金沢大不正通報後ハラスメント訴訟の判決が木曜〜大学は初期より深刻な状態を認識(医学部大学等50) | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

金沢大学不正通報後ハラスメント訴訟の判決が今週木曜(3月30日)
〜金沢大学は初期(平成18年末頃)より深刻さを認識
 〜金沢大学ハラスメント調査・防止体制は自殺防止か促進か?
  (医学部大学等事件50)


 金沢大学不正通報後ハラスメント訴訟の判決が、今週木曜(3月30日)に金沢地裁で言い渡されます。平成19年5月15日の提訴から間もなく10年です。

日時:平成29年3月30日(木) 午後1時10分
原告:小川和宏
被告:吉本谷博、国立大学法人金沢大学
事件番号:金沢地裁平成19年(ワ)第305号、同平成23年(ワ)第281号(2件併合)


 今回は、金沢大学が証人申請した横山壽一証人の尋問調書(裁判所作成)を中心に、金沢大学が初期より深刻な状態を認識していたことや、自殺と金沢大学ハラスメント調査・防止体制との関連についての尋問のやりとりなどをご紹介します。

 なお、証人の横山氏は、小川の件とそれ以前の産婦人科で無断人体実験告発の件でのハラスメント調査委員長およびハラスメント総括相談員で、その後、ハラスメント防止委員(ハラスメントか否かの判断も担当する)を経て、昨年4月の定年退職後も金沢大学によりハラスメント相談員に任命されています。

 今回も字数が少々多いので、見出し、本文下線部と画像を中心にお目通しいただければと思います。

1、初期(平成18年末頃)に深刻な状態と故意を大学が認識

●横山証人尋問調書(裁判所作成)53ページから
(質問者は、藤田裁判長)
問い:あなたが小川さんと吉本さんとの関係でかなり深刻な状況にあるというふうに認識していたという言葉を先ほど述べてましたね。それは、どの時点でそういうことを認識したということなんですか。
答え:それは、予備調査の段階と、本調査が始まって講座の関係者から聞き取りを行いましたので、その中で様々な緊張関係が生まれてるということは具体的に話を聞くことができましたので、そこから判断をしました。それから、預け金問題については、私は直接関わる立場にはありませんでしたけども、預け金問題を巡って両者の間で大変厳しい関係になっているということについても、これは様々なハラスメントに関わる、或いは周辺状況ということについても私のところに集まってくる状況というのはありましたので、そのことも含めて判断したということであります。
問い:かなりパワーハラスメントが行われている疑いが強いというふうな心証を持ってたんですか
答え:そうですね、何と言いますか、具体的な言い方までは分かりませんけども、かなりハラスメントになるぎりぎりのところまでやるみたいな話も本人が言ってたということまで聞き取りの中では出てきてたというふうに思いますので、かなり深刻だというふうにはちょっと思って。
問い:今、本人と言ったのは、吉本さん本人がそう言ってたということを誰か別の人が言ってたという、別の人があなたに報告ないし証言したということなのね。
答え:そうですね。はい
<引用ここまで>

●横山証人尋問調書(裁判所作成)4ページから
(質問者は、被告金沢大学代理人東巌弁護士)
問い:具体的には、誰を調べたんですか。
答え:まず最初が、確か樋口さんという、当時、助手だった方ですね。それから、事務補佐員であった井上さん。まず、この二人から話を聞きました。
<中略>
問い:面談した結果、どうなりましたか。
答え:吉本教授の講座の運営について、多くの人たちが問題を指摘しているということが分かりましたので、これはやはりきちんと調査をしなければならないという判断を致しました。
<引用ここまで>


●横山証人尋問調書(裁判所作成)32ページから
(質問者は、原告小川代理人三竹弁護士)
問い:それから、その話の流れで、吉本研究室の安田さん、川尻さんという方からも話を聞かれたということを証言されましたが、このお二人はどのような内容の説明をされていたのでしょうか。
答え:やはり教授の日常的な言動について、非常に威圧的であったり、権威を借りたような言い方をされるというようなことだとか、あとはお金の管理について大変細かいし厳しいというふうなことも指摘があったというふうに思います。
<引用ここまで>

