11月に読んだ本は6冊(図書館本6冊)でした。
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<満足度>★★★ 感動 ★★ 面白い ★ 収穫少
<お気に入り順>
『太平洋戦争への道1931-1941』半藤 一利(NHK出版新書 2021.7)
【満足度】★★★
【概要・所感】「昭和史にはすべての問いの答えがある」というのは半藤氏の名言。本書はNHKラジオ「太平洋戦争への道」(2017年8月15日)を再現・編集したもの。1931年の満州事変から1941年の太平洋戦争開戦まで、時系列で世相となぜ戦争に突入したか、について半藤氏、加藤陽子氏、保坂正康氏の対談形式で語られます。加藤氏が最後に「戦争は暗い顔とか、わかりきった顔で近付いてはこない」と言っていますが、近現代史を流れで理解しればとても腑に落ちる一言です。半藤氏が「たった1年の空襲体験が戦争観を作っているのは、戦争に対する考えの幅が狭く、想像力が足りていない」と喝破しています。
超面白すぎたので、この際、昭和史をざっくりまとめてみます。
まず、日本は世界恐慌により疲弊し、ソ連の国防上、満州の権益が欲しかったので、柳条湖をきっかけに自衛を目的に満州を制圧、溥儀を担ぎ出し昭和七年に満州国を建国。それは関東軍の傀儡であったので、蒋介石は国連に提訴。国連のリットン調査団は日本の権益に配慮(国際協調の道は残す)したが、その間、関東軍が熱河作戦という軍事行動を起こす。国連に経済制裁されるくらいなら、国際連盟を脱退。そもそもこのように日本が国際的に侮られているのは、支配層に問題があるからだとテロが相次ぐのが昭和七年。(昭和のファシズムは昭和八年に芽が出てきた) 昭和十二年には盧溝橋での武力衝突をきっかけに日中戦争に突入、和平工作は失敗し、昭和十三年の近衛声明に。盧溝橋は現地の軍双方で大規模化する意思はなかったが、それを超えて日本側の参謀本部作戦課などの思惑があり強硬な路線になってしまった。日本は中国に宣戦布告はしていないのに反撃をしてくる、つまり内乱の鎮圧であって、中国に謝らせる(ぼうしちょうよう)ことで終結させたかった。だが、この中国との戦争がズルズルと終わらず、それは英米の支援があるからで、その対立から戦争へ。昭和十五年には東亜新秩序を目指すため、日独伊三国軍事同盟を締結。結果、米との関係が決定的に悪化。昭和十六年に対立を打開するための日米交渉開始(ハルノートは厳しい内容だが、日本は開戦を決断できる状況にないはずと思われた)。その交渉の最中、石油のアメリカ依存を脱却のため南部仏印へ進駐したところ、アメリカは日本の予想を超える対抗措置・石油輸出禁止(フランスの承認を得ているのだから侵略では無いが、ただならぬ数の軍人が南下していた) 以下はご存じのとおり。
【ポイント】
*日本が軍事的に表へ出ていくのを後押ししたのは、実は日本のマスコミ(p.30)
⇒軍縮ブームのあと、満州事変が起き、新聞は一斉に支持。国民が煽られて後押し。
*究極的には、「日本の軍人の教育制度と内容」に基本的な過ちがあったのではないか
(p.38 保阪)
⇒頭脳明晰、分析力にも優れているタイプがなぜ?
