👆前回の記事は、ミュージカルの演技について。

 

ここで、少し歴史的なことに触れましたが、ちょっと分かりにくかったと思うので……🙇‍♂️

今回は、ミュージカルの成り立ちから現在に至るまでの流れを、ザザッとざっくり解説してみたいと思います!!

 

 

それでは。

早速、ミュージカルの起源から辿ってみましょう!!

 

 

……とは言っても。

実際のところ、そのルーツは多岐に渡ります。

 

今回は、その中で、最も一般的な起源とされている「オペラ」との繋がりから、フィーチャーしてみたいと思います。

 

 

 

  ミュージカルのルーツ「オペラ」

 

「オペラ」は、16世紀末にイタリアで誕生しました。

「王侯貴族の娯楽」として生まれたオペラは、その後、ドイツやフランスなどのヨーロッパの国々で独自の発展をとげ、17世紀後半にかけて、大衆の娯楽へと変化してゆきます。

 

 

あらためて、オペラという舞台芸術を説明すると。

 

「役柄に扮した歌手による歌唱や、オーケストラの演奏といった『音楽』を中心に演劇を進める舞台芸術」

 

ということになります。

「歌劇」とも呼ばれますね。

 

そのルーツは、古代ギリシャの「悲劇」を元に考案された演劇。

オペラに「悲劇」が多いのは、そのためです。

 

また、オペラでは、セリフが用いられる場合もありますが、その大半、特に「役の感情表現」の部分は歌唱で進められます。

 

 

ちなみに、「オペラ」(opera)とは、イタリア語で「仕事」とか「作品」という意味なのだとか。

現在では、オペラとは上記のような「歌唱と音楽によって進行される演劇」や、そうした楽曲作品を指しますが、元々は「opera musicale」(音楽的作品)と呼んだものの省略だったのだそうです。

 

また、ここで扱われている楽曲は、現在で言うところの「クラシック音楽」

ダンスも「クラシックバレエ」が用いられます。

(バレエが本格的に融合してくるのは、19世紀前半にフランスで生まれた「グランド・オペラ」という形式や、その後のオペレッタあたりになります。)

 

 

オペラの代表的な作品としては、

 

▶︎ヴェルディ作曲『椿姫』『アイーダ』

▶︎プッチーニ作曲『蝶々夫人』

▶︎モーツァルト作曲『フィガロの結婚』

 

などが挙げられますね。

 

 

▲オペラ『アイーダ』

 

 

  「オペレッタ」への発展

 

さてさて、その後。

19世紀半ばになると、パリで「オペレッタ」が誕生します。

 

オペレッタというのは、イタリア語で「小さいオペラ」という意味。

でも、別に「短編」というわけでもなく、上演時間はオペラよりもやや短いとはいえ、平均で2時間前後。

(オペラは、通常3時間程度から、長いものだと6時間のものまであります。)

 

この、オペレッタ。

 

まず、オペラとの違いとして挙げられるのが、客層です。

王侯貴族の芸術として誕生したオペラと違い、オペレッタは、庶民の娯楽として発展しました。

 

それに伴い、作風も基本的には「喜劇」が中心という、「王侯貴族の芸術」としてのオペラと比較するとカジュアルな印象です。

 

そして、もう一つの、オペラと違い。

音楽によるドラマ、歌劇であることは変わりないのですが、その中に、歌唱のない「セリフ」や、「クラシックバレエ」が、本格的に融合されてきます。

 

なお、そこで扱われる音楽は、オペラと同じく「クラシック」です。

 

 

オペレッタの代表的な作品は、

 

▶︎ヨハン・シュトラウス作曲『こうもり』

▶︎オッフェンバック作曲『天国と地獄』

▶︎レハール作曲『メリー・ウィドウ』

 

などです。

 

 

▲オペレッタ『こうもり』

 

 

  アメリカで、ミュージカルが誕生!!

