7月に読んだ本は9冊(図書館本8冊・購入1冊)でした。
気が向いて半年ぶりの更新ですw
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<満足度> ★★★ 感動 ★★ 面白い ★ 収穫少
<お気に入り順>
『学芸員しか知らない美術館が楽しくなる話』ちいさな美術館の学芸員(産業編集センター 2024.1)
【満足度】★★★
【概要・所感】今年読んだ本で上位。東京某所の美術館の学芸員である著者が、学芸員の仕事や美術館のウラ話をとてもわかりやすく書いており、美術館、展覧会、作品を楽しむヒント満載です。学芸員は何をする人なのか、その1日や、仕事道具の紹介、学芸員の身につけている能力等がよくわかりました。
【ポイント】
*展覧会を企画するにあたっては大原則があります。それは「始めに作品ありき」だということ
です。(p.22)
⇒コンセプトが先ではなく、具体的な作品を起点に考え始める
*出品交渉(p.33)
学芸員同士が信頼する間柄なら、作品を貸してもらえる確率は上がる
*図録という形で残していくからこそ、美術館の歩みがきちんとアーカイブになる。(p.38)
*美術品を扱う輸送業者(p.47)
日通・ヤマトの美専車。荷台は空調管理可能で振動吸収機能が付いているトラック
*学芸員になるためには国家資格のの学芸員資格を取得する必要があります。(p.69)
*公立の美術館でも、私立の美術館でも、存続するためには母体となる組織から予算をつけ
続けてもらう必要があるわけですが、その時に入館者数という実績は大きな意味を持ちます。
(p.115)
⇒博物館法による学芸員の仕事ではないが、学芸員を含む職員・スタッフが広報活動
*美術館では湿度が65%を超えないよう、コントロールすることが肝心(p.124)
⇒温度20℃・湿度60%(高温多湿ではカビ、湿度が低いと乾燥して作品の表面が割れる)
季節に応じた展示を考える(冬場は乾燥に強い陶磁器などの展覧会、春に日本画)
*一見、無限の無駄のようにしか見えない美術体験こそ、美術館に求められる最大の役割では
ないだろうか。(p.136 安村敏信氏)
*状況に応じて無駄な言葉をおり交ぜる能力こそ、コミュニケーション能力の高さ(p.138)
⇒人間らしい動きや会話にはノイズが適度に含まれていることが重要。
⇒マイクロスリップ
*美術鑑賞の醍醐味は、作品とじっくり向き合うことで、自分の中の価値観だったり常識
だったり固定観念だったり、=中略= 少しぐらついたり、揺らいだりするところに
ある =中略= 展覧会を「見る前の自分」と「見た後の自分」は同じではないのです。(p.150)
『トラジャ』西岡 研介(東洋経済新報社 2019.10)
【満足度】★★
【概要・所感】『週刊東洋経済』の連載「JR 歪んだ労使関係」を追加取材し、大幅加筆し単行本化したのが本書の内容。タイトルのトラジャとは、国鉄の分割・民営化前後に『職業革命家』として革マル派党中央に送り込まれたメンバーに名付けられた名称のこと。JR東日本とJR北海道vs労組(そしてJR革マルと党革マルの内ゲバ)の激闘の記録600ページ(!)です。当時、不思議だったJR北海道で社長が二人も続いて自殺し、脱線事故やトラブルが噴出していた裏事情がよくわかりましたね。労使対立や労労対立は昭和の話と思っていましたが、令和の時代においてもJR総連傘下の組合でこんな泥仕合が普通に行われているとは驚きでした。
【ポイント】
*中曽根内閣には、=中略= もう一つの狙いがあった。=中略= 「日本最大・最強の組合」
といわれた「国鉄労働組合」潰し。(p.46)
*本来、乗客の生命や安全を守るべきはず運転士が、JR東労組という「組織」を守るために、
同じ運転士に執拗に嫌がらせをし、事故を誘発させようとしていた(p.130)
*JR北海道労組は20年近く前から、他労組との「平和共存否定」の方針を掲げ、自らの組合員に
対し、他労組の組合員との交流を一切禁じている(p.337)
⇒仕事を教えない。雑談、挨拶も禁止。結婚式そのものも妨害。
*他労組との「平和共存否定」という排他的で、攻撃的な考え方を組合の方針として掲げたのは、
他でもない。「JR北海道労組の首領」といわれた佐々木信正氏である。(p.346)
*分割・民営化当初の赤字規模に応じて =中略= 経営安定基金の運用益で、鉄道事業の赤字
の埋め合わせをし、鉄道網を維持することとされた。(p.357)
⇒低金利の長期化=運用益の目減りでスキームが破たん
*JR北海道労組は、36協定違反問題によって、中島社長が目指していた労政改革を潰していた
だけでなく、その担い手だった島田常務を、JR北海道本体から放逐することにも成功した
(p.473)
『思い邪なし 京セラ創業者 稲盛和夫』北 康利(毎日新聞出版 2019.4 )
【満足度】★★
