医学部大学等事件22、『内部告発の時代』(平凡社新書)が金沢大学カフェイン療法死亡事件などを紹介 | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

医学部大学等事件22、『内部告発の時代』(平凡社新書)が金沢大学カフェイン療法死亡事件などを紹介

 『内部告発の時代』(深町隆、山口義正著、平凡社新書、2016年5月16日刊)で、金沢大学のカフェイン併用化学療法での死亡事件や不正経理を私が通報したことなどが、紹介されました。

●『内部告発の時代』(アマゾン)
http://www.amazon.co.jp/内部告発の時代-平凡社新書-深町-隆/dp/4582858139

●『内部告発の時代』(平凡社HP)
http://www.heibonsha.co.jp/book/b222127.html

 この本の第114~119ページに、私の上司だった教授(昨年辞職)による不正経理と、附属病院整形外科のカフェイン併用化学療法での死亡事件の通報が具体例として示され、同書のテーマである内部告発の意義や公益通報者保護法の問題点などを考える材料になっています。

 東京の知人によりますと、書店の新刊コーナーに積み上げられているそうです。
 金沢では、石川県庁近くの金沢ビーンズという本屋さんにありました。

<以下、上記『内部告発の時代』より一部を引用>

地域を牛耳る学閥を敵に
(中略)
 少し長くなるが、金沢大学附属病院での医療ミスを通報した小川和宏准教授のケースを挙げておこう。小川さんのケースは内部告発者の個人情報が守られないケースが多いことに加えて、地方での内部告発にどれだけの難しさが潜んでいるのかわかりやすく教えてくれる。
(中略)
 筆者は「はじめに」で「内部告発は自分が所属するムラ社会を撃つ行為だ」と書いた。小川さんのケースはそれを地で行く展開になった。金沢の地は地元意識が強く、異分子排除の空気が強い。金沢大学も旧帝大ほどではないにせよ、地元では大きなブランド力を持っている。そのOB・OGは医学界のほか、法曹界やマスメディアにも根を張り、結束は強固だ。
(中略)
 彼らは母校の金沢大学に関する醜聞には徹底的にふたをしようとし、小川さんの争いは単なる「象牙の塔」の内部抗争ではすまなくなっていった。地域を牛耳る学閥を敵に回す行為だったのだ。
 これは小川さんの一方的な思い込みなどではない。小川さんの事件を受任した東京の弁護士も「裁判所や行政機関などがスクラムを組んで裁判を遅延させるなど、内部告発者は社会を破壊する者として扱う風潮が強い」と声を揃えるほどである。
(中略)
 公益通報者保護法は通報者に冷たく立ちはだかる壁になってしまっていると言わざるを得ないが、内部告発の現状から見ると別の問題を誘発しており、これは法律の建て付けを考える段階で経団連や行政が犯した大きな判断ミスだったろう。官公庁に通報しても通報者は保護されないばかりか、その個人情報さえ秘匿されないため、“手順を無視することで法律の保護の対象にならなくとも、身元が発覚してしまうのを避けるためには、最初からマスコミにこっそり通報したほうが安全”と考えるケースが多くなっているからだ。
(中略)
 通報される問題の中身にもよるだろうが、マスコミが通報内容を大々的に報じれば、企業や官公庁などが自主的に公表するよりも問題が大きくなってしまったり、こじれてしまったりする恐れは格段に大きくなる。マスコミは「まだ何か隠しているのではないか」と疑いつつ取材を継続するため、騒動が収束しにくい。その結果がどういうものか、オリンパスや東芝の例を挙げれば多くの説明は要るまい。

<引用ここまで>

 こうした厳しい状況がありますが、金沢大学内やOB等にももちろん良識ある方々がいらっしゃり、それは救いであり光明です。

 ただ、そういう良識ある方々が発言できない環境や、こうした状況を悪用しようとする別の(他大学からの)グループ等が、改善や建設的な解決をより難しくしているように感じます。
(上記引用中の冒頭の見出しで、『内部告発の時代』の著者は、「地域を牛耳る学閥」として金沢大学出身の方々を指していると受け取れますが、それに加えて、他大学出身で金沢大学在職(以前に在職も含む)の方々も、本ブログでご紹介している事件群にしばしば登場しています)