うわさのベーコン | 朝の書評

うわさのベーコン

猫田 道子
うわさのベーコン

なにが引っかかっていたのか、「物語の構造分析」と同時に「うわさのベーコン」も買って、交互に読みました。「うわさのベーコン」はそこそこおもしろかったのですが、どこでこの小説のうわさを知ったのかなかなか思い出せませんでした。本の中には解説がなく、帯の惹句には、雑誌「Quick Japan」で紹介されるやいなや大波紋、と書かれてあったが、「Quick Japan」なる雑誌を一度も読んだことがありません。「うわさのベーコン」をグーグルで検索してみたが、あまりひっかかってきません。高橋源一郎が誉めていたという一文で、もしや、と思って、ずっと以前に買って、一度読んだきりの「一億三千万人のための小説教室 」を開いてみると、前書きで「うわさのベーコン」が引用されていました。誉めているかどうか、微妙です。作者の精神のチューニングが少しずれている、と書いてあります。
そう言えば、誤字脱字を直さず出版するというのも奇妙ですね。ひょっとしてこの作者は、病気か何かなんでしょうか。高橋源一郎がこれを小説ではないというのはそういう意味でしょうか。そして本の帯には「脈絡のないストーリー」と書かれてあったが、しかし、そんなことはないです。
表題作の「うわさのベーコン」のあらすじは、兄を交通事故でなくして、そのことで心に傷を負った主人公が、兄の形見のフルートを練習し、遂にはフルート奏者になる。またその間に、いくつかの恋をする、けれども最後は、兄と同じように交通事故で死んでしまう、という内容です。誤字脱字や敬語のおかしな用法は、確かに目立ちますが、ウェブ小説なんかでは、そういうの、よくあることです。
そんなわけで、「うわさのベーコン」はいろいろ瑕疵はあるけれども、物悲しいけれども前向きな旋律がストレートに伝わってきて、よい作品であると思いました。でも、全然突き抜けてるとか破天荒というほどじゃなくて、ストーリーの脈絡は整合しています。むしろ細心丁寧に書かれてある印象です。内心、自分にもこれくらいは書けるんじゃないかと思いました。高橋源一郎は認めてくれなさそうだけど。