正欲 | ☆テツコの部屋☆~映画評論館~

正欲

22点

『桐島、部活やめるってよ』でお馴染み朝井リョウの小説を映画化。
この作品のテーマは、昨今多く題材に上がる「多様性」だが、ここで語られる内容はちょっと風変わり。何がどう風変わりかと言うと、ここでは人間ではなく「水」に対して性的欲求を感じる男女を中心に話は進む。


本作ではコンプレックスを持った数人の葛藤が表現されており、水への異常な視線もその一つ。ただ全体的に雰囲気は暗めで、映画自体も深刻に進んでいく印象。
ストーリー自体はわかりやすいものの、理解できる思想と理解しがたい思想が混ざっており、そこに原作の幼稚さを感じてしまった。だってさぁ、水フェチってなんなのよ(笑)。いったんくだらないと思ってしまうと、もうこの映画を真面目に見る気がなくなってしまうと言うか、途中でどうにも冷めてしまった。真剣そのものな映画だけにそこはなおさら。

是枝裕和監督の『怪物』を見た時も感じたけれど、今流行りだからと言って無理に「多様性」に首を突っ込まなくてもいいと思ってしまった。
今の映画界、万人に見やすくしているようで実は息苦しい。そんな風に感じた俺は相変わらずひねくれているのか。

監督:岸善幸
出演:稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、徳永えり、宇野祥平
2023年  134分