医療事故19、金沢大カフェイン療法死亡の主治医からご遺族への回答〜心機能大幅急落を知った上で投与 | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

医療事故19、金沢大カフェイン療法死亡の主治医からご遺族への回答~心機能大幅急落を知った上で投与

 金沢大学カフェイン併用化学療法死亡での教授ら書類送検事件で、手術で骨肉腫の原発巣の除去に成功して画像で遠隔転移もみられなかった16歳の患者さんが、アドリアマイシンという抗癌剤投与の約11日後に死亡してから6年以上が経ち、書類送検が新聞等で報道されてから2年以上が経ちました。

 事実関係の解明(なぜ心機能の大幅急落後に禁忌のアドリアマイシンの投与を続けたのか)や再発防止策はどうなっているのかと、学外の方からも時々お尋ね頂くのですが、今月(5月)9日の時点で事実関係さえ公表されていません(病院部総務課総務係長談)。

 その時、この件は附属病院の病院部(事務の部)の総務課が窓口になるので、総務係長へ資料を付して尋ねてくれと言われ(附属病院に所属していない私に「資料を付してくれ」というのも奇妙な話ですが、私が偶然に学外の方から個人的に情報提供を受けたことを一部の方々はご存知なので、これについてはひとまずここで置きます)、それに従って、先週水曜(5月18日)から資料を添付して、死亡時と同じ抗癌剤の中止基準を続けているのかなどを尋ねているのですが(総務係長の上司の総務課長や病院部長などにもCCを入れて)、返答がありません。

 事実関係の確認に基づいた再発防止策(抗癌剤の中止基準の検討も含む)が安全で適正な医療の実現には必須であり、また、金沢大学に勤務している私でさえ、これらがどうなっているのかさえ確認できない状態ですので、学外の一般の患者さんには更に情報が乏しいと考えられます。

 そのため、主治医からご遺族への回答書など資料の一部をここに公開します。


 まずは、5月18日に添付して送付した資料から次の3点で(これら以外の資料も送付していますが)、心機能の急落経過のグラフと、その元データの検査結果報告書2つです。

162
72%

38%

 これらを含めて資料を添付して尋ねても1週間にわたって応答が無かったため、今週水曜(5月25日)に、次のメールを総務課長殿へ送りました(附属病院ご担当の山本理事、蒲田病院長、病院部長にもCCで送付)が、本日夕方まで返信がありません。
大久保

 上記メールには、主治医からご遺族への回答書(ノーカット版)を添付しました。以下に、その第4~8ページと、第11、第13ページをお示しします(黒塗りと赤下線は小川が付しました)。

●第4ページ
4
●第5ページ
5
●第6ページ
6
●第7ページ
7
●第8ページ
8
●第11ページ
11
●第13ページ
13

 心機能の指標EFが38%まで低下していたが、30%~50%では慎重投与との研究報告があり、金沢大学はそれを基準にしていたため、化学療法を途中でやめるということは考え難く、EF低下の検査結果は伝えなかったこと、それは伝えたほうが良かったかは悩むところであること、そして、金沢大学は骨肉腫について高い治療成績をもっていることからわざわざ遠方より来られたこと、などを述べています。

 しかし、治療成績の過大報告などが、後に明らかになって報道されました。

医療維新記事(過大報告など)

過大1
過大2
過大3

 また、金沢大学整形外科のホームページでは、次の通り宣伝していました。
整形外科HP宣伝

 金沢大学の最初の会見では、「悪意はなかったと考えている」と説明したことを、北国新聞は報じています。
悪意なかった

 この件でご遺族は「業務上過失致死罪」で刑事告訴なさり、教授らが書類送検され、昨年秋に不起訴になりました。

 「捜査」の過程や結論の是非はさておき、主治医らの回答書の「EFが38%に大きく低下したのを知った上で投与した」という内容や、附属病院ご担当の山本博理事の「悪意はなかったと考えている」のご説明、死亡例を伏せて治療成績の過大な報告や宣伝を繰り返していたことなどから、刑事告訴する場合の罪名は「過失」以外ではないかとも受け取れます。

 いずれにしても、事実関係の解明(なぜ心機能の大幅急落後に禁忌のアドリアマイシンの投与を続けたのか、など)や再発防止策(その後、アドリアマイシンの中止基準をどうしているか、など)を、金沢大学は、患者さん(これから病院を選択しようとする方々も含む)と学内構成員に説明すべきと考えますし、それが安全で適正な医療、そしてそれを担うことのできる人材の育成に繋がると考えます。