散文の理論 | 朝の書評

散文の理論

ヴィクトル シクロフスキー, Виктор Шкловский, 水野 忠夫
散文の理論
これは必読書ですね。まず目次を見ますと、「主題構成の方法」とか「短編小説と長編小説の構造」とかありまして、なにやら小説の書き方にソク応用できそうで読む前からワクワクしてきます。そして読み始めてすぐに気付くことは、シクロフスキーは、詩的言語と散文を区別して考えており、小説は散文であり、小説における異化の技法とは、別に詩的表現を小説に組み込むことじゃないのですね。ここいらへん、文学部唯野教授 ですら少々勘違いしているようですが、詩の異化と散文の異化は別の話です。シクロフスキーは、「詩の言葉は構成された言葉である。散文は、簡潔で理解しやすく、文法に適った普通の言葉である」と述べています。なるほど本書の冒頭で詩的言語について触れられていますけれども、それは話の枕に過ぎず、詩的言語とは違う方法で、散文は異化されるのですね。つまりは先行する詩の文学研究に対比しての、新しい、「散文の理論」なわけであり、散文である小説に関してフォルマリズムを語るときにはヤコブソンなんかじゃなくてまずシクロフスキーこそを参照すべきなんですが、それではシクロフスキーの言う散文における異化の技法とは何かというと、視点及び構成です。視点については、始めの方にトルストイを例に挙げて詳しく説明してあり、その後はずーっと小説の構成について書かれてます。もう絶対必読書決定ですね。
私はこの本を強く推薦しますが、しかしながら、当時のヨーロッパ文学やフォルマリズムが依拠または批判する先行研究の知識が前提とされていること、結論をわざとぼかすようなシクロフスキーの独特の言い回し、翻訳の問題などがあり、浅学な私には大変読みにくかったことを付け加えておきます。

82.謎と答・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00082.htm
83.謎と答・其の四
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00083.htm
84.謎と答・其の五
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00084.htm
85.謎と答・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00085.htm
97.謎と答・其の十八
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00097.htm
106.謎と答・其の二十七
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00106.htm
124.小説の本丸は構成である・其の参
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00124.htm
183.チェーホフを読む・其の三十九
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00183.htm
222.シンプル・ストーリーを考える・其の三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00222.htm
231.シンプル・ストーリーを考える・其の十二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00231.htm
232.シンプル・ストーリーを考える・其の十三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00232.htm
小説の基本構成
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/kihonkosei.htm
登場人物の登場過程
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/tojojinbutsu.htm
中二階のある家は感傷的か
http://juji.hp.infoseek.co.jp/essay/chunikai.htm