カキオキ -3ページ目

「THE GREY 凍える太陽」感想【ネタバレ大目】

THE GREY 凍える太陽」感想。
僕の上司にしたくない俳優ナンバー1はリーアム・ニーソンに決定しました。
100点満点で40点です。
なんかつっこみ所が多すぎて、いつも以上にやたら語尾に「おかしい」と言う言葉が入る感想になってしまいましたよ。

※ネタバレ大目です。一応、ラストに関する部分はテキスト背景同色にしましたので、テキスト選択でご覧ください。

墜落した飛行機の生存者達が、氷点下数十度の極寒の中、狼の襲撃に耐え、生存すべくあても無く行進する物語。

一人づつ崖から木に衣服を繋いで渡るシーンで、既に半数が渡り終えている状況になってから最後に渡る人物が「実は俺は高所恐怖症なんだ」と打ち明けた時に主人公が放った台詞である「先に言え」がこの作品への僕の感想の大半を代弁してくれました。
ロジック破綻の行き当たり場当たりサバイバル映画。

製作者は伏線は結果の3分位前に張れば良いやと思ってるのかと思うくらい、登場人物の思考や行動や生死、敵役である狼達の出現タイミングなど、一事が万事行き当たり場当たりで作られている映画でした。
主人公以外の生存者達はキャラ立てが最初は殆どされていないのだけど、その人物が死ぬちょっと前で何故か家族構成紹介やら、思い出したかのように咳き込むやら、もう歩けないとしゃがみこむやらの所謂「死亡フラグ」をわかりやすく提示してくれるので、非常に萎えます。
空気みたいな登場人物達に死ぬ直前だけ花実を咲かせてあげようと言う配慮なのでしょうか?

ていうか、この映画、根本的に話のロジックがおかしい。
一応、食料や燃料や風や狼を凌げる壁にもなるため、生存時間が飛躍的に増すであろう墜落した飛行機から離れて、殆どあてが無いのに氷点下数十度の極寒の吹雪の中、狼の襲撃を振り払ってまで、主人公に行進しようと提案させる脚本がまず信じられない。
そして、それに従って生存者達がノコノコついて行くのも完全にありえない。
あの環境の中、生存者達が絶命するまでに歩ける距離は良くても精々トータル100kmと言った所だろうけど、その程度の距離を適当に歩いて人里にたどり付く確立よりも、圧倒的に機動力もあり、狼の襲撃にも対抗でき、その上複数で捜索可能な捜索隊が墜落現場を見つける確立の方が遥かに上だろう。
一応、主人公の台詞で、飛行機50機で捜索しても何十日は見つからないから自分達で動いた方がマシみたいなロジックを提示するんだが、とてもそうとは思えない。
とにもかくにも、待っていてもお話が進まないから、無理やり物語に原動力をつけて行進させてる感じ。
どうしても行進させたいなら、墜落後に飛行機が完全に爆散して役に立つ物が得られないとか、墜落エリアにとんでもない化物が出るから逃げなければならないとか、そもそも主人公達の目的は元々サバイバルではなく、その付近でやらなければならない人類存亡を掛けたミッションがあるとか言ったもうちょっと全うなロジックを付けるべきだろう。
他にもドコソコに行けば狼は居ないし少し歩けば人も居るかもとかも万事が万事裏目に出るし。
拙者はリーアムの下では絶対に働きたくないでござる。

主人公が死亡者の身元を残す為に遺体から財布を集めるよう指示するのもおかしい。
ドッグタグみたいに2つあるわけじゃないんだから、遺体を発見した時に財布が無かったらかえって身元がわからんだろう。
終盤で集めた財布を主人公が積み上げて感傷に浸たるシーンがあるのだが、ハッキリ言ってこのシーンの為に作ったロジックとしか思えないんだが。
んで、その主人公のキテレツな財布集めの指示に生存者達が従うのもおかしい。
一人だけその指示に逆らってたけど、それは上記のような理由ではなく、めんどくさいとかお前に従いたくないとか言った反抗的な理由であって、指示の不的確さに反論した物では無かったし。
この生存者達って、マジで馬鹿ばっかなのかな?

7人も居るのに、見張りを1人にするのも決定的におかしいし。
皆が、朝起きたらアイツ死んでましたwとかさ・・・お話上、そいつを退場させる為に、脚本が無理やり一人で見張りをさせたとしか思えない。

あと、予算の都合が大きいのだろうけど、観客が観たいであろう肝心な所でことごとく時間がすっ飛ばされる。
見たい物見せましょうに応えない、応えられないのは、エンターテインメントとして凄く問題だと思う。
「気がついたら終わってた!」であるとか「気がついたら隣に居た!」とか。

「気がついたら終わってた!」ってのを具体的に挙げていくと、まずは飛行機が地面に激突する瞬間。
本題ではないけど、一応、航空パニック要素もあるんだから、墜落する瞬間は見たいでしょ。
恐らくは、激突カット撮影に予算がかなりかかるし、墜落後の状況との破片の配置やらをすり合わせなければ成らないから、気がつくと倒れていたって事にしたのだろうけど。
まあ、気がつくと変わり果てた世界と状況になっていたと言うのは、それなりに劇的って言うか、劇展開のスイッチの入れ方としてアリだとは思うのでそこはまだ許せた。が、問題はラストのアレ。
右手はサバイバルナイフをテープでグルグル巻きにし、左手は各指の間に小瓶を3本挟み、同じくテープでグルグル巻きにしたのち、それを岩に叩き付けて簡易メリケンサックを作り、アレと対峙する主人公。
ちょっとしたサバイバル豆知識を織り込んだ、急ごしらえの得物を両手に装備して、「さあ行くぞ」って場面で劇中最高の盛り上がりを見せるのだが・・・・www
まあ、そこまでのこの映画のヘタレ具合から予想は付いてたけど、確かにリーアムがアレと戦う場面は画作り出来そうに無いですね。

※ネタバレ反転

「気がついたら隣に居た!」ってのは、主に狼の襲撃。
カメラがパンすると1mも離れてない位置に狼が居るのは確かにドッキリするんだけど、不自然すぎるって!
これが、屋内でのモンスターとのやり取りならわかるんだけど、開けた場所で数人でキャンプしてるのに、誰にも気づかれずに狼が接近してていきなり隣から襲われるってホントに不自然すぎる。
しかも、この展開、劇中2、3回はあったからね。
恐らくは、狼が迫ってくる画を作るのがCGやらなんやらで手間と金が掛かるから、気がついたら隣に居た事にしようとしたのだろうけど、だったら脚本や演出を変えようよ・・・。

