☆テツコの部屋☆~映画評論館~ -4ページ目

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

69点
汐見夏衛のベストセラー小説を実写映画化。主演は朝ドラ『舞い上がれ』の福原遥と、事務所移籍で一時干されていたが復帰し始めた元岡田健史の水上恒司。
現代の女子高生が、1945年にタイムスリップして若い青年と知り合う。その青年が特攻隊員だったという展開。
タイムスリップと入れ替わりにハズレなしのジンクスがあるが、本作も導入部から画面に引き込まれる。ストーリーはなるほど面白い。
主演2人は絵に描いたような美男美女。特攻に招集されるわずかな期間で恋に落ち、そして別れを迎える構成。
予告を見た通りのベタなお涙頂戴の流れ。ネットの感想を見ても、ハマって号泣したという人と、全く泣けなかったという人が二分されている。自分もなんかあまりにも泣かせよう圧を感じてしまい、ちょっと一歩引いた感じになってしまった。
オチにもうひと工夫あるかなと期待したけど、わりとすんなり終わってしまい残念。主題歌の福山雅治も取って付けたようなイメージ。
映画館で見ればそこそこ良い映画かなと思うけど、数年後にテレビで見たらちょっと恥ずかしくなりそうな作品。主演のファンの人はさっさと見に行ってサッと泣いてしまいましょう(笑)

監督:成田洋一
出演:福原遥、水上恒司、中嶋朋子、坪倉由幸、伊藤健太郎、津田寛治
2023年  128分



 

ウィッシュ

57点

ディズニー創立100周年記念作品。長編アニメとしては62作目。監督は『アナと雪の女王』のクリス・バック。
ただその記念すべき主演が黒人系という、今どきの多様性、ポリコレに配慮した作風にはまたかと思った人も多かったはず。そのため北米でのオープニング興行収入は過去最低レベルだそう。
さて内容だが、イベリア半島の沖合に位置するロサス王国を舞台に、過去の100年分のディズニー作品をオマージュで取り入れた演出が話題になっている。まぁただ映画館で見てそれら小ネタを全て把握するのは至難の業。そこは後々に確認したいところ。

肝心のストーリーはと言うと、主人公の女の子・アーシャが王様の独裁に立ち向かう展開。相変わらずミュージカル要素を取り入れ、今回は恋愛より「願い」の要素を前面に出したファンタジー展開。そこに難しい部分は一切なく、子供が見ても楽しめる映画に仕上げたのは100周年の集大成的な意味合いなのかもしれない。
しかし個性があるかと言われると疑問で、95分という比較的短めな尺にもかかわらず、意外と途中で飽きる内容。
ネットでは賛否両論のようだが、そもそも賛否両論って駄作によく使われる言葉だよねぇ(笑)

監督:クリス・バック/ファウン・ヴィーラスンソーン
声の出演:アリアナ・デボーズ、クリス・パイン、アラン・テュディック、アンジェリーク・カブラル
2023年  95分
原題:Wish

PERFECT DAYS

93点
『パリ、テキサス』などでお馴染みドイツ人監督ヴィム・ヴェンダースが、東京都心を舞台にトイレ清掃員オッサンの日常を描いた異色の作品。
単純にタイトルだけ見て思ったが、同じ役所広司主演では『すばらしき世界』を彷彿させた。そこはシンプルだが意味ありげな題材。
役所さん演じる清掃員は、そのタイトルにあるように完璧主義者。しかし他人にルールを強要するような厳格な人物、というわけではなく、あくまで毎日規則的な行動をするタイプ。仕事用の車には掃除道具や備品のストックを常備し準備万端。音楽は70年代あたりの古いロックを好む。仕事を終え銭湯に行き、行きつけの飲み屋で一杯。家では時おり読書。こんな毎日。共に仕事をする若者(柄本時生)がサボっても文句言わない。自分のルーティンに対しての完璧主義者というわけ。
そのPERFECTな日常が、些細な出来事によって少し変化するのがこの映画の軸。毎日同じに過ごしていても、生きていれば様々な良い事悪い事が降りかかる。平凡を描いた少しの非平凡な作品。個人的にこんな映画が大好き。
特に涙が出るような大感動はないし、見る人によっては平坦すぎて眠くなるかもしれないけど、リアルな人間味のある生活臭あふれた作品が好きな人におすすめ。
こういう映画、家で酒でも飲みながらもう1度のんびり見たい。

