【天声人語】2006年05月30日

 直接の噴火災害の他、うわさによるパニックが起きる心配もある。大地震で危機にさらされた人々にとって、今後大噴火が起きるかどうかは重大な関心事だ。不安にかられると、デマや憶測に左右されやすくなる。


【感想】
キーワード:うわさ
 人はうわさ好きなものだ。日々、いろいろなうわさを聞いては楽しんでいる。それが正しいかどうかはわからない。楽しむのは自由だが、鵜呑みにするのは馬鹿だ。情報としてというよりも、エンターテイメントとして聞いているのかもしれない。
 しかし、人は極限状態になると、普段、信じないような馬鹿らしいことでも信じてしまうことがある。それで、不安になったり、パニックを起こしたりする。そういうときこそ冷静にならなければならないのだが、そんな“できた”人間はなかなかいない。はたして、自分がそういう状況に置かれたとき、冷静でいられるだろうか。体験したことの無いのでわからないが、想像することには意味がある。あらかじめシミュレーションをしておくことで、実際にその状況が起こったときに、心理的にゆとりができることもある。 防災訓練などはそれを行動に移したものともいえる。
 常に冷静でいられるようにしていたい。

【天声人語】2006年05月29日

 10年余り会社勤めをしていて、漁師になりたいと思ったら、どうすればいいのだろう。福岡に住んでいた山本幸徳さん(38)はインターネットで「漁師」を検索してみた。社団法人・大日本水産会の主催する「研修生募集フェア」の案内が出ていた。3年前のことだ。


【感想】
キーワード:自然
 日本人は魚をよく食べる。だが、漁師は毎年減り続けているという。
 自然を相手にする仕事。農業もそうだが、漁は天候や年によって大きな影響を受ける。収入は不安定だろう。自然は土日祝日関係ない。魚が採れるときは海に出る。
 サラリーマンと比べて、苦労は多いだろう。それでも漁師になる人がいる。転職組が多いという。人間関係に疲れたのだろうか。「海は裏切らない」と語ることから何かあったことが伺える。
 何か強い信念があるならばよい。しかし、現代社会から逃げて漁師になるのではいけない。自然はそこまで甘くない。弱い心のままではいつか行き場を失う。

【天声人語】2006年05月26日

 昨年、国の207番目の「伝統的工芸品」に指定された。まとめ役を務めている五十嵐勇喜さん(70)は「公に認められたことで、後継者を育てていく自信がわいてきた」と話す。喜びの一方で、指定に伴って行われる予定の「伝統工芸士」の試験を受けようという人が一人もいないことが悩みだ。


【感想】
キーワード:試験
 小学校から大学まで、数えきらないほど試験を受けてきた。学生だけでなく、社会人になっても資格試験などを受けることがある。
 人は生きている間中、ずっと勉強をしていかなければならないのだろう。それは試験に合格するためでなく、生きる上で必要なものだったりもする。
 脳は使わなければどんどん衰えてしまう。勉強、経験などで刺激を与えることで脳を鍛えないと、若年性痴呆になる可能性すらある。
 改まって試験を受ける必要はない。日々、何かを学ぼうとする姿勢が大切なのだと思う。

【天声人語】2006年05月25日

 電子メールのように印字されたものではない。細かい筆遣いまで見える文面が、どこか新鮮だ。ライブドア前社長・堀江貴文被告の自筆だという文書のコピーを見た。

 月日がゆっくりと過ぎる拘置所での生活が「これまでの人生を振り返る良い機会になりました」とある。そして「今まで生き急いできたかなとも思うようになりました」。以前は「人の心はお金で買える」と述べていたが、心境の変化なのか。


【感想】
キーワード:生き急ぐ
 昔に比べて、時間の流れが速くなった。人は長く生きれば生きるほど時が経つのが早いと感じるようだが、そのことではない。社会の動きが早くなったのだ。
 大昔、人の移動手段は徒歩であり、馬であった。手紙も飛脚が走って運んでいた。近代に入り、輸送技術が発達し、世界が狭くなった、という表現が使われるようになった。そして今、インターネットの爆発的な普及によって、瞬時に世界のどことでも繋がるようになった。物理的な距離が無視できる時代になり始めた。
 社会の流れが速くなる。それに伴い、そこに生活する社会人も動きを早くせざるを得ない。取り残されては生き残れない。現代人はみな生き急ぐことを強いられているように思える。
 定年後、田舎に住みたいという人が多いという。それは時間の流れが速すぎる世界とは離れて、ゆっくりと暮らしたいという願望にも思える。
 生活は豊かになったが、心を豊かにする社会になるのはいつだろうか。

【天声人語】2006年05月24日

 旧ユーゴが崩壊した後、セルビアと行動を共にしてきたモンテネグロが独立することが、国民投票で確定的になったという。福島県とほぼ同じ面積に、60余万の人が住む。小さな国の先行きはまだ不透明だが、「独立」への思いは強かった。


【感想】
キーワード:国民投票
 投票で代表者を決め、選ばれた人が国を運営する。政治の仕組みの一つであるが、国民投票で改めて国民の意思を聞くこともある。
 単位は小さいが町や市、都道府県単位でも行われる。さて、これがどれだけ行政に反映されているか。
 日本では国民の多くが反対していても施行される法律もあれば、そもそも国民のほとんどが知らずに作られた法律さえある。国の代表者は好き勝手やっているようにも感じる。
 そんなことはないのだろう。本人たちは日本のためを思っているのだろう。しかし、それがどうして必要なのかきちんと説明してもらわなければ、一般市民からしてみれば納得できない。
 一度、政治のあり方でも国民投票してみたらどうなることだろうか。