んで、「気がついたら隣に居た!」では無く、終盤に「気がついたら"俺"がそこに居た!」って場面はマジでちょっと噴出しました。
ここはコントみたいで笑った。

他にも、焚き火を囲う場面で全員カメラの向こう側に居るとかおかしいだろ。
壁際でなく、開けた場所でキャンプしているので、狼の襲撃に備えて全方向に感覚を研ぎ澄まさなければならない場面なのに、カメラと照明を優先するスタッフの心意気には心底感動しましたよ。
んで、焚き火を囲んでやってる事は、心底くだらない駄話だったり、死んだ狼の首を切り落とそうとする奴を本気で止めようとする不自然な演出が出てきたりで、なんか心底馬鹿馬鹿しくなりました。
どいつもこいつも、人物像の裏打ちは息子がー娘がーって感じに家族頼りだし。

良かった所も二つだけあった。
一つは、前述したアレと戦う寸前の場面。
もう一つは主人公の幻覚で、妻と向き合ってシーツに包まれてる状態から、瞬時に彼女が背中側に引っ張られるように吹き飛んで、吹雪の中での現実に戻されるシーン。
ここは思わず「あっ」っと声が出てしまい、本能に刺激してくる映像だったので、刹那ではあるが、主人公に感情移入できた唯一のシーンで非常に良いカットだなと思った。

個人的に、この映画を改善するなら、脚本の骨子から変えていかないと駄目だと思う。
この映画の主人公は序盤で自殺未遂をしてる自殺願望者だったんだけど、事故を切欠に他人の為にも、とりあえず自殺とかは頭の片隅に置いといて頑張る男になってた。
でも、なんだったら、自殺願望故に死なばもろともで他の生存者を道連れにしようと企むようなサスペンスにした方が面白かったんじゃないのかな。
同じ間違った選択ばかりの主人公なら、本作のように「ホントに選択を間違うアホ」よりも、1人死ぬのも7人死ぬのも同じじゃい!とばかりに「他人を道連れにする為にわざと選択を間違う」迷惑な奴にした方が面白かったと思う。

結論。
本作は、リアルっぽいラインで世界観や画面を作ってるのに、やる事なす事馬鹿ばっかの論理破綻で心底萎えた。
これに比べたら、当時はどうかと思ってた、姥捨て山に捨てられた婆さん達VS人喰い熊の映画「デンデラ」の方が何倍も面白かったよ!
「デンデラ」はリアリティラインもいい感じにしっかり低くバランス取ってて適当にファンタジー感も入ってたんで、突っ込み無用だったし、モロきぐるみの熊との戦いも工夫があって楽しかった。
おまけに、「デンデラ」は誰でも1000円と言う価格設定だったし!

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「アベンジャーズ」感想【ネタバレ若干】

アベンジャーズ」感想。
終盤の市街戦はかなり面白いけど、中盤までは意外と台詞が多くて中々退屈。
100点満点で70点です。

マーベルコミックスのヒーロー7人が力を合わせて悪に立ち向かう映画。

僕のこの7人に対する知識は「インクレディブル・ハルク」「アイアンマン」「アイアンマン2」を観て、後はカプコンの対戦ゲームを少しだけプレイした程度で、「マイティ・ソー」と「キャプテン・アメリカ」は未見。
以下、僕のアベンジャーズリテラシーが不足しているのは認めますが、「日本よ、これが映画だ」と謳うのであれば、予備知識など当然不要で楽しめなければならないわけで、当然こちらとしてはそのレベルで楽しめる物を期待するわけです。
んで、予備知識的な事に関しては、知らなくてもストーリーが追えない程ではないと言う感じでした。
知ってれば知ってるほど、ヒーロー達に感情移入が出来るので、より楽しめると言う感じ。
実際、僕の場合は映像作品でほぼ観た事の無い「マイティ・ソー」と「キャプテン・アメリカ」関連のドラマはイマイチのめり込めなかった。

本作を観る前の印象は同じく前評判が凄く高いハリウッドビッグバジェットSFムービーと言う事でマイケルベイ監督の「トランスフォーマー」一作目みたいな感じかなと思ってました。
実際観てみると、高速でアップの画を多用した、大味でも良いからとにかく迫力重視の「トランスフォーマー」に比べ、「アベンジャーズ」はアクションシーンでの画面やスピード感が整理されていて、頭の中にスルスル展開が入ってきて素直に楽しめました。
ていうか、「トランスフォーマー」と言うより、質はともかくとにかく大量に地球に攻めてくる敵に対して、共闘して防衛的に戦う主人公達や、そして戦闘が無くあっさり終わるラスボスとかの要素が、「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」に凄く似てるなと思った。
ただし、劇場版ガンダム00の主人公達はテレビシリーズの中で育まれた絶対的な信頼関係で結ばれた状態なのに対して、アベンジャーズの7人はギスギス反目し合っている状態からのマイナススタートな為、劇中でお互いの信頼を勝ち得て行く過程がドラマティックで、人間ドラマとしてよりエモーショナルだなと思いました。
ゆえに、巨大な壁を共に乗り越え絆を深めた仲間故の「言葉なんていらねえけど、どうなんだ?コレ」的なエンドロール後のあのシーンも大変楽しめました。

ヒーロー個別感想。
「アイアンマン」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
予告で予め観てしまったのは残念だけど、社長がビルから落下中に新スーツに着替えるシーンは最高ですよ。
表面上軽薄だけど凄く熱い所が魅力的ですねえ。

「ハルク」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
ちとCG臭いけどビル・ビクスビー版の「超人ハルク」より全然でかくてカッコよかったです。
今回はもの凄く強い代わりに敵味方見境無く攻撃する設定を強調してたけど、過去作はもうちょっと自己制御出来てたように思えたんだが。
んで、中盤まではハルクを覚醒させない様にみんな必死だったのに、終盤の戦闘シーンでは特になんの切欠も無く共闘してたのですが、恐らくその矛盾をスタッフがセルフ突っ込みするために、突然思い出したようにソーを突き飛ばすシーンは凄く良かったですねえ。

「キャプテン・アメリカ」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
星条旗を模した服装で、現場で指揮をする姿はさながら世界のキャプテンである所のアメリカその物のようですって解釈で良いのかな?

