デジタル・リマスターのお話し(ローリング・ストーンズを聴いて!)(後編)
とまあ、あれこれ長々と話しましたが、ローリング・ストーンズのデジタルリマスターの話しだった!わたしはストーンズのアルバムは、初期はアメリカ盤とイギリス盤ぐちゃまぜですが、ファーストから1997年の「ブリッヂズ・トゥ・バビロン」までは大体揃っています。中でもお気に入りは、何度かお話ししているように、1969年頃からの主にミック・テイラーがギターで在籍した時期のストーンズですが、わたしが持っているこの時代の名盤の数々は、90年代にボブ・ラディックにより、デジタル・リマスターされているもので、これは全体的にとても満足しているので、別に新たに買いなおす気もないです。(2015年頃に出た、ステッキー・フィンガーズなど一部のアルバムの、未発表曲を含めたデラックス盤というのは聴いてみたいですけれども、高い・・・)それに対し、ブライアン・ジョーンズのいた初期の頃の、わたしの所持するCDは、ファーストから1965年のディッセンバー・チルドレンまでと、プラス、初期のベスト盤2枚「 Big Hits (High Tide and Green Grass)」 「 Through the Past, Darkly (Big Hits Vol. 2)」 が「DIGITALLY REMASTERED FROM ORIGINAL MASTER RECORDINGS」と下の方に書かれているアメリカものの輸入盤です。これ、結構古いCDで、誰がリマスターに関わっているとか、そういった詳しい情報が全く書かれておらず、なので、どんなデジタル・リマスターされているのかよくわからない、多分最終マスターをいじった程度なのではないかと思われる感じですが、まあ音はそれほど悪い感じでもなく・・・というか、ストーンズの初期は、元々録音状態が非常に粗っぽいノイジーな仕上がりになっているものが多いので、悪くないと言ってもたかがしれていますが・・・。ちなみにこれは聴いた感じ、モノラルで聴こえてくる感じなので、モノラルミックスものなんだと思う。そして1966年のアフターマスから70年のゲット・ヤー・ヤ・ヤズアウトまでは日本製のイギリス盤で、ステレオと書いてあるのでステレオミックスされているものだと思う。わたしはコレクション好きですが、どのバージョンのCDがどうでという、いわゆるコアなストーンズCDマニアではないので、イギリス盤がどういう仕様で、アメリカ盤がどうとか、詳しい仕様について知識がないもので、これくらいのことしか言えずにすみません。とまあ、これらの初期のストーンズのCDが、2002年に、新たなデジタル・リマスターがなされて、再発されたんですよね。わたしその情報は知っていたんですが、すでにご覧のごとく旧CDがあるし、2002年と言えば子供が生まれて何年かみたいな時で、気になるものの、とてもCDを贅沢に買いなおすことなどできませんでした。なので、そのまま今日まで耳にすることもなく、時々思い出す程度で忘れていたんですが、その2002年リマスターが幾つかブックオフにあったんですよね。まあ、さすがに今でも、初期のアルバム全てをまた買い集めるほどにはお金ないですが、あの音の悪い初期ストーンズの曲の数々が、一体どのように変わっているのか、やはり興味があります。そこで、とりあえずはということで、初期の大半の代表曲をまとめてある3枚組のシングルコレクション「ロンドン・イヤーズ」と、初期から中期に移行する重要な、特にわたしイチオシの大好きなアルバム「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズアウト」の二つだけを購入してみることにしました。で早速新旧聴き比べてみましたよ。結果、どう感じたかというと、少しベースの音やサウンドの音圧全体が上がった気はするものの、それほど大きな格差は感じられないという、相変わらずのヘッポコ耳具合でした。特にロンドン・イヤーズ収録の、初期のストーンズ作品の数々は、先ほども言ったとおり、元々の録音状態が粗っぽく汚いサウンドなので、リマスターで音質向上と言われても、それ以前の問題な気がするというか・・・。そんな中、唯一「これは凄いぞ!」と大きく感じたのが、同じくロンドン・イヤーズに収録されている、元々の録音状態も良くなってきた、ストーンズ黄金期の幕開け的な、かの名曲、 Honky Tonk Women です。