医療事故4:副作用死を4年後になって治療と死亡の因果関係なしと発表〜金沢大学病院少女死亡書類送検 | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

●死亡翌日の、主治医によるご遺族への説明   ●退院時確定病名欄(死亡時の確定病名)
(病院が録音し検察庁が収集した録音と反訳)(別件訴訟証拠で、提出版は病院側人物が実名)

左主治医説明録音黒        右退院時確定病名黒

 今回は、金沢大学病院における少女死亡で教授ら書類送検の事案から、「本当の死亡原因」とその「発表内容」とのギャップなどを見ていきます。
 なお、今週金曜に、厚労省が、この死亡などの通報を、刑事告訴されていたT教授に漏洩した件での国家賠償訴訟が、東京地裁で開かれます。
事件番号:東京地方裁判所平成26年(ワ)第22761号事件
原告:小川和宏(金沢大学医学系・准教授)
被告:国、ND(漏洩当時、先進医療専門官。現在は国立O大学病院循環器内科・准教授)
日時と場所:2015年9月18日(金)午後1時15分 東京地方裁判所 第709号法廷

<副作用による死亡を、治療と死亡の因果関係なしと判断されたと発表>
 心機能が大幅に急低下した後に、心機能異常の患者には禁忌(使ってはならない)の抗がん剤アドリアマイシンとカフェインの投与(カフェイン併用化学療法)を再開して約11日後に少女が死亡し、金沢大学病院教授らが書類送検された件では、副作用による死亡であるにもかかわらず、金沢大学は、死亡から4年以上後の2014年4月22日に記者会見を開いて、治療と死亡の因果関係はないと判断されたと発表しました。
●北陸中日新聞2014.4.23 
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140423064314246
 その約8ヶ月後に、金沢大学は、抗がん剤の副作用で死亡したと認めることになります(後述)。

<新たな委員会で死亡調査を行うと記者発表で述べたが、未だに死亡調査結果が見当たらない>
 その翌月、教授らの書類送検が報道され、同年9月に私は上記の国家賠償訴訟を提起しました。前年(2013年)10月に、私がこの死亡などを厚労省に通報したところ、ND先進医療専門官(当時)がこの通報を刑事告訴されているT教授に翌日漏洩したものです。
 この提訴1週間後に、金沢大学は、記者発表で、この死亡事案を新たな調査委員会で調査すると述べましたが、未だにその報告は見当たりません。
http://ameblo.jp/jpmax/entry-12036226098.html
 「投与約11日後に死亡」を予期して投与したのか、予期せず投与したのかさえ、金沢大学は明らかにせず、厚労省は明らかにすることを拒否しています(今月4日付の被告国の準備書面(4)で)。


<左上画像:死亡翌日に、T教授がご遺族へ説明した録音の反訳(病院が録音し、検察が録音とともに収集)>
 検察庁の録音や反訳は実名ですが、ここでは「ご遺族」「●●」「■■」に表記を変えています。
 なお、EFというのは、ejection fraction の略で、「駆出率」と日本語訳されます。心機能の指標で、心臓に貯めた血液の何%を1回で送り出したか、の数字であり、例えば100ミリリットルの血液を貯めて、1回で70ミリリットルを拍出すれば、70%です。正常値は、「50%以上」「55%以上」「60%以上」とする医学文献があります。

録音反訳1 (EF38%の検査結果と重篤な心筋障害についての説明)
会話日:2010年3月3日

ご遺族「先生、やっぱり、その検査報告というのがあるんです。」
主治医「そうそう。」
ご遺族「だから、それをね、」
主治医「それは、もし、我々が●●さんに報告してて、●●さんがそこで、『止めて下さい』と言えば、」
ご遺族「絶対『止めて下さい』って言ってますよ。」
主治医「そうすれば、こういう重篤な心障害、心筋障害っていうのは、もちろん防げたというふうには思いますけどね。」

録音反訳2 (6回目(計8回目)の投与と死亡の関係についての説明)
会話日:2010年3月3日

主治医「そこで6回目の治療を始めたこと、これはもう事実ですから。」
ご遺族「それによって、こうなってしまったんですよね。」
主治医「その6コースの化学療法のアドリアマイシンによって副作用が増強したわけで、それによって現在の状況に至ったわけなんで。」
ご遺族「その6回目が無かったら、■■は生きてたんですね。」
主治医「6回目が無かったら、その確率は非常に高いとは思います。」


<右上画像:退院時確定病名欄の病名は、骨肉腫、アドリアマイシン心筋症、心不全、の3つのみ>
 右上画像は、カルテ類の「退院時確定病名」欄であり、本件では患者さんは入院のまま死亡されたため(転院などなし)、死亡時確定病名でもあります。
 この確定病名は、骨肉腫、アドリアマイシン心筋症、心不全、の3つだけであり、骨肉腫は手術で除去が成功して画像診断で遠隔転移が認められなかったので、手術の約1ヶ月後の本件死亡の直接死因にはなり難いため、「アドリアマイシン心筋症」「心不全」に絞られます。


