朝の書評 -17ページ目

うわさのベーコン(再)

猫田 道子
うわさのベーコン

実は、前回、表題作の「うわさのベーコン」だけ読んで書評したのですが、この本には、全部で4編収録されていて、ふたつめの「西山さん」をさきほど読了しました。
これは大長編で、加奈子と、加奈子に恋する西山と、恋敵でお金持ちの森本がいて、その三角関係を軸に話が進んでいきます。3人とも音楽の道に進み、3人とも音楽家として成功します。加奈子は森本が好きで、二人が結婚して子供が産まれます。しかし、森本が若いお手伝いさんと浮気をしたり、経済状態が一時的に悪くなったりするなどのドラマがあります。それでも加奈子は森本と最後まで添い遂げます。森本は、少しずつ体の調子が悪くなって、そのことを家族に隠していますが、とうとう重い病気であることがわかります。三人の子供はそれぞれ幸せな結婚をし、森本はそれを見てから病気で死にます。
物語のラストは、ずっと加奈子に片思いして独身を通していた西山が加奈子に再婚する気はないかと聞いて、加奈子がそのつもりはないと答えて終わります。
いやあ、これはなんか、衝撃でした。これは、ぶっとんでますねっ! 読んでて息が苦しくなってくるようです。でもストーリーをあらためて思い返してみると、大筋で物語的な辻褄、合ってるんですね。そこがまたなんとも、圧迫感があるというか。
三角関係、お金持ちとの結婚、仕事の成功、夫の浮気、子供の成長、どれもドラマの王道ですね。でも、なんでタイトルが「西山さん」なんだろ。そこがまたなんというか、文学的というか。
とにかく大長編の迫力がありました。読み終えて、なんだか疲れてしまったとともに、概ねハッピーエンドでほっとしました。残り2編は、時間をおいて体力が回復したら、いずれチャレンジしてみます。

うわさのベーコン

猫田 道子
うわさのベーコン

なにが引っかかっていたのか、「物語の構造分析」と同時に「うわさのベーコン」も買って、交互に読みました。「うわさのベーコン」はそこそこおもしろかったのですが、どこでこの小説のうわさを知ったのかなかなか思い出せませんでした。本の中には解説がなく、帯の惹句には、雑誌「Quick Japan」で紹介されるやいなや大波紋、と書かれてあったが、「Quick Japan」なる雑誌を一度も読んだことがありません。「うわさのベーコン」をグーグルで検索してみたが、あまりひっかかってきません。高橋源一郎が誉めていたという一文で、もしや、と思って、ずっと以前に買って、一度読んだきりの「一億三千万人のための小説教室 」を開いてみると、前書きで「うわさのベーコン」が引用されていました。誉めているかどうか、微妙です。作者の精神のチューニングが少しずれている、と書いてあります。
そう言えば、誤字脱字を直さず出版するというのも奇妙ですね。ひょっとしてこの作者は、病気か何かなんでしょうか。高橋源一郎がこれを小説ではないというのはそういう意味でしょうか。そして本の帯には「脈絡のないストーリー」と書かれてあったが、しかし、そんなことはないです。
表題作の「うわさのベーコン」のあらすじは、兄を交通事故でなくして、そのことで心に傷を負った主人公が、兄の形見のフルートを練習し、遂にはフルート奏者になる。またその間に、いくつかの恋をする、けれども最後は、兄と同じように交通事故で死んでしまう、という内容です。誤字脱字や敬語のおかしな用法は、確かに目立ちますが、ウェブ小説なんかでは、そういうの、よくあることです。
そんなわけで、「うわさのベーコン」はいろいろ瑕疵はあるけれども、物悲しいけれども前向きな旋律がストレートに伝わってきて、よい作品であると思いました。でも、全然突き抜けてるとか破天荒というほどじゃなくて、ストーリーの脈絡は整合しています。むしろ細心丁寧に書かれてある印象です。内心、自分にもこれくらいは書けるんじゃないかと思いました。高橋源一郎は認めてくれなさそうだけど。