この曲はミック・テイラーが加入した最初のシングルというのは、ストーンズ好きなら言うまでもないことですよね。ストーンズらしからぬ?サイケ全開な「サタニック・マジェスティズ~」から方向転換し、アメリカンカントリーテイストのある渋い、枯れたサウンドで「ベガーズ・バンケット」や「レット・イット・ブリード」という名盤を出し始めたストーンズ。やはりストーンズは、元々粗削りな演奏をするバンドだし、ち密さが肝になるサイケやプログレ路線より、こうしたカントリブルースのような路線の方が合っていたわけですが、でもまだこのくらいまでは素朴というか、演奏面ではそこまで大胆な変わりようという感じがしません。しかし、テクニック的にギターがうまい、ミック・テイラーが入ったことで、ストーンズはようやく演奏面でも、スタジアムライヴがこなせるような体制が整ったというか、すごくギターギターした、ハードでダイナミックなサウンドに大変身を遂げる感じがしますが、その最初の大変化がこの1969年のホンキー・トンク・ウーマンという曲だと思う。この曲、それまでのわたしが持っていた古いものはモノラルで、今回のロンドンイヤーズ2002リマスターではステレオになっていましたが、これは感動しましたね。やはり、マスターに携わった、ボブ・ラディックという人は、自身もプレイヤーなのかどうかは知りませんが、これをあえてステレオミックスで入れたというのは、ロックバンド、ギターバンドが良くわかっているなと感じました。やはり、キースと、ミック・テイラーという、キャラの異なるギター2本の絡みというのは、左右のスピーカーに別れてこそ、ロックのダイナミズムが生まれると痛感します。アナログも別に悪くないですが、2本のギターが重なって、グワッとなってしまい、散々ツインギターでこだわってやってきたギタリストとしては、聴いていて、なんかあと一歩スッキリしない感じがしていました。それがこう綺麗なステレオ処理で、迫力のある左右に分離した2本のギターの掛け合いがダイナミックに聴けて、やっぱこの曲はステレオだ!と。ストーンズでまさかビートルズのリマスター以上の感動があるとは、正直自分でも意外でした。Honky Tonk WomenオープンGチューニングで、どこかぎこちなくも堅い感じでイントロからのリフを、カクカクと刻んでるギターがキース。サビのところから滑らかに入ってくる、どこか華麗でハードな感じのギターがミック・テイラー。しっかり話し合って計算されている感じではなく、お互いやりたい放題弾いている雑然とした雰囲気で、そこも私は好きです。そのホンキー・トンク~以外で気になったことと言えば、まあ、あえて言うとビル・ワイマンのベースかな・・・。わたしはリマスターされて一番印象が変わるのは、ベースの音なんじゃないかという気が毎回するんです。ビートルズの近年のリマスターでも、ポールのベースが一番変わった気がしましたし。で、今回聴いてみて、チャーリー・ワッツのドラムは今まで思っていた以上に、ロック的に上手いと感じましたが、やはり、ビル・ワイマンのベースは良くわからないということです。「なかなかいいプレイなんじゃない?」と思うこともあれば、「はぁ?ちゃんと弾いているの・・・??というかほとんど聴こえないぞ!」というレベルの差が、曲によって大きすぎて一定しておらず、あの人はテクニックがあるのかゼロなのか、本当によくわからないプレイヤーだと感じました。ビル・ワイマン、コアなストーンズフリークからはどんな評価なのかかわかりませんが、わたし個人的には、演奏という点では、ビッグなロックバンドでは最もダメな人ではないかと思えて仕方がない。でもそのダメさが、ストーンズをストーンズらしく聴かせているような気もするし、一概にダメと切り捨ててしまうのもなんか違うような気がして、そういう意味でビル・ワイマンのプレイというのは評価が難しい。あとストーンズのCDは、全体的にミックのボーカルが、楽器に比べて小さい気がしますね。というわけで、結局満足したのかどうなのか・・・。ホンキー・トンク・ウーマン以外は、これまでのCDでも別に問題ないかな、という感じがしないでもないです。せめてあと、「レット・イット・ブリード」だけでもリマスター、聴いてみようかな。でもお金がないから、来月以降だ・・・。デジタル・リマスターのお話し(ローリング・ストーンズを聴いて!)(前編)