●横山証人尋問調書(裁判所作成)34ページから
(質問者は、原告小川代理人三竹弁護士)
問い:<前略>あなたがそういう4人から聞き取った内容に対して、吉本教授の説明は、自分に非がなくて小川に非があるんだという説明をされたということですが、あなたが聞かれた一連の聞き取りの中での御判断ですが、その吉本教授の説明というのは正しいものだという印象をお持ちですか
答え:いいえ
問い:持たれましたか。
答え:それはかなり、何というか、他の方から聞いた話とは違っておりましたので、これはそのまま受け取るわけにはいかないというふうに思いながら聞いたという記憶がございます。
<引用ここまで>


2、バリケード(保全を求めた証拠)を保全せず(写真さえ撮らず)

(1)バリケード封鎖(不正有無で争っていた時期)

 不正経理の有無で約1年間争っていた時期に、私だけ別の階にデスクを置かれ、物品類でバリケードのように封鎖されて、その中でイスのすぐ後ろまで段ボール箱を積み上げて殆ど動けない状態にされました。

 次の写真(甲50号証として提出したものの一部)の通りで、平成18年夏から平成19年3月7日(研究室の引っ越し日)まで、吉本被告がこの写真の通りにしたという事実関係は、原告小川と吉本被告の双方が認めており(バリケード開始日の主張はその夏の時期内で違いはあり)、原告小川は「バリケードであって封じ込める嫌がらせだ」、吉本被告は「間仕切りだ」と主張して、対立しています。


●バリケード写真1(甲50号証の一部より)
 上図の右側、赤の部分がバリケード封鎖された区域で、右下の原告小川のデスクとイスがあり、下の写真の通り、イスのすぐ後ろまで段ボール箱が積み上げられている。

バリケ1

●バリケード写真2(甲50号証の一部より)
 上の写真の左奥が原告小川のデスクとイスで右がバリケード、下の写真は原告小川のデスク付近の高所より撮影したもの。

バリケ2

 この時期の他の部屋は、次の甲49号証の一部の通り、スペースに余裕がある状態でした(この写真証拠についても争いなし)。

●他の部屋の写真(甲49号証の一部より)
 他の部屋にスペースがあったことを示すために出した写真証拠の一部で、下の写真の中ほどに丸イスが2つあるのは、スペースがあることを示すためにこの写真撮影の際に置いたもので、普段はここが充分な空きスペースになっていたという一例です。

スペース

(2)新聞記者が見て驚きバリケードだと言って写真撮影、横山ハラスメント調査委員長は写真さえ残さず、吉本や小川と全く異なる「荷物が次々運び込まれていた」と主張、証拠隠滅か否かで争い

●横山証人尋問調書(裁判所作成)28ページから
(質問者は原告小川)
問い:それで、バリケードと言うべきものか否かの話で。
甲第192号証の2(録音反訳写し)を示す
問いの続き:これは朝日新聞の浅野直樹記者が平成18年11月28日の午前、私がバリケードで閉じ込められているところを偶然取材して、バリケードだと言って驚いて写真を撮って帰った、そこの会話が録音反訳1ページ目の時の会話の一部です。それで、その数箇所月後に吉本さんが懲戒処分を受けたわけですけれども、それで、、、<中略>、、、ここで浅野さんと私との会話、これは懲戒処分の3日ぐらい前ですけれども、「バリケードの件、写真、証拠は残ってますか?」と私が聞いて、浅野記者は、「残ってますねえ、はい。」と答えてます。つまり、彼もバリケードだという認識だったわけです。こういうやり取りがあるんですけど、あなたは、あれはバリケードという評価をするものか、しないものか、どういう印象を持ちましたか。
答え:移転の最中に荷物がそれぞれ運び込まれて、移転すべきものが並べられたというふうに見ましたので、それをバリケードだというふうに、つまり原告を閉じ込めるために作られたバリケードだというふうには判断しませんでした
問い:なぜ現物を見ないでそこまで分かるんですか。写真さえ残して。
答え:それは後の話でございます。写真を確認した後の話でございます。
問い:じゃあ、私の甲号証の写真を見てそう感じたという、そういう意味ですか
答え:そうです。大学側も写真を確か撮ってるはずでございますので、両方、写真の確認ができたと。その上の話でございます。
問い:大学が写真を撮ってるのは、誰が撮ったんですか。
答え:直接、正確にはちょっと覚えておりません。
<引用ここまで>


