金沢大「殴られた、見たね、安田君!」は位置的・距離的に不可能、他も矛盾の数々(医学部大学等49) | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

金沢大「殴られた、見たね、安田君!」は位置的・距離的に不可能、他にも矛盾の数々(医学部大学等事件49)

 今回も「殴られた、見たね、安田君!」「はい、わかりました!」の続きです。

 文字数が少々多いですので、見出しと本文下線部をご覧頂ければと思います。

1、あり得ない両者の位置関係、肘鉄で右頬を打つのは不可能

(1)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第95ページ
(質問者は新谷裁判官)
問い:殴られたときの原告とあなたの位置関係なんですけれども、あなたの左前に原告がいたということで間違いないですか
答え:今はそういうふうに記憶しとるんですけれども
<中略>
答え:原告も、私も、鶴見さんのほうを向いていました。
問い:原告からすると、あなたは右後ろにいた
答え:ええ、そういうふうに記憶しています
<引用ここまで>

(2)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第97ページから
(質問者は新谷裁判官)
問い:殴られたときのあなたと原告の近さというか、距離はどれぐらいですか。
答え:殆ど隣です。
問い:接触するくらい。
答え:そうです。
問い:右頬と肘以外が接触するくらいの位置ですか
答え:はい
<引用ここまで>

(3)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第107ページから
(質問者は川崎裁判官)
問い:わかりました。暴行とおわれる事件の話を伺います。まず、廊下からあなたは原告の背中が見えたわけですか。
答え:はい。
問い:それで、入り口から少し入ったところにいたんですかね。
答え:はい。
問い:それで、あなたの体は、図書室内に入ったわけですか、完全に。
答え:はい。
問い:それで、原告と横並びになったと、右側に立ったわけですね
答え:はい
問い:そのとき、原告は特にあなたのほうに体を向けることはなかったわけですね
答え:なかったと記憶しています。突然腕が飛んできたという記憶があります
<引用ここまで>

(4)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第108ページ
(質問者は川崎裁判官)
問い:あなたの顔の高さは、どのくらいの高さにあったんですか。
答え:原告のほうがちょっと高いですね、背は。
問い:あなたの顔は、原告の肩より下の位置にあったんですか、顔は
答え:上だと思います
問い:肩より上にあったと
答え:はい
<引用ここまで>

(5)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第111ページ
(質問者は藤田裁判長)
問い:先ほど、顔の位置の話が出てましたけど、あなたは身長というのは何センチなんですか。
答え:167センチです。
問い:殴られた時の体勢ですけど、普通に立っていたという感じでしょうか
答え:そうですね
問い:屈んでいたとか、そんなことはないんですね
答え:ありません
<引用ここまで>

引用者説明:
 仮に、吉本被告が原告小川の右に横並びするくらいまで進んで両者の肩が接するくらいの状態なら、原告小川の右肘は吉本被告の顔まで届かず、距離的に不可能です

 吉本被告が原告小川の後方にいる状態では、原告小川が吉本被告を認識することができないため「いきなり肘鉄が飛んできた」(吉本被告の主張)は不可能です

 従って、吉本被告が1つの尋問内で変遷して主張した上記のいずれの場合(位置関係)であったと仮定しても、「肘鉄で右頬を打つ」のは位置的・距離的に不可能です。


2、すごく強い力で目の下に肘鉄と主張、しかしカルテに所見さえなく、羽柴医師は強くないだろうと回答

(1)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第95ページ
(質問者は新谷裁判官)
問い:平成20年3月の暴行事件といわれているものなんですけれども、態様については、先ほど主尋問で出ていたように、あなたの右頬を原告の肘で打たれたというか、あなたの表現で肘鉄でなぐられたということで間違いないですか
答え:もう大分前なので、今の記憶はそういうふうに思います。でも、それは警察の調書とかも取られましたので、そういうふうに説明したと思いますけれども、今の記憶はそのとおりです
<引用ここまで>

(2)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第110ページ
(質問者は藤田裁判長)
問い:今の暴行事件のときのことを聞きますが。すごく強い力でしたが。
答え:はい。すごく強い力でした
<引用ここまで>

(3)羽柴医師から裁判所への回答書(甲154号証)より
1の1)
問い:診断書の診断名「顔面打撲」の根拠は何か。打撃の強度はどの程度と判断したか
答え:ご本人の訴えにより顔面打撲とした打撃の強度はカルテの記載からするとあまり強くなかったと判断したと思われます

