2025年1月16日 夜

 

ソウル・ノンヒョンドン 観察ログ
対象:専業主婦 43歳、結婚7年目。男児5歳
経歴:中堅企業マーケティングチーム代理まで勤務。退職3年

 


 

「有能感 #2」

 

指紋採取後 7日目

 

「タッ……タッ……タッ……」
人差し指の爪が
ハンドルを叩く。
信号に引っかかり、止まる。
ブレーキがかかる。

 

メモ紙ではなく、
携帯電話を置いてくるべきだった。
メモ紙が、夫にスリルを与えただろうか。
家の中に、風が入ってはいけない。

 

だが、
夫が有能に隠していたとしても、
家には痕跡が残る。
小さな手がかりにも、
疑いは積み重なる。

 

キャメルコートの彼女の
体臭が混ざるには、
十分な時間だ。
体臭は濃密で、温度さえも引き上げる。

 

太ももから、
締めつけてくる。

 

ドアを開け、
私が先に入る。
空気が、確かに違う。
だが、
予想とは違う。

 

温度が、わずかに低い。
匂いの密度も変わっている。
来て、去ったのだろうか。

 

寝室のドアは閉まっている。
ない。

 

リビングはそのまま。
キッチンも変わらない。
違うのは、
温度と密度だ。

 

子どもが父親を呼ぶ。
ドアを開ける。

 

子どもが開けたが、
誰もいない。

 

子どもを部屋に戻す。

 

ドアを閉める。
取っ手を握る。
大きく息を吐く。

キッチンの窓を確認する。
リビングの窓も。

 

子どもを寝かせる。
静かになった。

 

この家は、不在のまま密封された。

 

寝室の空気が、
落ち着いていく。
10分は、
経たなければならない。

 

寝室の4時間が、
空気に
時間順に積み重なっているはずだ。

 

寝室、私の持分は「9」だ。
夫が深夜、
酒に酔って隣のベッドに倒れ込んだ夜、
幾度となく。
私の体臭が流れ、
支配してきた空間。

 

その空間に、
夫ではない
別の持分が
混ざっていた可能性がある。

 

無色無臭。
子どもは除外される。

 

私も無臭の状態で、
この部屋に入らなければならない。
そうして初めて、
正確な比率を採取できる。

 

寝室の空気の占有率は、
変わっているかもしれない。
私、彼女、夫。
7:2:1あたりまで、
疑いが傾いている。

 

寝室ではなく、
リビングでシャワーを浴びる。

 


 

【観察メモ】


観察、疑い、収集。
すでに、私だけの物語には十分な材料がある。
言葉として残した瞬間、どんな小説よりも強くなる。

 


 

Ennd
by N≠N

 


 

・観察ログ 1|何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 2「重なり」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 3「目撃」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 4「計算」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 5「確認 #1」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

観察ログ 6「確認 #2」も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 7「感覚」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 8「有能感」も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 9「最後のカード」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 10「消えたカード、残ったカード。」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 11「閉じる」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 12|「不一致 ≠ 一致」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 13|「4〜5時間」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 14|「有能感 #2」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ(この記事)