引用者説明:
 上述の通り、平成18年夏から平成19年3月7日まで、原告小川が写真の通り、段ボール箱を積み上げて囲まれていた状態であった事実は、吉本被告も認めています(夏の時期内でのバリケード開始日については争いあり)。

 しかし、バリケードの保全を求められた横山ハラスメント調査委員長は、上記の通り、「移転の最中に荷物がそれぞれ運び込まれて、移転すべきものが並べられたというふうに見ました」「原告を閉じ込めるために作られたバリケードだというふうには判断しませんでした」と証言しました。実際に、写真さえ撮らずに保全しませんでした(後述でも)。

 また、この平成18年11月28日昼頃の浅野記者によるバリケード撮影と同日午後の金沢大学本部広報部への取材の翌日である同月29日、横山氏(当時、ハラスメント総括相談員および学長補佐)から原告小川へ初めて連絡があり、ハラスメント予備調査を行うことに同意するか否か、面談に応じるかどうかなどを打診するものでした(金沢大学が証拠提出)。

 しかし、金沢大学が丙26号証として提出したハラスメント調査時系列表には、同年11月21日に、予備調査を行ったと明記されており、もし仮にこの時系列表の内容が真実であれば、11月21日に予備調査を行った後に、横山氏が原告小川に「ハラスメント予備調査を行うことに同意するか否か」を尋ねてきたことになります。


3)保全の必要なしとして写真撮影さえ依頼せず

●横山証人尋問調書(裁判所作成)27ページから
(質問者は、原告小川)
問い:バリケードの保全の要請についてなんですけれども、確かに直前ではあったというのはおっしゃるとおりなんですけれども、じゃあ、証拠の写真は残しましたか
答え:直接には私はかかわっておりません。
問い:関わってないんですか。
答え:写真は撮っておりません、私自身が。
問い:撮ろうともしなかったんですか。或いは撮るように要請しなかったんですか、事務部長でも誰でもいいですけど。
答え:直接にはしておりません
問い:直接にはというか、間接にはやった人がいるんですか
答え:いや、しておりません。
問い:直接も間接もないということですね。
答え:直接に証拠を保全するということも、写真を撮るということ。
問い:写真です。写真の話
答え:について、要請はしておりません
問い:物じゃなくて。ないですか。
答え:要請はしておりません。
問い:ということは、ハラスメント調査委員会にバリケードの写真はないということですか
答え:後に、その写真が、原告が多分撮られたものだと思いますが、その写真については確認する機会がありました
<引用ここまで>


●横山証人尋問調書(裁判所作成)40ページから
(質問者は、吉本被告代理人清水弁護士)
問い:そうすると、ハラスメント調査委員会とすれば、疑いの眼で吉本のハラスメントを見ているわけですから、例えば、小川さんの方から先ほどのバリケードに関する証拠保全の申入れがあれば、ハラスメント調査委員会とすれば、それなりに速やかに何らかの手を打たなければいけなかったんじゃないですか
答え:そのようには、その時は判断しなかったということでございます
<引用ここまで>