1の5)
問い:顔面の状態はどうであったか(色、創傷の有無、出欠の有無、腫脹の有無など)。顔の状態を、診療録に全く記載しなかった理由は何か。
答え:1年半以上前のことなのでよく覚えていませんが、記載が必要なほどの大きな所見がなかったのかもしれません

1の6)
問い:レントゲン撮影を行わなかったのか。撮影したのであれば、提出願いたい。撮影しなかったのであれば、撮影しなかった理由(貴医療機関で撮影できなかった場合は、他機関への紹介での撮影も含む)は何か。
答え:レントゲンは撮影していない。打撲時の場合は必ずしもレントゲン撮影を施行するとは限りません。

1の7)
問い:右目周辺の骨折(吹き抜け骨折、頬骨骨折など)の有無は確認したか。もし確認したのであれば、その確認方法と確認結果はどのようなものか。
答え:確認を要するほどの所見がないと判断したと思われるがよく覚えていません。
<引用ここまで>

引用者説明:
 羽柴医師は、目か目のすぐ下の部位を打撲したとカルテ(甲第150号証)に記載しており、この目の下は骨折しやすい部位の1つであるので、柔らかくて当たる面積が広い平手打ちならともかく、肘鉄という固い小さな1点に力が集中する方法で、しかも「すごく強い力」(吉本被告証言)で強打されれば、少なくとも大ケガ(場合によっては死亡や目にかかれば眼球破裂)はするのであって、所見記載やレントゲン撮影さえ不要な打撲だけで済むようなものではないわけです。


3、羽柴医師は詐病か否かを確認せず、変性疾患(後のMRI検査で加齢性変性疾患の「変形性頚椎症」と判明)や不安神経症とも鑑別もせず、外傷と断定

●羽柴医師から裁判所への回答書(甲154号証)より
2の2)
問い:診断書の診断名「頚椎捻挫」の根拠は何か。変形性頚椎症などの変性疾患と、鑑別したか。鑑別したのであれば、その鑑別方法と結果はどうようなものか。
答え:顔面打撲を原因として首に痛み等を訴え、手のしびれ等を訴えていないのでそのように判断した。変形性頚椎症との鑑別は特に行っていない

1の12)
問い:自覚症状が、詐病であるか否かを、確認したか。もし確認したのであれば、その確認方法と確認結果はどのようなものか。
答え:金大教授であり、詐病などということは思ってもいない

1の13)
問い:「職場の助教授に顔を殴られた」(診療録記載)という吉本氏の説明内容が、真実か虚偽かを確認したか。もし確認したのであれば、その確認方法と確認結果はどのようなものか。
答え:患者さんの言うことをすべて確認とることは不可能であり、通常あまり事故の経緯につて(引用者:原文ママ)詮索することはしない。治療が先である。

1の14)
問い:不安神経症および不眠症は、どの程度であったか、以前と程度に変化はあったか。心理的理由による身体症状であるか否かについて、どう判断したか
答え:時に不眠を訴えることがあり、睡眠薬や安定剤を処方した。このような薬剤は多くの患者さんが求めるものであり、常用量以下であり心理的理由による身体症状であるか否かについてきちんと判断したかどうかよく覚えていない
<引用ここまで>

引用者説明:
 この羽柴医師が「殴られた、見たね、安田君!」の日に診察したのは、吉本被告が不正経理を隠蔽して争った末に認めて出勤停止の紹介処分になったことが新聞等で報道された、約1年後の時期ですが、羽柴医師は、金大教授がウソをつくとは思っていないという趣旨を、この回答書で複数回述べ、詐病か否かは確認していないと回答しています。

 また、羽柴医師は、事実関係の確認より治療が先と答えていますが、吉本被告は、この日、羽柴医師から鎮痛薬などの処方箋を受け取り早い時刻(大学病院の門前薬局が多数開いている時間帯)に大学に戻りながら、薬を受け取らなかったことを認めています。

4、吉本被告が公私共に親しい山嶋医師への紹介状を要求、MRIで加齢性変性疾患の「変形性頚椎症」の確定診断、しかし山嶋医師は詐病か否かを確認せずに検事に「外傷であり、99%詐病でない」と説明