監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
2023年  124分

ウォンカとチョコレート工場のはじまり

65点
2005年に公開されたジョニー・デップ主演『チャーリーとチョコレート工場』の原作『チョコレート工場の秘密』の前日譚にあたる作品。原作に寄せてあるためあまり映画版とは関係ないらしく、ティム・バートン監督も関わっていない。
主演は若手の人気俳優ティモシー・シャラメだが、ジョニー・デップと比べるとやはり魅力不足と思った。ハリウッドは若手がなかなか出てこれない印象。
さて『チャーリーとチョコレート工場』は招かれた子供たちが一人一人消えていくというワンパターンだったけれど、今回はかなり凝ったストーリー。
世界一のチョコレート店を開こうと街にやってきた主人公・若き日のウォンカ。しかし敵やら苦難やらが次々と降りかかり、それらを一つ一つ乗り越えていく展開。作風はもちろんコミカルで、楽しく歌う要素も前作同様。
けど思ったよりも予想通りな展開で意外性はなく、それほど驚くような映像美もない。
監督は『パディントン』のポール・キングで、なるほど彼らしい子供が喜びそうなファンタジーを描いている。最後に軽く感動を持って来たあたり、単なる前日譚ではなく独立したひとつの作品としてレベルが高い。
しかしあまりにも綺麗にまとめすぎた感もあり、ティモシー・シャラメのファン以外が見ると、可もなく不可もなさそうな出来。ただヒュー・グラントとローワン・アトキンソンの存在感はさすがで、映画を引き立てている印象。

監督:ポール・キング
出演:ティモシー・シャラメ、ケイラ・レーン、マット・ルーカス、サリー・ホーキンス、ローワン・アトキンソン、キーガン=マイケル・リー、ヒュー・グラント
2023年  116分
原題:Wonka

 

エクソシスト 信じる者

60点
1973年公開の伝説的名作ホラー『エクソシスト』の直接続編が本作。間にあった数作の続編や関連作品は無かったものとされている。
それどっかで聞いたことあるなと思った方、そうです。『ハロウィン』と同じ手法ですね。
そして今回の復活エクソシストも3部作となる予定。監督はなんとその新ハロウィンを手掛けたデヴィッド・ゴードン・グリーンというから笑える。
見る前から二番煎じ感満載の映画だが、結論から言うと内容もかなり残念。

予告を見る限り恐ろしいシーン連発だけど、とにかくテンポが遅く眠くなる。そして今どきのポリコレを意識しており、悪魔に憑りつかれるのは黒人と白人の子供なんだが明らかに黒人家族側がメインで、白人側は引き立て役になっている。

近年の映画界、多様性と称して何かの顔色を伺うのはやめてほしいと願うばかり。白人が合うなら白人を素直に主演で使えばいいのに。
それはともかく、クライマックスから終盤はそれなりに盛り上がり名作続編の体裁を少しは保ったかな。そして50年前の本家『エクソシスト』からあの人とあの人がちょっぴりサプライズ登場。この2人はおそらく次作以降で活躍すると思われる。
というわけで3部作の1作目としてはただの前フリで終わった印象。あまり面白くなかったけど、次作への期待感は煽ってる。


監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:リスリー・オドム・Jr、リディア・ジュリエット、オリヴィア・オニール、ジェニファー・ネトルズ、エレン・バースティン

2023年  111分
原題:The Exorcist: Believer



 

ザ・バニシングー消失ー

53点

1988年にオランダ/フランスで製作。スタンリー・キューブリックが「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」と絶賛。

