小説の方法 | 朝の書評

小説の方法

大江 健三郎
小説の方法 (〈特装版〉岩波現代選書)

大江 健三郎
小説の方法
私は小説の書き方関連の本を読み漁った結果、小説の構成法について具体的・論理的に書かれた本がほぼ皆無であることに気付きました。言わば、カレーの作り方関連の本を読み漁った結果、どれもカレーの作り方の手順については書かれておらず、材料の買い付け方のコツとか、お皿に盛り付けるとき見栄えがする方法とか、カレー粉の成分と種類とか、カレー作りに欠かせない鍋やガスコンロの選び方とか、自分がカレーを作るようになったきっかけとカレーへの深い愛情とか、はたまたログハウスの作り方を長々述べた後で、何かを作るという点ではカレー作りも同じことだとか、そんなことばかりが書かれてあったようなものです。そういうバカバカしいことが、なぜか小説の書き方本に関してだけは、堂々と許されています。そんな中で、小説の構成法を小説を書く立場から具体的・論理的に描こうとしたほとんど唯一の小説の書き方本が、これです。この作者によると、小説の構成法のキモは、小説を分節化して把握していく、ということです。小説とは分節が組み合わさった立体的な構造物であって、そのような構造物として小説の構成を立体的に捉える捉え方が、本書では具体的に説明されています。分節化について作者の言葉を引用しておきますと、「ある長さの文章・パラグラフにおいて、ひとつのイメージのかたまりを作る。そのようにして分節化したイメージを、かたまりからかたまりへ連結する。それをつうじて、小説の全体が作りだされる」(p.194 新しい文学のために)
実は引用部は、「新しい文学のために」のほうなんですね。「小説の方法」をわかりやすく書き直したのが「新しい文学のために」だと作者本人が言ってますから、これでいいんです。けれども、「小説の方法」の白眉、「浮かれ女盛衰記」の構成分析が、「新しい文学のために」のほうには載ってませんから、やっぱりこっちも読んどかなきゃなりません。で、こっちは「新しい文学のために」よりもさらに悪文なので、何度も読み返す必要があります。借りるんじゃなくて買ったほうがいいでしょう。

4.ハウツー本を斬る・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00004.htm
5.ハウツー本を斬る・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00005.htm
6.ハウツー本を斬る・其の参
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00006.htm
18.小説の構造って何だ・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00018.htm
19.小説の構造って何だ・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00019.htm
165.チェーホフを読む・其の二十一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00165.htm
322.知らないことを想像してみる・其の十一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00322.htm
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm