宝島
75点
2019年に直木賞を受賞した真藤順丈の小説を映画化。1952年、米軍統治下の沖縄を史実を交えながら描く。
米軍基地を襲撃し物資を奪い、貧困が蔓延する市民に分け与える正義の集団「戦果アギヤー」。彼らの人間模様と、当時の沖縄をリアルに表現している。
我々が知っている本土の戦後とは、意味合いがかなり違うことに気付く。時に理不尽で暴力的な圧力に耐え続ける市民と、小学校米軍機墜落事故や嘉手納基地へのデモ行進、そしてコザ暴動へと続く流れ。戦争を知らない世代にはピンと来ない歴史を3時間以上に詰め込み、人気俳優が体当たりで演じた圧巻の内容。また2000人以上ものエキストラを動員し、骨太のストーリーに負けない迫力の映像となっている。
妻夫木聡は朝ドラ「あんぱん」ではクールだが頼りになるタイプの役だけど、こちらでは逆に熱くなった情熱的人物を演じているのが面白い。その他、危なっかしい窪田正孝、良くも悪くもどこか余裕がある広瀬すず、あまり出てこない瑛太(笑)。役者の個性はさすが。
まさに間違いなく傑作だと思うが、傑作だから面白いというわけでもなく、3時間を越える上映時間と知られざる沖縄の過去をこれでもかと重く投げつけたメッセージ。興味が無い人が映画館に行ったら眠くなる可能性アリ。ここはこの世界にどっぷり浸れる自信がある人におすすめ。個人的にも疲れた。
監督:大友啓史
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、中村蒼、瀧内公美
2025年 191分
ブラック・ショーマン
62点
福山雅治が「ダークヒーローを演じてみたい」と言ったのがきっかけで、原作者・東野圭吾が『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』を執筆。今回映画化の運びとなった。監督は『コンフィデンスマンJP』でお馴染み田中亮。
福山というとどうしても『ガリレオ』シリーズが頭に浮かんでしまうが、本作もキャラは似ているものの、あえて差別化しようと「マジシャン」という特異な主人公となっている。
物語そのものはいたってオーソドックスで、元中学教師が何者かに殺され、その弟と娘(つまり叔父と姪)が組んで事件を独自捜査する展開。
全員が嘘をついている、という設定だが、とりたてて犯人に意外性は無い。その裏に見え隠れするドラマ性がポイント。
しかし例えば『ガリレオ』の映画版はかなり悲劇的だったが、こちらはそこまでの激情は薄く、真相に向かって一気に突き進む感じで、感動も興奮もどんでん返しも置いといて、あぁこの人が犯人?というなんともあっけないクライマックスに見えた。
福山雅治と有村架純の共演!という以外特色もなく、シリーズ化するにしては「叔父と姪」では弱いのでは。フジテレビは例の中居くんの一件でスポンサーが引き上げてしまったので、この映画のCMを数ヵ月も流していたし、いっそ月9あたりで連続ドラマ化したら面白いかも。
監督:田中亮
出演:福山雅治、有村架純、成田凌、生田絵梨花、木村昴、森永悠希、犬飼貴丈、岡崎紗絵、森崎ウィン、濱田マリ、伊藤淳史、生瀬勝久、仲村トオル
2025年 127分
ファイナル・デッドブラッド
87点
前作『ファイナル・デッドブリッジ』でいったん完結した『ファイナル・デスティネーション』シリーズだが、この度14年ぶりに復活。シリーズ25周年となる6作目が本作。
結論から言うと、過去作と何も変わらないクオリティで高レベルのホラーアクションに仕上がっている。
今回は1968年に起きた事故で、その子孫にまで影響が及ぶという壮大な展開。しかし見るとわかるが、やってることは何も変わらない。
まず冒頭のスカイタワー崩落で度肝を抜き、その後は1人1人死んでいくという、マンネリだが14年ぶりに見ると新鮮に見えるから不思議なもの。
