遺言・相続専門行政書士の掛谷章です。
しばらくの間、相続税について述べてきましたが、次回で一区切りとなります。
当ブログでは、これまで31回にわたり相続税のきまりについて細かいことを説明してきましたが、それをもとに、今回は「相続税の計算手順」を説明します。
また、次回は相続税の計算の簡単な具体例を記事にしたいと思います。
(注)わかりやすさを優先するため、必ずしも法律の規定どおり厳密な記述になっているとは限りません。
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1.相続税の申告義務のある人
相続税は、相続した人だけでなく、遺贈を受けた人や死因贈与を受けた人にも申告義務があります。
遺贈とは、故人(被相続人)が遺言で相続人や他人に無償で財産を与えることで、故人の一方的な意思表示だけで成立します。
死因贈与とは、贈与者(被相続人)が死亡したときに相続人や他人に無償で財産を与える契約です。例えば、「Aが死亡したら、○○県○○市○○町○丁目○番地の土地をBに贈与する」というふうにAとBで合意して事前に契約しておくことです。
遺贈や死因贈与の場合は、相続ではありませんが、人の死亡によって財産を取得したという意味で相続と同じ扱いにするのが公平なので、相続税の課税対象になるのです。
2.相続税の計算手順
次の(1)~(6)の手順で相続税を計算します。この順番を間違えると税額も違ってくるので、注意が必要です。
(1)課税価格の合計額の算出
相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した各人の課税価格の合計額を計算します。
次の計算式で財産を取得した各人の課税価格を求め、それを合計します。
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●各人の課税価格
=(相続などで取得した財産+みなし相続財産-非課税財産-債務-葬儀費用)
+相続開始前3年以内に故人から贈与で取得した財産
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「(相続などで取得した財産+みなし相続財産-非課税財産-債務-葬儀費用)」がマイナスのときはゼロとして、「相続開始前3年以内に故人から贈与で取得した財産」をプラスします。
みなし相続財産とは、死亡保険金や死亡退職金のことです。本来これらは故人(被相続人)の遺産ではなく受取人の財産ですが、相続税の対象になります。みなし相続財産には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますので、この金額を差し引いた額で計算しましょう。
非課税財産とは、墓石・仏壇・仏具などの祭祀財産などのことです。
各人の課税価格の合計がゼロやマイナスの場合は、相続税はかかりません。
(2)課税遺産総額の算出
上記(1)で求めた課税価格の合計額から相続税の基礎控除額を差し引いた額が課税遺産総額です。
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①平成27年1月1日以降に故人(被相続人)が死亡した場合
●課税遺産総額
=各人の課税価格の合計額-基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)
②平成26年12月31日以前に故人が死亡した場合
●課税遺産総額
=各人の課税価格の合計額-基礎控除額(5000万円+1000万円×法定相続人の数)
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法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
法定相続人のなかに養子がいる場合の法定相続人の数は、次のとおりとなります。
(イ)故人に実子がいる場合は、養子のうち1人までを法定相続人に含めます。
(ロ)故人に実子がいない場合は、養子のうち2人までを法定相続人に含めます。
この課税遺産総額がゼロやマイナスになれば、相続税はかかりません。
(3)各人の法定相続分に応じる取得金額の算出
上記(2)で求めた課税遺産総額を各相続人の法定相続分で分割したものと仮定して、各人の法定相続分に応じる取得金額を算出します。
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●各人の法定相続分に応じる取得金額=課税遺産増額×法定相続割合
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(4)相続税の総額の算出
上記(3)で求めた各人の法定相続分に応じる取得金額に税率を掛けて相続人ごとに仮の相続税を算出し、これを合計して相続税の総額を算出します。
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●各相続人ごとの仮の相続税額=各人の法定相続分に応じる取得金額×税率
↓
●各人の相続税額の合算=相続税の総額
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(5)各人の相続税額の算出
上記(4)で求めた相続税の総額を、法定相続割合ではなく、各人が実際に取得した財産の金額で按分し、各人の相続税額を算出します。
--------------------------------------
●各人の相続税額=相続税の総額×(各人が実際に取得した額÷課税遺産総額)
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(6)各人が支払う税額の算出
上記(5)で求めた各人の相続税額から各種の税額控除額を差し引いた残りの額が各人が支払う税額になります。
ただし、財産を取得した人が故人(被相続人)の配偶者・父母・子供以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算した後、税額控除額を差し引きます。
--------------------------------------
●各人が支払う税額
=各人の相続税額+相続税額の20%加算-贈与税額控除-配偶者の税額軽減
-未成年者控除-障害者控除-相次相続控除-外国税額控除
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この金額がマイナスになれば、支払う税額はゼロになります。
相続税額の20%(2割)加算と各種税額控除については、次の記事を参照してください。
【相続税その4】相続税は加算される場合と軽減される場合がある~2割加算と7つの税額控除~
http://ameblo.jp/kaketanijimusyo/entry-12271292767.html
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◆行 政 書 士:掛谷章(かけたに あきら)
⇒京都大学法学部卒業
⇒大阪府庁に14年間の勤務経験あり(行政職・事務吏員として)。
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