●横山証人尋問調書(裁判所作成)50ページから
(質問者は、川崎裁判官)
問い:証拠保全の話が出てきましたので、その点について伺いますが、金沢大学法人あてのファックスが送られてきたということなんですが、平成19年3月6日に。そのファックスは、どのような経緯であなたが受け取ることになったんですか。見ることになったんですか。
答え:同じものに私の名前を入れて、私あてに、直接には大学の職員支援課ですが、そこに送られてきたので、そこから連絡を受けて見たということだったと思います。
問い:あなたとしては、それを見た時に、原告に対するハラスメントが問題になってる状況下で証拠の保全を求められてると、そういう認識はあったということなんですか。
答え:証拠の保全を、バリケードと壊れた机の保全をというふうに、タイトルがそういうふうになっておりましたから、ええ。
問い:それは、何か原告に対するハラスメントに関係がある可能性があって、その保全が求められてると、そういう認識はあったんですか
答え:もちろんそれはありました
<中略>
問い:その対応として、現場の状況が、その後解体されてしまうというか、解消されてしまう状況のもとで、写真をとりあえず撮って現場の状況を保全しておく、評価は別としてですけどね、そういう考えには至らなかったんですか、至ったんですか
答え:当時、いろんな可能性というのは多分考えたと思いますが、直接にそういう形での対応をするというふうにはしなかったということです。
問い:必要がないと思ったんですか?
答え:具体的な状況説明を受けた時に、先ほどちょっと説明しましたように、壊れた机については新しい移転先に荷物台として移転をするということになって、机そのものについては、執務机については別途提供してあるというふうに説明を受けましたので、あとは移転するということについても、引っ越し中なので、そのことはなかなか難しいというふうに説明を受けたということで。
問い:あなたとしては、そのような保全のファックスを受けて、現場は直接確認されてないということですか
答え:そうですね
問い:その時、いわゆるバリケードと言われるような状況がパワーハラスメントを基礎づけるような状況だったのか、それか全然そうではない別の理由によるものなのかということは、どうやって何で判断しようと思ったんですか
答え:直接には、当時、すぐに行ってみた、確認ということはしておりませんが、しかし、事務部長の説明からも、それは引っ越しをしていて、荷物を動かしている状況で次々と荷物が運びこまれている状況の中での、そういう荷物の状況だったので、それを直ちに、原告を封じ込めるためのバリケードだというふうに、それは判断しなかったということですね。
問い:ただ、現場の積まれ方とか、様子を見なければ、そういう判断って簡単にはできないと思うんですけれども、あなたとしては、報告を受けた人の判断が正しいと思って、それ以上は調べなかったと、そういうことなんですか
答え:事実の経過から言えばそういうことでありますが、これはもちろん大学に対しても、代理人に対してもファックスが行っておりますから、大学としての対応というのを当然考えるだろうというふうにもちょっと思っておりましたし、なので、私のできることについてはそういうことで対応してきたということです。
問い:あなたの方で、例えば、そのような荷物が積まれてるのはいつからのことかとか、周辺事情というんですかね。そういった調査とかは何かされたんですか
答え:それはやっておりません
<引用ここまで>


引用者説明:
 先述の通り、吉本・小川はともに前年夏から甲50号証の写真の状態であったとしているにもかかわらず、横山ハラスメント調査委員長は、次々に荷物が運び込まれている状況なので閉じ込めるものではないとして、写真さえ残さなかったのです。これが証拠を隠滅する行為か否かで争っています

 また、このバリケードがなくなる3月7日の引っ越し日の前に、横山ハラスメント調査委員長は、原告小川に対して、面談に応じるよう求めるメールを送ってきて、面談日をこの3月7日の後に指定してきました。つまり、バリケードが引っ越しでなくなる後の時期に(しかも、横山委員長は、写真さえ残さなかった)、面談日を指定してきたのです。



3、深刻な状況だと認識し、他の解決方法もあるのに放置

(1)具体的な状況を把握していた


●横山証人尋問調書(裁判所作成)35ページから
(質問者は、原告小川代理人三竹弁護士)
問い:最後の末尾がよく聞き取れなかった。その都度、何ですか。
答え:どのような状況にあるのかということについては、それは情報を得る立場にありました。というのは、総括相談員は、相談に関わる業務等について全て情報を聞く、情報が集まってくるという立場にありましたので、そういうことで聞いていたということでございます。
問い:そうすると、吉本研究室の中で小川がどんな状況であるかについては情報を得ていたということですね。
答え:そうです
問い:そうすると、吉本研究室の中で小川さんが研究室の機械も機器も自由に使えない状況であることも聞いておられたんじゃないですか
答え:それも聞いておりました。吉本教授の説明はもちろん違いましたけれども、そういう状況も聞いておりました。
問い:吉本研究室の共通予算も使えないという状況であるということも聞いておられたんではないですか。
答え:お金の管理については、教授が一元的に管理をしているという話はありました。
問い:そうすると、吉本教授が一元的に管理しているので、小川さんが研究室の共通予算を自由に使えない状況にあるということを聞いておられましたか
答え:それも聞いておりました。それが問題にされてるということも聞きました
<引用ここまで>

