2025年1月8日 午後


ソウル・ノンヒョンドン 観察ログ.
対象:専業主婦 43歳、結婚7年目。男児5歳。
キャリア:中堅企業マーケティングチーム 代理まで勤務。退職3年。

 


 

「有能感」

 

あのとき私は
ずっしりとした冷蔵庫の取っ手に
自分の最初を委ねていた。

 

母は有能ではなかった。
母の変わってしまったリズムを取り戻すことはできず、
冷蔵庫は再び満たされることはなかった。
戻ってきた父が気づくまでに、一か月もかかった。
家の温度は下がっていった。

 

その空気は家中を満たし、
皆それぞれの感覚の奥へと入り込んでいった。
父が癌で亡くなるまで、何ひとつ変わらないまま。

 

「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ」
「ねえ、ちょっと手伝って」

 

夫が足首にギプスをして入ってくる。
怪我をしたという連絡も、病院だという
メッセージすらなかった。

 

「いったい、どうしたの?」
「会社で怪我した」
「どうして、どうやって? これは何……どういうこと」

 

肩を支え、ソファに座らせる。
膝をつき、傷めた脚に触れる。
どうして今になって、私は知ったのだろう。

 

でも……、

 

これは何の数字だろう。ネームペンで書かれた数字。
病院で書かれたものとは思えない。
あまりにも急いで書かれた数字だった。

 

「私を本当に、あの世界へ押し出そうとしているのだろうか」
「私が受け止めきれないほうへ」

 

どうやって家まで来たのだろう。

 

 


 

※更新は、基本的に定期的に行っています(状況により前後する場合があります)。

続きも読んでいただけたら嬉しいです。

 

Ennd
by N≠N

 


 

 連する察ログ
この記録は、連続した観察ログの一部です。
 

・観察ログ 1|何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 2「重なり」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 3「目撃」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ
・観察ログ 4「計算」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 5「確認 #1」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

観察ログ 6「確認 #2」も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 7「感覚」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 8「有能感」も起きていない、ただ観察が始まっただけ(この記事)

・観察ログ 9「最後のカード」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ

・観察ログ 10「消えたカード、残ったカード。」も起きていない、ただ観察が始まっただけ