*関東軍にとって張作霖は、実際に傀儡化できなければ存在価値がないというので、昭和三年に
暗殺 =中略= この背景を知った張学良は、父の仇を討つという心理で抗日に転じ、蒋介石
とともに中国統一の先頭に立った(p.66 保阪)
*リットン調査団の報告書は、国際社会の融和の中に日本を戻そうと試み、そしてその中で日本
の提起している問題については、私たちも共同で立ち向かい、ともに権益を享受するかたちに
するというようなことを言っています。(p.72)
⇒侵略して領土にしたのではなく、満州民族で作った国を認めないのは受け入れられない
*天皇が陸軍にストップをかけるような何らかの判断を下して、国民の反発を買うリスクを負わ
せるということは、侍従武官長や宮中の人としてはできなかった。(p.80)
⇒動き出した熱河作戦を止められなかった
*国際連盟脱退を強く主張したのは、むしろ新聞です。(p.83 半藤)
⇒斎藤実内閣はどうにもならないくらい参ってしまった
*日本が太平洋戦争に進む道筋は、この満州国建国と国際連盟の脱退による孤立主義が大きな
影響を持った(p.93)
*五・一五事件の裁判が行われた昭和八年、=中略= テロリズムそのものを悪とするのでは
なく、動機が正しければ何をやってもいいという空気ができ上がってくる(p.98)
⇒裁判で涙ながらに主張を訴える若い陸軍士官たちが英雄視され、反対に、犬養首相の家族に
冷たい目が向けられる
*二・二六事件は軍内の権力闘争によって起きた(p.106)
⇒後ろ盾になっていた荒木貞夫、真崎甚三郎は力を失い、梅津、寺内寿一、東条が主導権を。
*「皇道派」は、戦略観だけで言えば、ソ連と対決するというのを本義とします。=中略=
「統制派」は国内を統制して力を蓄え、中国をまずたたいて後顧の憂いをなくしてからソ連
と対決したほうがいいという戦略(p.108)
⇒戦略論の争いの結果、昭和十年の永田鉄山暗殺に反撃して二・二六事件を起こす
派閥争いが常態化し、青年将校を甘やかす空気が醸成されていた
*とくに議会ではこの二・二六事件以後、本来行うべき活発な議論が委縮していきますp.109)
⇒暴力の恐怖をもたらした。「私はいいが、下のものがどう思うですかね」といった圧力
*近代史の中で、中国と戦争する国は、基本的になかった =中略= 中国の内部に入っていく
メリットは何もなかったからです。=中略= それに対して日本は =中略= 支配下に置こうと
した。この発想自体に、日本の軍あるいは政治がなにか基本的錯誤を犯していたのではないか
(p.126)
*日本が本当の戦時体制に入ったのは、1938年の国家総動員法の制定からだと言える(p.141)
⇒陸海軍は日中戦争には3割くらいしか予算を割かず、対英米戦の準備をしている
*三国同盟は大島浩ありきだった。(p.156)
⇒個人的なドイツびいきの関係が陸軍首脳に受け入れられ締結に。米内、山本、井上などの
海軍はアメリカと敵対することになると徹底して反対
*日独伊三国軍事同盟を日本が締結した目的(p.160)
⇒戦勝国であるドイツがすべてかっさらってしまう。講和会議に戦勝国として参加したい
*日独伊三国軍事同盟が結ばれたときの日本人の熱狂ぶりは、本当に現在では想像もつかない
ぐらいのもの(p.164)
⇒新しい時代の同盟。めでたく平和な時代が来る
*日中戦争の初期には、ドイツと中華民国の間のほうが結びつきが深かった。=中略= こういう
構図を理解すると、盧溝橋事件以来の戦線拡大を憂いて、ドイツの駐華大使トラウトマンが
講和工作に奔走したのもわかる。(p.175)
*日本は三国同盟でドイツの戦争を自分たちの戦争の行く末と一体化させたわけだが、その背景
を探ると日本陸軍の親ドイツの体質がよくわかる。(p.177)
⇒明治期のドイツ陸軍の模倣、第一次大戦でのドイツの軍事力に惹かれた
*有田八郎(p.191)
1936~40年に外務大臣。ハル・ノートを見て、これで開戦を始めるのはおかしいと語って
