箱の中の羊
50点
『海街diary』『万引き家族』でお馴染み是枝裕和監督作品。
電車事故によって幼い息子を亡くした夫婦が、息子そっくりのヒューマノイド(アンドロイド)を家に迎い入れる話。当初は本当の親子のように振る舞うヒューマノイドだが、徐々にはっきりとした壁が見え隠れていく。
映画が進むうちに問題が徐々に明らかになる、実に是枝監督らしい作品。子役がいい味出してるのもいつも通り。
ただこの映画の致命的欠陥は、漫才師/芸人の千鳥・大悟を主演に使ったこと。監督の意図するところは知らないが、個人的にはテレビでお笑いしているタレントにしか見えなかったし、どこか偉そうなその傲慢っぽい演技にどうしても感情移入できなかった。主演が別な俳優だったらまた違った印象になったかもしれない。
大悟以外のキャストは逆にかなりいい味出している魅力的俳優ばかり。特に寛一郎、角田晃広、柊木陽太、中島歩あたりは最近の連続ドラマでも活躍していた面々で、安心して見ることができた。
物語自体は、SFっぽい題材でスピルバーグの『AI』を彷彿させるも、取ってつけたような家族愛への問題提起が少し薄っぺらく感じられてしまったのも事実。是枝監督はもっと身近な題材を描かせた方が本領発揮できたと思う。
さて先日のカンヌ映画祭コンペティション部門に本作も出品され、ワイドショーでも大きく取り上げられたが、現地で酷評されたようでパルムドール(最高賞)も逃し、ワイドショーもそこは全局でスルーしていたのは笑えた(笑)。
監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、大悟、桒木里夢、清野菜名、寛一郎、柊木陽太、角田晃広、野呂佳代、星野真里、中島歩、余貴美子、田中泯
2026年 125分

スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー
84点
2019年に『スカイウォーカーの夜明け』で完結したはずのスター・ウォーズだが、新たな映画製作が発表され、まずはその前に2020年からテレビ放送された『マンダロリアン』の劇場版が公開となった。
時系列は『スター・ウォーズエピソード4/ジェダイの帰還』の数年後という設定。マンダロリアンとは特徴的なマスクと鎧を身に着けたボバフェットみたいな民族(正確に言うとボバフェットはマンダロリアンとは違うらしい)。グローグ―はヨーダと同じ種族。この2人の予測不可能な冒険を描いている。
ジョン・ファヴロー監督によると「一度も観たことがない人でも楽しめる冒険映画」を目指したそうで、つまりテレビシリーズどころか、スター・ウォーズを一切知らない人でも楽しめるという触れ込み。ただ当然だがテレビシリーズを見ておいた方が細部まで楽しめる。
さてここまでものすごいCGを使ったSWシリーズを見てきていると、主人公のグローグーやマンダロリアンのデイン・ジャリンの見た目がなんともショボすぎるのが不安点だったが、お馴染みジャバ・ザ・ハットの息子やいとこが出てくる時点でオールドファン歓喜。宇宙を舞台にしたドンパチはほぼないが、その分デイン・ジャリン大活躍。900歳まで生きる種族のグローグーもこの時まだ50歳で、「巣立ち」の要素が描かれているのも興味深い。
雰囲気はわりと旧3部作(エピソード4~6)に似ているものの、音響や質感は明らかに現代の高いレベル。これ1作だけだと逆に内容は物足りないかもしれない。
スター・ウォーズは『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』とスピンオフも面白いが、本作も期待を裏切らないクオリティ。
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ペドロ・パスカル、シガニー・ウィーバー、ジョニー・コイン、デイヴ・フィローニ
2026年 132分
原題:Star Wars: The Mandalorian and Grogu
君のクイズ
30点
2022年に発売されたベストセラー小説の映画化。すでに漫画化、舞台化がされており、今回は実写映画化。まぁしかし映画を見た時点で言わせてもらうと、そこまで引っ張りだこの題材には思えなかった。
