2024年12月12日 午後6時20分

ソウル・論峴洞 観察ログ
対象:専業主婦 43歳/結婚7年目/男児5歳
経歴:中堅企業マーケティングチーム代理まで勤務、退職3年
 

「重なり」
 

「もう疲れた」「正直しんどい」
そう思うことはある。
けれど、人生を変えるほどの理由ではない。
 

夫が悪いわけでもない。
誠実で、安定している。
それでも、どこか足りない。
 

問題は、いつも排卵期の前後だ。
その日は、子どもが体調を崩し、
一日に二度、病院へ行った夜だった。

 

注射と薬。止まらない咳。
子どもは疲れきり、
睡眠導入剤の影響で早く眠った。

 

溜まった家事を最低限だけ片づけ、
ただ静かになりたかった。
排卵期だった。

 

夫は出張中。
韓国にいても、正直、頼りにはならない。

 

身支度を急いで整え、ベッドに横になる。
目を閉じ、まずは落ち着く。
欲求を扱うためだった。

 

子どものことはいったん脇に置き、
呼吸を整える。

 

余計な考えは切り捨てる。
1分、2分。

 

身体の感覚が、
次第に一か所へ集まっていく。
呼吸が浅くなり、
意識が内側へ引き寄せられる。

 

そのとき、電話が鳴った。
義母だった。

 

「はい……わかっています」
翌日の夕食についての確認だった。

 

夫は翌朝帰国するが、
義父の誕生日で、欠かせない席だ。

 

体調の悪い子ども。
排卵期で増幅する欲求。
気の重い義実家との食事。

 

ひとつひとつは、取るに足らない。
けれど、重なった瞬間、
心が溢れてしまう。

 

食事に向かう車の中。
結婚前に大切に履いていた冬用のスラックスが、
体重増加で窮屈になっている。

 

わずかな動きでも、
不快な圧迫が一か所に集中する。
きちんとしようとして、選択を誤った。

 

太ももに力が入り、
頭がぼんやりして、目を閉じてしまう。

 

さらに、
久しぶりに戻った夫は気分が高揚しているのか、
距離が近すぎる。
意図を隠さない接触が続く。

 

意味のない刺激に、苛立ちが限界まで高まる。
どうせ先に眠ってしまうことも多く、
正直、嬉しくない。

 

「 溢れ出してしまったら?」
「この状態を、私は処理できるだろうか」

 

段差を越えるたびに刺激が重なり、
神経が一点に集中する。

 

車が止まると同時に降り、
トイレへ駆け込む。

 

一瞬の静けさ。
そして、 呆気なく、果ててしまう。

 

接触事故。
夫から派生した事故だった。

 

手を洗いながら、結論を出す。
明日、観察者に連絡しよう。

 


 

察メモ]

 

日常は、思っている以上にドラマティックだ。
ただ、まだ言葉を与えられていないだけ。

構成が変わった瞬間、
個人は主役になる。

生のまま始め、構造へ入る。 

 

※更新は基本的に1日1話ペースです(状況により前後する場合があります)。
続きも読んでいただけたら嬉しいです。
 

 



Ennd
by N≠N

 


 

 連する察ログ
この記録は、連続した観察ログの一部です。

・何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 1
・「重なり」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 2(この記事)
・「目撃」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 3
・「計算」何も起きていない、ただ観察が始まっただけ|観察ログ 4