【概要・所感】京セラ・稲盛氏の評伝。鹿児島での生い立ちから松風工業入社、そして京都セラミックの立ち上げ、電気通信事業自由化に伴うDDIへの挑戦からのKDDI設立、そして最後は78歳でのJALの再生と、京セラ時代だけでなく稲盛和夫の人生を追体験できます。JALも昔は国営企業だったので、その再生の大変さは気になりましたが、同じくDDIの方が大変だった印象が。本書は自分の仕事に生かすというよりほとんど小説と思って読んでいたのですが、ホンモノの松下幸之助が登場したりする実在の人物と交差する交友関係が面白いです。特に、塚本社長なるワコールの創業者なんて全く知らなかったのですが、稲森氏とは相当に懇意だったらしく大変興味を持ちました。
【ポイント】
*松下幸之助の真似をしていたのではいつまで経ってもその境地にはたどり着けない。自分なり
の独創を加え、松下幸之助を超えようと頑張って初めて、松下幸之助の境地にたどり着ける
のではあるまいか。(p.231)
*稲盛人脈はほとんど塚本人脈と言っていい。(p.254)
*成功するコツは成功するまでやり続けることだ。(p.271 松下幸之助)
*最高のバトンタッチ(p.485 JALフィロソフィ)
⇒自分の担当している仕事だけを考えるのではなく、次の工程を担当している人を思いやる
気持ち。それがうまく働けば仕事は円滑になる
*人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力(p.541 KDDIフィロソフィ)
『オトナ女子のすてきな語彙力帳』吉井 奈々(ダイヤモンド社 2022.4)
【満足度】★★
【概要・所感】著者はてっきり女性と思っていましたが、元男性で10代から水商売・ショービジネスの経営に携わり、現在は女性として結婚。それを機に水商売は卒業、その後15年にわたり企業や大学でコミュニケーション講師として活躍中。意外にパッとは出ないフレーズやワードが多かったので、オトナ女子と対象を絞っているのが勿体ないですね。この豊富な語彙力は、水商売の経験が活きているなという気がします。覚えて使いたいフレーズをメモ。
【ポイント】
*お時間を割いていただき、ありがとうございます(p.35)
*感銘を受けました(p.48)
*私の思い違いかもしれませんが(p.59)
*教えてもらう内容が、比較的簡単で一時的な場合は「ご教示」、より専門的・継続的な場合は
「ご教授」(p.61)
*このたびのお取り計らい、深謝いたします(p.76)
*所作が美しいですね(p.129)
*卓越していますね(p.141)
*その考えには至りませんでした(p.142)
*今後の励みになります(p.144)
*以後、心して取り組むようにいたします(p.205)
*心ならずも約束を守れず、大変失礼いたしました(p.212)
『決断=実行』落合 博満(ダイヤモンド社 2018.11 )
【満足度】★★
【概要・所感】「采配」以来、久しぶりの落合氏の著書。本書は中日監督時代のエピソードが多いように思います。ロッテの新人時代、ドラフト下位指名ということもあり、練習にコツコツと打ち込んで、その結果に三冠王を獲ったことがわかります。監督時代も含めて「オレ流」と独特な考え方を持っていると形容されますが、根本の考えを聞くとそう特異でもないことに気が付きます。目的意識、結果にこだわる、徹底して実行などのキーワードが浮かびました。
【ポイント】
*監督という仕事を通して私が痛感しているのは、自分自身の仕事は何かを常に忘れず、求め
られた役割を自分なりに全うすれば、周囲の誰もが何も余計なことは言わなくなるという
ことだ。(p.62)
*自分の所属するチームに、自分の成長を望んでいない指導者がいるのだろうか。=中略=
自分にとっては耳の痛いことでも勇気を持って伝え、何とか結果を出してもらいたいと
思っている人たちに囲まれているのではないか。(p.208)
『つじのじつ話』辻 発彦(ベースボール・マガジン社 2023.6)
【満足度】★★
【概要・所感】埼玉西武ライオンズで2017年から6年間、監督を務めた辻氏の初の著書。「85のじつ話」で構成されています。侍ジャパンの城石コーチが、ヤクルト時代に辻氏からいろいろと学んだと著書で言っており、気になっていました。西武黄金期からヤクルトへ移籍した選手時代、ヤクルトと中日でのコーチ時代を経て、中日の二軍監督、そして古巣のライオンズの監督時代と自身の野球人生を振り返ります。辻氏は、廣岡監督・森祇晶監督・ノムさん。落合監督・森繁和監督代行という錚々たるメンツに仕えた人物なので、かなり期待していたのですが、全体を通してエッセイ風の内容で、辻氏独自のマネジメント論などは体系的に知ることができず、そこは残念でした。(一番、興味のあったヤクルトと中日でヘッド格コーチ時代の話題が少なかった)
【ポイント】
*自信なんてまったくないから。まず聞く、そしてやってみる、それを始まりにしていました。
=中略= アドバイスを聞きながらも、自然と「これは違う」「これは自分に合わないな」と
分かってきます。そうなってから自分に合ったものだけを取り入れ、ほかは捨てていけば