物語の構造分析

ロラン・バルト, 花輪 光
物語の構造分析
大変お久しぶりでございます。意識して本を読もうと努力しないと、なかなか読めないものですね……。新緑のころ、気持ちも新たに頑張ります。
ようやくロラン・バルトを読んでみました。タイトルだけ見て、何か小説の書き方と関係あるのかなと期待していたのですが、あまり関係ないようです。バルトは物語の構造分析をする際、プロップやグレマスを参照しています。私はプロップもグレマスも読んだことがないのですが、どうやら彼らは、昔話を、欲望とか贈与者とかの機能に還元し、プロットを類型化して、それを物語の構造と呼んだようです。またバルト自身、聖書の物語を分析して、そこから「敵対する兄弟」という意味を読み取っています。バルトはまた別のくだりで、コーヒーが広告の中で休憩の記号として使われていることを説明しますが、つまりは物語の記号論的解釈というものでしょう。結局、本書でバルトが小説の構成に触れたのは第1章のみで、後は社会の中の「物語」を記号論的に分析しています。その中には日本の文楽や芭蕉の俳句なども取り上げられていて、なかなかおもしろかったです。
一方で、このような「物語」の記号は、シクロフスキーにおいては、ファーブラ(素材)と呼ばれ、シュジェート(構成)を中心とした小説の構成の分析から厳しく追放されています。
フォルマリズムは、構造主義や記号論に影響を与えたとされており、実際、本書でもフォルマリズムへの好意的言及がありますが、小説の構成の分析に関連して、ブレヒトの名前を挙げても、またプロップやレヴィ=ストロースを参照しても、ついぞシクロフスキーは出てきませんでした。
実は、私は、今のところ、シクロフスキーとロラン・バルトをそれぞれ1冊ずつ読んだだけであるので、何か結論めいたことを言うには知識が足りなさ過ぎるのであって、これは現時点での単なる妄想程度のものかもしれませんが、せっかく小説の構成を取り上げながら、またフォルマリズムに親しみを持っていると公言しつつも、ロラン・バルトからは、フォルマリズムが(詩や演劇ではなく)小説の構成を分析した部分が、なぜかごっそり抜け落ちているように見えます。

登場人物の登場過程
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/tojojinbutsu.htm

宇宙の孤児

ロバート A.ハインライン, 矢野 徹
宇宙の孤児
最近、シンプル・ストーリーに関心があって、それでたまたまうちの本棚にあったこの本の構成をちょっと調べてみようかと思いつき、再読してみました。
ストーリーは、ネタバレしちゃいますけどいいですか――巨大宇宙船で何世代もかけて、ケンタウリに向かう計画があって、ところが途中で反乱が起き、上級士官や技術者が皆殺しになって、知識が断絶してしまうんですね。ところが非常に堅牢で巨大な宇宙船なもんですから、その後もずっと宇宙を漂流していまして、中の人たちは、これが巨大な宇宙船だということも忘れたまま、中世的迷信の中で暮らしています。過去の記憶は断片化され神話化されていまして、たとえば、この計画を立てたのは、ジョーダン財団なんですけれども、ジョーダンは、この世界を作った神様であるとされていて、わずかに残った物理学の本の裏に「ジョーダン財団」と印刷されているのを見て、人々はなにか恐れ多いような信心深い気持ちになってしまうんですね。それから、この世界が実は巨大宇宙船であると気付いた主人公が、それゆえに異端裁判に掛けられて、「それでも<船>は動いてるんだ!」と叫んだりします。船にはふたつの勢力があって、ジョーダンを神と信じ、彼の作った船の規則に従って今までどおり信仰心を持って生きていこうとする人たち、それに対して、ジョーダンの話は神話であり、それはそれとしてもっと現実的に生きていこうとする人たち。ただしこの人たちの現実とは、船が世界であり、すべてであり、船の外には何もなく、いにしえの物理学の本に、船が実際に動くものだという記述があるのは、ただの宗教的な比喩に過ぎない、と思ってるのですね。両者の意見がもっとも鮮明に分かれるのが、ミューティへの対応です。船で反乱が起こったとき、一部の機能が停止して、そのために有害な宇宙線が船内に入ってくるようになり、遺伝子に影響して、双頭だったり脚が四本あったりするミュータントが生まれてくるようになりました。彼らがミューティと呼ばれる人たちで、反乱の悪い血を受け継ぐものとして迫害され、船の中心部に棲むようになりました。船は円筒形で、コマのように回転しており、外壁の内側に重力が発生していますが、中心部に行くにつれ重力が弱まります。中の人から見ると、中心から同心円状に天井が作られていて、上の階へ登っていくほど重力が薄くなりミューティたちの棲む危険な領域になるのですね。そして宇宙船の操縦室とか、外の宇宙を見る窓とか、外に出るための小型宇宙艇とかはこの領域にありまして、人間たちはそれを知らずにいるわけです。そして、信心深い人たちは、ミューティもジョーダンの計り知れない計画の一部なんだろうと思って、現状維持を考えており、若い現実派たちは、ミューティを掃討して船の資源をすべて手に入れようと考えているのですね。
ながなが紹介しましたけれども、シンプル・ストーリーには、二つの対立する勢力があって、それは考え方の違う二つの派閥の場合もあるし、善と悪との対立の場合もあるし、あるいは個人の内面の葛藤である場合もありますが、これが順を追って変化していく様子が描かれているという共通の構成があるように思われます。

