【天声人語】2006年05月25日
電子メールのように印字されたものではない。細かい筆遣いまで見える文面が、どこか新鮮だ。ライブドア前社長・堀江貴文被告の自筆だという文書のコピーを見た。
月日がゆっくりと過ぎる拘置所での生活が「これまでの人生を振り返る良い機会になりました」とある。そして「今まで生き急いできたかなとも思うようになりました」。以前は「人の心はお金で買える」と述べていたが、心境の変化なのか。
【感想】
キーワード:生き急ぐ
昔に比べて、時間の流れが速くなった。人は長く生きれば生きるほど時が経つのが早いと感じるようだが、そのことではない。社会の動きが早くなったのだ。
大昔、人の移動手段は徒歩であり、馬であった。手紙も飛脚が走って運んでいた。近代に入り、輸送技術が発達し、世界が狭くなった、という表現が使われるようになった。そして今、インターネットの爆発的な普及によって、瞬時に世界のどことでも繋がるようになった。物理的な距離が無視できる時代になり始めた。
社会の流れが速くなる。それに伴い、そこに生活する社会人も動きを早くせざるを得ない。取り残されては生き残れない。現代人はみな生き急ぐことを強いられているように思える。
定年後、田舎に住みたいという人が多いという。それは時間の流れが速すぎる世界とは離れて、ゆっくりと暮らしたいという願望にも思える。
生活は豊かになったが、心を豊かにする社会になるのはいつだろうか。