いる。ここから交渉を始めるべきだと上奏文を書いた
*軍事指導者は、もう大体が開戦やむを得なし、といって文官に圧力をかけている。=中略=
結局近衛は辞職してこの厄介な政務から逃げ出してしまった。天皇と内大臣の木戸幸一は、
次期首班に東条を選んだ。強硬派の東条を首相に据えることで =中略= 軍内を抑えようと
した(p.208 保阪)
『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』大江 英樹(光文社新書 2022.9)
【満足度】★★
【概要・所感】著者は経済コラムニスト。本書はいわゆる「マネー本」とは違います。お金は使ってこそ価値があり、お金持ちになることが目標ではなく、楽しく過ごして幸せになることを人生で一番考えるべきというお話。お金を増やすこと自体にそんなに意味は無く、むしろ減らすことで得られるものの大切さを考えてみる必要があります。例えば、好きなことに使う・思い出に使う・人に使う(寄付)・価値のあることに使う(コスパ偏重)など、こうやってお金を減らしていくことが人生を豊かにするという著者の主張には共感しました。
【ポイント】
*「利用可能性ヒューリスティック」(p.22)
自分の身近で起こったことや自分が見聞きしたことは現実に起こりやすいと思ってしまう
*人生後半に向けて考えるべきことは、「お金を増やす」ことではなく、「お金をどう使うか」
ということでしょう。(p.151)
*お金を減らすことで「経験」という貴重なものを手に入れたり、人のために使うことでお金を
減らしたりすることによって、大切な「満足」を手に入れることができます。(p.159)
*「好きなことをやるために、生きている」そして「人生の目標は自己満足である」(p.162
森博嗣)
⇒欲しいものは買えばいい。でも必要なものはできるだけ我慢する。
*「人生でしなければならない一番大切な仕事は、思い出を積み重ねることです。最後に残る
のは、結局それだけなのですから」(p.179)
*「人は用だけを済ませて生きていると、真実を身落としてしまいます。真実は皮膜の間に
ある、という近松門左衛門の言葉のように、求めているところにはありません。」(p.211
篠田桃紅)
『太平洋戦争史に学ぶ日本人の戦い方』藤井 非三四(集英社新書 2023.4)
【満足度】★
【概要・所感】日本人の戦史は将来の日本に資する示唆に富んでいます。大東亜戦争は受け身として巻き込まれたのでもなく、指導的立場の者が失敗した結果というだけではありません。それらの歴史を学ばないと同じようなことが起こりかねないと著者は危惧していますが、俯瞰して考えれば今のビジネス社会でもそう変わらない意思決定や行動が多く、戦争の反省は果たして活かされているのか・・・。本書は戦術面や兵器がけっこう専門的ゆえにイメージがしづらく(=読みにくく)★はひとつで。
【ポイント】
*山本(五十六)は航空のことならばまず大西(瀧治郎)に相談するのを常としていた(p.12)
*佐藤幸徳と牟田口 =中略= この二人は =中略= 軍内結社「桜会」の主要メンバー
だった。=中略= 佐藤は九州各地で過激な講演を重ねていたが、これに厳重注意をしたのが
参謀本部庶務課長の牟田口だった。これで二人の関係は悪化(p.101)
*海軍が助成金を支出して民間船として建造し、戦時にこれを徴傭する方式(p.129)
*搭載武器を優先して航続力を犠牲にしている日本の艦艇は、十分なタンカーの支援がなければ
作戦行動に支障をきたす。(p.132)
*兵役義務は皇族にも課せられていた。(p.162)
⇒昭和天皇は陸軍と海軍の現役大将。皇族も満18歳になると軍務に就くことが義務
*兵役は義務であったが、同時に国民としての権利(p.162)
⇒封建時代の士分になった気分を味あわせる
*日本陸軍では師団を戦略単位として位置付けていたが、その師団数を四年で三倍にしたの