(2)大学執行部も状況を知っていたが、改善せず

●横山証人尋問調書(裁判所作成)36ページから
(質問者は、原告小川代理人三竹弁護士)
問い:そうすると、念のためにもう1回だけ聞きますけど、あなたがハラスメント調査委員会に属する立場として得られた小川さんに対する情報を他の関係者に伝えて、何か小川さんの状況を改善するために努力をした方がいいんじゃないかというお話をあなたが他の人にされたということはありますか、ないですか
答え:直接にはやっておりません。ただ、情報は我々以外のところでも把握をしていたという可能性はありますので、一切知らなかったという状況はないと思いますけれども、直接には、私の方から働きかけるという、そういう立場にはなかったということであります。
問い:この後、松井さんにもお尋ねする機会もありますので、余り詳細にお聞きしなくてもいいのかと。今、あなたが言われた、他の人も小川さんの情報を得ていた可能性があるというのは、具体的には何を思ってそうおっしゃっておられるんですか。
答え:それは預け金の問題もあって、それは提訴されて、処分が下るというような状況がありましたので、少なくとも大学執行部についてはそういう状況を把握していたということだと思います。
<引用ここまで>


(3)ハラスメント調査以外にハラスメント相談員として別方法あるが対応せず

●横山証人尋問調書(裁判所作成)48ページから
(質問者は、川崎裁判官)
問い:例えば何らかの支障があって一方との面談が実現できない場合、例えば被害者側が亡くなってる場合なんかがそうだと思うんですが、そういった場合には原則としを貫くことが困難だと思うんですが、そういう場合の対応はどうなっているんですか
答え:それは、調査委員会として調査を行って、調査委員会として判断を下すということはできませんので、その場合には。ただし、それは周りの状況から何らかの形で改善の必要があるというふうに思われた場合には、それは処分という形ではなくて、具体的に起こっている問題を改善するためにこのような対応が必要だということで、部局長を通じて、この改善の要請や指示を行うというふうなケースもございます。
問い:それは、ハラスメントと認定するわけではなくて、調査委員会として把握していた事実を基に何か大学側に要請するような、そういう形ということですか。
答え:調査委員会としての対応ではなくて、ハラスメント総括相談員として状況把握をした、その事案について、それは今言った、調査委員会を立てて調査を行うのか、或いは調停を行うのか、或いは具体的なそれ以外の措置をとって改善を進めていくのかということの幾つかの選択肢がございますので、その中で取り得る対応をしていくということは、それは可能ですし、実際にもそのようなことが沢山ございました
問い:そうすると、一方当事者からの面談ができない場合には調査委員会としての結論は出せないと、そこは動かないということになるわけですか。
答え:そうですね、基本的にはそういう立場です。
問い:その上で、調査委員として個別の対応を取ることが考えられるということなんですか。
答え:調査委員じゃなくて、総括相談員として。
問い:すいません。言い直します。調査委員じゃない、ハラスメント総括相談員として個別の対応をするということは考えられるということなんですが、本件については、何か総括相談員として個別の対応を取るということは検討されたんでしょうか
答え:いや、これは、とにかくかなり深刻な状況でしたので、それはやっぱり本人からきちっと話を聞かなければ、それはなかなか判断はできないというふうにずっと思ってきましたので、別の対応の仕方を考えるということはありませんでした
問い:今のお話だと、本人、加害者、被害者、一方との面談ができなくても、総括相談員ですか、として認識していた事情があって、これは是正しなければならないというものがある場合には、それは個別の対応があるということだったんですが、そういうものはなかったと伺ってよろしいんですか
答え:本件に関して、そのようには判断しなかったということです
<引用ここまで>