「ソー」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
いや、この人ホントは良く知らんのですが。
日本向けには「ソー」じゃなくて、日本で慣れ親しまれた表現の「トール」と訳すべきじゃ無かったのかと凄く残念に思います。

「ホークアイ」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
矢は何時補充してるのだろうか。
序盤~中盤とこの人が敵に操られるのは、他の6人に比べてちとキャラが弱いから与えられた展開なのかなと失礼な事を思った。

「ブラック・ウイドゥ」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
「アイアンマン2」でのアクションも短いながらも超カッコよかったんで今作も期待してましたがアクションの質、量ともに大幅パワーアップで言う事なしです。
人外な超能力は無さそうだけど、終盤の大決戦でも素晴らしい活躍を見せてくれて大満足です。
特に、会話ばかりでつまらん序盤の展開のなかで、彼女の紹介を兼ねた「尋問中断」アクションは本作でも屈指の名シーンだと思います。
他のヒーローもこういうシーンを序盤にもっと入れて欲しかったなあ。

「ニック・フューリー」カッコWiiDS!ありがとう任天堂。
黒い丹下段平、ブラック・タンゲ。

ただ、この作品、前半から中盤のアクションに乏しい説明パートが中々退屈で、そもそも、この映画、ストーリーの根幹自体がかなりつまらない。
もちろん、この作品のテーマはズバリヒーローの共闘ですから、逆に根幹のストーリーこそが付け合わせみたいなもんで構わんと思うんだけど、だったらもっとシンプルな話にして欲しかった。
さして面白くないのに、以外と説明に時間を要する話なんですよね。
なので、序盤から中盤でのアクションなしの中弛みタイムはかなり眠かった。

あと、敵が全体的につまんない。
特に敵ボスの「ロキ」って言う鹿みたいなオッサンの見た目は嘲笑的な意味で面白いけど、敵としてのつまんなさはマジ致命的で、ホントに見た目がカッコ悪いし魅力が無いし弱そうっていうか実際弱いし。
つうか、この「ロキ」はアベンジャーズの一人「ソー」の弟だって言うんだから、その能力はまあ言うても「ソー」1人とイーブンなわけで、こいつ以外、実質ネームドモンスターが出て来ないからアベンジャーズが6人が不戦勝ってパワーバランスじゃねーかと。
実際、ロキは故意かどうかはともかく、案外簡単に主人公側に捕らえられて、結局は自軍の軍隊の救出頼りだったりしてもう魅力ゼロ。
魅力が薄いのは「ロキ」だけじゃなく、無数に現れる敵の軍隊も基本的には「人型」と「エアロバイク」と「凄く大きいムカデ」の三種類しか居なくて萎え。
ここは、三羽烏でも四天王でも黄金聖闘士12人的な存在を入れるべきでしょうよ。
んで、一緒に観に行った友人が言っててナルホドって思ったんですけど、この手のハリウッドクリーチャーってみんな基本的に濃い灰色で地味なんだよね。
この辺の無数に現れる敵の魅力の薄さは「劇場版ガンダム00」にも通ずるなあ。
やっぱり、ヒーローが輝くには魅力的な敵がいないとダメじゃないの?
敵を灰色にした方がヒーローが輝くってことなのかな。

てな感じに比較的ネガティブな感想になってしまったが、しつこいけど終盤の市街戦は完璧ではないけど本当に素晴らしいよ!

ブラック・ウイドゥも大活躍の「アイアンマン2」
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「メリダとおそろしの森」感想【ネタバレ若干】

メリダとおそろしの森」感想。
ピクサーがここまでつまらない映画を作った事こそがこの映画最大のエポック。
100点満点で35点です。

王女メリダがクマに変えられた母にかけられた呪いを解く為に奮闘するピクサー3Dアニメーション。

ピクサーと言うよりはドリームワークス等のメリケン3DCGアニメにありがちな安っぽくてちっとも興奮も笑いも感動も感じられないドタバタカットで綴られた作品。
肝心のお話の骨格は、同じピクサーのトイストーリーシリーズの様な映画全体の展開をしっかり緻密に設計したような所は見受けられなかった。
話が何から何まで行き当たり場当たりで映画全体の構成には大して寄与しない散発的なドタバタカットが多く、話の幹を引き立てるような展開が全く感じられなかった。
トイストーリーと言うより、どっちかと言うと、同じピクサーのカーズ2のように、小エピソードを連結しただけで一本の映画を作ってしまったと言う印象(カーズ2好きですけどね)。
僕はその点でカーズ2以上に同じくディズニーのジョンカーターを思い出しました。
ジョンカーター、ホントつまんなかったなあ・・・・。

主人公メリダをはじめ、全ての登場人物に全く共感も愛情も感じませんでした。
メリダの母や弟たちが呪いに掛けられるのも、全てメリダの身から出た錆なのだから、最終的にはメリダ自身が成長する事によって解決されなければ本当の意味での大団円とは言えないんじゃないのだろうか。
両親との和解によって呪いに打ち勝ったような感じも大してなく、正直言って偶然が重なって上手いこと行きましたって様にしか見えなかったし。
なんなのこれ。
正直、全くカタルシスを感じませんでした。

あと、登場人物、特に3人の弟達や3人の花婿候補が極めて記号的で如何にもマンガっぽくて血の通った感じが無く萎えました。
母親がクマにされた時に比べると、三人の弟がクマにされた時はメリダは大してショック受けてないように見えたし、こんな記号の様な弟達は愛するに値しないと思ってた様にすら見えましたよ。

つまんなかったので、特にこれ以上書くことも無いです。



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「仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!」感想【ネタバレ若干】

仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!」感想。
大幅にスケールアップして舞台を宇宙に移しても、結局、学園の内輪話から脱却できなかったスケールの小さい残念ヒーロー。
100点満点で60点です。