日本ではなぜか31年も遅れた2019年に公開され、7日連続で満員になる大ヒットを記録。上映権の切れる2023年12月に再びリバイバル上映された話題のサスペンス作品。
若いカップルがドライブ中のサービスエリアで、女性の方が突如として姿を消す。その後3年間彼女の行方を捜した男性のもとに、犯人から手紙が届く展開。
80年代の知る人ぞ知るリバイバル上映というと『アングスト/不安』を思い出すが、こちらはエログロ一切ない正統的サスペンス。あのキューブリックが絶賛したというキャッチコピーで多くの人が釣られて満員になったわけだが、俺もその一人(笑)
さてぶっちゃけて言うと可もなく不可もなく、どちらかと言うと退屈な映画。注目のラストは2010年の棺桶映画『リミット』を思い出した人も多いんじゃないかな。まぁ今見ると大して衝撃でもない。そして特にこれ以上感想も思い浮かばない平凡な1作。

しかし「映画史に残る!」みたいな上手い宣伝で、7日間も映画館を満員にした配給会社にアッパレ(笑)

監督:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:ベルナール=ピエール・ドナデュー、ジーンン・ベルボーツ、ヨハンナ・テア・ステーゲ
1988年  106分
原題:Spoorloos

85点

ビートたけし6年ぶりの監督・主演作品。戦国時代の「本能寺の変」が起きたいきさつを、たけし独自の視点で描く。
ぶっちゃけ見る前は何も期待してなかったけど、良い意味で裏切られた。結論から言うと、とにかく面白い。
『アウトレイジ』の時代劇版。ただこちらはコメディタッチの部分が3割くらい、シリアスな部分が7割くらいの絶妙なバランス。例によってたけしのくだらないギャグが、ここでは見事にハマっているように感じられた。
そして想像よりはるかにグロい映像の連発。しかし単にバイオレンスで済まさず、シュールなタッチで史実を無視し、今どきの多様性も取り入れた型破りな手法。たけしのインタビューでは「NHK大河ドラマは綺麗」と言っていたが、既存の時代劇に背を向け、久しぶりに好き勝手に映画を作った印象。
タイトルに関しても当初は幼稚に感じていたものの、相手を倒すことを「首を獲る」なんて言う事もあるが、本作ではバンバン首そのものを切り落とす。映画を見終わってから「首」に実に色んな意味が含まれていることに気付かされた。
監督としても役者としても北野武という人物は不思議な魅力を持っていると改めて再確認。万人にアピールする作品では全然ないけれど、客に媚びないその姿勢が伝わってくる、あまり人におすすめできないが、これぞ世界の北野と思える破天荒な一本。

監督:北野武
出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、遠藤憲一、勝村政信、寺島進、桐谷健太、浅野忠信、大森南朋、荒川良々、寛一郎、小林薫
、岸部一徳
2023年  131分

翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~

72点
魔夜峰央のギャグ漫画を2019年に実写映画化し、興行収入37億円のスマッシュヒットを記録。ただそのうち3割が埼玉での売り上げだったらしい(笑)
そして4年ぶりに続編が作られたわけだが、今回は埼玉解放戦線を率いる麻実麗(GACKT)が関西へ渡るという話。
しかし全体的な構成はほぼ同じ。3人家族が車で移動中にNACK5のラジオを聴く。流れてきた埼玉の都市伝説が映像で再現される展開。
埼玉に海を作るとか、大宮vs浦和とか、武蔵野線うんぬんとか、行田タワーとか・・・埼玉弄りもちらほら出てくるものの、前作よりは煽りが少ない印象。
今回は関西で同じ境遇の県、滋賀県の登場で映画の方向も半分くらい関西に傾いている。琵琶湖や粉もん、吉本新喜劇など、新たなネタを用意しているが、残念ながら前作の衝撃の二番煎じ感は否めない。
けどとにかく本作、ゲストの登場人物が面白い。えっ?この人も出てるの?と軽く驚くキャストが満載。そこはできればネタバレ知る前に見てほしい。
というわけで埼玉県民の自分としては、前作ほどのイジりはないので、まぁ素直に楽しめたかな。ややドタバタした部分があって、くだらなさも多少上がってるのと、通して見ると意外と中だるみがあって途中飽きる。まぁ興味がある人は、勢いあるうちにサッと見に行った方がいいかな。

