☆テツコの部屋☆~映画評論館~

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落下音

57点

先週のミニシアターランキングで1位となった話題作。スリラー/ミステリー作品とジャンル付けしているメディアもあったが、実はそんな要素は薄いので注意。実際はなんとも不気味な雰囲気を醸し出したアート、芸術作といった印象。
1910年代のアルマ、1940年代のエリカ、1980年代のアンゲリカ、そして現代のレンカという4人の少女たちを100年に渡って描く叙事詩。ストーリーは曖昧で、ひたすら美しくも残酷な映像で訴える手法。なのでメッセージは異様に難解。そして155分という時間は見る者に睡魔を叩きつける長尺。
入場の際に「ネタバレ注意」の相関図を受け取るが、そもそも多少のネタバレを見てもチンプンカンプンの人も多かっただろう。内容を理解すると言うより、見て感じるタイプの作品。
女性への暴力、迫害を淡々と突き付けており、ポリコレ全盛の現在に見るとその辺は逆に新鮮に映る。2024年に『関心領域』という映画が話題になったが、なるほど共通点は確かに感じられる。NHKの深夜で流れていたら絶対見なかったであろう本作も、ミニシアターでヒットしてますよと言われると見てしまうのが映画ファンの悲しい性。
ドイツ語のタイトルは『In die Sonne schauen』で太陽を見つめるのは危険みたいなニュアンス。英題は『Sound of Falling』で邦題はこれを直訳したんだろうけどさすがに短絡的に感じた。
謎の美術館に連れられて行って、よくわからないけど凄いと思う、例えるならそんなとこ。こんな映画がミニシアターランキングとはいえ1位になってしまうあたり、アニメが無双している日本の映画シーンもまだまだ捨てたもんじゃない、気がする(笑)。

監督:マーシャ・シリンスキ
出演:ハンナ・ヘクト、レア・ドリンダ、レーナ・ウルゼンドフスキー、レニ・ガイゼラー
2025年  155分
原題:In die Sonne schauen/Sound of Falling

OCHI!-オチ-

76点
舞台はカーパシア島という架空の孤島。その隔離された小さな孤島に住む村人たちの間で、何世代に渡って恐れられていた伝説の生き物・オチ。

さて主人公少女ユーリが、ある日傷ついたオチの子供を見つけ、こっそり家に持ち帰るという展開。
ここでの見どころは、猿みたいな生き物オチとユーリの交流ということになる。しかし肝心のオチ、CGに頼らずアナログな手法で表現したそうで、風貌も含めてその辺あまり可愛くない。
オチは何やら妙な言葉で話かけてくるが、字幕が出ないので何言ってるかわからず。中盤あまり動きのないストーリーでかなり平坦。
そしてオチのバックグラウンドについても語られることはなく、どちらかと言えば子供向けの印象。ただ子供が見ると中盤の退屈な部分で寝てしまうかもしれない。ユーリがオチを棲み家に帰してあげるために出かけるくだりも、冒険というよりは単なる旅というイメージ。見る前の予想に反して意外と地味な感じだった。
ただ『となりのトトロ』あたりに通じるホッとする場面も多く、クライマックスも盛り上げてくれている。人間が「悪」と決めつけたものが実はそうではなかったという、小学校の道徳の本に出てきそうなテーマだが、決して幼稚なことはなく、全体的には心暖まる悪くない一本。

監督:アイザイア・サクソン
出演:ヘレナ・ツェンゲル、フィン・ウォルフハード、エミリー・ワトソン、ウィレム・デフォー
2025年  95分
原題:The Legend of Ochi

パリに咲くエトワール

62点
『ONE PIECE FILM RED』『コードギアス』などの谷口悟朗監督作品。

そして『魔女の宅急便』『となりのトトロ』などスタジオジブリ作品で作画監督等を手掛けた近藤勝也がキャラクターデザインを担当。なので絵がかなりジブリに寄せている。
時代は明治末期~大正元年の1912年。日本のバレエ公演で知り合った主人公フジコ(當真あみ)と千鶴(嵐莉菜)。後にパリへ渡った2人が現地で偶然再会する展開。つまり舞台はフランス。
さてこの映画、かなり興行収入が爆死気味。初週の週末ランキングはベスト10にも入らず。すでに打ち切りの映画館も多い。おそらく理由はファンタジーものではなく、ヒロイン女子2人のパリでのサクセスストーリーを目指す地味な展開だからだと思う。
というわけでもういかんせん話が平坦すぎ。時代が時代だけに感情移入もなかなか難しく、主演2人を演じた當真あみ、嵐莉菜の声優ぶりが時として未熟な部分が多い。