仮面ライダー部と宇宙鉄人との戦いを描く劇場版。

坂本浩一監督おなじみのアジアアクション大作を食ったようなフィジカルなワイヤーアクションと、画面自体がド派手にアクションする野生的なカメラワークが圧巻。
画面の動きが派手なので、CG合成物も取って付けた感が薄れるという効果もありますね。
休む暇なんて与えねえぜとばかりにスクリーン全体が踊り狂うような野性味溢れる坂本アクションはやっぱりアガりますね。

最近の東映特撮シリーズではお馴染みの過去の作品のオマージュネタですが、本作では「大鉄人17」と「宇宙鉄人キョーダイン」が大々的かつ過去最大級に満載されてました。
巨大衛星兵器XVII、内部のマザーコンピューター、警備ロボット、兄弟鉄人、などなど。
元設定からが若干、姿、設定、そして善悪の立場等がシャッフルされていて、リアルタイム世代としては中々面白く観れました。
正直、これらの「おっさんホイホイ」要素が、前述の派手なアクションと並ぶ本作の最大の売りと言っても過言ではないような気がしました。
要は、ちょいお話が良い加減過ぎるのです。

テレビ版の「仮面ライダーフォーゼ」は敵も味方も要救護者も全て学園内の人間で完結しているビオトープみたいな話で、今回も基本的にはそれを引き継いでいる。
今回は、学園の外から来た敵がメインだったり、衛星兵器で学園外の市井の人達、ていうか、地球人全員が標的になったりして、設定で話を広げようとしている節は見受けられるのだが、お話の流れ自体は相変わらず学園内で完結させてしまっている。
最終局面において、主人公を救うべく「オラにちょっぴり力を分けてくれ」的な「元気玉」的シチュエーションがあるのだが、ちょっぴり力を分ける人間達も全て学園内で完結してしまって萎え。
例えば、もう一工夫加えて、地球人類全員の力をちょびっとずつ天の川学園に終結させて、学園内の代表数十人がアンプの役割で増幅させて弦太郎に送るみたいなシステムにするだけで、
ヒーローとヒーローの友達、そして世界中の市井の人々が一致団結する、「世界に広げよう友達の輪」を体現した物凄く熱量の上がるシーンに変貌したのではないかと思い残念でならない。
要は、「仮面ライダーフォーゼ」がテレビ版同様に相変わらず学園内番長的な位置付けから脱却出来ていない事。
ヒーローは見知らぬ市井の人を救ってこそヒーローなのでは無いだろうか?
フォーゼに変身する主人公、弦太郎のモットーは敵味方、人間機械に関わらず「学園全員と友達になる」事なのだが、友達になる可能性のない対象を救う場面は結果的にはほぼ無い。
仲間を大事にするのは結構だが、蚊帳の外の人間を救う場面が結果的には無いのはヒーロー像として余りに小さすぎると思う。
おまけに、今回はある人物を救えなかった、つまり友達になれなかった事に関してなんのフォローも無かったのはいささか適当すぎはしないだろうか。
自分の見える範囲の物しか救わない展開ばっかりで萎えるんだよね。

他にも、やけにあっさり宇宙に仮面ライダー部が行く展開も萎え。
そもそも、この作品のヒロイン城島ユウキの夢は宇宙飛行士になる事で、その為にも学園内の悪と戦うのが作品の流れなのに、これでは目的と手段の順序が逆と言うものだ。
これのみならず、コメディを盾に勢いで作ったような良い加減な展開が多すぎる。

とは言え、前述の「大鉄人17」と「宇宙鉄人キョーダイン」のオマージュにニヤリとしたり、坂本アクションを堪能するために観るのも良いのでは無いでしょうか。
色々文句も書いたけど、「別に学園内のお話で良いんじゃね?俺、テレビ版のフォーゼ好きだし」って方には逆に最高の作品かと思います。

ああ、あと、ゲストの新ライダー「仮面ライダーウィザード」はカッコよかったですよ。
4人に剣の舞よろしく流れる様なムーブで敵を切り刻む様はなんともスタイリッシュ。
呼称する時「ウィザード」か「ウイザード」のどっちで発音するのか気になってましたが、字面どおり「ウィザード」と発音してました。
実は英語の発音はどっちかというと「ウイザード」らしいですよね。
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/ej3/95129/m0u/wizard/
「ウィザードリー」だってみんな「ウイザードリー」って発音してるしね。
少なくとも「ウィザードリーとウイザードリーはどっちが正しいんだ問題」に関しての日朝タイムの回答は「ウィザードリー」に軍配が上がったようです。
もし次の仮面ライダーが「仮面ライダー イングヴェイ・マルムスティーン」とかになったら、日朝タイムが「イングヴェイかイングウェイか問題」にどんな回答を出してくるのかが、またまた興味深いですねえ。


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「特命戦隊ゴーバスターズ THE MOVIE 東京エネタワーを守れ!」感想【ネタバレ若干】

特命戦隊ゴーバスターズ THE MOVIE 東京エネタワーを守れ!」感想。
スタイリッシュなカメラワークとアクションが素晴らしい、ギュウギュウ詰めで中弛み無しの30分。
100点満点で60点です。
点数が少ないのは単に尺の問題です。
尚、エンディング後のネタバレは反転しています。

まずはゴーバスの感想。

仮面ライダーフォーゼとの同時上映故の30分という短い上映時間で、これでもかと詰め込まれたドラマやアクションが素晴らしい。
特にアクションシーンのスタイリッシュなカメラワークには注目。
激しく演者とカメラがアクションしつつも、決めるべき所ではビシっと止める、静と動の動きがマジヤバイ。
同時上映の「仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!」の坂本浩一監督のカンフーばりのアクションや同じくカメラ自体がバリバリアクションするカメラワークも野生的で素晴らしいですが、ゴーバスの方が止めの美学を追求しててスタイリッシュだなあと言う印象。
「東京エネタワー」として、あの搭が出てきたりする時節をちょっと捻って盛り込んだ展開や、エンディングでは戦闘ロボットでその搭を修復したりして勝利後の一時の平和を表現してくれたりする所も良かったですね。
※ネタバレ反転

ただし、基本的にはテレビの1エピソードを映像的にパワーアップさせたものでしかなく、劇場版でしか観れないロボットは出てくるものの、「なんとあいつらがタイムスリップ?」とか「生き別れた姉は宇宙人だった!」とか言った、劇場版ならではの展開には乏しい。
要は、感動の「種類」としては日曜朝8時のそれとなんら変わりは無いのが残念。
後は、なによりも尺が短いのが一番の問題。
もっとも、30分と短尺故にこのジェットコースター展開が実現できるのかも知れん。

