ロシア・フォルマリズム
- ミシェル オクチュリエ, Michel Aucouturier, 桑野 隆, 赤塚 若樹
- ロシア・フォルマリズム
マイナー路線まっしぐら! ブログランキング上位を早々すっぱり諦めた朝の書評、第二弾は、ロシア・フォルマリズムの全体像をコンパクトにまとめた良書です。実のところ、専門用語が頻出して、私の知識レベルでは読みにくいのですけれども、妙に興味深く、今回ぺらぺらと読み直してみて、以前は素通りしたところですが、新たな発見があって、トゥニャーノフが、我々は構成と素材(おそらく形式と内容という言葉に準ずる意味のようだ)の不均衡から美的意図を認める、と言ってるようですけれども、そのあたりが面白かったです。けれども、この本の中で私が最も興味を惹かれたところは、やはり、ゴーゴリの「外套」についての伝統的な解釈をフォルマリストが批判して、「(『外套』の主人公の人間性が露になる印象的なシーンに)ある種の芸術的手法以外のものを、私たちは見ることができない」と言ったところです。さらに別のところで、「トルストイがロシアの軍隊で行われている体罰を告発するとき、彼は、そこで鞭打ちの刑を『異化』し(そうすることによって、その残酷さと愚かしさを感じさせ)」というくだりがあります。私の理解では、フォルマリズムは形式を強調しますが、それは内容を軽んじるという意味よりはむしろ、内容(外套の主人公の人間らしさや鞭打ちの刑の残酷さ)を読者に訴えるためには技術が必要だ、と言っているように感じました。「スマトラ沖の津波で20万人以上死んだ」という言葉は真実ですが、その言葉からだけでは、津波の真実の恐怖が伝わってこないようです。文章によって真実を伝えるためには、技術上の工夫が不可欠であり、その技術こそが真実そのものよりも(伝えるという見地からは)重要だ、と言えるかもしれません。そして、小説の書き方という見地からは、天才に突然降臨するモチーフよりも、「石を石らしくするため」の技法の方が重要であり、つまりは、学ぶに足る小説の書き方があるに違いない、という根拠をフォルマリズムが与えてくれている気がします。
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm
登場人物の登場過程
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/tojojinbutsu.htm
新しい文学のために
- 大江 健三郎
- 新しい文学のために (岩波新書)
31.「白昼の悪魔」を分解する・其の八
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00013.htm
35.分節を考える・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00035.htm
170.チェーホフを読む・其の二十六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00170.htm
180.チェーホフを読む・其の三十六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00180.htm
322.知らないことを想像してみる・其の十一
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小説の基本構成
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はじめに
自分自身の読書のモチベーションを高めるために、読んだ本のメモを日記風に書いていきたいと思います。当面は、過去にすでに読んだ本の紹介も交えて、週1回以上の更新を目指します。普段あまり本を読まないのですが、これを機にがんばりたい。ダメならブログ削除して消えます。最初から弱気。まあ、あんまりがんばると続かないので、やっぱりがんばると言ったのは取消して、ぼちぼちやっていこうかな。