研究室配属授業の最終日の学生発表会/医学部低学年の演習・実習型授業/ウソをつかない医師の養成は? | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

研究室配属授業の最終日の学生発表会/
 医学部低学年の演習・実習型授業/
  ウソをつかない医師の養成は?
  (医学部大学等事件84)


<12月25日夜追記>
 前回記事でご案内しました新件訴訟は、本日予定通り行われました(次の1(1)(ア))。
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12337651179.html

 この訴訟の次回期日は、2月22日10時30分になりました。

 また、今回記事のコメント3で、録音についてご指摘を頂いていますが、
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12338353615.html#cbox

金沢大学特任教授(土屋氏以外の整形外科医)を被告とする、現在係争中の医療訴訟(民事裁判)では、録音証拠が複数提出されています。

 医療者側と患者側の双方、そして紛争になった場合の裁判所などにとっても、録音はどういうやりとりがあったかを確認できる資料です。
<12月25日夜追記ここまで>

 前回記事へのコメントを本日も頂戴していますので、併せてご覧下さい。
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12337651179.html#cbox

1、研究室配属授業の最終日の学生発表会

 医学部・医学類3年生約120名が1ヶ月ほど基礎医学研究室に配属になって、研究などを経験する授業の最終日である本日(12月22日)、学生の発表会が行われました。

 30近い研究室が2つの会場に分かれて、発表5分、質疑応答5分で行い、学生同士および一部の教員から評価(数項目について点数をつける)を受ける「コンテスト」付き発表です。

 私は、自分の研究室配属学生の発表とその前後の数研究室の発表を聞きました。全般的によくまとまって充実している印象で、「コンテスト効果」かなとも感じました。

 ただ、発表前日がスライド(パワーポイント)提出の締め切りであったにもかかわらず、当日(本日)発表を始める時の説明で、コンテストの具体的な評価項目が1つ追加されたのには驚きました。

事前に説明せず後から知らせる流れは、「インフォームドコンセントをするかしないか」、例えば、

主治医「実は▲▲▲でした。」
遺族 「死んでから言われても!」


といったやりとりを連想しました。

●金沢大学カフェイン療法死亡での録音反訳
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12313703932.html

2、学習効率とコンテストの公平性の両立が望ましい

 指導教員が質疑応答で補足説明をする研究室と、そうでない研究室がありましたので、学生発表のコンテスト中であることを踏まえて私は発言を控えました。

 もちろん教員が補足説明をしたほうが学生の理解は進みこの点では明らかにプラスですが、その一方でコンテストの公平性にはマイナスになる可能性があります。補足説明なしというルールにしてしまうと、公平性は上がるが学習効率は下がるので、このあたりの工夫は今後の課題かもしれません。

3、研究室レベルでの医学部低学年授業の進め方

 研究テーマの一部の実験を習う(教える)研究室がやはり多かったのですが、聞いていた教員から発表学生に、「(発表内容のうち)あなた自身がやった範囲はどの部分ですか?教職員とあなたがやった割合は?」という旨の質問が出て、答えに少々苦しむ研究室(学生)もありました。

 私の研究室では、7名の配属学生が1人1人の研究テーマ自体を自分で考えて研究計画を起案する、という部分を、約1ヶ月で行い、研究室内で1人1人が15分で発表するというのが、実際の主な課題でした。

 現在の研究室配属期間が1ヶ月少しの期間になっていること、医学部はふだん暗記すべき量がとても多く、自分で考え出して何かを始めるという機会が他の学部と比べて少ないことなどを考慮し、昨年よりこの方法で行なっています。

 そのため、発表会コンテストは、7名の7つのテーマから抜粋してまとめる方法で行いました。

医学や薬学の多くの領域では、一般的に言って、
  予備調査
  研究テーマを設定し研究計画を立案
  研究本体の実施(実験や本調査など)
  結果を取りまとめて発表(論文、学会、特許など)

という流れで進むことが多く、期間も1年から数年あるいは10年くらいで実施されたりします(一部の研究はそれよりも長期間)。

 私の研究室では、この予備調査と研究テーマ設定、研究計画の立案までを約1ヶ月で経験してもらう形であり、テーマの設定自体を学生自身が行い(薬物治療や食品の安全性と有効性の領域で)、私は調べ方やまとめ方、論文等の読み方の指導や、研究の実例などを示すといった「サポート役」に徹して、あくまで「学生1人1人が自分で」行ってこれらの遂行能力を高めることを重視しています。

 もちろん授業としての合格ラインは3年生レベルですが、中には特に熱心に取り組んで、大学院生前半くらいのレベルの文献調査能力や起案力、論文判別能力を身につけた人もいますし、学外でも発表できるという自信がついた、と言う人もいます。

 今日は研究室配属の最終日で3年生は明日から冬休みなので、追加の感想や質問、要望などを送りたいと思った時に、遠隔地でも簡単に私へメール返信ができるよう、夕方にアカンサスポータルという学内通信システムで7名に配信しておきました。

 昨年の4名に続いて今回の7名の感想などを参考にしながら、短い期間などの制約の中で、より効果的な授業になるよう取り組んでいきます。

4、1年生の演習形式の授業

 演習形式の授業として、昨年のこの時期より、こちらでは医学部(現在の正式名称は「医学類」)1年生を対象とした、「基礎医学チュートリアル」という授業が行われています。

 これは、数名のグループに教員1名がチューターとして付いて、与えられたテーマで90分2回の討論を行って、それをパワーポイントでまとめて発表する、という形式で、1年生からグループで自主的に行うようになるという効果がかなりあって、良いと私は感じています。

 教員はできるだけ発言を控えて、学生が困ったり沈黙が続いてしまった時に、最小限の助言をして議論を促す、というのが基本で、昨年からそのように説明され、私もその方針に賛成です。

 ただ、昨年のこの授業で、学生が担当教員を評価する項目に、「頼りになったか」があったのには驚きました。教員が「指導」すればするほど、「頼りになったか」の評価が高まる傾向になるでしょうから、授業の趣旨や方針と相反すると言えましょう。

5、自ら判断や考案ができる医師や医学研究者などに

 先述の通り、要求される暗記量がとても多い医学部では、自ら判断や考案ができる医師や医学研究者を輩出できるかも重要な課題です。

「言われた通りやったら患者さんが亡くなりました!」
は、もちろん回避しなければなりませんし、

●横浜講演スライド詳報10
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12204862579.html

「死亡例は無かったことにして治療成績を計算しろ!」
「ハイ!わかりました!」

も困ります。

●治療成績の過大報告(症例を出し入れ)ー医療維新記事
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12185416639.html

 医療や医学以外でも、
Y元教授(辞職)「殴られた!見たね、X君!」
X職員     「ハイ!わかりました!」

と答えたものの、裁判で「殴るのを見ていない」と認めて、被告のX職員が私に解決金を支払って和解(裁判上で)したこともあり、
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12256757685.html
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12258503021.html

このような事態の発生も避けたいものです。

 大阪大学教授が学生を名誉毀損で訴えた裁判で、学生に賠償を命じる判決も出ています。
http://mainichi.jp/articles/20161201/k00/00e/040/184000c
http://www.sankei.com/west/news/161130/wst1611300076-n1.html

 やはり、ウソをつかずに診療や研究、教育や勉学などに真摯に取り組むという、当たり前のことが重要なのだと思います。

●金沢大学医学部OBの方から現状を憂うメッセージ
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12250019755.html