まあ、放送中のテレビ版「特命戦隊ゴーバスターズ」自体が実に面白くて、歴代戦隊シリーズ中、個人的には最高傑作と断言できる作品。
今回はそれの濃縮還元パワーアップ版だったので当然ですが面白かった。
子供向けとは言え同時期に放送している仮面ライダーを始めて超えたリアリティを持ち、それだけでなくコンピューター関連のメタ化や転送時間表示などSF心をくすぐる設定が特に素晴らしく観ていてワクワクする。
実力者で仲間想いだが表面的には口が悪いのが玉に瑕のレッド、年上故に大人の視点で仲間を支えつつも自分も弱い人間なんじゃ無いのかと悩むブルー、最年少で勝気に溢れる反面、立ち直りは早いがすぐ凹んだり、カロリー摂取を頻繁に忘れるドジッ娘のイエロー、長所短所入り混じりキャラの立ち

まくった3人の成長展開などの魅力にも満ちた作品です。
ホント、僕はこの三人が大好きですよ。
後は、戦隊お馴染みのバンクカットやお約束のルーチンがあまり用いられないので、展開が毎回変わって実に新鮮。
珍獣みたいな敵の幹部が3~4人出てきて、無い頭をフル回転させて陳腐な作戦で挑んで来るような子供だましのお話ではなく、毎回戦隊が完勝するとは限らず、人間の若者の姿をしたスタイリッシュな敵幹部「エンター」が結構な確立で作戦を成功させてしまう展開が面白い。

仮面ライダー目当てで観た人が、「特命戦隊ゴーバスターズ」も気に入ってくれると良いなあ。

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「おおかみこどもの雨と雪」感想【ネタバレ割と多め】

おおかみこどもの雨と雪」感想。
設定以外はファンタジーに逃げない現実的な話。
100点満点で70点です。

ネタバレ割と多めですが、一応観る前に見ても大丈夫程度には抑えてあります。
そもそも、ナレーションがネタバレ全開でドンドン入ってくる作品です。


狼男に恋をした主人公と二人の間にうまれたおおかみこどもの姉弟の物語。

「狼人間」の設定以外は、とても現実的なお話で、宇宙人もゾンビも出て来ないので、リアリティラインの設定が明確で凄く好感が持てました。
狼人間が何故この世に生まれたのか?などと言ったファンタジックなテーマに話が向かずに、お話は常に現実の問題と向き合っていたのが良いです。
期せずしてだろうけど、震災疎開をメタった様な田舎への逃避と、そこでの人間関係の変化も凄く楽しく観れました。

ただ、残念ながら少々生真面目にお話を現実的に作りすぎた為、ドラマ性には乏しいです。
宇宙人もゾンビも出てこないのは良いんですが、せめて生き別れた姉が出てきたり、土砂崩れで生死の境を彷徨ってハラハラみたいな「ハレ」の展開でもあればもうちょっと退屈せずに見れたかなと思います。
要は、丁寧に作られたお話だけど、骨格がシンプル過ぎます。

んで、お話がシンプル過ぎる上に、おおかみこどもの姉の「雪」の未来目線の劇中ナレーションが、冒頭からあまりにも多くの情報を出しすぎて、話の骨格がなんとなく読めてしまうのです。
要はナレーションが序盤から壮大にネタバレしまくってます。
姉の語り口になってる時点で、既に弟の「雨」が最後大体どんな感じに展開していくのか読めちゃいますからね。
もちろん、それはヒントとして頭の中で組み合わせてねって事なんだろうけど、あまりにも情報を出しすぎで「ああ、やっぱりね」って展開ばっかりで意外性が無い。
例えて言うならキャンプファイヤーで一小節毎に全員に先駆けて「命掛けてと!」「い~の~ち~かけてと~」「誓った日から!」「ち~か~った~ひから~」みたいに先導されている様な状態です。
結局、観客としては大筋は大体読めちゃってるんで、ディティールだけを楽しむ映画になっちゃってるかなと。

それだけに、この話の各所のディティールは凄く良くできてるなあと思います。
幹も枝葉も真っ直ぐ過ぎてあんまり面白く無いけど、葉っぱは良く生い茂ってて見ごたえあるなあって感じ。
一例を挙げると、親子三人で新雪の山を滑り降りる場面とか、本人の努力と周りの助言で少しずつ実を生していく農作業の描写とか。
何より、廊下上に横に移動するカメラで二つのクラスを撮影し、時間経過と共に、姉弟の成長や方向性の変化を表現するカットが凄く良い。
ここは素晴らしかった。

どうしても気になる所は、やはり序盤の「獣姦」シーンですね。
「和姦」にして「獣姦」と言う、新しい地平を切り開いた本作ですが、何故あの場面で「彼」は人間モードでは無く狼モードでなければいけなかったのか?
初めて狼男である事を告白されたその晩にいきなりその姿の相手にとセックスとかどう考えてもおかしいだろ。
なんか製作者側が表現のチャレンジをしたかったからそうしたように見えるのよね。
「人と狼の種族を超えた愛」であるとか「彼の全てを受け入れる」みたいな綺麗事を言いたかったんだろうけど、どうしても獣姦表現入れたいんだったら、狼の姿を主人公が受け入れる時間を置くべきだったんじゃないの?

おおかみこども二人の変身時のジャパニメーション的な気持ち悪さも気になる。
父親の変身は良く出来てて、これはこれで別の意味で気持ち悪く、ちゃんと恐怖感じる映像になっている。
人間が狼に変身するのだから、恐怖を感じる表現にするのは当然ですね。
だが、子供達の変身は、オタアニメ的な表現が全開で、気味が悪いの意味が父親のそれとは全く違うのだ。
オタアニメで顔面の1/2を目が占拠しているクリーチャーまがいの美少女とされている物を見させられている気持ち悪さと同じ感覚。
一番顕著な例は「耳」の変形、耳は4つあるんじゃなくて、ちゃんと顔の横から頭のてっぺんに移動しなければならないと思うのだが、この姉弟の耳は何もない所にぴょこっといかにもアニメ的に発生する(ように見える)。
スタンダード狙いの作品なのだろうから、こういったオタアニメ文法は徹底的に配して欲しかったなあ。
予告の時がMAXに気持ち悪かったけど、本編を見る頃には若干慣れたが、やっぱ気持ち悪いな。

ツッコミどころはまだまだあります。
主人公は苦学生で奨学金で大学行ってたのに安易に狼男と中出しセックスで結果大学やめるとか彼共々計画性が無さすぎる。
しかも、彼は狼男ではあるものの、大学の講義にちょいちょい侵入して講義を聞くほどの向学心の持ち主なのに、主人公にこの道を選ばせるってのが納得いかない。
あまりにも不用意で無計画。
根本的に、思考回路が人間とは違うって事なのかな?
後、どう考えても女手一つで二人の赤ちゃん育てるとか、経済的に破綻するんじゃね?

