遺言・相続専門行政書士の掛谷章です。
しばらくの間、相続財産の評価について述べてきましたが、今回で一区切りとなります。
今日は、相続税額を計算するにあたって必要となる、相続財産の評価のうち、「営業権・特許権・著作権などの評価」についてです。
(注)わかりやすさを優先するため、必ずしも法律の規定どおり厳密な記述になっているとは限りません。
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1.営業権の評価
(1)営業権と相続
営業権とは、企業の資産には計上されなくとも、その企業の持っている潜在的な力を金額で表したものです。一般的には暖簾(のれん)とかブランド力などと言われます。
営業権も相続の対象となり相続税の評価対象になりますが、医師・弁護士などのようにその者の技術、手腕又は才能等を主とする事業の営業権で、その事業者の死亡とともにに消滅するものは、評価しません。
(2)営業権の評価
営業権の価額は、簡単にいうと、その企業の利益をもとに、一定の利率で複利計算した金額で評価します。かなりややこしいですが、次の算式によって計算した金額によって評価します。
●営業権の評価額
=超過利益金額
×営業権の持続年数(原則10年)に応ずる基準年利率による複利現価率
基準年利率と複利表は国税庁のホームページで公表されています。
(参考)平成29年分の基準年利率と複利表(国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hyoka/170524/01.htm
(注1)超過利益金額の計算
超過利益金額=平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額×0.05
(注2)平均利益金額の計算
平均利益金額は、相続開始日の属する年の前年以前3年間(法人の場合は、相続開始日の直前期末以前3年間)における所得の金額の合計額の3分の1に相当する金額とします。
ただし、その3分の1に相当する金額が、相続開始日の属する年の前年(法人の場合は、相続開始日の直前期末以前1年間)の所得の金額を超える場合には、相続開始日の属する年の前年の所得の金額とします。
この場合における所得の金額は、所得税法に規定する事業所得の金額(法人の場合は、法人税法に規定する所得の金額に損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算した金額)とし、その所得の金額の計算の基礎に次に(イ)~(ハ)の金額が含まれているときは、これらの金額は、いずれも差し引いて計算した場合の所得の金額とします。
(イ)非経常的な損益の額
(ロ)借入金等に対する支払利子の額および社債発行差金の償却費の額
(ハ)青色事業専従者給与額又は事業専従者控除額(法人の場合は、損金に算入された役員給与の額)
(注3)標準企業者報酬額は次のとおり計算します。
(平均利益金額) (標準企業者報酬額)
1億円以下 ⇒平均利益金額× 0.3+1000万円
1億円超3億円以下⇒平均利益金額× 0.2+2000万円
3億円超5億円以下⇒平均利益金額× 0.1+5000万円
5億円超 ⇒平均利益金額×0.05+7500万円
※平均利益金額が5000万円以下の場合は、標準企業者報酬額が平均利益金額の2分の1以上の金額となるので、営業権の価額はゼロになることに注意しましょう。
(注4)総資産価額
総資産価額は、相続開始日(法人の場合は、相続開始日直前に終了した事業年度の末日)における企業の総資産の価額とします。
2.特許権の評価
(1)特許権と相続
特許権とは、産業上利用できる発明のうち、特許庁に出願して審理を経て権利として認められたものです。特許権を持っている人は、業としてその特許を利用する権利を持ちます。
特許権の存続期間は出願の日から20年です。その期間内であれば、特許権を相続することができます。特許権を相続した場合は、特許権を相続したことを特許庁に対して遅滞なく届け出る必要があります。
(2)特許権の評価
特許権の評価は、①特許発明を他人に実施させている場合と、②特許発明を自分で実施する場合とに区分して行います。
①特許発明を他人に実施させている場合
特許発明を他人に実施させている場合は、その権利に基づいて将来受ける補償金の額の基準年利率による複利計算で求めた額の合計額によって評価します。補償金とは、特許権の使用料のことです。具体的には次のとおりです。
A=第1年目の補償金年額×1年後の基準年利率による複利現価率
B=第2年目の補償金年額×2年後の基準年利率による複利現価率
・・・・・
N=第n年目の補償金年額×n年後の基準年利率による複利現価率
特許権の評価額=A+B+・・・・・+N
第n年目のnは相続開始日から特許権の存続期間(20年)が終了するまでの範囲内において推算した年数とし、1年未満の端数は切り捨てます。
また、基準年利率と複利表は国税庁のホームページで公表されています。
(参考)平成29年分の基準年利率と複利表(国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hyoka/170524/01.htm
②特許発明を自分で実施している場合
特許権を得て自ら特許発明を実施している場合は、その特許権の価額は上記1で説明した自らの事業の営業権の価額に含めて評価します。
③相続開始日の後に取得すると見込まれる補償金の合計額が50万円に満たない特許権については、評価しません。
3.実用新案権・意匠権・商標権の評価
実用新案権・意匠県・商標権も相続の対象になり相続税の対象になります。
実用新案権・意匠権・商標権の価額は、上記2の特許権と同じ方法で評価します。
4.著作権・著作隣接権・出版権の評価
著作権とは、音楽・映画・コンピュータプログラムなど人間の知的活動から生み出された著作物に関する無体財産です。また、著作隣接権とは、著作物を伝達する役割を果たしている歌手・演奏家・レコード会社・放送事業者に認められる権利で、出版権とは、著作物を出版する権利です。
(1)著作権の評価
著作権の価額は、次の算式によって計算した金額によって評価します。
●著作権の評価額=年平均印税収入の額×0.5×評価倍率
上の算式中の年平均印税収入の額は、次の①②によります。
①年平均印税収入の額
相続開始日の属する年の前年以前3年間の印税収入の額の年平均額とします。
②評価倍率
相続開始日の後における各年の印税収入の額が年平均印税収入の額であるものとして、著作物に関し精通している者の意見などをもとにして推算したその印税収入期間に応ずる基準年利率による複利現価率とします。
基準年利率と複利表は国税庁のホームページで公表されています。
(参考)平成29年分の基準年利率と複利表(国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hyoka/170524/01.htm
(2)著作隣接権の評価
著作隣接権の価額は、著作権と同じ方法で評価します。
(3)出版権の評価
出版権の価額は、出版業を営んでいる者の有するものについては、営業権の価額に含めて評価し、その他の者の有するものについては、評価しません。
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◆行 政 書 士:掛谷章(かけたに あきら)
⇒京都大学法学部卒業
⇒大阪府庁に14年間の勤務経験あり(行政職・事務吏員として)。
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