私はあなたを知らない、
79点
『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』などを手掛けた中野量太監督作品。
工場で契約社員として働く孤独な青年・夕平(坂口健太郎)。しかし新人パートでシングルマザーの紗月(堀田真由)に出会うことで人生が一変する展開。
序盤はこの2人と娘の幼い朝子の3人での充実した生活。
中盤、不器用な夕平のある振舞いから紗月は別れを決意。しかし朝子と交わした何気ない約束を果たすため、なんとか会おうとする行為がストーカーと見なされてしまう。そして終盤、事態は最悪な方向に。
結局何をしても上手くいかない夕平の行動が、どこか自分に被る。心が離れてしまった相手とは距離を置けば時間が解決してくれるが、自分の中でどうしても納得がいかないことを解決するために彼女に接近し、事件へと発展。
映画はその一部始終と、成長した朝子が事件の真相に迫っていく様を交互に見せる。この演出もなかなか上手い。
驚くような進行も、気の利いたエンディングもないものの、夕平だけでなく全員がどこか生きづらい性格を抱えてるところが感情移入できる。坂口健太郎も堀田真由もそれほど好きな役者ではなかったが、本作ではどうしようもなく悪い方へ流れていく人生を実に好演している。タイトルにもちょっとした仕掛けがアリ。
というわけで人付き合いが苦手、という人におすすめの一本。
監督:中野量太
出演:坂口健太郎、早瀬憩、堀田真由、滝藤賢一、稲垣来泉、原田美枝子
2026年 125分

ヒトラーの毒見役
40点
イタリア・ベルギー・スイスの合作映画。日本では2026年夏に公開され、ミニシアターランキングで1位になるなどそれなりに話題になった作品。
内容はタイトルの通り。ヒトラーの食事に毒が入ってないかどうか確かめる役を、若い女性7人が連行されて有無を言わさずやらされる展開。
緊張感があるのは最初だけ。あとは延々と毒見するだけだがそれでは映画にならないので、各女性の不倫、痴話騒ぎ、あるいは各自のバックグラウンドが主体となっていく。
しかしとにかくストーリーが地味で進行が遅い。刺激的な描写もなく、ラストには感動はなく衝撃も薄い。ここまで平坦な映画とは思わなかった。まぁ最後にちょっとオチはあるけど大したものでもない。そういえば先日NHK-BSで『戦場のピアニスト』を放送していたが、比べるものではないのはわかっていても、やはりこちらは完成度に雲泥の差があった。
そして見終わったあと思い返すと、毒見役はあまり映画には関係なくてあくまできっかけ。結局安っぽい男女関係と、当時の女性の置かれた立場を前面に出している印象。ただどうやらヒトラーはベジタリアンで、食事にも華がほぼなくその辺も残念。アイデアは良かっただけに肩透かし感もすごい。平たく言うと期待外れ。
監督:シルビオ・ソルディーニ
出演:エリーザ・シュロット、マックス・リーメルト、アルマ・ハスーン、エマ・ファルク
2025年 123分
原題:The Tasters

オークストリートの異変
58点
『スター・ウォーズ』や『ミッション・インポッシブル』などを仕掛けたJ・J・エイブラムス製作の本格的SF大作・・・・になるはずが、公開直後の評判はどうやら散々の模様。
平和な住宅街オークストリート。しかし突如として街の周囲が断崖絶壁に囲まれ謎の孤立をしてしまい、大量の恐竜が襲ってくるという展開。
まず予告を見るとどんな映画かすぐにわかるのに、序盤の展開がゆっくりすぎてなかなか物語が進まない。この時点でものすごい嫌な予感。
ようやくクリーチャーが出現するも、結局恐竜は従来の『ジュラシック・ワールド』の二番煎じでしかなく、家庭の日常品を使って戦うのも「いいアイデアだろ?」と言いたいだけのお寒い進行に見えた。
ユアン・マクレガーはポンコツ父親役だが、母親役アン・ハサウェイはがんばって家族を守る。その辺の人物設定は良かったものの、ただ肝心のラストがなんとも強引な締め。2008年公開の名SF作品『ミスト』をグダグダにしたようなわかりずらさ。まぁスッキリすることなくエンドロールを迎えてしまった印象。
CGどころかAIで本格的な映像を作れる時代。しかしストーリーをきちんと練らないと今後も面白い映画はできないという危機感を与えてくれた作品。
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:アン・ハサウェイ、ユアン・マクレガー、メイジー・ステラ、クリスチャン・コンヴェリー
2026年 100分
原題:The End of Oak Street
映画ちいかわ/人魚の島のひみつ
81点
2020年からX(旧ツイッター)にて連載開始、2021年に単行本化され2022年にはテレビアニメも放送されている人気キャラクター「ちいかわ」の長編劇場アニメ版。
二頭身で喋る独特な動物ちいかわ、ハチワレ、うさぎを中心とした物語。
ビジュアルを見ると露骨に就学前の幼児向け、もしくはグッズを目当てとした若い女性向けのイメージだが、実は本作、ストーリーがシュールで恐ろしく風刺が効いていると評判。大人が見ても楽しめるし、むしろ幼児には理解できそうもない奥深い描写が潜在。
