小説の技巧
- デイヴィッド ロッジ, DaVid Lodge, 柴田 元幸, 斎藤 兆史
- 小説の技巧
50の短い章からなるこの本は、新聞の文芸欄に連載されたもので、毎回、名作からの短い引用のあとに、様々な小説の技巧がわかりやすく簡潔に説明されています。例題と解説がワンセットになった受験参考書を買えと、昔、和田秀樹が言ってましたけれども、ちょうどそんな感じで、名作小説(多くは古典)からの短い引用を読んで、なんとなくその雰囲気をお手軽に味わうことが楽しいし、ユーモアのあるロッジの解説も面白い、これは本当に良い本です。目次は、その章で扱う技巧の名前が並んでいて、たとえば、第三章は「サスペンス」ですが、冒頭でトマス・ハーディが引用されます。私は知らないですが、昔の有名な作家らしいです。こんなところからサスペンスを引いて来るところが、なかなか碩学な感じで、でも文章は平易で、安心して読めます。他にも、書簡体小説とか視点とか場の感覚とか、文芸評論を読むときに知っておいたほうが良いような言葉が並んでいて、そのような知識をざっと得ることができるようなオトク感もありますね。
フォルマリズム関係の本を読むと、しきりと「動機付け」という言葉が出てきて、動機というと、犯行の動機とか転職の動機とか、普段そういうふうに使いますけれども、モチーフを動機付けるとか、ワトソンはそのように動機付けられる、とか書いてあって、なんか微妙によくわからなかったりします。けれども専門用語というほどでもないので、そのような方向からもなかなか調べづらいし、国語辞典を引いてもぴんとこないしで、こういう中途半端な言葉はかえって難しいのですね。そこで、この本の目次を見ると、ずばり40章に、「動機付け」とあります。その頁を開きますと、ジョージ・エリオットが短く引用され、作者が登場人物をどのように動機付けるかについて解説されています。どのようなモチーフをどのように組み合わせて、登場人物の行動を本物らしく納得できるように描くか、というような意味のようですね。
好きな章から気軽に読みながら、ジョージ・エリオットも昔の有名な人らしいですが、そういう高尚っぽい雰囲気も短めに味わいつつ、ちょっと利口になった感じがする本です。
4.ハウツー本を斬る・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00004.htm
5.ハウツー本を斬る・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00005.htm
18.小説の構造って何だ・其の二
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00018.htm
24.「白昼の悪魔」を分解する・其の一
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00024.htm
55.視点とは何か・其の十三
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00055.htm
63.分節を構成する要素・其の六
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00063.htm
124.小説の本丸は構成である・其の参
http://juji.hp.infoseek.co.jp/text/howto00124.htm