設定以外は現実的な話と上で書いたけど、やっぱり全体的にファンタジーとして受け入れるべきなのかなあ。
まあ、色々書いたけど、凄く丁寧に描かれた良い話でしたよ。
ただし、ツッコミ所は目をつぶるとしても、ドラマの振り幅が明らかに乏しいです。

声優陣は全員素晴らしい演技でした。
文句なし。


同監督による過大評価の著しい前作「サマーウォーズ」よりはずっと面白いです。
本当にかなり良くなってる。

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「苦役列車」感想【ネタバレ若干】

苦役列車」感想。
邦画に良く有る何も起きないタイプの映画で、良くも悪くも主人公の生態のみが見所。
100点満点で40点です。
原作は未読。


主人公、北町貫多は中卒後、日雇い労働で生計を立て、風俗通いで家賃も滞納し、読書が唯一の生きがいの19歳。
一人称が「僕」なのが非常に好印象かつ僕と同じなので共感を覚える。
彼のどうしようもない性格や行動がこのお話の原動力であり、逆にこのウジウジした性格故に物語がどの方向にも膨らまない停滞力にも残念ながらなっていた。
何かお話があって、そこに主人公が配置されているのではなく、何もお話などない所に、傍から見ている限りは面白すぎる主人公、貫多が配され勝手に色々騒動を巻き起こす感じ。
例えるなら、仕草は異様に面白いのだが、餌は計画性無く無節操にあればあるだけ食い散らかし、与えられた玩具は片っ端からぶっ壊していく不器用なサルを、動物園の檻の前で2時間ウォッチングするような映画でした。

動物ごっことか、飲み屋で酔いつぶれた後の論争とか、終盤のリモコンの奪い合いとか笑える所もありましたけどね。
マキタスポーツ演じる歌手志望崩れの中年、高橋岩男は最初滑ってましたが、その滑りも計算だったのかと思わせるような終盤の展開は良かったですね。
でも、主人公の父親は性犯罪で捕まりウィークエンダーで紹介されたって言う凄い過去があるんだけど、僕的には本編でこの事件を超えるようなドラマは一切無かったな。

主人公、北町貫多役の森山未來は、腫れぼったい感じの目が貫多のモデルである原作者の西村賢太に本当にそっくりだし、短絡的な欲望だけで生きている貫多その物になりきってて素晴らしかったですよ。
友人の日下部正二役の高良健吾も凄く真摯で真っ直ぐな友人思いの人柄が爽やかな笑顔で良く出ていました。
桜井康子役の前田敦子は、時代背景以上に古風な感じでした。
配役としては悪くないけど、前田敦子としての魅力はまるっきり出てないように感じたので、彼女のアイドル映画として観るのは少々キツイかなと。
例えば、おじいちゃんに尿瓶を使うシーンとかはもっと攻めた演技や演出をできたはずだし、もっと面白いシーンになり得たんじゃないかと。

やっぱ2時間さしたる展開もなく面白いサルをウォッチングするだけなのは少々きついなあ。
「ああ、今僕は典型的で退屈な邦画を観ているんだなあ。この映画はシルベスタスタローンのコブラと同じ側の映画なのだろうか、それとも世田谷住みたガールのサブカルお登り女子共が観るような小じゃれた映画なのだろうか。」と考えたりもしました。

この映画、興行成績悪いみたいだけど、それは本当に納得。
映画の出来が良い悪いじゃ無くて、基本お話は有って無い様な物だから、一般人が観て素直に面白いって思わないと思う。


苦役列車 (新潮文庫)

「ネイビーシールズ」感想【ネタバレ若干】

ネイビーシールズ」感想。
本物と作り物を混ぜたのはともかく、練りこみ方が下手な上に、味付けも計算されていない、更に余計な調味料を加えてしまい、案の定つまらなくなってしまった戦争映画。
100点満点で45点です。

FPSゲームのコールオブデューティーモダンウォーフェア(以下COD:MW)シリーズをモロに意識した感じの映画。

この映画、とにかく本物である事にこだわったらしく、主人公側の部隊を本物の海軍兵が演じ、登場兵器や戦術などは全て本物なんだそうです。
だが、ドキュメンタリーでも、フェイクドキュメンタリーでもなく、あくまで脚本上で動いている劇映画。
観た感じ、主人公部隊以外の登場人物は、敵テロリストも味方のスパイも一般市民も全て役者みたい。
んで、残念な事に、この変な真偽のバランスがことごとくこの映画をつまらなくしている。
ドキュメンタリーとしての面白さは、いかにもなテロリスト役者達が悪巧みを語らう役者パートの作り話感で台無しになってる。
かといって脚本ありきのフィクションとしての面白さも、リアルな演技ではあるが全く「華」が無い本物の軍人のパートで全て台無し。
これ、星新一の小説「リオン」の中で「ブロン」と言う、ブドウとメロンを掛け合わせて、ブドウのようたくさん成るメロンを作るつもりが、ブドウのように小さな実がメロンのように一つしか生らなかった話を思い出しました。
本物のようにリアルで映画のように面白い物を作るつもりが、本物のようにつまらない上に映画のように嘘くさくなってました。
本物を使いつつあくまで作り物の脚本に拘るのなら、落とし所として、フェイクドキュメンタリーにしてしまえばよかったと思うのだが。
そうすれば、役者が演じるテロリスト側からの視点を描かなくて済んだはず。
要は練りこみ方が下手。