ラストは続編をほのめかすもののその辺中途半端に感じられ、とりたてて泣ける場面も見当たらない。
ようは題材と脚本が悪いんだと思う。このストーリーだと多少金をかけてでも當真と嵐を主演にして実写にした方が面白かったのでは。
ジブリっぽい作画で期待して見たが、なかなか残念な出来。

監督:谷口悟朗
声の出演:當真あみ、嵐莉菜、早乙女太一、尾上松也、門脇麦、津田健次郎、角田晃広
2026年  119分

プロジェクト・ヘイル・メアリー

70点

マット・デイモン主演映画『オデッセイ』の著者アンディ・ウィアーが原作のSF作。
太陽の異常現象により地球が滅亡の危機に瀕する。この危機を回避するため、ヘイル・メアリー(イチかバチか)というプロジェクトが組まれ、主人公の冴えない科学教師グレース(ライアン・ゴズリング)に白羽の矢が立ったという話。
テレビCMがやたら流れた本作。それを見る限りあまり面白そうではなかったので過度の期待はしていなかったが、欠点と長所が同居するまぁわかりやすい作品だった。
例えるなら『未知との遭遇』なのか『E.T.』なのか。地球からはるか離れた宇宙で出会うロッキーという異星人と共に、星を救うという同じ目標を掲げてどこかコミカルに映画は進んでいく。
基本的に宇宙船内でのグレースの一人芝居。専門用語が濫発し、見ていて中盤まではとにかく睡魔との戦いになりそう。しかし終盤は徐々に盛りあがり、『宇宙戦艦ヤマト』か『アルマゲドン』かってくらいベタベタな感動展開。人間のグレースとエイリアンのロッキーの奇妙な友情は、この手の作品からしたらありがちなようで意外と少ない構成かも。ベタだけど斬新という不思議な感覚のストーリーが味わえるのが長所。
ただ残念なのは最初に書いた通り、序盤から延々と退屈な時間が長すぎる。そしてこれでトータル2時間半超はさすがにきっつい。原作が長編なので仕方なかったのかもしれんが。

監督:フィル・ロード/クリス・ミラー
出演:ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー、ケン・レオン、ミラーナ・ヴァイントゥループ
2026年  156分
原題:Project Hail Mary


 

私がビーバーになる時

74点
ピクサーアニメ記念すべき30作目の映画。ちなみに31作目が『トイ・ストーリー5』になるらしい。
オレゴン州のビーバートンで、動物の棲み家を破壊し高速道路を建設する計画が立てられる。それをなんとか中止させようと考える19歳の日系アメリカ人女子大生メイベルが、ロボットビーバーに意識を転送させて動物たちと共に立ち上がる展開。
冒頭で大きな問題を提示して、クライマックスでドタバタと大騒動になる構成がまさにピクサー王道。ただ今回は政治的要素も大きく関わっており、高速道路計画を進める市長、ビーバーの王様らが絡み合い、敵と味方は派生するものの善悪ははっきりと描かれていない印象。むしろ主人公メイベルが一番悪ガキのように見えたり。
価値観は人(動物)によって違うことがひとつのテーマのように見え、従来の勧善懲悪から一歩進めた感のあるストーリーは、マンネリとかワンパターンとか言われた批判へのメッセージにも感じられる。
動物たちの姿は愛らしく見ていて和むものの、個性となると頭に残るキャラはいないかなと、そこは本作唯一で最大の欠点かなと思ったり。
ここ20年で24本の長編アニメを公開したピクサー。これだけクオリティの高い作品をハイペースで発表する実績はファンにとっては嬉しい限りだが、ファンではない人からすると「またピクサーか」くらいにしか思われず、記憶の外に埋もれていく作品が多くなってきていそうなのが懸念点か。だからこそ次作で『トイ・ストーリー5』を公開し、『リメンバー・ミー』や『モンスターズ・インク』の続編を準備しているのもその対策かもしれない。