そしてシリーズ6作全てに出演している謎の葬儀屋ブラッドワース役トニー・トッドの遺作となってしまった。
さて本作は全米ボックスオフィスで初登場1位。なんとシリーズ過去最大のヒット作となった。しかし残念ながら日本ではこの手のホラーを受け入れる土壌がないんだな。『ミーガン2』に続き、この作品も残念ながら日本では劇場公開されないことが決定済み。
日本盤DVD/ブルーレイ発売と配信開始は2025年10月22日。R-18指定です。
なお本作の大ヒットを受けて、すでに第7作目の製作も決まっている。そちらはぜひ日本公開してください。
追記:一部映画館で上映されてるようです。
監督:アダム・スタイン/ザック・リポフスキー
出演:ケイトリン・サンタ・フアナ、テオ・ブリオネス、リチャード・ハーモン、アンナ・ロア、トニー・トッド
2025年 110分
原題:Final Destination: Bloodlines
8番出口
65点
2024年に発売され大ヒットした家庭用ゲームの実写映画化。ここは少々ネタバレ。
地下通路の構内を彷徨う主人公。0番からスタートして8番出口を目指す。異変があったら引き返し、なかったらそのまま進む。間違えたら戻される展開。
ゲームは30分でクリアできてしまうコンパクトなものだが、この映画版はストーリーに人間模様を盛り込んでいる。例えば主人公は元カノから妊娠したと聞かされ葛藤を抱いている。そして度々登場する中年男のバックグラウンドが説明され、構内で出会う少年の正体も明かされる。さらにクライマックスで突然起こる大津波など、取って付けたエピソードが多い。
ゲームではループが重要な役割を果たしているが、この映画でも、冒頭で主人公が見て見ぬふりをした出来事をループする。そこはまぁ勘のいい人ならすぐ読めてしまいそうなオチ。
昔の『世にも奇妙な物語』はこのくらいのクオリティの作品たくさんあったため、題材は新しいがどこか古めかしい印象がある。なのでこれを95分の長編映画として公開しちゃっていいものか、というのが第一印象。二宮出てなかったらミニシアターで細々と上映され、映画マニアに失笑されてたレベルかと思う。
内容はまぁそこそこ面白いんだけど、先週の『入国審査』でも書いたが、これなら逆に短編にした方が引き締まったのでは、と思ってしまった一作。
監督:川村元気
出演:二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈
2025年 95分

入国審査
71点
17日間という短期間で撮影され、低予算ながら各国映画祭で話題になったらしい作品。ここはネタバレ。
移民ビザの抽選に当選し、意気揚々とスペインからニューヨークへやってきたカップル。しかし入国審査で止められ別室に連行、そして延々と尋問される話。
予告を見る限り、何も悪いことをしてない二人が事件に巻き込まれる展開かと思ったが違った。結論から言うと、この二人には不審な点がいくつかあって、不法移民を取り締まる側としたらごく正当に連行しただけだった。
そして映画のほとんどが部屋内での尋問になるが、セックスの頻度などプライベートなことを次々と聞かれ、見てるこちらも不快になってくる。
結局二人の間で隠していたことが赤裸々にされ、尋問が終わったあと二人は何も違法なことをしてないことが明らかになるものの、恋人関係に思い切り溝ができるというオチ。移住する気が全くなくなった二人に対し、入国管理官が投げかけた言葉が
「アメリカにようこそ!」←ドラッグで読めます。
まぁ短編作品にありがちのブラックユーモアでしたね。もっと深めの話かと思ってただけにそこは肩透かし。BSの短編ドラマで見ると面白かったかもしれないが、映画館で見ると物足りなさを感じた。決して内容は悪くなかったが、この映画に2000円はちと高い。こういうマイナー映画をミニシアターあたりで常時安く見れるシステムをもっと増やしてほしい。