いい(p.167)
『誰も知らない日建設計』宮沢洋 (日経BPM 2021.11)
【満足度】★
【概要・所感】著者は日経アーキテクチャーの元編集長。関東なら東京タワー、東京スカイツリー、東京ドーム、さいたまスーパーアリーナ、成田国際空港など、関西なら中之島図書館、OBPツイン21、キーエンスの本社ビルなど誰もが知っている建築を設計していて、当然、業界内で知らない人はまずいないが一方、一般で知っている人は相当少ないと思われる特殊な知名度を持つのが世界最大級の設計会社・日建設計。元々、住友グループの営繕部門がルーツで現在、創設120年超ですが、その設立からの歴史、作品紹介、社外業界人へのインタビュー、現在の日建設計のデザインへの取り組み方など実像を紹介。個人的には日建設計との出会いはポーラ美術館の設計で知って、個人の設計事務所が多い中、法人でもセンスのある建築設計しているところがあるんだなぁと思ったことを覚えています。
【ポイント】
*一級建築士資格を持つ社員を、日本で一番たくさん抱えているのが日建設計(p.4)
*大阪事務所のリーダー的存在で、後に社長も務める薬袋公明(p.17)
全国の銀行の拠点ビルや関連施設を設計。林昌二が東の顔、薬袋は西の顔
*日建設計という組織は、一言でいうと、“縛られ嫌い”の集団なのだ。(p.20)
*山梨(※和彦)と大谷(※弘明)は、社員2000人の日建設計の中でも、飛び抜けて目立つ
存在だ。(p.21)
*1900年6月、住友本店に「臨時建築部」を発足させた。これが日建設計の源流だ(p.25)
⇒礎を築いたのは初代技師長の野口孫市と、彼の急逝後、引き継いだ日高胖
*超高層ビルというものは、繰り返しが多く効率がいいからつくるものだ。(p.92)
⇒キーエンス本社は構造計算が難しいし、部材の納まりにいちいち新たな検討が必要になる
*社名が知られていなくても、個人名が突出しているかというと、そんなこともない。=中略=
自分の名前を高めて次の仕事を受注する個人の事務所とは違い、彼らは、「住友の名を
高めること」が次の仕事につながった。(p.94)
⇒中之島図書館の棟札:施主・住友吉左衛門、工事顧問・辰野金吾、野口と日高はその他大勢
『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』松波 龍源(イースト・プレス 2023.9)
【満足度】★
【概要・所感】著者は真言宗僧侶の松波龍源氏。本書は音声コンテンツを書籍化した内容です。第一部ではメタバースやWeb3.0とかVUCAとか一応、ビジネスシーンのキーワードと重ねて仏教の考え方を解説しているテイにしていますが、全編を通して仏教の本質的なことが学べます。本書を読む前に「仏教」の予習してから読むとよりわかりやすいかもしれません。
【ポイント】
*仏教の教えは「苦しみを発生させないように」という考えが根本にあります。(p.24)
*「私」は他者が存在しないと成り立たないのですから、自分の利益のためには、自分以外のこと
も考えなければいけない。(p.63)
*唯心論(p.76)
自分の認識の中にしか、喜びや悲しみは存在しない。自身がどう認識するかで決まる。
⇒単なる物体だけあっても「欲しい」という自分の気持ちがないと何も思わない
*勝手に意味を求めて「これは意味のないことだ」と決めつけているのは、自分の心なのだと
思いが至った瞬間、そうした自分の心の存在を確認することこそが修行(p.85)
⇒意味があると決めるのも意味が無いと決めるのも自分次第
*自分が体験することは、自分自身がそれまでしてきたことの結果でしかない。自分の
アクションを受けて、他人はリアクションをするからだ。(p.107)
*釈迦牟尼は「水を浴びて解脱に近づくならば、ガンジス川に棲むエビや魚は、あなたより
解脱に近いということですね?」と聞き返した(p.136)
⇒自分の心を清められるのは自分の行動と心のあり方。
*当時(奈良時代)のお坊さんはいわゆる公務員で、国家に認められた僧侶「官僧」でした。
それに対して、官の許可を得ずに得度(出家)した民間の僧侶を「私度僧」と言います。(p.280)
⇒私度僧で有名なのは行基
『仕事を減らす』田中 猪夫(サンマーク出版 2023.10)
【満足度】★
【概要・所感】仕事を減らすために「小さなイノベーション」を生み出すエッセンスをまとめた内容。途中から営業系のノウハウになったため、個人的にはイマイチでした。イノベーションは「組み合わせ」が大事だとか、何事も試すといったオーソドックスな話が多く、数時間で読める本書では、1日の仕事がを時間で終えるレベルの効率化は難しい印象です。
【ポイント】
*技芸の伝承においては、「師を見るな、師が見ているものを見よ」と言われる。(p.172)
⇒師を見ているだけでは自分を基準に解釈し、模倣しているだけ=自分からの視座しかない
そうではなく、師が実現しようとしているものを正しく捉える