生放送のクイズ番組で、回答者が一文字も問題が読まれないうちに正解するという珍事が起こり、これはヤラセなのか、それとも何か理由があるのかを検証するという展開。
話は思いのほか人生にまで踏み込み、意外と深めに描かれていく。冒頭はミステリー風だが、次第に人間ドラマへとシフトチェンジ。今風のSNS炎上も盛り込み、人気若手俳優も起用した洗練された作品・・・と言えば外面はいいが、まぁとにかく絶望的にストーリーがくだらない。クイズにのめり込むあまり恋人と破綻するなど、登場人物に合わせたエピソードをいくつか挿入するも、それ強引だろと思える部分がちらほら。邦画特有の幼稚さをひしひしと感じてしまった。
演出はわりと淡々としており、その辺はともすれば睡魔を誘う。ならばとエンディングに期待していたが、さしたるどんでん返しもなければ感動もなし。そして何よりまたムロツヨシかよとそこはもうウンザリ。ムロツヨシ、佐藤二朗、大泉洋の3人はもういい加減にしてほしい。
じゃあ最初から見るなと言われそうだが、内容やキャストを事前にあえて確認しないで映画を見るのが好きなので、本作にムロがガッツリ出ていたのが個人的に一番のサプライズだった(笑)。
監督:吉野耕平
出演:中村倫也、神木隆之介、森川葵、水沢林太郎、福澤重文、阿部亮平、大西利空、ユースケ・サンタマリア、堀田真由、ムロツヨシ
2026年 118分
サンキュー、チャック
80点
スティーヴン・キングの短編小説を映画化。
カリフォルニアに大地震が襲い、津波や山火事で通信手段が落ち、世界が終ろうとして人々が絶望に陥る中、街の至る所に「素晴らしい39年間をありがとうチャック!」という謎のメッセージが掲げられる。映画はそのチャックの人生を第3章から遡る形で進む。
個人的にはブラピの『ベンジャミン・バトン』、ジム・キャリーの『トゥルーマン・ショー』あたりの雰囲気に通じるものを感じた。
序盤では明かされていない部分が徐々に明らかになっていく。大災害が起きた理由がなんともファンタジーというか奇想天外というか、そこはぜひ見て確認してほしい。
宇宙の歴史を138億年とすると、人類が誕生してからは12月31日の最後の10分にしか過ぎない。ましてや人間1人の人生など小さなものでしかないというこの作品のメッセージ。
時折り魅せるダンスシーンなど、軽快な演出も随所にまぶしてある。そしてチャックを演じるのは『アベンジャーズ』のロキでお馴染みトム・ヒドルストン。日本ではトムヒの愛称で人気を博し、朝のテレビ番組「スッキリ」にも生出演したことがある。白状してしまうと、この役者がそんなに人気あるとは知らなかった(笑)。
監督:マイク・フラナガン
出演:トム・ヒドルストン、ジェイコブ・トレンブレイ、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン、マーク・ハミル
2026年 111分
原題:The Life of Chuck
SAKAMOTO DAYS
77点
Snow Man目黒蓮主演のアクションコメディ。原作は週刊少年ジャンプに連載中の漫画。現在27巻まで発売されており1500万部の発行数を誇る人気作。
そして監督は独特の間やシュールなコントが特徴の福田雄一。この監督作品では毎回書いてるが、この人の独特なお笑いが受け入れられないと、本作は見る意味がない。
伝説の殺し屋・坂本(目黒蓮)はある女性(上戸彩)に恋をして結婚し殺し屋を引退、中年太りとなる。そこへかつてのボスや敵が次々と襲いかかってくる展開。
思いのほかアクションが本格的。壁を走ったり宙返りしたりするのは『るろうに剣心』で佐藤健が得意だった技だが、今ではこの手の映画では必要不可欠になってる印象。なるほど目黒蓮がやると映える。
過去の福田作品で言うと『アンダーニンジャ』が思い出されるが、個人的にはお寒いギャグは多少控えめになった感じがした。『今日から俺は』のようなドタバタ加減も抑え目で、福田監督が嫌いでも本格派アクション映画として十分楽しめそう。
キャストもそれなりに豪華だが塩野瑛久、八木勇征、渡邊圭祐あたりはオジサンオバサンの映画ファンだと誰これ?状態なんだろうな。ゴールデンウィークに何も考えずひたすら楽しみたいと思う人にはぴったりの映画。
