医療事故5/大学等事件、金沢大病院死亡事件ご担当検事が金沢大でご講演/荒廃する国立大学/国賠訴訟 | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

医療事故5/大学等事件、金沢大病院死亡事件ご担当検事が金沢大でご講演/荒廃する国立大学/国賠訴訟

 前回は、金沢大学少女死亡での教授ら書類送検事件について、次のような基本的なことさえ未だに明らかにされておらず、再発防止とはほど遠い状態だと考えられる、というところまででした。
1、心機能が大幅に急低下した後に、禁忌である抗がん剤アドリアマイシンの投与をなぜ再開したか?
2、「投与後約11日での死亡」を予期して投与したのか、予期せず投与したのか?
3、カフェインがアドリアマイシンの心毒性を増強するという論文が1995年に発表されているのに、なぜ、投与禁忌の患者さんにまで投与し、死亡後も死亡の事実を伏せて、治療成績の過大報告まで行って、カフェイン併用化学療法を続けていたのか?

ここで一旦、捜査機関に目を転じ、この事件ご担当の検事さんと捜査などについてです。


1、金沢大学病院少女死亡書類送検事件ご担当の吉田尚史検事殿が
  金沢大学でご講演


●金沢大学ホームページ記事2015.5.21 金沢地方検察庁の検事が検察捜査について講演
http://www.kanazawa-u.ac.jp/news/27352

 この少女死亡事件の捜査ご担当は、金沢地方検察庁の吉田尚史検事殿であり、このブログで前回までにお示ししてきた、主治医による死亡翌日のご遺族への説明の録音と反訳、心機能EF(駆出率)の急落図、カフェインがアドリアマイシンの心毒性を増強するという1995年の論文などに加えて、研修医向けの医学書(心機能EFが50%以下ならアドリアマイシンを投与しない、などの内容)など、多くの資料を収集なさいました(これらは2014年夏前後が中心)。
 この捜査ご担当の吉田検事殿が、今年(2015年)5月13日に、金沢大学で、検察捜査についてご講演なさいました(上の金沢大学ホームページ)。刑事告訴から吉田検事殿ご講演などの経過は次の通りです。

2012.7.30  ご遺族がT教授ら医師3名を刑事告訴(金沢中警察署へ)
2013.10.1  小川が厚労省へ本件死亡等を通報、翌日、ND担当官がT教授へ漏洩
2014.1頃   T教授ら3名を書類送検(警察が金沢地方検察庁へ)
2014夏前後 吉田検事殿が、主治医説明の録音、心機能急落図、毒性増強の論文、医学書など収集
2014.9.1  小川が、厚労省通報漏洩で、国家賠償訴訟を提起
2014.9.8  金沢大学が記者発表で、新たな委員会で死亡事案の調査を行なうと述べた
2015.5.13  吉田検事殿が金沢大学でご講演(起訴か不起訴かの処分が出ていない段階)
2015.9時点 死亡事案の調査結果が見当たらない

●主治医による死亡翌日のご遺族への説明の録音反訳(医療事故4の冒頭)
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12073570428.html
●心機能EF(駆出率)の急落図(医療事故2の冒頭)
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
●カフェインがアドリアマイシンの心毒性を増強するという1995年の論文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9420645


2、国賠訴訟(厚労省がこの死亡通報を漏洩した件)の弁論のご報告

事件番号:東京地方裁判所平成26年(ワ)第22761号事件
原告:小川和宏(金沢大学医学系・准教授)
被告:国、ND(漏洩当時、先進医療専門官。現在は国立O大学病院循環器内科・准教授)
次回:2015年11月27日(金)午前10時30分 東京地方裁判所 第709号法廷

 先週金曜(9月18日)に、上記の厚労省通報漏洩の国家賠償訴訟の口頭弁論が開かれ、今後、原告および被告の双方が、主張を補充することになりました。次回の弁論は、2015年11月27日(金)午前10時30分に、東京地方裁判所 第709号法廷で開かれる予定です。


3、荒廃する国立大学
  ~ブラック企業特別賞の東北大学、教授が学長提訴の浜松医科大学


(1)東北大学が相次ぐ自殺などでブラック企業特別賞
   ~国立大学の法人化後に事件多発


 国立大学が法人化して学長等が人事権や予算等の決定権など強大な権限を持つようになった2004年頃から、権限による大学の私物化とも評価しうる事件が多発し、多くの自殺者も出て、東北大学が2013年にブラック企業特別賞を受賞するなど、国立大学が荒廃しています。
●ビジネスジャーナル2013.8.11 ブラック企業大賞2013、大賞:ワタミ、特別賞:東北大学
http://biz-journal.jp/2013/08/post_2673.html