監督:ダニエル・チョン
声の出演:パイパー・カーダ、ボビー・モイニハン、ジョン・ハム
日本版:芳根京子、小手伸也、渡部篤郎、宮野真守

2026年  104分

原題:Hoppers

スペシャルズ

69点

『ミッドナイトスワン』やNetflixの『全裸監督』を手掛けた内田英治監督作品。
暴力団抗争で裏社会に生きる中年のコワモテと、伝説的殺し屋の若者が混ざって、成り行きで本格的にダンスを練習する話。
主演はSnow Manの佐久間大介だが、むしろ椎名桔平や小沢仁志といったあからさまな悪役顔が、小学生の女の子からダンスを教わる展開が面白い。
全体的にコメディなものの、ダンスシーンはわりと真剣にこなし、アクションの場面もけっこう多く迫力あるエンタメ作品に仕上がっている。
しかし特にガンアクション、カーアクションを取り入れてるあたり、かなり現実味がないストーリーの上に、くだらないセリフと結局旧ジャニーズのゴリ推しかよと思わせる演出は、佐久間や中本悠太のファン以外が見たら幼稚に感じられる部分が大きい。
子役の羽楽がいい味出しており、石橋蓮司や桔平のアウトレイジ陣も迫力は充分だが、まぁ一般のいい大人が見たらやはり子供騙しの域は出ないかもしれない。
ここ数日の地上波バラエティでやたら宣伝していたけど、映画マニアを自負する人が週末に1人で見に行くものではない(笑)。

監督:内田英治
出演:佐久間大介、椎名桔平、中本悠太、青柳翔、小沢仁志、羽楽、前田亜季、六平直政、石橋蓮司
2026年  110分

ターミナル

79点

スピルバーグ監督2004年のホロッとさせるコメディ作品。
架空の国、クラコウジアからニューヨーク空港にやって来た主人公ビクター(トム・ハンクス)。しかし母国の政府が突然消滅してしまい、ビクターは空港から出れなくなり、仕方なく空港のラウンジに住むことになる展開。
ビクターは英語が喋れず、これまた架空のクラコウジア語でまくしたてるのが面白い。そのユニークな言動から1人、また1人と知人が増え、CAのアメリアと恋をしたり、空港内ライフを見てるこちらも楽しむことができる。
終盤では空港スタッフとの絆までも描かれ、クライマックスでは感動シーンもちらほら。
しかし肝心のラスト、ビクターがアメリカに来た理由と、そのオチがなんとも消化不良。あれ?これで終わり?と拍子抜けするエンディングは本当に残念だった。スピルバーグもこのあたりから低迷していったように感じる。Amazonプライムで久々に見たが、暇つぶしにはもってこいの作品。

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、スタンリー・トゥッチ、バリー・シャバカ・ヘンリー、シャイ・マクブライド、ゾーイ・サルダナ
2004年  129分
原題:The Terminal

教場 Requiem

48点

2020年からフジテレビでスペシャルドラマとして放送され、2023年には月9の連続ドラマも放送された『教場』シリーズの完結編。
実は月9の連ドラ版『教場0』はキムタク史上初めて平均視聴率がひと桁になる爆死だったのだが、キムタクのスケジュールの都合で3年寝かせたことでそれを忘れてるファンも多いだろう。その辺は怪我の功名か。
さて満を持して公開された完結編は、前編がNetflixで2026年1月1日に配信(2月14日に地上波放送)、後編が2月20日に劇場公開という大作になった。過去の作品を全部見る必要はないが、前編の『Reunion』と『教場0』の第6話は見ておいた方がいい。
ここでは主人公・風間公親が教え子の遠野(北村匠)を殺され、自らも千枚通しで目を突き刺された地獄の事件にようやく終止符を打つことになる。しかしそれ以外でも前編で登場した安っぽい生徒劇を繰り返したり、なぜか突然登場する趣里や井桁弘恵が重要な役を担っていたり、どうも取って付けたような演出が多く、さっさと犯人の十崎(森山未來)とバトルしてくれよと言いたくなるダラダラさ。
その十崎との決着も思った以上に陳腐であっけなく終了。最終的に2時間半の長尺そのままに疲れた印象。