ちいかわ、ハチワレ、うさぎが特別な島へ招待され大歓迎で迎えられる。しかしその島ではセイレーンと呼ばれる巨大な人魚が、島の住人を襲うという事件が多発していた。この事件にまつわる理由とは?という展開。
内容を全く知らず、ただ可愛いキャラだけを目的に本作を見た人は確かに驚いたと思う。しかし個人的には、島民が襲われた理由やエンドロール後の怖い終わり方など、ガチなホラーっぽい要素に惹かれた。
8月7日現在で入場特典効果もあり興収50億円を突破。このままいけば最終100億円突破のメガヒットとなる。公開3週目で「意外と大人向け」という事実が浸透したのが大ヒットの要因か。
監督:及川啓
声の出演:青木遥、田中誠人、小澤亜季、井口裕香、浅井孝行、槍田雄馬
2026年 99分

スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ
82点
まず前作から4年半もたっていることに驚く。その間、主演のトム・ホランドとヒロインのゼンデイヤが結婚もしたし、時の流れは速い。
さて、全スパイダーマンの集大成的な作品だった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。そのラストで人類の記憶からスパイダーマンの記憶が消され、その状態で本作は始まる。おデブのネッドくんももちろん健在。
事前に撮影風景が流出していたが、冒頭からそのスパイダーマンがニューヨークを守るド派手なシーンを経て、数多くのヴィランが襲ってくる展開。
本作はMCUの38作目だそうで、全く知らない人がこれから全部見るのはかなり困難だろうが、最低限前作だけ見ておけばまぁ楽しめると思う。それだけアクションの迫力と、定番のキャラたちが盤石すぎる。
ただ完結したはずの『アベンジャーズ』がまだまだ今後も続くこと。そしてスパイダーマンだけでなく他のMCU作品もこれから容赦なく網羅されていくことで、かなりウンザリしてる人も多いと思う。
個人的にはもう、どうせ自分が生きてる間には完結しないと割り切って、面白そうな作品だけをチョイスすることにした。多少わからないことがあっても、それを吹き飛ばすクオリティが間違いなくここにある。敷居が高いと思ってる人へあえておすすめ。
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ジェイコブ・バタロン、マーク・ラファロ、セイディー・シンク、ジョン・バーンサル
2026年 145分
原題:Spider-Man: Brand New Day
隣人たち
79点
2018年のベルギー映画『母親たち』を、アメリカ郊外を舞台にリメイク。
時代は1960年代。当時のアメリカを知ってるわけではないけど、髪型やファッションで懐かしい雰囲気を感じる。しかし内容は辛辣なサスペンス。ここは少々ネタバレ。
隣同士に住む主婦セリーヌとアリス、そしてお互いの小さい息子マックスとテオ。しかしある日マックスが2階から転落死してしまい、それをきっかけに「隣人たち」に様々な疑念が渦巻く展開。
主婦役のジェシカ・チャステインとアン・ハサウェイがいい味出している。何を考えているのか、何をしようとしているのか。ヒッチコックをイメージしたという古典的な演出が心地よい。
しかし終盤は色々と事態が動きすぎ。そこまでやるの?って構成はもはやホラーで、現実味がかなり薄れていく。そして衝撃のラストを期待するも、そこは肩透かし。中盤までが良かっただけに、オチは残念の一言。
監督:ブノワ・ドゥローム
出演:ジェシカ・チャステイン、アン・ハサウェイ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジョシュ・チャールズ、イーモン・オコンネル
2024年 94分
原題:Mothers' Instinct
君と花火と約束と
54点
ウェブサイト「note」で連載されたライトノベルを長編アニメとして映画化。
日本三大花火大会の一つで、1945年の長岡空襲の慰霊などのために開催されている「長岡まつり大花火大会」、それを題材にしている反戦映画。時代を越えて、交わされた約束を果たすべく奮闘する高校生男女が織りなすファンタジー物語。
とりあえず2023年福原遥主演のヒット映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』を思い出した。そしてアニメとしては新海誠監督の名作『君の名は』を彷彿させる。
オリジナル感が薄いのがまずマイナスなのと、ストレートに戦時中の描写があるのが見てるこちらとしては引いてしまう印象。そのわりに絵が雑というか子供っぽいというか、ここは好き嫌い別れそうだが。
ヒロインは『すずめの戸締まり』でも良い声優だった原菜乃華でこちらは問題ないけど、主演の佐藤勝利がとにかく棒すぎてこれはさすがにないだろうと辟易。さらに主題歌がtimeleszときたらもうゴリ推しの臭いしかしない。