 

……そして、いよいよ。

こうして、ヨーロッパで誕生、発展してきたオペラやオペレッタが、アメリカへと渡ります。

 

19世紀末から20世紀初頭にかけ、ルイジアナ州の都市ニューオーリンズで、オペレッタを発展させたショーが、ミュージカルのルーツとされています。

また、そこに、アメリカで流行していた「ミンストレルショー」(白人が黒人の格好で歌い踊るショー)や、「ヴォードヴィル」(歌やダンス、マジックなどのショー)、「レヴュー」(ダンス主体のショー)などとの融合が起こり、発展してゆくのです。

 

(このあたりで、ミュージカルの起源というのが分岐していますね。ヨーロッパの「オペラ」をルーツとする道と並行して、レヴューなどのアメリカの娯楽もまた、ミュージカルの起源と言えるのです。)

 

そうして、オペラやオペレッタの「クラシック音楽」から、ジャズも取り入れられるようになり、やがてロックポップスなど、幅広いジャンルの音楽が用いられるようになります。

また、ミュージカルには「喜劇」が多いのも、こうした "アメリカの娯楽" との融合という成り立ちによるものです。

 

 

ちなみに、ミュージカルという言葉は、元々「ミュージカル・シアター」の略なのだそうですね。

 

 

アメリカでミュージカルが誕生した初期は、ショー的な要素が重視され、ストーリーもごく単純、ハッピーエンドの恋を軽く描いたものが中心でした。

そこから、本格的に物語を盛り込み、"登場人物たちがストーリーの展開に沿って歌う" という「ブック・ミュージカル」の形式となったのが、1927年にブロードウェイで初演された『ショウ・ボート』

 

つまりこれが、記念すべき「ブロードウェイ・ミュージカルの始まり」とも言えます。

 

 

▲『ショウ・ボート』

 

 

こうして、それまでショー的要素が強かったミュージカルが、ストーリー重視の作品へと大きな変化をとげ、さらには物語だけでなく「登場人物の気持やシーンの様子も歌で表現する」という1943年の『オクラホマ』が登場。


そこから1960年代半ばにかけ、ブロードウェイ・ミュージカルは黄金期を迎えます。


この時期に誕生したのが、ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』を原作とした『マイ・フェア・レディ』(1956年)や、『王様と私』(1951年)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)といった不朽の名作たちです。

 

 

▲『サウンド・オブ・ミュージック』

 

 

……このように。

オペラやオペレッタといった「歌劇」に対し、ミュージカルは「歌、ダンス、芝居」が完全に融合されたものであり。

「音楽」や「バレエ」ではなく、ストーリー展開や登場人物の内面を語る「演劇」として発展しました。

 

こうした、「歌劇」としてのオペラと、「演劇」としてのミュージカルという違いを表した、ある有名な作曲家の言葉があります。

 

「歌でストーリーが進行するのがオペラ。

ストーリーの結果が歌やダンスに結実するのがミュージカル。」

 

これは、あの名作ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』(1961年)の作曲家レナード・バーンスタインによる言葉です。

オペラとミュージカルで、大事にしているものの優先順位が異なることを、シンプルに言い表していますね。

 

ちなみに、『ウエスト・サイド・ストーリー』では、当時のタップダンス全盛だったミュージカルのダンスに「バレエ」を導入し、大変な話題になりました。

 

 

▲『ウエスト・サイド・ストーリー』

 

 

その後、『コーラスライン』(1975年)、『シカゴ』(1975年)といった作品が生み出され。

 

また、1990年代には、ディズニーがミュージカルの制作に着手。

『美女と野獣』(1994年初演)で、ブロードウェイに進出し、その後も『ライオンキング』(1997年初演)、『アラジン』(2014年初演)、『アナと雪の女王』(2018年ブロードウェイ初演)など、映画でヒットしたアニメ作品をミュージカル化しています。

 

他にも、1996年には、オペラ『ラ・ボエーム』を下敷きに、同性愛やHIV、貧困といった現代の社会問題に舞台を移した名作『レント』が誕生したり。

1999年には、ABBAの曲で構成されたミュージカル『マンマ・ミーア!』がヒットするなど、アメリカではバラエティに富んだミュージカル作品が作られ続けています。

 

 

▲『レント』

 

 

  イギリスのミュージカル

 

一方、シェイクスピアを生み出した演劇大国イギリスのミュージカルは、というと。

 

現代のモーツァルトと称される作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971年)でブロードウェイにデビュー。

その後、『エビータ』(1978年)、『キャッツ』(1981年)『オペラ座の怪人』(1986年)などは、ロンドンのウエスト・エンドで初演され、そこからブロードウェイに渡っています。

 

 

▲『オペラ座の怪人』

 

 