【天声人語】2006年05月23日

 ノルウェーの画家ムンクは、絵の主題として人間の死や病のほかに、性をよく選んだ。乙女と裸の娼婦(しょうふ)と尼僧を一枚に描いた「女性三相」を出展した19世紀末の個展は、激しい非難を浴びたという。「会場のボイコットだとか、警官を呼べとか叫ばれたのである」と、ムンクは述べている(R・スタング『エドワルド・ムンク』講談社・稲冨正彦訳)。


【感想】
キーワード:敵と友人
 人間関係とは難しいもので、少し前までは友人だった人が寝返って敵になったり、逆に対立していた相手と和解して、生涯の友になったりもする。いったい何がめまぐるしく人を対立させたり、仲をよくさせたりするのだろうか。
 その一つは誤解だろうか。相手との微妙な齟齬が徐々に大きくなって、取り返しのつかないことになることもあれば、誤解が解けてそれが埋まることもあるだろう。ようするに、対話をすることでどちらにも転がるのだろう。特に、気に食わない人間が、実はそうでもなかった、ということが多いのではないだろうか。
 誰かを評価するとき、実際に話してみてから決めないと、味方になるはずの人間とまで敵対する羽目になってしまう。まずはコミュニケーション。これが大切なのではないか。

【天声人語】2006年05月22日

 ふと小泉首相の発言を思い浮かべてしまった。先月、この御苑で「(桜は)ばっと散るからきれいなんです。私も引き際、散り際を大事にしたい」と述べた。この秋に首相を辞める思いを、桜になぞらえた。でも政治家は続けるのなら、いったん閉じて下を向いても、そのうちにまた開くオジギソウが似つかわしかったりして。


【感想】
キーワード:引き際
 権力、地位や名誉にすがる人は多い。そのことを考慮すれば、小泉首相の引き際はあっさりとしている。
 人には旬というものがあり、それが過ぎるとそれまでのようにはいかない。しかし、なかなかそれに気づかない、もしくは気づこうとしない人は多いようだ。
 政治家に限らず、いたるところで相当に年を食った人が現役でいたりする。簡単な仕事や、若い人を教育する分にはかまわないし、今の高齢化社会ではぜひそうしてもらいたいところである。しかし、重要な役職などにそういう人が就いていると、不安がよぎる。
 人はみな老いて、脳の能力も落ちる。若い人に経験を積ませる意味でも、引き際がうまい人が増えてほしいところだ。

【天声人語】2006年05月19日

 マンションには墜落はないが、弱ければ、地震で壊れて人命が失われる可能性がある。小嶋容疑

者は以前、マンションの引き渡しを延期する選択もあったのではないか、という本紙の取材に色を

なして答えたという。「物件の引き渡しは契約で定められた義務の履行だ」


【感想】
キーワード:金と人命
 契約には納期が含まれるが、安全性は入っていないのか。間に合えばなんでもいいわけではないだろう。
 耐震強度偽装事件。小嶋社長がいつ偽装を知ったのか、まだ詳しいことはわからないが、始めから知っていたのならば、金のために安全性を蔑ろにしたということだろう。完成してから知ったのならば、納期という契約の一部のために、会社の一時的な信頼を取ったということだろう。どちらにしても、自己中心的な考えである。
 こういう人間は必ずいる。その考えがまかり通らないような制度作りが必要である。

【天声人語】2006年05月18日

 中学生だった娘を日本から拉致された父と、高校生だった息子を韓国から拉致された母とが、ソウルで手を握りあった。国家犯罪が強いた、あまりにも過酷な巡り合わせによる「親類」だ。その手のつながりが、ことを進める新しい一歩になればと思う。

 約半世紀にわたって対立してきた「在日本大韓民国民団」(民団)と「在日本朝鮮人総連合会」(総連)のトップが、きのう会談した。共同声明には「反目と対立を和解と和合に転換させる」とあった。


【感想】
キーワード:対立と和解
 雨降って地固まるとはいうが、長すぎる雨だ。韓国と北朝鮮の対立はこれを機に終わるとよい。しかし、簡単には地面が固まるとは思えない。気長にがんばってもらいたいところだ。
 拉致問題に関して、韓国でもメディアが大きく取り上げるようになったようだ。横田さんの努力の成果でもあるだろう。正直、拉致問題のニュースになると、まだやってるのか、と思ってしまう。TVに出ても進展があまりないというだけでなく、自分が生まれる前のことを言われてもピンと来ないというのもある。日本と韓国で手を組んで、拉致問題に終止符を打ってもらいたいところだ。

【天声人語】2006年05月16日

 広島でも長崎でも、原爆は地面すれすれで炸裂(さくれつ)したのではない。広島は約600メートル、長崎では約500メートルの高さで爆発した。かつて爆心地でその辺りを仰ぎ見た時、熱線や放射線をより広い範囲に浴びせるための悪魔的な計算なのかと思った。その瞬間の爆心地周辺を想像する度に、背筋が凍り付く思いがする。


【感想】
キーワード:原爆
 技術そのものに善悪はない。使う側の人間によって善くも悪くものなるものだ。よく聞く言葉である。原爆そのものにも言えるだろう。その技術は原子力発電所で使われ、日本の3割の電気を供給している。
 ただ、原発にしても臨界事故が起こる危険性はある。過去のチェルノブイリの惨事は我々に原発の恐ろしさを刻み付けた。
 どんなものも使い手しだいなのだ。身近にある包丁やゴルフクラブでさえ、日常の便利なツールであり趣味の道具である。その一方で人を殺める凶器にもなりうる。危険だから、という理由で遠ざけるのではなく、いかに危険がないようにするかを考えなければならないと思う。技術の進歩は我々の生活を豊かにするだけでなく、危険も遠ざけるものだと信じる。