引用者説明:
 深刻な状況を具体的に認識し、ハラスメント調査以外の種々の改善方法がありながら、それを用いるという判断はしなかったという証言です。

 また、本件提訴直後の平成19年6月4日に、横山ハラスメント調査委員長は、原告小川に対して、訴訟中はハラスメント調査を行わないと、メール添付文書で知らせてきており(文書は甲74号証、後でお示しします)、元々、訴訟になっている部分は「ハラスメント調査」の対象外です

 従いまして、本件では、「ハラスメント調査」以外の方法、例えば、横山証人が述べた、ハラスメント総括相談員としての別の対応などで行うことになるのですが、それを行わなかった、ということです。


4、ハラスメント調査委員長が小川に「提訴準備中」、その後どうなったかに答えず

●横山証人尋問調書(裁判所作成)21ページから
(質問者は、原告小川)
甲第198号証(メール写し)を示す
問い:これはメールとその添付した添付ファイルを印刷したものですけれども、、、、<中略>、、、一番最後の紙ですけれども、甲198の。ここですが、「原告に対し慰謝料の損害賠償請求事件の提訴を準備している。」とはっきり書いておられて、この答弁書を陳述なさいました。公開の法廷で。その後、何年か経って、私は、これは撤回してないのかと、まだ提訴してこないけどとメールで聞いたことがありますよね。はいか、いいえか、どっちですか。
答え:はい
問い:それに対して、あなたは答えましたか。
答え:直接には答えておりません。
問い:間接には答えたんですか。
答え:答えておりません。それには答える必要がないというふうに判断を致しました
<引用ここまで>


引用者説明:
 前記の、「訴訟中はハラスメント調査は行わない」という横山ハラスメント調査委員長からの回答書(甲74号証、下に示します)で、「5月15日の訴状は受理されなかったと報告を受けている」とまで主張して(実際にはこの金沢地裁平成19年(ワ)第305号事件は、その場で受付が完了してこの事件番号が付された。これらの裁判書類も証拠提出済み)、訴訟中は行わないハラスメント調査に応じるよう求めてきました。

横山604

 この訴状不受理の虚偽主張(これにより、訴訟中は行わないハラスメント調査の面談に応じるよう求めた)や先述したバリケート隠滅以外にも、横山ハラスメント調査委員長と、既に弁護士会から1回目の懲戒処分を受けていた金沢大学代理人の知原信行・金沢大学顧問弁護士(公益通報窓口でもあった)による種々の困った言動が続いたため、私が両名を提訴したところ、その答弁書で、私に対する損害賠償請求を準備中であると陳述したものです。
 この訴訟は、「本体」とも言うべき、金沢大学と吉本氏を被告とするこの訴訟に併合(まとめて1件扱いにすること)されていました。


 なお、横山被告の代理人でもあった知原弁護士は、その後も更に2回懲戒処分を受け(どちらも業務停止8ヶ月の重い処分で、1回目の戒告と合わせて3回の懲戒)、新聞や日弁連月刊誌等で実名報道されて社会的制裁を受けたことなどから(新聞記事なども証拠提出済み)、私の代理人弁護士が、横山・知原両方被告に対する訴訟を取り下げると申し出たところ、横山・知原両被告は取り下げに同意せず裁判を続けると言ったため、やむなく請求放棄という強制終了の手続きをして終わらせたという経過があります。

 その後に、上記の「提訴準備中」はどうなったかを尋ねたわけですが、「答える必要がないから答えなかった」とう上記の証言でした。この「答えなかった」時期、横山元被告は、「ハラスメント防止委員」(各事案がハラスメントか否かの判断も行う)でした。


5、被害者脅しと隠蔽は他の事件(無断人体実験告発)と共通

(1)被害者認定した打出講師への口封じ書面


 産婦人科での教授(当時)らによる無断人体実験を告発した、打出喜義講師に対するハラスメント疑い事案について、同じ横山氏がハラスメント調査委員長になり(私の件より前の時期)、ちょうど私が不正経理の是正を求め始めた平成18年1月に、横山委員長らは打出講師を被害者と認定しました。