監督:アレハンドロ・ロハス/フアン・セバスティアン・バスケス
出演:アルベルト・アンマン、ブルーナ・クッシ、ベン・テンプル、ローラ・ゴメス
2023年 77分
原題:Upon Entry
ジュラシック・ワールド 復活の大地
77点
『ジュラシック・ワールド』のシリーズ4作目、『ジュラシック・パーク』も含めた全体では7作目となる。
前作の5年後という設定だが、出演者は一新され物語もほぼ一からやり直し。なのでここから見ても十分意味はわかる。
さてまず第一印象は、前半のテンポがやたら遅く、恐竜なかなか出てこないってこと。出演者のバックグラウンドの説明ばかりで飽きるんだな。映画館だから我慢して見たが、アマプラとかだともう途中で見るのやめてたかも(笑)。
しかし中盤以降はいつもの迫力ある映像。ただいかんせんワンパターンと言われても仕方のない展開。ラスボスがいるわけでもなく、過去に見たことあるような恐竜のオンパレード。物語も『ジュラシック・パーク』のⅠとⅢの焼き直しみたいで新鮮味はあまりない。スカーレット・ヨハンソン大活躍だけど他のキャラがどうにも地味。シリーズも7作目だとやはりマンネリ化を感じてしまう。
過去作を意識したシーンはもちろんだが今回は『インディ・ジョーンズ』や『ジョーズ』あたりのオマージュも含まれており、その辺は答え合わせをしながら見ると興味深いかもしれない。
20年前にこれを見たら驚く場面ばかりだったかもしれないが、もはや映画ファンの目は肥えておりこの程度だと満足しない。ネタ切れ、アイデア不足が指摘されるハリウッドだけど、どうせ続けるんならここはもうひと踏ん張り、このシリーズを盛り上げてほしい。
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:スカーレット・ヨハンソン、マハーシャラ・アリ、ジョナサン・ベイリー、ルパート・フレンド
2025年 134分
原題:Jurassic World: Rebirth
近畿地方のある場所について
44点
2023年にサイトへ投稿された小説の映画化。個性的なタイトルとテレビCMに釣られて鑑賞。
まず途中までの印象は、2005年公開のモキュメンタリーホラー『ノロイ』に似てるなぁ・・・と思ったらやっぱり監督が同じ白石晃士だった。
まだ無名の頃の白石監督は、薄気味悪いホラー作らせたらピカイチだったんだが、近年はオーソドックスでちょっとコミカルな味付けしたりと、ぶっちゃけあまり怖い作品作れていない。
本作もCM見て嫌な予感はしてたんだが、やはりコミカルな演出が入っていてそこは無駄に感じた。
全体的にオムニバスのごとく色んなエピソードが小出しにされるものの、そこは主演の赤楚衛二と菅野美穂がキッチリまとめている。しかし終盤は映像加工に頼った安っぽい締めで、そこは同じ白石監督の『貞子vs伽椰子』あたりの悪いとこが彷彿された。
近年の邦画ホラーは低品質で安っぽい作りの作品が多いけれど、その中でも個人的に白石監督にはずっと期待していた。ただどうもこの人、ウケ狙いに走る性格なようで、そこはやっぱり原点に立ち返って、意味不明のおぞましいホラーを作ってほしい。本人に会った事ないけど(笑)。
まぁ本作に限って言えば、日テレやKADOKAWAが売れ線を求めてプレッシャーかけたのは想像に難くないが。
監督:白石晃士
出演:赤楚衛二、菅野美穂
2025年 103分

星つなぎのエリオ
83点
2024年、歴代のアニメ映画で世界1位の興行収入を記録した『インサイド・ヘッド2』。その1年後に早くも公開されたピクサー/ディズニーの新作。監督は3人の共作だが、そのうちの1人エイドリアン・モリーナは『リメンバー・ミー』の脚本を担当した男性。