225.シンプル・ストーリーを考える・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00225.htm
226.シンプル・ストーリーを考える・其の七
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00226.htm
228.シンプル・ストーリーを考える・其の九
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00228.htm
229.シンプル・ストーリーを考える・其の十
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00229.htm
230.シンプル・ストーリーを考える・其の十一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00230.htm
241.クリムゾンの迷宮は傑作か?・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00241.htm
334. 第三・サブストーリーを考える
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00334.htm
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm

模造記憶

P.K. ディック, 浅倉 久志
模造記憶
久々の更新です。先日ブックオフで見つけたんで、懐かしくなって買いました。105円でした。これは決してディックの最高の短編集ではないのでしょうが、それでも十分楽しめました。
その中の特に一番面白いというわけではない「欠陥ビーバー」のあらすじを紹介しますと、妻に虐待され精神科医にぼられる安月給のしがないビーバーに、「あなたを愛しています」という手紙が届いて有頂天になって返事を書こうとすると、それは妻の策略で、浮気者め、とさらに罵られてしまう。そして再び、別の女性から同様の手紙をもらうのだけれども、彼女が妻の作り出した罠なのか、実在の女性なのか非常に不安であり、何度も手紙のやりとりをして確認し、とうとう会いに行く。何より彼女が妻の罠でもなく自分の作り上げた妄想でもなく、実在することが肝心だと考えているビーバーの前で、その女性は三人に分裂し、そのそれぞれが魅力的な女性だった。彼女たちはますます強く実在し始め、おしゃべりし続け、一方で、ビーバーのほうはだんだん実在しなくなって、影のように消えていく。
あまりうまい要約とは言えませんね。とにかく、非常に実験的な作品で、にもかかわらず面白く、そして「現代人の存在の不安」というやつが素直に伝わってきます。実験といえば、純文学こそが最も前衛的な実験を行える場であるはずですが、そういった実験はすべて何十年も前にSF作家たちがすっかりやってしまったのかもしれません、しかもずっと面白く。
100年後、古典として残るのは、凡百の現代文学ではなく、フィリップ・K・ディックかもしれません。

297.今更PKディックを読む・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00297.htm

小説の技巧

デイヴィッド ロッジ, DaVid Lodge, 柴田 元幸, 斎藤 兆史
小説の技巧

50の短い章からなるこの本は、新聞の文芸欄に連載されたもので、毎回、名作からの短い引用のあとに、様々な小説の技巧がわかりやすく簡潔に説明されています。例題と解説がワンセットになった受験参考書を買えと、昔、和田秀樹が言ってましたけれども、ちょうどそんな感じで、名作小説(多くは古典)からの短い引用を読んで、なんとなくその雰囲気をお手軽に味わうことが楽しいし、ユーモアのあるロッジの解説も面白い、これは本当に良い本です。目次は、その章で扱う技巧の名前が並んでいて、たとえば、第三章は「サスペンス」ですが、冒頭でトマス・ハーディが引用されます。私は知らないですが、昔の有名な作家らしいです。こんなところからサスペンスを引いて来るところが、なかなか碩学な感じで、でも文章は平易で、安心して読めます。他にも、書簡体小説とか視点とか場の感覚とか、文芸評論を読むときに知っておいたほうが良いような言葉が並んでいて、そのような知識をざっと得ることができるようなオトク感もありますね。
フォルマリズム関係の本を読むと、しきりと「動機付け」という言葉が出てきて、動機というと、犯行の動機とか転職の動機とか、普段そういうふうに使いますけれども、モチーフを動機付けるとか、ワトソンはそのように動機付けられる、とか書いてあって、なんか微妙によくわからなかったりします。けれども専門用語というほどでもないので、そのような方向からもなかなか調べづらいし、国語辞典を引いてもぴんとこないしで、こういう中途半端な言葉はかえって難しいのですね。そこで、この本の目次を見ると、ずばり40章に、「動機付け」とあります。その頁を開きますと、ジョージ・エリオットが短く引用され、作者が登場人物をどのように動機付けるかについて解説されています。どのようなモチーフをどのように組み合わせて、登場人物の行動を本物らしく納得できるように描くか、というような意味のようですね。
好きな章から気軽に読みながら、ジョージ・エリオットも昔の有名な人らしいですが、そういう高尚っぽい雰囲気も短めに味わいつつ、ちょっと利口になった感じがする本です。