 しかし、横山ハラスメント調査委員長は、被害者認定した打出講師に対して、懲戒の可能性を示して口封じを行い(下の書面、甲117号証として提出)、それから4年以上後の平成22年に、テレビ朝日系『サンデープロジェクト』で、この口封じ書面とともに、未だに職場環境が改善されないことなどが報道されました(テレビ音声反訳は甲118号証として提出)。

 この書面が打出講師に交付されてすぐ(平成18年春頃)にその概略が報道され(これらも証拠提出済み)、続いて私の件では、先述した通り、横山ハラスメント総括相談員(調査委員長)が、新聞記者が私と大学本部へ取材した翌日に予備調査や面談を求める初めての連絡を送ってきて、その約3ヶ月後にバリケードという物的証拠を隠滅し、その約3ヶ月後に「訴状は受理されなかった」の虚偽主張で「訴訟中は行わないハラスメント調査」に応じるよう求めてきたことなどから、私はハラスメント調査委員会との関係について慎重にならざるを得ませんでした。

打出口封じ

(2)横山ハラスメント調査委員長は口封じ目的を認めた

●横山証人尋問調書(裁判所作成)16ページから
(質問者は、原告小川)
問い:要するに、これは送ったわけですね、打出さんに。はいか、いいえで聞いています
答え:分かりました。最終的には送りました
甲第118号証(テレビ音声反訳写し:旧甲B第29号証)を示す
問い:これはテレビ朝日系のサンデープロジェクト、報道番組の音声反訳です。田原総一郎さんがやってた番組で、これは2010年2月18日の放送。さっきのあの文書、あなたが送った文書から4年少し後の時期です。それで、4ページ目です、それで、この太字のところをざっと見ていただきますと、、、<中略>、、、「これは、打出講師に対する事実上の口封じに等しかった。」、「これを読むと、どちらが被害者なのか加害者なのかが、よくわからない。」、「これだったら、ハラスメント委員会そのものを設けている必要があるのかっていう気がしますよねえ。」、、、<中略>、、、「今も、打出医師は、病院内で孤立した存在だ。一方、改ざんにかかわった医師や教授に対する処は、未だなされていない。」。つまり、4年過ぎても打出さんの職場環境は改善されていないわけです。されなかったわけですよ。ハラスメント防止体制は、当時からこういうことをやっていたわけですよね。こういう機能だったわけですよね
答え:いいえ。それは、ハラスメント調査委員会は調査委員会として判断をし、そえがハラスメントに当たるかどうかという判断については、直接にそのように判断できないと。しかし、教授の対応については問題があるということで、厳重注意というふうに下したということでありまして、その結果をどのように受け止めて、どういうふうに解釈をするのかということは、それは人それぞれですが、そのことを含めて、それは打出さんが訴えた教授が具体的に反論したり説明する機会がないまま、一方的に彼が自分の考え方で、そのような形でマスコミに漏らしたということ自体がやはり問題だというふうに我々は考えたわけです
<引用ここまで>


引用者説明:
 金沢大学の情報隠しが突出していると、平成23年4月27日の読売新聞が報じており(甲241号証として提出済み)、この新聞報道と金沢大学の情報隠しについてもこの尋問で尋ねました。

 また、別件の金沢大学教授による大学院生の論文盗用事件の裁判初日に、ハラスメント相談員だった清水徹・医学部教授が急死なさったことは、医学部大学等事件45でお知らせしました。


●医学部大学等事件45
(ハラスメント相談員の医学部教授が裁判初日に急死)
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12252118845.html


6、金沢大学「ハラスメント調査・防止体制」は自殺防止か促進か?

(1)自殺既遂学生4名(1年間での確認数)の理事副学長メール


 平成27年3月25日付で、柴田正良・理事・副学長より、教職員へ、1年度の学生の自殺既遂確認だけでも4名であり、自殺防止のための対応を依頼するメール連絡が来ました(次の通り。甲264として証拠提出)。
自殺メール

(2)「ハラスメント調査・防止体制」は自殺防止か促進か?