それと、この映画は発生する事件の流れがアンバランスで、後半ほど盛り上がって行く感じが皆無です。
具体的には、映画の冒頭で子供達数十人が犠牲になる、最悪のテロが発生してしまうので、それ以降の物語のテンションまるっきり上がりません。
少なくとも、僕の中では、この後エンドロールに至るまでに、序盤の子供達が大量虐殺されるこの事件以上に最悪な状況は起きませんでしたし、これ以上の大事件を主人公たちが阻止したような印象も受けませんでした。
ヒューマンドラマである、ヒアアフターで冒頭いきなり津波が発生してしまうのとは訳が違います。
戦争映画ならば終盤に向けて緩急付けつつ、テンションを高めて行くべきでは無いでしょうか。
序盤で子供達を大虐殺されるシーンを流して、その後に仲間の女スパイが拷問を受けてるシーンを流されても僕は大した危機感を持てません。
まして、この女スパイとテロリストのやり取りはいかにも役者のやり取りその物で、全くテンションが上がりません。
早い話、先に薄い味で、徐々に濃い味にして行くような味付けが計算されていないから途中で飽きるんです。

んで、主人公達を演ずる方々は素人とは言え本物の軍人なので、戦闘時の行動や演技は非常に自然なのですが、いかんせん役者ではないので、明らかに「華」が無いんです。
テロリストや囚われた女スパイなどの役者達の隠しても隠し切れない「華」、要は「演者としてのカリスマ性」が、主人公達には無いのです。
だから、この主人公達、キャラが全然立ってないんです。
脚本や演出のほうで、もうじきガキが生まれるとか、なんとかのエキスパートだとか、華のないキャラクター達に色んな添加物を加えていますが、人数も多いのでなんかあんまり記憶に残らない。
んで、人物紹介の時に、ビデオゲームのデジタル表示を20年前のセンスで再現したかのような吹き出しが出てきて超幻滅。
いや、COD:MWシリーズの様な文字通りモダンなセンスでグラフィカルに表示してくれるならともかく、ホントにプレステが出る前後位の時代のセンスで吹き出しがポップアップしてくるんで、心の中で失笑しました。
ホントにダサいんでやめて欲しいです。
後、劇中で唐突に出てくる本人視点(FP:ファーストパーソンビュー)。
本人視点で、全編貫き通すなら面白い映画にもなったかも知れないけど、所々思い出したかのようにFPSゲームオマージュのように用いられる。
フリーマン博士(傑作FPS、ハーフライフシリーズの主人公で、同ゲームはオープニングからエンディングまで彼の一人称視点のみで全て完結する)が知ったらどう思うだろうか。
余計なゲーム的調味料を加えるのはマジやめて。
調味料の味しかしないよ。

この映画の最大の売りである「兵器、戦術はすべて本物である」って所が観たいなら、スカパーの「ディスカバリーチャンネル」の「フューチャーウェポン」とかの兵器系ドキュメンタリーとか観た方が遥かに面白いと思う。
「物語はフィクションだが」って所に惹かれるなら、古今東西、戦争映画の傑作は山ほどある。
このリアルとフィクションが混同したテイストを味わいたいならばそれこそ「ハートロッカー」でも観れば良いと思うし。

この映画の最大の見所は、予告で桟橋にいる男を殺す所でした(上の動画)。
おーこれが本物か!って思うもの。
これ観たら本編観たくなるよそりゃ。
だからこの映画は予告を観れば十分だと思います。

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「サニー 永遠の仲間たち」感想【ネタバレ若干】

サニー 永遠の仲間たち」感想。
現代と過去の二つの時代で描かれる、いわば仲良し女子グループ版の仮面ライダーキバ。
100点満点で55点です。

韓国のアラフォー女性7人の友情を、現代と25年前二つの時代を舞台に描く青春ドラマ。

この作品、リアリティラインの設定が滅茶苦茶で付いていけません。
一言で言うと「ノリがわからん」。
現代場面からスタートする序盤は、設定や人物の行動原理など、リアルな描写が続くので、こちらもマジメな受け止め方で観賞していました。
でも、25年前に舞台が移った辺りから、教室でのコントみたいな会話とか、ビビッたライバルチームのボスがするある行動とか、そのバトルのルールとか、本当にホッペが赤くなるとか、主人公が奇怪な踊りを踊りだすとかいった、
奇天烈な設定や人物描写が入ってきて、どういう姿勢でこの作品を観れば良いか良く判らなくなってしまった。
なんか、序盤の現代編はマトモなヒューマンドラマに見えたのに、突然質の悪いコントに切り替わった感じ。
これは、韓国というお国柄の問題なのか?
トドメに、市民運動のドサクサに紛れて、ライバルグループと喧嘩をするシーンとか、警察隊までKOしちゃったりして本当にドタバタファンタジーにシフト。
そこまでは保っていた観賞のモチベーションも、流石にこのファンタジーバトルを切欠に、どの姿勢でこの作品に向き合えば良いのか判らなくなってしまった。
そもそもお前らは、何故、そこで喧嘩をする。
なんか、制作者がその当時の韓国の時代背景を織り込みたくて無理矢理くっ付けた様にしか見えないのだけど。

恐らくは、過去の場面、つまり、思い出の中の出来事だから、若干ファンタジーによせてるんだろうなって意図なのかなとは思うし、僕も過去編に関しては色眼鏡を通して観るように意識をシフトさせた。
だが、中盤以降、特に、奇天烈フレンド達と再会して、人数が増えるにつけ、現代編もファンタジー化してしまうのがどうにもいただけない。
一番酷いのは、現代で再結成したアラフォー女達が高校生の不良女子と乱闘するくだり。
韓国じゃこの程度の犯罪は、当日お灸を据えられたら、翌日になれば普通に返されて、夫や娘にも知らせないで終わらせるレベルなの?
それとも、金や権力の力でもみ消した?
それならそれで、もう既に「良い話」じゃ無くなってるよね?
登場人物の行動原理のルールやリアリティラインが勝手に書き換わるお話は正直僕は文字通り乗れないです。
ハラホロヒレハレです。
他にも、中年女子3人が剥いたバナナごと着衣でベッドでゴロゴロじゃれあったり、汚いっての。
この描写でイライラしない人はホタルノヒカリに文句言えないと思いますよ。マジで。
マトモな中年はそんな事しませんし、そもそもマトモじゃないならマトモな僕には伝わりませんし。
そこに乗れる人なら楽しめると思いますよ、ホントの話。
現代の韓流ドラマ慣れしてるとすぐに入り込めるのかも知れないですね。