実在する花火大会をモチーフにしたのは良いアイデアなものの、それ以上にマイナスの要素がちらほら目立ち、映画に集中できない部分があったのも大きい。アニメってわりと好き嫌いがはっきり出るジャンルだと思うが、個人的にはあまり好きになれない一本だった。ただ作品のクオリティは高いと思うので、予告見て気に入った人はぜひ。
トイ・ストーリー5
70点
2010年に3で綺麗に完結したはずのトイ・ストーリー。しかし2019年に続編でまさかの復活。その『トイ・ストーリー4』が全世界でシリーズ最大のメガヒットとなったため、5が製作の運びとなった。
さて時代を読み、今回は人形たちの仕事がインターネット/タブレットに取られてしまう展開。しかし子供のボニーはネットによりチャットやゲームで友達関係を維持するので必死。とても時代についていけない様子。
そこで本作では、カウガールのジェシーがボニーを救うべく主役として大活躍。他のキャラはほぼ脇役という構成になっている。
ピクサーではダントツ一番人気の『トイ・ストーリー』だが、すでに1が公開されてから30年が経過し、子供向けと言うよりはこの映画を見て育ちすでに大人になった人も多いはず。しかし個人的には見たのは3からで、シリーズ全体に思い入れは皆無。そんな自分が本作を見て号泣できるはずもなく、まぁ思ったよりいい内容だったねくらいにしか感じられなかった。興味ない人を惹きつけるストーリー上の完成度は薄い。
バズが兵隊と化し、ウッディは存在価値がほぼ無し。過去の主役級がモブキャラへと変貌というある意味驚きの展開。これからシリーズを6以降も続けていくつもりなら、5は異端として語り継がれそう。そのくらい違和感がある印象。
というわけで思い入れがなければそれほど楽しめるわけもなく、個人的にはもう6以降はおそらく見ないと思う。というかこのシリーズが再び完結するまで生きてる自信がない(笑)。
監督:アンドリュー・スタントン
声の出演:トム・ハンクス、ティム・アレン、グレタ・リー、ジョーン・キューザック、コナン・オブライエン、トニー・ヘイル
日本版:唐沢寿明、所ジョージ、広瀬アリス、日下由美、佐野勇人、竜星涼
2026年 102分
原題:Toy Story 5
ロングウォーク
75点
スティーヴン・キングが1974年デビュー作『キャリー』よりも前の1960年代に執筆したと言われる長編小説を、なぜか2026年に映画化。
近未来の困窮するアメリカ、「ロングウォーク」というとにかく歩き続けるだけの競技が国をあげて開催されていた。ただしルールは4つ。
①時速4.8キロを維持する
②速度が下回ると警告
③警告3回で射殺
④最後の1人になるまで歩き続けること。
このゲームに参加した50人が歩く姿をひたすら描く。
足を止めることができないため、排泄も歩きながら、寝るのも歩きながら。その辺単調かと思いきや、意外とスクリーンから目が離せないのはわかりやすいからだと思う。
いつしか参加者同士に友情が芽生えたりして、藤原竜也の映画『バトル・ロワイアル』に似てるなぁと思ったりも。過去の名作に似てるということは、つまりは面白いという理論。『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー役マーク・ハミルが出ているのも個人的には嬉しい。
散々歩かせたわりに、ラストのオチがイマイチだったのはご愛敬。もっともネットの感想を読んでみると、ラストは痛快だったという意見もあるみたい。結論としてはまずまず良作の1本。
監督:フランシス・ローレンス
出演:クーパー・ホフマン、デビッド・ジョンソン、ギャレット・ウエアリング、トゥット・ニュオット、ショシュ・ハミルトン、マーク・ハミル
2026年 108分
原題:The Long Walk
免許返納!?
84点
1994年『免許がない!』の32年ぶりの続編的作品。とは言っても前作は東宝、今作は東映で企画が舘プロと製作上の関連はほぼなし。前作の登場人物は舘ひろしと西岡徳馬くらいしか出演しておらず、あまり積極的に「続編」はアピールしていない模様。
そして前作同様、舘演じる南条弘が主人公。
盟友が交通事故を起こしたことへコメントする南条。しかし事務所の社長の策略にハマり、全くその気がないのに「免許返納」の政府CMに出演してしまう展開。
今回の南条は、盟友の尾崎(宇崎竜童)のために動いている。尾崎の元妻に会いに行ったり息子に接したり、あちこち動き回るさまは一種のロードムービーに感じられる。
70歳という年齢は、免許返納するには微妙な年齢。ただそこはコメディタッチに描いていて、リアルに何かを訴えるようなメッセージ性はなく、この映画を見て笑って楽しめばそれでいいというスタンスに見えた。
とにかくストーリーがわかりやすいのと、キャストがわりと魅力的。気軽に見ることができる邦画のよいところを詰め込んだ佳作に仕上がっている印象。
さて本作にも出演している黒川想矢。直談判して舘プロ入りしたそうだが、若手では一番魅力がある俳優だと思う。今後の活躍に期待。
監督:河合勇人
出演:舘ひろし、西野七瀬、黒川想矢、南野陽子、八嶋智人、MEGUMI、内藤剛志、中山忍、西岡徳馬、真矢ミキ、ベンガル、吉田鋼太郎、宇崎竜童
2026年 119分