両親を亡くし叔母と暮らしている子供エリオ。親がいなくなったショックから立ち直れず、周囲ともうまくいかず、そんなエリオが軍の施設を通じて宇宙からのメッセージを受け取り、地球のリーダーと偽ってコミュニバースへと招かれる展開。
奇想天外ながらも筋は通っているストーリー。不器用でトラブル続きのエリオを自分に重ねてみたり、ここ数作のピクサー作品ではダントツで感情移入できるように感じた。
中盤で可愛いエイリアン・グロードンと出会い、さらに物語は大きく動く。最終的に自らの夢、家族愛、友情、そして仲間たちの助けまでも描くという盛りだくさんのクライマックス。
『E.T.』や『ターミネーター2』などのオマージュも登場、上映時間も97分とほどよい長さでこれはおすすめ。夏休みの映画館、客が鬼滅に集中している間を縫ってゆったりどうぞ(笑)。
なお序盤で左目をケガしたエリオは、その後アイパッチをつけて劇中で活躍するが、それは病気や障害で悩んでいる子供たちへのメッセージだそう。
監督:マデリーン・シャラフィアン、ドミー・シー、エイドリアン・モリーナ
声の出演:ヨナス・キブレアブ、ゾーイ・サルダナ、レミー・エジャリー、ブランドン・ムーン、ブラッド・ギャレット
2025年 97分
原題:Elio
事故物件ゾク 恐い間取り
39点
2020年に亀梨和也主演で公開された『事故物件 恐い間取り』の続編。監督は中田秀夫。主演はSnow Manの渡辺翔太。続編と言っても物語は独立してるので、前作は見なくて大丈夫。
原作はお笑い芸人・松原タニシの体験談をもとにした著書の映画化。今回も主人公桑田ヤヒロ(渡辺翔太)が、事故物件住みますタレントとして次々といわくつきの部屋に泊まっていく展開。
前作は1つ1つがブツ切りで、適当に恐怖映像を混ぜた印象だったが、今回はきちんとストーリーを重視している。ただ後半で取って付けたような恋愛要素、家族愛要素が顔を出し、くだらなさはあまり変わってないかな。
中田秀夫監督は1998年に『リング』で大ブレーク。以後も『L change the WorLd』『スマホを落としただけなのに』『“それ”がいる森』など話題作を手掛けているものの、どうも邦画特有の幼稚さが随所に顔を出し、ぶっちゃけ全然怖い作品はほぼ皆無。『リング』はまぐれ当たりだったのかなと少し残念。
さて前作主演の亀梨くん、本作にも少し出てきます。どういう役かは見てのお楽しみ。
監督:中田秀夫
出演:渡辺翔太、畑芽育、シソンヌじろう、加藤諒、金田昇、佐伯日菜子、ますだおかだ、なすなかにし、大島てる
2025年 113分
ドールハウス
80点
タイトル通り人形を題材にしたホラー作品。監督は『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』など、どちらかと言うと青春コメディが得意だった矢口史靖。ただ実績ある監督だけにさすがに良質な仕上がり。
幼い娘を事故で亡くした若い夫婦。骨董市でその娘に似た少女人形を見つけ持ち帰ってくる。その後2人には次女が産まれるが、人形が原因で一家に不穏な出来事が頻発する展開。
よくある呪いの人形、『死霊館』のアナベル人形あたりに思い切り影響を受けた感じ。終盤の離島に渡るあたりは『リング』を彷彿させた。どこかで見たようなベタな構成も、そこは矢口監督が上手く料理してスクリーンから目が離せない印象。
出ている役者が有名な人ばかりのため、不気味な雰囲気を醸し出すのも一苦労だったろうが、そこは雰囲気ものとして見てるこちらが感情移入したいところ。何が起こるかワクワクしながら見ると、それなりの盛り上がりが味わえる。
そして今の時代、なかなか怖いラストを作るのが難しいと思うが、本作の締めはまずまず。やはり良い監督が作ればジャンル関係なく面白くなるというお手本のような映画。
監督:矢口史靖
出演:長澤まさみ、瀬戸康史、田中哲司、安田顕、風吹ジュン
2025年 110分







