『リングロード9』

ノンフィクション作家山際 淳司さんの小説。

“AB”~“Z”までのリングロード9(環状9号線)にまつわる人々の短編のチェーンストーリー(話がつながるという形式の小説)。

こういった都会のほんの片隅の短編を書かせるとうまい。ノンフィクションで培った観察力や構成力、描写力がさらっとしたふわっとした都会の雰囲気にぴったりはまります。

小説もそつなくこなすのが「さすがだ」とまず感じました。


短編なので、それぞれのアルファベットの頭文字が主人公になっているストーリーがあったり、“J”の物語がそのアルファベットのこと自体を表すストーリーだったり、と演出が心憎い。楽しんで読める内容でもあります。


登場する人々たちは、極めて無機質。そんな彼らが都会にふわりふわりと漂っています。

山際さんの小説の登場人物たちはいつも存在が軽いのですが、今回もそれは然りで、何にも執着せずに、生きることを与えられた存在のような感じがします。

もちろんそんな中にも、“I”や“J”のようなアルファベットに執着しているような人も登場し、飽きさせません。


登場するリングロードは「リングになりきれないリングロード」、そして「大地に浮いている道路」として表現されています。

もしかしたらそこに住まう人々も浮いているのではないか、そう感じました。


最後の“Z”の話が特に面白いです。「これで小説も終わりかな」と思わせておいて、「リングロード9には終点はあるのか」という話で終わらせます。

確かに環状線には終わりはありません。

それは環状線という道路や線路ではなく、日常を表しています。

無機質で漂うだけの毎日も、忙しくて慌しい毎日も、どんな日々も続く続く。


・読んだ日:'01/02/25~02/28。


『リングロード9』 『リングロード9』 - 山際 淳司

出版社 : 筑摩書房
出版日 : '87/05/25
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