それと、この友人グループが7人なのは明らかに多過ぎ。
一時代だけのお話なら構わないのですが、この作品は二つの時代を並行して描いているので、実質主人公グループだけで○○人にもなってしまうんです。
お陰で話はとっちらかるし、誰が誰だかわかんなくなるし、
実際、編集の問題や韓国の方の名前に馴染みが無いのもあって、ある人物とある人物が同一人物だと勘違いしたりしましたし。
ハッキリいうと、2人要らないので、ズバリ5人で良いです。
忍者キャプターみたいに7人も居るのは過剰と言う物です。
ゴレンジャーみたいに5人くらいが一番丁度良いのです。
現代でも、ゴレンジャーはまた映画に出ましたが、忍者キャプターが銀幕に登場する事は金輪際無いと断言できます。

後、主人公達が現代に置いて連絡を取っていなかった理由がドラマのピークの一つでもあり、確かに辛い過去なのかも知れないけれど、だからと言って、7人全員が誰とも会った事が無いっておかしいと思う。
一人死にそうなので、今度は全員集めましょうってのは、話の原動力として成り立ってるんだけど、それだけ会いたかった7人全員が、バラバラで居続けた理由の方が弱すぎる。
お前ら7人ドラゴンボールかよ。
こういう行動原理もご都合優先のファンタジー。

なんか、悪口ばっかり書きすぎたが、お話の骨子自体は面白いと思うし、むしろ好きなタイプの話。
過去と未来の変化を楽しむロジックは、時間と言う次元が一つ加わるので、それだけで話に深みと奥行きが出ますね。
これは、「仮面ライダーキバ」や、今上映中の傑作「ワン・デイ 23年のラブストーリー」にも通じる。
なので、これだけボロクソ書いたら、評価は甘々の55点。

更にこの作品を面白く観れるかどうかは、過去の彼女達の奇天烈なノリに共感できるかがカギなんじゃないですかね。
一部ではこの作品大評判ですし、実際僕も、水道橋博士氏のつぶやきに惹かれて観に行った次第ですし。




ゴーストリコン フューチャーソルジャー、もう明後日出るんですけど。
ドラゴンズドグマがまだ一周終わらない・・・。
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「ソウル・サーファー」感想【ネタバレそれなり】

ソウル・サーファー」感想。
片腕を失いながらも、ひたすら前向きで明るく楽しいサーフィンスポ根。しかも実話。
100点満点で85点です。


サーファーを夢見る少女ベサニーが片腕サメに食われちゃう話なのに、ポジティブでひたすらキラキラ輝いていて、希望に満ちた2時間でした。
片腕にもなるので、当然挫折も経験し、酷く落ち込んだりもするんだけど、見てる側は暗い雰囲気にならない。
これは主人公や家族や友人、ライバル他、全ての登場人物が、正方向の感情に満ち溢れ、お互いや自己の負の感情を浄化する能力を持ち合わせて描かれているからじゃないだろうか。

例えば、主人公の両親が、娘の腕を奪ったサメの死体を確認するシーンがあるのだが、彼らはサメの死体に暴言を吐いたり棒で殴ったりとか、八つ当たりや復讐はしない。
サメは娘に訪れた運命の歯車のひとつでしかなく、サメを捕らえた所で、自体が好転する事は無いと確認し、ただ今を悲しむだけ。
それは復讐等の能動的な負の感情とは全く違う、あくまで対処的などうしようもない感情なので、今を悲しむのはしょうがない、悲しければ泣けば良いと思う。
サメに八つ当たりしたり、復讐の感情を抱いても意味が無いと判っているのだ。
そこに痛く感動した。

ライバルのキャラクター設定も素晴らしい。
五体満足時の主人公に馴れ合いを拒否した場面と、その正反対とも思えるラストシーンは全く正反対のように思えるが、実は彼女の思想は成長しつつも一貫しているのが良い。
障害者になってしまった人に対して、家族や友人が態度や接し方を変えるのも愛情だが、ライバルの態度を変えないと言う姿勢がしっかりしているからこそ、最後のシーンは号泣してしまった。
ライバルがハンデの提案をするのだが、それを主人公が拒否。
ライバルはそれ以降、主人公に対して、甘い態度を見せない。
こえぞプロフェッショナル。
熱すぎる。スポ根過ぎる。
やっぱり、スポ根は、良いライバルと高いハードルがあってこそ燃えますね。

クライマックスのパイプラインの映像は本当に素晴らしかった。
波の壁越しに歪む主人公の顔や残った右手を波に滑らすシュプールの美しさに開いた口が塞がらなかった!
サーフィンなんてやらなくてもアホでも判る説得力ある映像。
最終審査結果のロジックや、ライバルの最後の行動まで、このパイプラインの演技が素晴らしいので全て噛み合っていた。
号泣です。

復帰後、やはりサーフィンが上手く行かず、一時は失意のどん底に落ちた主人公がボランティアに参加し、子供に希望を与える事で、自らも希望を取り返す展開はいささかベタだがやっぱり良かった。
落ち込んだ人が、更に落ち込んでる人を励まし、お互いに励まされる構図。
分け与えるのではなく、相乗効果で生み出されていくポジティブシンキングに感動。
もっとも、ここのシーンは、子供と主人公がサーフィンやりだしたら、全員で拍手とかいきなりしちゃったりとか、いささかわざとらしいカット構成や演出がちょい気にはなったが。

でも、色々上手く行き過ぎだよなあと正直ちょっと思ってしまったのですが、エンディングクレジット時に、主人公のモデルのべサニー本人の映像が流れてくるのを観てビックリ。
ホントにタイの被災地でサーフィンやってるよ!
劇中のシーンは再現フィルムだったのかよ!って位に実話の再現度が高い映画でした。
まあ、リアリティに関しては結局編集の問題ではあると思うけど。

まあ前向きな人達は本当に前向きだなあと嫉妬。
何かに凹んでいる人は観たほうが良い映画だと思いますよ。
主人公の障害の重さより、映画全体に包まれた明るさが遥かに大きいのが何より素晴らしいです。


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