(1)羽柴医師から裁判所への回答書(甲154号証)より

2の19)
問い:紹介状を書くにあたり、山嶋哲盛医師を指名した理由は何か。吉本氏とどのようなやり取りをして、紹介先を山嶋医師に決めたのか、経緯も示されたい。
答え:紹介先については患者さんの希望にそって選択するので、患者さんのご希望で選択したと思われます
<引用ここまで>

(2)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第64ページから
(質問者は原告小川、一部は藤田裁判長)
問い:紹介先の南ヶ丘病院の山嶋医師、この人指名で紹介状が書かれていますけれども、この羽柴医師からの調査嘱託の回答書によりますと、普通、患者さんの希望に沿って紹介するので、本人が希望したと思うというふうに書かれています。ただ、これ、他の論文の証拠で示しているとおり、山嶋さんとあなたは、以前から共同研究者で論文も発表してましたよね。
答え:もちろん、山嶋さんは大学の助教授だったので面識はありましたし、会えば挨拶もするし、話もする仲ではありました。
問い:プライベートで、山嶋さんのお父さんの葬式にも参列されてますよね
答え:はい
問い(ここは藤田裁判長):論文の共同執筆の話はどうだったんですか
答え:論文の共同執筆はその後もあります。
<中略>
問い(ここは藤田裁判長):折角だから、甲61号証を示してください。
甲第61号証(論文冒頭ページ写し)を示す。
問い:これは、その何年か前の年、2年前ですね
答え:ええ、そうですね。あります
問い:これは間違いないということでいいですか。
答え:ええ。前にもありますし、後にもあります。
<引用ここまで>

引用者説明:
 吉本被告は、「殴られた、見たね、安田君!」の約2年前から山嶋医師(当時は金沢大学准教授)と共著論文の発表を続け、山嶋医師のお父さんのお葬式にもプライベートで参列するという、公私共に親しい関係で、その山嶋医師への紹介状を要求して、後に山嶋医師が担当検事に対して、「99%詐病でない」などと説明することになります(後述)。

(3)南ヶ丘病院(山嶋医師)でのMRIで「変形性頚椎症」(甲158)

MRI枠

(4)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第66ページから
(質問者は原告小川)
甲第155号証(診療録(本体)写し)を示す
問い:CT, MRIどっちも「No Traumatic Lesion」。要するに、外傷性の損傷はないと明記されています。表紙の次のページの左下の「CT」と「MRI」のところです。外傷性の損傷が精密検査でなくて、確定診断が変形性頚椎症、老人性の変性疾患、こういうことだったわけです
甲第154号証の2(調査嘱託回答書写し)を示す
問い:甲154号証の2、羽柴医師からの調査嘱託回答書ですけど、最初の1の2)。変形性頚椎症との鑑別は行ったのか、怪我との。「行っていない」という回答です。どうですか。
答え:書いてますね。
問い:次のページの2の15)、詐病か否か。嘘の病気なのかどうかも確認していないと書いてますね。どうですか。
答え:書いてます。
問い:さっき言った紹介先については患者さんの希望で選択するので、その希望で選択したと思われますと、これも書いてますね
答え:書いてます。
<引用ここまで>

(5)吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第67ページ
(質問者は原告小川)
甲第161号証の2(調査嘱託回答書移し)を示す
問い:あと、これは、山嶋医師、南ヶ丘病院からの調査嘱託の回答書。甲161号証の2です。最後のページの(11)、(12)で終わってます。(12)のすぐ上「患者の申し立てを信じる以外に診察医師としては鑑別し得る手法はない。」と。詐病か否かというような話ですけれど、書いてますね。山嶋さんです
答え:書いています
<引用ここまで>

引用者説明:
 羽柴医師と同じく、山嶋医師も詐病かどうか確認していない旨を回答していますが、山嶋医師のカルテ(甲155)には、
「H20.8.5 検察庁 伊藤検事&川端事務官
<中略>
99%詐病ではない」
と手書きで明記されています。
 つまり、以前から公私共に親しかった山嶋医師へ吉本被告が紹介状を持ってきて、山嶋医師は詐病か否かを確認せずに、担当検事に「99%詐病でない」と説明していたのです