それから、イギリス生まれのミュージカルといえば、全世界で大人気のミュージカル『レ・ミゼラブル』がありますね。

実はこれ、その前身となる作品が1980年にパリで初演されています。

それをロンドンに持ち込んで改定したものが、皆さんご存知、そして僕も出演した "1985年のロンドン版"(いわゆる「旧演出版」)なんです。

 

僕が出演したことのある作品では、『ミー&マイガール』も、1937年にロンドンで初演。

こちらは、『マイ・フェア・レディ』の男性版とも言われる作品です。

 

また。

ベトナム戦争を描いた『ミス・サイゴン』も、1989年にウエスト・エンドで初演となった、ロンドン発のミュージカル。

こちらは、プッチーニ作曲のオペラ『蝶々夫人』が元になっています。

 

 

ちなみに、『キャッツ』『レ・ミゼラブル』を演出したトレヴァー・ナン、同じく『レ・ミゼラブル』を共同演出したジョン・ケアードは、どちらもイギリスの歴史ある名門劇団 "ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー" の演出家。

さすが、シェイクスピアの国のミュージカルですね!!

 

 

▲『レ・ミゼラブル』

 

 

  日本のミュージカル

 

日本で本格的にミュージカルが上演されるようになったのは、1963年の『マイ・フェア・レディ』

その後、1967年の森繁久彌さん主演『屋根の上のヴァイオリン弾き』では、1986年に至るまで、900回も演じました。

 

さらに、1969年から上演が始まった、市川染五郎(現・松本白鸚)さん主演『ラ・マンチャの男』は、半世紀後の2019年に、上演回数1300回を超えました。

 

日本初のロングラン公演は、1983年の劇団四季『キャッツ』

1987年からは、東宝による『レ・ミゼラブル』もロングラン公演を続けていますね。

 

 

一方、ウィーン発のミュージカル『エリザベート』が、1996年に宝塚で上演。

2000年には東宝版が帝国劇場で上演となり、現在に至るまで、日本で大人気の作品に。

(僕は、2007年から2012年まで出演していました。)

そのほか、ウィーン・ミュージカルでは、『モーツァルト!』『レベッカ』などが日本でも上演されていますね。

 

他の国の作品では、フランス発『ロミオとジュリエット』(2001年パリで初演、2010年に宝塚版初演)、韓国発『フランケンシュタイン』(2014年韓国で初演、2017年日本初演)も上演されています。

 

 

また、国産ミュージカルとしては、劇団四季による『夢から醒めた夢』(1987年初演)をはじめ、音楽座の『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』(1988年初演)、ミュージカル座の『ひめゆり』(1996年)といった作品が誕生。

 

さらに、現在では。

日本の "アニメ文化" を活かし、"漫画、アニメの2次元を原作にし、舞台の3次元との間にある作品" という位置付けの「2.5次元ミュージカル」が大流行しており。

『テニスの王子様』(2003年)や『刀剣乱舞』(2018年)の大ヒット、そして2015年に初演した『NARUTO』は、その後、アジア公演も行われるなど、日本産のミュージカルはどんどん勢いを増しています。

 

 

▲『夢から醒めた夢』

 

 

  まとめ

 

……さぁ、いかがだったでしょうか。

 

まず、一口に「ミュージカルの起源」といっても、オペラだけでなく、その他さまざまな要素が絡み合ってその形が出来上がり、現在に至っているということがお分かりいただけたかと思います。

 

 

そして、やはりミュージカルは「演劇」のひとつであり。

歌、ダンスだけでなく、俳優の演技力も、同じようにとても大切です。

 

 

また。

日本のミュージカルは、元々、アメリカやイギリスの作品を輸入することで形作られてきました。

そうした影響もあり、どうしても、発展は遅れているかもしれません。

 

しかし一方で、国産ミュージカルもジワジワと頑張っており。

そして最近になって、2.5次元ミュージカルによって、その勢いは一気に加速しています。

 

 

世界からも注目される日本の「アニメ文化」は、ミュージカルのショーアップされたステージや、コスチューム・プレイとの相性がとても良く。

もしかすると、日本産ミュージカルとして、今後、国内だけでなく海外のシェアも大きく獲得できる可能性は大いにあると思います。

 

これは、ひょっとして。

日本が、新たな「ミュージカル大国」になるチャンスなのかもしれませんね!!

 

 

がんばれ、ニッポン!!!!

 

 

 

 

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