<治療と死亡の因果関係なしの判断と発表~T教授の死亡翌日説明や退院時確定病名欄等に反する内容>
●北陸中日新聞2014年4月23日記事(最初の記者会見発表)より
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140423064314246

「当時、この死亡と治療の因果関係はないと判断された。」

 ところが、金沢大学はこのように、治療と死亡の因果関係はないと判断された、と発表したのです。これは、死亡から4年以上後、私の厚労省への通報とその漏洩から半年以上経ってからのことです。そして、T教授らが書類送検されている事実も伏せたままでの発表でした。

 同年9月1日の私の国賠訴訟提訴や、同年12月18日のTBS系テレビ報道などを経て、同年12月26日に、金沢大学は最終報告書というものをまとめ、その第7ページ下からで、
「抗がん剤のアドリアマイシンの副作用である心筋症で死亡するという事態が発生した」
と、ここに至ってやっと「本当の死因」を認めました。
●最終報告書(第7ページ下からが、アドリアマイシン心筋症で死亡の記述)
http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/oshirase/houkokusyo20141226.pdf
●TBS系NEWS 23、2014年12月18日(死亡の厚労省通報とその漏洩など)
https://www.youtube.com/watch?v=TfVMP06GSqc&feature=youtu.be

 これは、死亡から4年半以上、私の厚労省通報から1年以上、私の国賠訴訟提起から約3ヶ月も後のことです。
 
 しかし、本件死亡に関して、次のような基本的なことさえ未だに明らかにされておらず、T教授は研究を続けたい考えだと報道されており(医療維新2015.6.5)、これは再発防止とはほど遠い状態だと考えられます。
1、心機能が大幅に急低下した後に、禁忌である抗がん剤アドリアマイシンの投与をなぜ再開したか?
2、「投与後約11日での死亡」を予期して投与したのか、予期せず投与したのか?
3、カフェインがアドリアマイシンの心毒性を増強するという論文が1995年に発表されているのに、なぜ、投与禁忌の患者さんにまで投与し、死亡後も死亡の事実を伏せて、治療成績の過大報告まで行って、カフェイン併用化学療法を続けていたのか?

●医療維新2015.6.5
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/327810/
●カフェインがアドリアマイシンの心毒性を増強するという1995年の論文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9420645
(つづく)


<時系列>
2009 カフェイン併用化学療法を受けるため金沢大学へ転院(治療成績の誇大報告が2015年に判明)
 ●医療維新2015.6.5 http://ameblo.jp/jpmax/entry-12043172157.html
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12041590691.html
2010.1.22 心機能の大幅急低下が判明し、検査結果報告書に「アドリアマイシン心筋症でしょうか」
 ●次の右上と左上の画像http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.1.29 発見されていた腫瘍を手術で除去。画像診断でも遠隔転移は認められなかった。
 ●次の左下画像http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.2.18 投与再開、翌日の投与中に心不全症状を認め投与中止、アドリアマイシン心筋症と診断
 ●次の左下画像http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.3.2 死亡。退院時確定病名欄は、骨肉腫、アドリアマイシン心筋症、心不全(本記事右上画像
2010.3.3 T教授が、最後の投与をしなければ生きていた確率は非常に高いと説明(本記事左上画像
2012.7.30 ご遺族がT教授ら医師3名を業務上過失致死で刑事告訴、その後3名が書類送検
2013.10.1 小川が本件死亡と死亡の未報告を厚労省に通報、翌日ND先進医療専門官がT教授へ漏洩
 ●次の左右画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12070608348.html
2014.4.22 金沢大学が会見で、治療と死亡の因果関係はない旨を発表、大規模な倫理違反を全面に
 ●北陸中日新聞2014.4.23http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140423064314246
2014.5.23 教授ら書類送検を、北陸中日新聞が1面トップ記事で報道して、明らかに
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12030008532.html
2014.9.1 小川が通報漏洩で厚労省(国)とND先進医療専門官を提訴(上記事件番号
2014.9.8 金沢大学が記者発表で、新たな調査委員会で死亡事案を調査すると述べた。
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12036226098.html
2014.12.18 TBS系テレビが本件死亡、厚労省通報、通報漏洩などを放送、翌朝、朝日新聞も報道
 ●TBS系NEWS23、2014.12.18https://www.youtube.com/watch?v=TfVMP06GSqc&feature=youtu.be
2014.12.26 金沢大学が最終報告書をまとめたが、倫理違反が全面で、死亡経緯は見当たらない
 ●最終報告書 http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/oshirase/houkokusyo20141226.pdf
2015.6.4 厚労省の先進医療会議で、有効性の過大報告やデータの出し入れなどが問題に
 ●医療維新2015.6.5 https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/327810/
2015.9時点 死亡報告は見当たらず、厚労省は約11日後の死亡が予期したものか否かの回答拒否