4.ハウツー本を斬る・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00004.htm
5.ハウツー本を斬る・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00005.htm
18.小説の構造って何だ・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00018.htm
24.「白昼の悪魔」を分解する・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00024.htm
55.視点とは何か・其の十三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00055.htm
63.分節を構成する要素・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00063.htm
124.小説の本丸は構成である・其の参
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00124.htm

チェーホフ 短篇と手紙

アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ, 山田 稔, Anton Pavlovich Chekhov, 神西 清, 原 卓也, 池田 健太郎
チェーホフ 短篇と手紙

以前に散文の理論をここで紹介するためにぱらぱらと読み直したのですが、そうしているうちに、あまりに面白いのでもう一度頭から読み始めました。シクロフスキーは、もっともプリミティブな小説として、冒険譚を挙げ、その構成について説明しています。冒険譚は、モチーフが段階的または螺旋状に展開して、その根底には誤解や秘密が横たわっていると言うのです。これだけだとなんだかよくわからないですけれども、たとえば、私は自分のホームページのエッセイの中で、月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート の構成について考えたことがあります。これは昔ながらの冒険譚の構成をきちんと踏襲していて、主人公が異界に流され、次第に成長していく様が、モチーフの段階的展開によって語られ、またその根底には、主人公がなぜ異界に連れ去られたのかという秘密が横たわっています。
さてそこで、ロスチャイルドのバイオリンですけれども、これもまた、構成を見ていくと、モチーフが段階的に展開していることがわかります。主人公のヤーコフは、冒頭で気難しい冷淡な男のように描かれ、そして結末では、心の優しい男として描かれ、その変化を段階的に描いているのですね。そして、ヤーコフは冷たい男なのかな、それとも優しい男なのかな、という疑問が、ちょうど冒険譚における宝の在り処や誘拐されたヒロインと同じような働きをしていることに気付きます。
散文の理論を読み、その言葉を、実際の小説に即して理解していくとき、小説を分節化して把握せよ、という大江の言葉もまた、具体的な小説に即して理解できるようです。以前、漠然と本を読んでいたときと比べて、より深く小説を楽しめるようになったと思います。そこで、どの小説の構成の分析でもいいんですけれども、読みやすいチェーホフの短編を推薦しておきます。

186.ロスチャイルドのバイオリンを読む・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00186.htm
187.ロスチャイルドのバイオリンを読む・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00187.htm
188.ロスチャイルドのバイオリンを読む・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00188.htm
189.ロスチャイルドのバイオリンを読む・其の四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00189.htm
190.ロスチャイルドのバイオリンを読む・其の五
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00190.htm
192.ロスチャイルドのバイオリンを読む・其の七
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00192.htm
220.シンプル・ストーリーを考える・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00220.htm
221.シンプル・ストーリーを考える・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00221.htm
222.シンプル・ストーリーを考える・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00222.htm
223.シンプル・ストーリーを考える・其の四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00223.htm
224.シンプル・ストーリーを考える・其の五
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00224.htm
225.シンプル・ストーリーを考える・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00225.htm
226.シンプル・ストーリーを考える・其の七
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00226.htm
227.シンプル・ストーリーを考える・其の八
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00227.htm
228.シンプル・ストーリーを考える・其の九
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00228.htm
230.シンプル・ストーリーを考える・其の十一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00230.htm
241.クリムゾンの迷宮は傑作か?・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00241.htm
262.中二階のある家を捜索する・其の十二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00262.htm
268.中二階のある家を捜索する・其の十八
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00268.htm
277.そろそろ新人賞の獲り方を考えてみる・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00277.htm
286.天地無用・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00286.htm
287.天地無用・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00287.htm
310.才能とは何か・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00310.htm
319.知らないことを想像してみる・其の八
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00319.htm
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm
中二階のある家は感傷的か
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/chunikai.htm

AA716,juji

どんどん、にゃー!