監督:武内英樹
出演:GACKT、二階堂ふみ、杏、加藤諒、益若つばさ、堀田真由、アキラ100%、朝日奈央
2023年  116分

正欲

22点

『桐島、部活やめるってよ』でお馴染み朝井リョウの小説を映画化。
この作品のテーマは、昨今多く題材に上がる「多様性」だが、ここで語られる内容はちょっと風変わり。何がどう風変わりかと言うと、ここでは人間ではなく「水」に対して性的欲求を感じる男女を中心に話は進む。


本作ではコンプレックスを持った数人の葛藤が表現されており、水への異常な視線もその一つ。ただ全体的に雰囲気は暗めで、映画自体も深刻に進んでいく印象。
ストーリー自体はわかりやすいものの、理解できる思想と理解しがたい思想が混ざっており、そこに原作の幼稚さを感じてしまった。だってさぁ、水フェチってなんなのよ(笑)。いったんくだらないと思ってしまうと、もうこの映画を真面目に見る気がなくなってしまうと言うか、途中でどうにも冷めてしまった。真剣そのものな映画だけにそこはなおさら。

是枝裕和監督の『怪物』を見た時も感じたけれど、今流行りだからと言って無理に「多様性」に首を突っ込まなくてもいいと思ってしまった。
今の映画界、万人に見やすくしているようで実は息苦しい。そんな風に感じた俺は相変わらずひねくれているのか。

監督:岸善幸
出演:稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、徳永えり、宇野祥平
2023年  134分

ゴジラ-1.0

88点
『ALWAYS続・三丁目の夕日』の冒頭で、圧巻のゴジラ映像をユニークにほんの少し盛り込んだ山崎貴監督。その彼が16年後に手掛けた本格的ゴジラ映画が本作。
ゴジラシリーズ37作目。『シン・ゴジラ』以来7年ぶりの実写ゴジラ。そしてゴジラ生誕70周年記念作品でもある。ただし他のゴジラ作品とは全く無関係の独立したストーリーなので、ゴジラ全く知らないような若い人がいきなり見ても問題ない。
舞台は第二次世界大戦直後の日本。邦画らしからぬ迫力あるCGで再現されたゴジラ映像に、戦争から生きて帰還するも心に傷を負った敷島(神木隆之介)と、偶然知り合った子連れの女性・典子(浜辺美波)が中心のエピソード。
ただ過去にドラえもんやルパン三世、宇宙戦艦ヤマトなどを手掛けた山崎監督、相変わらず随所に子供っぽい構成が目立つ。ビキニ環礁の水爆実験やワダツミ作戦、そして主人公の特攻帰りなど、当時の出来事を上辺だけ軽く表現した演出。そこをくだらないと捉えるかわかりやすいと捉えるかが本作を楽しむ分かれ目でもありそう。まぁもともとゴジラに崇高な内容を求めてる人などいないと思うので、方向性としては悪くないと思う。

ゴジラの登場シーンはいささか少ないように感じたものの、「特攻から逃げて生き延びた」という引け目がある主人公の葛藤は、ベタながら上手い戦後表現。つまり映画の軸はゴジラではなく、人間ドラマにあるということ。
映像のクオリティは『シン・ゴジラ』から変わらず高いレベルなので、そこは安心して楽しめる。物語も単純なので、ここはゴジラ70周年にふさわしい出来栄え。

監督:山崎貴
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、吉岡秀隆、青木崇高、安藤サクラ、佐々木蔵之介
2023年  125分