だから、それを支える戦略基盤の拡充を同時並行的に進めなければならなかった(p.176)
⇒「国民皆兵」で兵は集まるが、実際は小銃が不足
*特務士官や兵曹長のトリオこそ戦艦の戦力発揮を担っており、ひいては連合艦隊の命運を
左右する存在だった。(p.181)
*部隊を統率する各級将校の資質が大動員によって低下(p.188)
⇒従来、少佐は少尉から15年。戦争末期には5年。指揮官としての修練不足。
⇒優秀だと連隊本部から抜け出せない=戦死しない限り第一線から抜け出せない
『進撃のドンキ』酒井 大輔(日経BP 2024.8)
【満足度】★
【概要・所感】日経BPロンドン支局長の著書。パン・パシフィックインターナショナルHDはセブン、イオン、ユニクロに次いで日本4位の売り上げ高を記録しています。本書は日経ビジネス23年9月号の特集が起点となり、ドンキの取り組みを400ページにわたって紹介しています。ある意味、長編小説で、ドンキの短編コラム著者の思い入れがわかる1冊です。ドンキがテーマの本書に限っては紹介写真がすべてカラーなのはドンキの店内をイメージしやすくグッドアイデアだと思いました。
【ポイント】
*ドンキには「顧客親和性」という言葉がある。店づくりには想定顧客に最も近い店員が関わる
べきという考え方だ。(p.86)
⇒Z世代だからZ世代のトレンドがわかる
*「物を売るんじゃない。空間創造なんだ。面白い空間ができれば、ついでに物が売れるんだ」
(p.110)
⇒店そのものが作品。(安田創業会長)
*「仕事を『ワーク』ではなく、『ゲーム』として楽しめ」(p.230 源流)
*人というのは、自分が主役になって、自らの意志で決められる仕事に関しては、真摯かつ一生
懸命に取り組む(p.327)
⇒楽しくないことで人は力を発揮しない。楽しいから爆発的な成果を生む
『悪魔の傾聴』中村 淳彦(飛鳥新社 2022.9)
【満足度】★
【概要・所感】著者は風俗や貧困、介護などわりと際どい社会問題に光を当てているフリーのノンフィクションライター。その経験から、常に聞き手が主導権を持ち、常になぜという疑問を持って、想像力を働かせることでいかにして本音を引き出すかのノウハウが書いてあります。本音を引き出せると、相手への理解が深まったり、知らない本音を聴けるので視野も広がるますし、信頼もされます。ここぞという場面で、徹頭徹尾、聞き役を演じるのが“悪魔”の傾聴です。事例は著者のインタビューの経験が下地になっており、想定読者は後進のライター向けですが、一般読者も覚えておいて損はありません。
【ポイント】
*人と会話するあらゆる場面で絶対にやってはいけないこと(p.21)
●否定する
●比較する
●自分の話をする
*自分の好き嫌い、興味関心は一切関係ありません。とにかく相手が話を継続できる質問を
心がけます。(p.29)
⇒自分が知りたい質問ではなく、相手の語りをもっと深めるための質問をする
*褒め言葉(p.56)
かわいい方・優しそうな方・仕事ができそうな方・知的な方・面白そうな方
*ミラーリングする最大の目的は、相手の語りとリズムをあわせることです。(p.78)
⇒リズムがズレると語りも鈍る
*「いつも心に底辺を」(p.180)
⇒自分のような低辺の話は価値がないし、語っても迷惑だろうと自覚し、自分語りを律する
*聞き手に意見やアドバイスは求めていません。いったいどうして?という好奇心をもって、
リズムをあわせて相づちを打ち、相手が語りやすい環境整備に徹するべき(p.190)
⇒世界は自分がわからないことだらけ。理解しようとするからアドバイスをしてしまう
『だから僕たちは、組織を変えていける』斉藤 徹(クロスメディア・パブリッシング 2021.12)
【満足度】★
【概要・所感】最初、図書館で借りて、これは良書!と購入しよう思ったものの機会を逸し、やっと図書館の順番を待って借りてきたのですが、これが全く響かない内容でどこを良いと思ったのか。内容も全く覚えておらず・・・。