金沢大学カフェイン療法死亡教授ら書類送検事件は「医師による迅速で正直な説明」で回避できたのでは? | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

金沢大学カフェイン療法による死亡で教授らが書類送検された事件は「医師による迅速で正直な説明」で死亡も書類送検も回避できたのでは?(医療事故33)

 医学部大学等事件が数回続き、しばらくぶりに医療事故区分の記事です。

 前回までの、医学部においてどういう教育によりどういう医師を養成するか、説明や情報開示を積極的に行なう医師かそうでない医師かなどと、医療事故や医療によって生じる死亡の回避との関連を、金沢大学カフェイン療法死亡での教授ら書類送検事件を例に考えてみます。

 今回記事では具体的内容には触れませんが、金沢大学の別の教授を被告とするカフェイン療法以外の医療訴訟(民事裁判)が、昨年(平成28年)より金沢地方裁判所民事部において係争中で、医療行為本体に加えて説明義務違反も争われています。

1、金沢大学カフェイン併用化学療法患者死亡で教授ら書類送検
〜心機能大幅急落を説明せずに致死性副作用を持つアドリアマイシンを投与し、11日後に16歳で死亡。
聞いてたら「止めて下さい」って言った!


 アドリアマイシンという抗がん剤は、様々ながんに有効で広く用いられていますが、致死性の心毒性を持ち、使用され始めた約30年前頃に多くの副作用死が生じたため、その後は厳しい中止基準が多くの医学書(研修医、看護師、薬剤師向けも含む)に明記されています。

 しかし、金沢大学では、次の通り心機能が大幅急落した後に中止せず続行して、11日後にアドリアマイシン心筋症による心不全で16歳で死亡し、教授ら医師3名が書類送検されました。
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 この心機能の大幅急落は患者側に知らされずにアドリアマイシン投与が続行され死亡したもので、死亡翌日の主治医による治療と死亡の因果関係などの説明に対して、遺族は、心機能大幅急落を知らされていたら止めて下さいって言っていたという旨を述べていて、これは金沢大学病院が録音した音声データで確認できます。
録音1
録音2
 また、死亡後の主治医から遺族への回答書では、心機能の大幅急落を知った上でアドリアマイシンを更に投与した旨を説明しています。

●主治医から遺族への回答書、心機能大幅急落を知った上で投与
 (2016.5.27、医療事故19)

https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12164730004.html

 上記の録音とその反訳や検査データ、その他の書類などから、この件では心機能大幅急落を患者側に伝えていれば、患者側がアドリアマイシンを含む同療法の中止を求めて、それによって副作用のアドリアマイシン心筋症による死亡という結果が回避できた可能性が高いと考えられます。

 すなわち、「説明」していれば「死亡」という結果が回避できたと考えられ、「医師による迅速で正直な説明」が医療安全・死亡回避にも重要であることを示す例と言えましょう。

 このカフェイン療法死亡での教授ら書類送検事件は、本ブログの横浜講演スライド詳報シリーズ(医療事故12〜24で断続的に掲載、2016.01.31〜2016.09.29頃)でお示ししていますので、適宜ご覧下さい。

2、副作用死を、治療と死亡の因果関係なしと、4年後に発表
 〜発表した病院担当理事は後に任期途中で退任


 上記のカフェイン療法での死亡の原因がアドリアマイシンの副作用であることは、死亡翌日の主治医による遺族への説明(上記の録音反訳)に加えて、カルテの「退院時確定病名」欄などの資料からも明らかでした(下の医療事故4のリンクなど)。

 原疾患である骨肉腫は、手術で原発巣の除去が出来て、遠隔転移が認められず、「限局」とカルテ類に明記されているので、手術の約2ヶ月後に「骨肉腫」での死亡はあり得ず、残り2つの「アドリアマイシン心筋症」「心不全」しか直接的な死因はあり得ません。

 しかし、死亡から約4年後になる2014年4月22日(新聞社などから金沢大学への追及が始まった頃)に、山本博・附属病院担当理事・副学長(当時)らは、治療と死亡の因果関係は無い、悪意は無かったと考えている、と発表しました。

●副作用死を治療と死亡の因果関係なしと発表(2015.09.16、医療事故4)
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12073570428.html

 その山本理事は、発表から3年近く経った2017年3月に、任期途中で理事を退任しました。

●山本博・理事副学長が任期途中で退任(2017.05.14、医学部大学等事件58)
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12274719992.html

 金沢大学は、「迅速で正直な説明をする医師」か、そうでない医師か、どちらを養成しようとしているのかです。