【天声人語】2006年05月15日

 「もしお昼ご飯を食べている最中なら、いまラジオを切ったほうがよいかもしれません」


 第二次世界大戦でドイツの敗北が目前に迫る45年4月、米CBS放送のエド・マロー記者はそう言って、連合軍が解放したばかりのドイツ中部のブッヘンバルト強制収容所のリポートを始めた。


【感想】
キーワード:言葉
 言葉とは不思議なものだ。それはときに人の心に一生の傷を残す凶器にもなるし、真実の一部しか表せない不完全な道具にもなる。同じ言葉でも言う場所や言う人間が違えば、感じ方が違うこともある。
 我々はコミュニケーション手段の大部分を言葉に依存している。話さなければ伝わらないとも言うし、話さなくても伝わるとも言う。真面目にに考えてみると、毎日のように使っているこの言葉というものは、なんとも得体の知れないものに思えてくる。
 そんなことを考えたところで、結局誰かに何かを伝えるためには、言葉を用いなければならないのだから、いかに自分の言いたいことを相手に伝えるかを考えたほうが建設的か。ただし、自分の思う相手の悪意までは伝わらないようにしなくては。

【天声人語】2006年05月12日

 トヨタ自動車は06年3月期の連結決算で売上高が21兆円余に達したと発表した。米フォード・モーターを上回り、来年の決算では米ゼネラル・モーターズを抜く可能性が強まったという。


【感想】
キーワード:世界一
 トップに立つということはそれだけ注目されるということでもある。その言動一つ一つに対して注意を払わなければならない。
 世界一―。何かの分野に対して一人しか得ることのできない称号である。そういう記録がギネスブックに載るわけだ。そのために奇抜なことにいろいろ挑戦をする人もいるくらいである。
 その記録はいつかは破られる。いつまでも頂点に君臨することはできない。ならば、今の自分にできる精一杯をやるしかない。

【天声人語】2006年05月10日

 最高検察庁が、検事による取り調べの一部を、ビデオで録画・録音する方針を固めた。これまでは「密室でのやりとり」だったから、画期的な変化だ。09年5月までに始まる「裁判員制度」を前に、審理を迅速にするのが狙いという。制度を定着させるための現実的な対応の一つなのだろう。


【感想】
キーワード:記録
 人の記憶は曖昧であり、人がつける記録は正しいとは限らない。犯罪の真相、または適切な処罰を決めるためにはもっと信頼の置ける記録が必要だろう。取り調べの様子をビデオを撮ることには賛成だ。
 人のできないことを機械で補う。これは機械の正しい使い方なのではないだろうか。
 撮られるほうにしてみれば、すべて目に見える形で残るのだからプレッシャーが大きいだろう。しかし、だからといって、今までどおりの不正確な記録に頼っていたのではこの先、どんな問題が起こるかわからない。
 現状のまま、ズルズルと何も変えないままでは、腐ってしまう。腐敗したことにさえ気づかないかもしれない。新しい風を入れることが必要だろう。

【天声人語】2006年05月08日

 いずれは弟の親代わりにならなければいけない。増田美登(みと)さん(41)は、ごく自然にそう考えていた。六つ違いの弟はダウン症だ。

 勤めていた外資系の証券会社が大阪から撤退する時、東京に移るか、会社をやめるかを迫られた。生まれ育った大阪が好きだったが、それ以上に、弟を残しては行けなかった。弟の面倒を見るには福祉を勉強しておいた方がいい。そう考え、大学に入り直して、2年間勉強した。

 そのころ、知ったのが「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」だ。略称を「きょうだいの会」といい、きょうだいに障害者がいる人たちが集まり、悩みや困っていることを語り合っている。増田さんは「悩みがあったわけではないのですが、同じ立場の人たちといると、心が軽くなった」と語る。


【感想】
キーワード:立場
 あかの他人の考えなどわからない。ましてやそれがまったく境遇の違うもの同士ならばなおさらである。いわゆる普通の生活をしている人にとって、自分を取り巻く境遇はある程度、相手の考えなどを察することができる。しかし、特別な状況の人の悩みというのは、周りの人間から見ると、知ってはいてもなかなか理解はできない。人は、自分が置かれたことのない立場に立ってものを考えられるほど器用ではない。
 そういう人にとって、同じ立場の人が集まる場所というのがあるといいのだろう。やはり、人は支えあって生きていくものだから、閉じこもっていてはいけない。

【天声人語】2006年05月03日

 小泉首相は、再編のための法案の提出を先送りするという。再編は国の針路を左右するだけではない。経済や財政にも影響するような膨大な出費を約束して、後は頼むでは済むまい。


