村山 由佳

出版社 : 集英社
出版日 : '95/03/30
売り上げランキング : 266,713
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