なお太った坂本がスラムダンクの安西先生にそっくりだが、公式によると「似てるのは偶然」らしい。
監督:福田雄一
出演:目黒蓮、高橋文哉、上戸彩、横田真悠、塩野瑛久、桜井日奈子、戸塚純貴、北村匠海、生見愛瑠、八木勇征、渡邊圭祐、小手伸也、加藤浩次、津田健次郎
2026年 129分
ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー
71点
2023年『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の3年ぶりの続編。
今回は続編にふさわしく、前回よりもパワーアップ、というか色んな要素を加えている。
ベースになるのは2007年に発売されたWii用ゲームソフト「スーパーマリオギャラクシー」。名前の通り宇宙に飛び出し、いったん改心するクッパとまたも戦う。新キャラで謎の女性ロゼッタと星の子チコが登場。その辺はゲームをなぞっているが、上手く映画に転生させた印象。
そしてスターフォックスがメイン級で活躍、その他ゲームアンドウォッチやピクミンなどマリオとは無関係の任天堂キャラも多く出てきて映画を盛り上げる。
まぁ前作でも書いたが、やはり映画として見るよりどうしてもゲームをプレーしたくなる。ただ本作でより多くの可能性を感じたのも事実で、映画版マリオのファンからしたら充分満足できる出来では。そして最後まで見た限りでは高い確率で続編が予想される。他ゲームのキャラを起用させたことで選択肢も十分広がり、これは長期シリーズになる予感。
ただやっぱり個人的には、映画より初期スーパーマリオのような2D横スクロールのゲームを新作で出してほしいんだが。
監督:アーロン・ホーバス/マイケル・ジェレニック
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、ブリー・ラーソン
2026年 98分
原題:The Super Mario Galaxy Movie
真実の行方
91点
先週テレビ東京で放送されていた懐かしい、個人的にお気に入りの作品。なぜか感想が消えてしまっていたのでもう1回。
教会で大司教を惨殺し現行犯で逮捕された19歳の少年アーロン。弁護を担当したマーティン(リチャード・ギア)はアーロンと接見し「部屋にもう1人いた」という供述と、アーロンがおとなしい少年でとてもこんな事件を起こしそうにない事が気がかりだった。そして調査が進むうち、アーロンが二重人格者だということが判明する。
基本的に法廷サスペンス。わりと地味な一面もあるが、比較的わかりやすいストーリーもあって徐々に面白くなってくる。クライマックスの盛りあがりと意外なラストはまさに圧巻。
アーロンを演じるのは当時映画初出演のエドワード・ノートン。これが初めてとは思えない演技力の高さに引き込まれる。二重人格という非常に難しい役柄を見事に演じ、特にエンディング直前では寒気がするほどの名演。未見の方はぜひ。
なおアーロン役は当初レオナルド・ディカプリオも候補に挙がっていたそうで、それはそれで見てみたかった。
今日現在リチャード・ギア76歳、エドワード・ノートン56歳。時の流れは早いものです。
監督:グレゴリー・ホブリット
出演:リチャード・ギア、ローラ・リニー、ジョン・マホーニー、アルフレ・ウッダード、エドワード・ノートン
1996年 130分
原題:Primal Fear
落下音
57点
先週のミニシアターランキングで1位となった話題作。スリラー/ミステリー作品とジャンル付けしているメディアもあったが、実はそんな要素は薄いので注意。実際はなんとも不気味な雰囲気を醸し出したアート、芸術作といった印象。
1910年代のアルマ、1940年代のエリカ、1980年代のアンゲリカ、そして現代のレンカという4人の少女たちを100年に渡って描く叙事詩。ストーリーは曖昧で、ひたすら美しくも残酷な映像で訴える手法。なのでメッセージは異様に難解。そして155分という時間は見る者に睡魔を叩きつける長尺。
入場の際に「ネタバレ注意」の相関図を受け取るが、そもそも多少のネタバレを見てもチンプンカンプンの人も多かっただろう。内容を理解すると言うより、見て感じるタイプの作品。
