【天声人語】2006年05月08日

 いずれは弟の親代わりにならなければいけない。増田美登(みと)さん(41)は、ごく自然にそう考えていた。六つ違いの弟はダウン症だ。

 勤めていた外資系の証券会社が大阪から撤退する時、東京に移るか、会社をやめるかを迫られた。生まれ育った大阪が好きだったが、それ以上に、弟を残しては行けなかった。弟の面倒を見るには福祉を勉強しておいた方がいい。そう考え、大学に入り直して、2年間勉強した。

 そのころ、知ったのが「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」だ。略称を「きょうだいの会」といい、きょうだいに障害者がいる人たちが集まり、悩みや困っていることを語り合っている。増田さんは「悩みがあったわけではないのですが、同じ立場の人たちといると、心が軽くなった」と語る。


【感想】
キーワード:立場
 あかの他人の考えなどわからない。ましてやそれがまったく境遇の違うもの同士ならばなおさらである。いわゆる普通の生活をしている人にとって、自分を取り巻く境遇はある程度、相手の考えなどを察することができる。しかし、特別な状況の人の悩みというのは、周りの人間から見ると、知ってはいてもなかなか理解はできない。人は、自分が置かれたことのない立場に立ってものを考えられるほど器用ではない。
 そういう人にとって、同じ立場の人が集まる場所というのがあるといいのだろう。やはり、人は支えあって生きていくものだから、閉じこもっていてはいけない。