小説の方法

大江 健三郎
小説の方法 (〈特装版〉岩波現代選書)

大江 健三郎
小説の方法
私は小説の書き方関連の本を読み漁った結果、小説の構成法について具体的・論理的に書かれた本がほぼ皆無であることに気付きました。言わば、カレーの作り方関連の本を読み漁った結果、どれもカレーの作り方の手順については書かれておらず、材料の買い付け方のコツとか、お皿に盛り付けるとき見栄えがする方法とか、カレー粉の成分と種類とか、カレー作りに欠かせない鍋やガスコンロの選び方とか、自分がカレーを作るようになったきっかけとカレーへの深い愛情とか、はたまたログハウスの作り方を長々述べた後で、何かを作るという点ではカレー作りも同じことだとか、そんなことばかりが書かれてあったようなものです。そういうバカバカしいことが、なぜか小説の書き方本に関してだけは、堂々と許されています。そんな中で、小説の構成法を小説を書く立場から具体的・論理的に描こうとしたほとんど唯一の小説の書き方本が、これです。この作者によると、小説の構成法のキモは、小説を分節化して把握していく、ということです。小説とは分節が組み合わさった立体的な構造物であって、そのような構造物として小説の構成を立体的に捉える捉え方が、本書では具体的に説明されています。分節化について作者の言葉を引用しておきますと、「ある長さの文章・パラグラフにおいて、ひとつのイメージのかたまりを作る。そのようにして分節化したイメージを、かたまりからかたまりへ連結する。それをつうじて、小説の全体が作りだされる」(p.194 新しい文学のために)
実は引用部は、「新しい文学のために」のほうなんですね。「小説の方法」をわかりやすく書き直したのが「新しい文学のために」だと作者本人が言ってますから、これでいいんです。けれども、「小説の方法」の白眉、「浮かれ女盛衰記」の構成分析が、「新しい文学のために」のほうには載ってませんから、やっぱりこっちも読んどかなきゃなりません。で、こっちは「新しい文学のために」よりもさらに悪文なので、何度も読み返す必要があります。借りるんじゃなくて買ったほうがいいでしょう。

4.ハウツー本を斬る・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00004.htm
5.ハウツー本を斬る・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00005.htm
6.ハウツー本を斬る・其の参
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00006.htm
18.小説の構造って何だ・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00018.htm
19.小説の構造って何だ・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00019.htm
165.チェーホフを読む・其の二十一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00165.htm
322.知らないことを想像してみる・其の十一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00322.htm
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm

散文の理論

ヴィクトル シクロフスキー, Виктор Шкловский, 水野 忠夫
散文の理論
これは必読書ですね。まず目次を見ますと、「主題構成の方法」とか「短編小説と長編小説の構造」とかありまして、なにやら小説の書き方にソク応用できそうで読む前からワクワクしてきます。そして読み始めてすぐに気付くことは、シクロフスキーは、詩的言語と散文を区別して考えており、小説は散文であり、小説における異化の技法とは、別に詩的表現を小説に組み込むことじゃないのですね。ここいらへん、文学部唯野教授 ですら少々勘違いしているようですが、詩の異化と散文の異化は別の話です。シクロフスキーは、「詩の言葉は構成された言葉である。散文は、簡潔で理解しやすく、文法に適った普通の言葉である」と述べています。なるほど本書の冒頭で詩的言語について触れられていますけれども、それは話の枕に過ぎず、詩的言語とは違う方法で、散文は異化されるのですね。つまりは先行する詩の文学研究に対比しての、新しい、「散文の理論」なわけであり、散文である小説に関してフォルマリズムを語るときにはヤコブソンなんかじゃなくてまずシクロフスキーこそを参照すべきなんですが、それではシクロフスキーの言う散文における異化の技法とは何かというと、視点及び構成です。視点については、始めの方にトルストイを例に挙げて詳しく説明してあり、その後はずーっと小説の構成について書かれてます。もう絶対必読書決定ですね。
私はこの本を強く推薦しますが、しかしながら、当時のヨーロッパ文学やフォルマリズムが依拠または批判する先行研究の知識が前提とされていること、結論をわざとぼかすようなシクロフスキーの独特の言い回し、翻訳の問題などがあり、浅学な私には大変読みにくかったことを付け加えておきます。

82.謎と答・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00082.htm
83.謎と答・其の四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00083.htm
84.謎と答・其の五
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00084.htm
85.謎と答・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00085.htm
97.謎と答・其の十八
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00097.htm
106.謎と答・其の二十七
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00106.htm
124.小説の本丸は構成である・其の参
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00124.htm
183.チェーホフを読む・其の三十九
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00183.htm
222.シンプル・ストーリーを考える・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00222.htm
231.シンプル・ストーリーを考える・其の十二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00231.htm
232.シンプル・ストーリーを考える・其の十三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00232.htm
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm
登場人物の登場過程
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/tojojinbutsu.htm
中二階のある家は感傷的か
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/chunikai.htm