女性への暴力、迫害を淡々と突き付けており、ポリコレ全盛の現在に見るとその辺は逆に新鮮に映る。2024年に『関心領域』という映画が話題になったが、なるほど共通点は確かに感じられる。NHKの深夜で流れていたら絶対見なかったであろう本作も、ミニシアターでヒットしてますよと言われると見てしまうのが映画ファンの悲しい性。
ドイツ語のタイトルは『In die Sonne schauen』で太陽を見つめるのは危険みたいなニュアンス。英題は『Sound of Falling』で邦題はこれを直訳したんだろうけどさすがに短絡的に感じた。
謎の美術館に連れられて行って、よくわからないけど凄いと思う、例えるならそんなとこ。こんな映画がミニシアターランキングとはいえ1位になってしまうあたり、アニメが無双している日本の映画シーンもまだまだ捨てたもんじゃない、気がする(笑)。
監督:マーシャ・シリンスキ
出演:ハンナ・ヘクト、レア・ドリンダ、レーナ・ウルゼンドフスキー、レニ・ガイゼラー
2025年 155分
原題:In die Sonne schauen/Sound of Falling
OCHI!-オチ-
76点
舞台はカーパシア島という架空の孤島。その隔離された小さな孤島に住む村人たちの間で、何世代に渡って恐れられていた伝説の生き物・オチ。
さて主人公少女ユーリが、ある日傷ついたオチの子供を見つけ、こっそり家に持ち帰るという展開。
ここでの見どころは、猿みたいな生き物オチとユーリの交流ということになる。しかし肝心のオチ、CGに頼らずアナログな手法で表現したそうで、風貌も含めてその辺あまり可愛くない。
オチは何やら妙な言葉で話かけてくるが、字幕が出ないので何言ってるかわからず。中盤あまり動きのないストーリーでかなり平坦。
そしてオチのバックグラウンドについても語られることはなく、どちらかと言えば子供向けの印象。ただ子供が見ると中盤の退屈な部分で寝てしまうかもしれない。ユーリがオチを棲み家に帰してあげるために出かけるくだりも、冒険というよりは単なる旅というイメージ。見る前の予想に反して意外と地味な感じだった。
ただ『となりのトトロ』あたりに通じるホッとする場面も多く、クライマックスも盛り上げてくれている。人間が「悪」と決めつけたものが実はそうではなかったという、小学校の道徳の本に出てきそうなテーマだが、決して幼稚なことはなく、全体的には心暖まる悪くない一本。
監督:アイザイア・サクソン
出演:ヘレナ・ツェンゲル、フィン・ウォルフハード、エミリー・ワトソン、ウィレム・デフォー
2025年 95分
原題:The Legend of Ochi
パリに咲くエトワール
62点
『ONE PIECE FILM RED』『コードギアス』などの谷口悟朗監督作品。
そして『魔女の宅急便』『となりのトトロ』などスタジオジブリ作品で作画監督等を手掛けた近藤勝也がキャラクターデザインを担当。なので絵がかなりジブリに寄せている。
時代は明治末期~大正元年の1912年。日本のバレエ公演で知り合った主人公フジコ(當真あみ)と千鶴(嵐莉菜)。後にパリへ渡った2人が現地で偶然再会する展開。つまり舞台はフランス。
さてこの映画、かなり興行収入が爆死気味。初週の週末ランキングはベスト10にも入らず。すでに打ち切りの映画館も多い。おそらく理由はファンタジーものではなく、ヒロイン女子2人のパリでのサクセスストーリーを目指す地味な展開だからだと思う。
というわけでもういかんせん話が平坦すぎ。時代が時代だけに感情移入もなかなか難しく、主演2人を演じた當真あみ、嵐莉菜の声優ぶりが時として未熟な部分が多い。
ラストは続編をほのめかすもののその辺中途半端に感じられ、とりたてて泣ける場面も見当たらない。
ようは題材と脚本が悪いんだと思う。このストーリーだと多少金をかけてでも當真と嵐を主演にして実写にした方が面白かったのでは。
ジブリっぽい作画で期待して見たが、なかなか残念な出来。
監督:谷口悟朗
声の出演:當真あみ、嵐莉菜、早乙女太一、尾上松也、門脇麦、津田健次郎、角田晃広
2026年 119分