5、「殴られた、見たね」前に処方された薬が奏功していたと言って、その後に要求

●吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第68ページ
(質問者は原告小川)
問い:あと、ソラナックスを山嶋医師に処方されましたね。
答え:はい。
問い:そのとき、先ほどの調査嘱託回答書で、山嶋医師は本人がソラナックスが奏功するからと言ったので処方したと回答しているわけなんですけれども、それまでにソラナックスは羽柴クリニックで受けてたんですか
答え:受けてました
問い:要するに、それが奏功する、効くということが受けて分かってたわけですね。
答え:分かってました。
問い:ということは、殴られた、見たね、安田君の3月13日のそれより前にも、羽柴クリニックでソラナックスを処方されて、それが効いていた
答え:効いてました。ソラナックスは、私は羽柴先生から別の目的で、さっきのストレス何とかでしたっけ、時々、羽柴先生に処方してもらってましたので、私は効くなというふうに認識はありました。
<引用ここまで>


6、教授会で配布された「殴られた」の報告書内容を覚えていない、と証言

●吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第63ページから
(質問者は原告小川)
甲第164号証(分子情報薬理学分野における事件に関する調査報告書写し)を示す
問い:これは事件に関する調査の報告書なんですけれども。この年の7月2日の教授会で配布されたものということなんですが。これ、私に開示されたのが、全面、内容が全て黒塗りになって、結論が何かも分かりません。これ、どういう結論だったんですか。
答え:私は、この書類はあれしましたけれども、内容はちょっと今のところは覚えてないですね。席上配布で回収資料だったと思います。
<引用ここまで>

引用者説明:
 吉本被告は、「殴られた、見たね、安田君!」で警察へ被害届を出すとともに民事訴訟を提起し(本件反訴)、検察での不起訴後は検察審査会にまで申し立てておきながら(不起訴相当の議決(不起訴が適切との結論)が出ました)、その民事裁判で係争中も、教授会で配布された「殴られた」の調査報告書の内容を覚えていないと証言したものです。

 なお、この配布された報告書(甲164号証として証拠提出)を、当事者である私・小川が金沢大学に個人情報開示請求したのですが、内容部分は全て黒塗りになっており(つまり本人にも見せられない)、「委員会の構成:井関尚一委員長 外 5名」と記載されるだけで委員の名前さえありません。


7、検察の処分「嫌疑不十分」を「起訴猶予」だと、教授会で事実と異なる報告

●吉本被告本人尋問調書(裁判所作成)第67ページから
(質問者は原告小川)
乙第16号証(回答書)を示す
問い:これは、担当検事からの回答書で「不起訴の主文:嫌疑不十分」と書いていますね
答え:はい
乙第25号証(陳述書)の6ページを示す
問い:一番上のほうに、「不起訴処分(起訴猶予)」だと、これはあなたが教授会で報告した内容を書かれてますけど、嫌疑不十分だったのが、ここでは起訴猶予に変わってしまってるんです。なぜ、こういう報告をしたんですか
答え:それは、私はそういうふうに聞きましたので、書いたんだと思います。
<中略>
問い:だけど、そういう実際とは違う内容を報告なさったということですね
答え:事実はそうですね
<引用ここまで>

引用者説明:
 この「殴られた、見たね、安田君!」では、先述の通り、公私共に以前から親しい山嶋医師への紹介状を求めて、山嶋医師が、MRIで加齢性変性疾患の「変形性頚椎症」と確定診断が出たにもかかわらず、詐病であるか否かを確認せずに、「外傷であり、99%詐病でない」と訪れた担当検事に説明していました。

 これより約1年半後には、「『突き飛ばされた』と小川に叫ばれたため小澤健太郎助教(当時)が不眠になって労災だ」のデッチアゲが行われ、その時は、精神科の名誉教授に1回診察を受けて血液検査をし、その結果である著しい高脂血症(脂質異常症)を聞かずにその検査費用を請求時効の2年近くが経ってから、小澤被告が労災請求しました。

 小澤被告は、別件訴訟で、原告小川は「突き飛ばされた」発言をしなかったこと、大声を上げたのは小澤被告のほうであること、第三解剖から小川・吉本らの薬理学研究室へ来て雑談をしていたT技術職員に聞こえるように大声を出したこと、血液検査結果を聞かずにその検査費用をずっと後になって労災請求したこと、不眠になったと主張する時期も週1回の病院当直アルバイトを休まず続けていたことなどを認めて労災請求を取り下げ、当時の事務部長は、原告小川に解決金を支払うことで和解しました(金沢地裁平成22年(ワ)第50号事件。次の医学部大学等事件1と2)。

●医学部大学等事件1と2
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12091616223.html
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12093766164.html
(つづく)