さて「何を演じてもキムタク」と世間で演技のワンパターンが指摘されてきたが、『教場』では今までの役柄とガラッと変えて全く新しいキャラを演じているのが新境地とも言える。
ただ残念ながら脚本が幼稚なのと、月9版はとにかく暗すぎた。こうして映画化で終焉を迎えたものの、豪華キャスト以外でクオリティの高さを感じるものはあまりなかった。長年かけた贅沢な凡作といったところ。

しかしここにきて『教場』を完結させたり、『踊る大捜査線』を復活させたり、フジテレビの狡猾さにはちょっとだけ注目してる。

監督:中江功
出演:木村拓哉、井桁弘恵、趣里、中山翔貴、林遣都、中村蒼、坂口憲二、森山未來、小日向文世
2026年  149分


 

ブゴニア

67点

近年キワモノ的な役が多いイメージのエマ・ストーン。そんな中でも『哀れなるものたち』『憐れみの3章』などで彼女と組んだヨルゴス・ランティモス監督が、またもエマにヤバい役をさせてしまった。
大企業のCEOでTIME誌に載るほど有名なミシェル(エマ・ストーン)が、ある日突然「民類を絶滅させるために派遣されたアンドロメダ星人」の疑いをかけられ、2人組に拉致され地下室に監禁される展開。そしてそこで丸坊主にされる。
もちろんこの映画のために本当に頭を刈ったわけだが、さすがに本人も「パニックになった」と語っている。そして見てるこちらまで痛々しくなってくる印象。
もっとも映画としては風刺感漂うブラックユーモア的な雰囲気で、決してただの監禁映画ではない。ただしエマさん体当たりの演技は買うものの、どうも中盤までのストーリーが何を言いたいか明確ではなく、ぶっちゃけ退屈。世界観というか設定がぶっ飛びすぎてなかなか理解できない。
終盤ようやく盛り上がり、まさかの結末に繋がったので見終わった後はそこそこ満足感があったが、やはり全体通して支離滅裂なのは否めない。

アリ・アスター監督の『ボーはおそれている』もそうだったが、最近は色々壊れすぎてる作品が多い。ハリウッドもネタ切れでなかなか正統的な映画が作れないんだろうけど、こういう何が言いたいかわからない作品はどうにも消化不良。

監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス、スタブロス・ハルキアス、アリシア・シルバーストーン
2025年  118分
原題:Bugonia
  

トレインスポッティング

38点
2026年1月に突然リバイバル上映されてたので、何かと思ったら公開30周年らしい。当時はヨーロッパ、アメリカでスマッシュヒット。日本でもミニシアター系を中心に話題となったマニア人気の高い作品。2017年にはまさかの続編も製作されている。
舞台はスコットランド。ヘロイン中毒の青年たちを軽快な音楽と疾走感のある展開で描いたという触れ込み。ただしストーリー自体は破滅へと向かっており、またドラッグを擬態化し汚物が出てきたり目をそむけたくなるようなシーンもちらほら。実は意外とどんよりした内容。
例えば『パルプ・フィクション』のような過激さ、『スナッチ』のようなコミカルさは薄く、あくまでユアン・マクレガー演じるレントンらの日常にスポットを当てているが、当時のスコットランドのChoose life→選ぶことの重要さがイマイチ理解できず、感情移入が非常に難しい作品に映ってしまった。

特に重要なメッセージは伝わってこず、感動するわけでもなく、ラストに大きなオチもなし。ただ当時のこのイギリスっぽいポップカルチャーが何ともカッコよく見えた人が多かったようで、日本のミニシアターで大きな話題になったというわけ。個人的には映画としても流行としても好きになれない世界ではあった。失礼ながら初めて見た時は「えっ?話題作なのにこんなつまんないの?」と思ったっけ。


さて本作は『28日後』『スラムドッグ$ミリオネア』などでお馴染みダニー・ボイル監督の2作目。あぁそういやこの人の映画だっけなぁと懐かしくもあり。

監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ロバート・カーライル、ジョニ・リー・ミラー、ユエン・ブレムナー、ケヴィン・マクキッド
1996年  94分
原題:Trainspotting

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