【感想】
キーワード:先送り
 目の前の問題を先送りにする。もしくは先延ばしにする。そのしわ寄せはあとで一気に来る。できることは早めに。これはなかなか難しいもので、学生時代のレポート提出は先送り先送りで期限ギリギリになって苦労したことをよく覚えている。
 人間、面倒なことはどうしてもあとへあとへと追いやってしまうものだが、そればかりでは勉強、試験、仕事、どれも満足に終えられない。結局、やる時間が減るからだ。背水の陣とか、火事場の馬鹿力とかいうものに頼ってはいられない。そんなことでは学校の成績も上がらないし、仕事では信頼も得られない。
 さて、法案の先送りというのは、前述のものとはまったく違うものかもしれない。しかし、自分で決定したものを「あとはまかせた」などと言って、逃げるようでは国民の信頼など到底得られない。

【天声人語】2006年05月02日

 「もはや戦後ではない」と経済白書が書いたのは、1956年だった。その年に、水俣病が公式に確認された。以来半世紀、首相は小泉氏まで22人いるが、現地には一人も足を運んでいない。公式確認の日から50年になる昨日も、水俣に首相の姿はなかった。


【感想】
キーワード:悲劇
 地震、台風、火事。さまざまな悲劇があるが、これら自然災害とは違い、水俣病は人為的災害である。公式確認までに要した時間もさることながら、半世紀経っても一向に解決しないこの問題。国としてはすでに終わってしまった過去のものなのだろうか。
 50年が経ち、被害者の多くは亡くなってしまった。このままでは、水俣病被害者は一人もいなくなってしまう。人々の記憶から薄れ、やがて過去の悲劇はなかったことになってはしまわないか。うやむやにしてしまえ。国の対応はそんな姿勢にも思えてくる。
 水俣病の悲劇は、病気そのものだけでなく、放置され、忘れられる悲劇もあるのかもしれない。

【天声人語】2006年05月01日

 ちょっとした進化だ。鳥取県がホームページに載せた予算書に「検索機能」をつけた。技術的に難しいことをしたわけではない。ただ、情報を見せる側から、読む側へと、視点を百八十度転換させた点が新しい。


【感想】
キーワード:視点
 一つの出来事でも、見方を変えれば考え方も変わる。人の感情など極めて主観的で自己中心的なものだ。「中立の立場」や「一歩引いた視点」というのはなかなか難しい。
 さて、鳥取県の新しい視点は技術的な新しさは皆無で考え方が新しいそうだ。世間一般では当たり前のようにやっていることも、お役所がやるとニュースに載るほどのこととは。随分と遅れている、むしろ恥ずかしいと感じるくらいだ。
 この視点だが、考え方は確かに他とは違う。見たい人が見やすいように作って、問題点が見つかったら指摘してもらうのだ。お金もかからない。自分のミスを他人に指摘してもらおうとする。斬新というか、面の皮が厚いというか。そんなものでも変わろうとする心意気があるのなら、他の自治体でも実施してもらいたい。

【天声人語】2006年04月28日

 107人の死者を出したJR宝塚線(福知山線)の脱線事故から、25日で1年。両親を失った小杉謙太郎さんは今春、社会人になった。「自分としてはこれからの新生活が踏ん張りどころだ……事故を自分の人生の足かせにしては、向こうで二人に顔向けできないと思っている」

【感想】
キーワード:事故と変化
 何が起こるかわからない。事故はまさに突然にやってくる。それは巻き込まれた本人だけでなく、その人に関わる人にも大きな変化をもたらす。
 1年前のJR福知山線の事故は、まさに未曾有の事故だった。電車の安全を改めて考えさせられる大きな出来事だった。
 事故の被害者とその知り合いは変わらざるを得ない。亡くなった人や後遺症の残る人もいる。一方、加害者側は変わらなければならない。事故によって、変わらざるを得なかった人たちをこれ以上増やさないために。

【天声人語】2006年04月27日

 耐震強度の偽装事件で警視庁などが、姉歯秀次・元建築士や、関係のあった木村建設とイーホームズの社長らを一斉に逮捕した。


【感想】
キーワード:利益傾倒
 効率や売り上げを重視し過ぎるあまり、他の大切な部分を疎かにする会社、または人間が多くなっているような印象を受ける。大切な部分とは、安全性であったり、顧客満足度であったり、または法令遵守の精神であったりと様々ではある。どれも欠かせないもののはずなのだが。
 この傾向は、果たして一部の人間だけにあるものだろうか。先日のアイフルの業務停止命令、最近多い運送業者の過失による事故。何か大切なものが徐々に失われていくような、そんな予感。人の心が昔よりすさんでいるのだろうか。
 未来、人は思いやりという言葉を忘れるのか。

アクセスカウンターをつけてみました。

あと、さりげなく左下のほうに天気予報。微妙っぽい?