(2)セクハラ調査委員が冤罪だと述べたため、調査委員4名中の3名を交代させ
 セクハラ有りの結論にし、加害者とされた助教授は否認を続けて自殺~東北大学


 国立大学の独立行政法人化に伴って、教職員は非公務員の身分になり、人事や懲戒処分等も、人事院から独立して大学(学長ら)が独自に決定するように変わりました。
 法人化初年度(2004年度)の東北大学では、セクハラ疑惑で調査委員が冤罪だと述べると、調査委員4名中の3名を交代させてセクハラ有りとの結論を出し、助教授が「セクハラしていない」と遺書を残して自殺しました(私が東北大学助手在職中の時期)。その後も自殺報道が続き(報道されるのは自殺の中のごく一部だけなのですが)、2013年にブラック企業特別賞を受賞しました(上記記事リンク)。
●河北新報2005.2.25(全国国公私立大学の事件情報が引用) セクハラ調査委員が冤罪だと述べ、委員4名中3名を交代させて、セクハラ有りに
http://university.main.jp/blog2/archives/2005/02/post_660.html
●共同通信2005.3.21 「セクハラしていない」東北大助教授が自殺
http://www.47news.jp/CN/200503/CN2005032101004812.html

(3)浜松医大教授が学長と大学を提訴
   ~学長によるパワハラでのPTSDで労災認定後に


 最近では、浜松医科大学のSK教授(解剖学系の教室)が、NS学長によるパワハラでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして労災認定され、今年(2015年)7月7日に、SK教授が、NS学長個人と大学を提訴しました。
事件番号:静岡地方裁判所浜松支部 平成27年(ワ)第332号事件
原告:SK教授(解剖学系の教室)
被告:NS学長(個人として)、浜松医科大学(大学運営法人として)
第1回口頭弁論が2015年9月7日に開かれ、次回は11月4日に弁論準備手続の予定。
●医療維新2015.7.8
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/338076/
●産経新聞2015.7.7
http://www.sankei.com/affairs/news/150707/afr1507070030-n1.html
●朝日新聞2015.7.8
http://apital.asahi.com/article/news/2015070800021.html


 本ブログで連載中の、金沢大学病院での少女死亡事件については、今後も続報を掲載していきますが、一方、金沢大学病院以外での医療事故等や、医療事故以外の大学等の諸問題(上記で少数の例示をしましたが、特に法人化後の国立大学で事件が多発)も、併せて検討していく予定です。


<金沢大学病院少女死亡事件時系列>
2009 カフェイン併用化学療法を受けるため金沢大学へ転院(治療成績の誇大報告が2015年に判明)
 ●医療維新2015.6.5 http://ameblo.jp/jpmax/entry-12043172157.html
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12041590691.html
2010.1.22 心機能の大幅急低下が判明し、検査結果報告書に「アドリアマイシン心筋症でしょうか」
 ●次の右上と左上の画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.1.29 発見されていた腫瘍を手術で除去。画像診断でも遠隔転移は認められなかった。
 ●次の左下画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.2.18 投与再開、翌日の投与中に心不全症状を認め投与中止、アドリアマイシン心筋症と診断
 ●次の左下画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12068013758.html
2010.3.2 死亡。退院時確定病名欄は、骨肉腫、アドリアマイシン心筋症、心不全
 ●次の右上画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12073570428.html
2010.3.3 T教授が、最後の投与をしなければ生きていた確率は非常に高いと説明
 ●次の左上画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12073570428.html
2012.7.30 ご遺族がT教授ら医師3名を業務上過失致死で刑事告訴、その後3名が書類送検
2013.10.1 小川が本件死亡と死亡の未報告を厚労省に通報、翌日ND先進医療専門官がT教授へ漏洩
 ●次の左右画像 http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12070608348.html
2014.1頃 T教授ら医師3名を書類送検
2014.4.22 金沢大学が会見で、治療と死亡の因果関係はない旨を発表、大規模な倫理違反を全面に
 ●北陸中日新聞2014.4.23http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140423064314246
2014.5.23 教授ら書類送検を、北陸中日新聞が1面トップ記事で報道して、明らかに
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12030008532.html
2014.9.1 小川が通報漏洩で厚労省(国)とND先進医療専門官(漏洩時の)を提訴
2014.9.8 金沢大学が記者発表で、新たな調査委員会で死亡事案を調査すると述べた。
 ●http://ameblo.jp/jpmax/entry-12036226098.html
2014.12.18 TBS系テレビが本件死亡、厚労省通報、通報漏洩などを放送、翌朝、朝日新聞も報道
 ●TBS系NEWS23、2014.12.18https://www.youtube.com/watch?v=TfVMP06GSqc&feature=youtu.be
2014.12.26 金沢大学が最終報告書をまとめたが、倫理違反が中心。アドリアマイシンの副作用のアドリアマイシン心筋症で死亡したことはやっと認めたが(第7ページ下から)、なぜそうした死亡に至ったかの経緯など、新たな調査委員会の報告は見当たらない
 ●最終報告書 http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/oshirase/houkokusyo20141226.pdf
2015.5.13 事件ご担当の吉田検事が金沢大学でご講演(起訴か不起訴かの処分が出ていない段階)
 ●金沢大学ホームページ記事2015.5.21 http://www.kanazawa-u.ac.jp/news/27352
2015.6.4 厚労省の先進医療会議で、有効性の過大報告やデータの出し入れなどが問題に
 ●医療維新2015.6.5 https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/327810/
2015.9時点 死亡報告は見当たらず、厚労省は約11日後の死亡が予期したものか否かの回答拒否