●横山証人尋問調書(裁判所作成)30ページから
(質問者は、原告小川)
問い:それで、その続きで別の質問に移りますけれども、訴訟が始まってから、吉本さんとの訴訟が最初ですけれども、それが始まった後で、あなたは訴状が受理されていないと御主張になって、またそれもあなたとの訴訟になる一原因になったわけですけれども、それはそれとして、訴訟で扱うか、調停で扱うか、大学との。そして、ハラスメント調査委員会なり何なり、学内の他の体制で扱うかについて切り分けを私が質問したことがあって、それは丙8号証で幾つか出てるわけですけれども、それに対して、あなたは、代理人を通して調停で回答する手続きを進めていると言って、それで1ヶ月経っても回答が来ないから、私がまた催促のメールを打って、それに対して重ねて、調停で代理人から回答すると。そして、知原代理人は何をやったかというと、次の調停には出席しないということを連絡してきた。実際、出席しなかったわけです。来なかったわけですけれども、実際に次の調停が開かれたのは数箇月、四、五箇月後になったわけです。そこでも切り分けの説明がなかった。ハラスメント調査委員会或は防止体制として、こんな不誠実な態度を私にだけ取っているんですか。それとも、他の人にも取ってるんですか
答え:その件について、どこかの時点で、正確には覚えておりませんが、裁判で訴えて問題になっているケース、中身とハラスメントの調査との関わりについては、原告に説明した文書を送っているはずでございます。
問い:今、他の人に対してもこんな不誠実なのかと聞きたくなった一つの理由の1は、甲264号証で、教育担当理事から教職員に向けて、自殺防止に努力してくださいというメールが、去年だったかな。書証なので、見ていただいたら日付も正確に分かりますけど、来てるんですよ。実際、1年で既遂が確認された学生さんの自殺だけで4人亡くなってる、この時は。多分、去年か一昨年の話です。そういう状況で、ハラスメント調査委員会とかハラスメント防止体制がこんな状況だったら、どんどん自殺させる方向へ持っていってるんじゃないですか。いかがですか
答え:自殺とハラスメントの関係について、どのような状況にあったのかということについて、私は責任を持って答える立場にはありません
問い:だけど、例えば調停とハラスメント調査、学内調査の切り分けについても数箇月間答えない。そして、やっと今回、最近、あなたの陳述書がこの裁判に出てきて、再開が可能ですと最後に書いてありました。陳述書の最後にね。やっとこんな話が出てきた。つまり何年ですかね、もう8年ぐらいじゃないですか。その間答えないという、こういう対応をする、そういうハラスメント防止体制な訳ですね。違いますか
答え:違います。それは原告が面談に応じてくれれば、すぐに具体的な状況について判断を下すことが可能でありました。面談について一切対応していただけなかったので、調査委員会はその次へ進む段階にはなかったということでございます。それは放置していたわけではありません。
問い:しかし、実際、ハラスメント認定された打出講師ですら、4年経っても孤立させられたままだったじゃないですか。さっきテレビ報道をお見せしましたけど
答え:それは、繰り返しになりますが、時間をかけて調査を行い、最終的に判断を行ったということでございます。それは放置をしていたわけではありません。その間に沢山の人から具体的な状況についてヒアリングを行い、状況把握を努めてきたということでございます。
<引用ここまで>


引用者説明:
 横山証人は、私やそれ以前の打出喜義講師(産婦人科での教授らによる無断人体実験を告発)の件の、「ハラスメント調査委員長」および「ハラスメント総括相談員」でした。

 上記5の通り、横山ハラスメント調査委員長による打出講師の被害者認定から4年以上経っても、職場環境が改善されていないことが、テレビで報道されました。

 横山証人は、その後、金沢大学の「ハラスメント防止委員」(各事案がハラスメントか否かの判断も行う)になり、昨年3月の定年退職後も、金沢大学はハラスメント相談員に任命しており、本日(2017年3月26日)午後時点で金沢大学が公開しているハラスメント相談員名簿(下)で、下から2人目に「学外専門家」の相談員として掲載されています。

●ハラスメント相談員名簿(金沢大学が公開)
http://www.adm.kanazawa-u.ac.jp/ad_jinji/sogosodan/soudaninmeibo.pdf